艦これ外伝 ─ あの鷹のように ─   作:白犬

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第17話 「新たな仲間たち」

 

 

 仲間たちに紹介すると言われ、執務室を後に階段を軋ませながら下りはじめたスパルヴィエロだが、2階に降りると廊下を歩き始めたルイジを見て訝しむ。

 

「あのぅルイジさん。食堂に行くんじゃないんですか?」

「いや、他の艦娘は、わたしの部屋で待っている」

 

 1階を指さし尋ねるスパルヴィエロに振り返りもせずにつぶやくと、ルイジはなおも

歩き続けた。

 

 スパルヴィエロとネロは互いに顔を見合わせるが、ルイジの後を追った。

 

 2階は艦娘の宿舎になっており、廊下を挟んで合計14ほど部屋が並んでいる。

 通常は、一部屋に2~3人の艦娘が寝泊まりしていたが、一番奥にふたつある大部屋は、旗艦を勤める艦娘専用の個室になっていた。

 

 片方の部屋に近づくと、ルイジはノブに手をやり扉を開いた。

 調度品の類はいっさい見あたらない、殺風景といってもいい部屋。

 

 ルイジは、室内にいた少女たちに話しかけた。

 

 

「待たせたな」

 

 

 部屋の窓からナポリの町並みを見ていた少女が、ウェーブのかかった銀糸のような髪を揺らしながら振り返る。

 ルイジの背に隠れるようにして、肩越しに部屋の中をのぞき込んでいたスパルヴィエロと目が合うと、はにかむような笑みを浮かべて会釈した。

 

 つられて頭をかきながら挨拶するスパルヴィエロだが、刺すような視線を感じ、首を

巡らした。

 壁を背に、ふたりの少女が不服そうな顔をしながら、あからさまにスパルヴィエロを

睨みつけている。

 

 双子だろうか、顔立ちや瞳の色、髪型までまるで見分けがつかなかった。

 

 なぜ、そんな目で見られなければならいのか? 皆目見当もつかなかったが、とりあえずスパルヴィエロは少女たちから目を反らすように部屋の反対側に視線を移した。

 

 そこにはベッドが置かれ、少女がひとり分厚い本を胸に抱き、スヤスヤと寝息をたて

就寝中であった。

 

 ルイジは首を振りながらベッドを指さす。

 

 唯一、スパルヴィエロに好意的な態度を見せた少女が、鳶色の瞳を大きく見開くと

慌ててベッドに走りよる。

 

「あの、起きてください、スパルヴィエロさんが来ましたよ?」

 

 しばらく肩を揺さぶられると少女はようやく目を開け、気だるそうに体を起こした。

 ライトブラウンの軍服のあちこちに、皺が寄っているが気にした素振りも見せない。

 

 寝癖だろうか、ベージュ色の髪のあちこちがピンと立ち、ひときわ大きな跳ねが

アホ毛のように登頂で揺れている。

 

「……だいじょうぶ、起きてた」

「嘘をつくな」

 

 寝起き特有の掠れ声で断言する少女を一喝すると、ルイジは部屋を見渡しながら、

背後を指さす。

 

「彼女が、今朝話した新メンバーの護衛空母、スパルヴィエロだ」

 

 ルイジはそう言うと、身体の前で腕を組み合わせて立つ少女に、軽く頷いてみせた。

 

「初めましてスパルヴィエロさん。私は“トゥルビネ”級駆逐艦の1番艦、トゥルビネと

いいます」

 

 トゥルビネは、腰まで届く銀髪を揺らせながら、深々と頭を下げた。

 スパルヴィエロも、慌ててお辞儀を返す。

 顔を上げると、時同じく顔を上げたトゥルビネの鳶色の瞳と目があった。

 

 しばらくすると、ふたりはお互い屈託のない笑みを浮かべ合う。

 

 着ている衣服は青を基調とし、襟、袖、そしてスカートに白いラインの入ったシンプ

ルなデザインのセーラー服だが、線が細く可憐な顔立ちのトゥルビネには非常に似合っ

ていた。

 

「あっ、それと壁際に立っているふたりは、私の姉妹艦で4番艦と7番艦の……」

 

「エスペロよ!」

「あたしはオストロ!」

 

 トゥルビネの声を遮るように、腕を組みながらエスペロとオストロは、乱暴に名乗り

を上げた。

 

 スパルヴィエロは、トゥルビネより一回り小柄な少女たちを、返す返す見つめた。

 

 髪も瞳の色も同じ燃えるような赤色で、背格好も似ているため区別がつかない。

 少し前に耳にしたふたりの声も、トーンや口調もまるで同じだった。

 

 唯一、ふたりの外見の差を強いて挙げれば、頭の側面で結んだ髪がエスペロは右に、

オストロは左に下がっているということぐらいであろうか。

 

 同クラスの駆逐艦であるため、着ている服は基本的にトゥルビネと同じセーラー服だが、細い二の腕は露わになり、下はスカートではなくショートパンツに変わっていた。

 短めに切りそろえられたの髪型に加え、勝ち気そうな顔立ちは、日に焼けた健康そうな見た目と相まってヤンチャな少年といった趣があった。

 

「さて、最後は……」

 

 ルイジは苦笑しながらエスペロたちから目を反らすと、ベッドの上に腰掛け本を読み

ふける少女に視線を移す。

 

「……アルマンド」

 

 アルマンドは本から目も離さずに、億劫そうに自分の名を告げる。

 

「えっと、この方は、軽巡洋艦“ルイージ・カルドナ”級、2番艦のアルマンド・ディアス

さんです」

 

 いくら待っても口を開こうとしないアルマンドに代わり、トゥルビネが慌てて補足

する。

 

「ふう、以上が第1遊撃艦隊に所属する艦娘だ。わたしの名前は……あらためて名乗る

必要はないな?」

 

 ルイジの瞳に、口元を押さえながら、カクカクと首を振るスパルヴィエロの姿が映った。

 

「はは~ん、分かった」

 

 スパルヴィエロの背中に、蔑むような声が投げかけられた。

 

「あんた、ルイジの名前を呼ぼうとして、舌でも噛んだんじゃない?」

「ダッサ! 初心者は、たいがいやるのよね、ソレ」

 

 多分に嫌みを含んだ声でクスクス笑い合うエスペロとオストロに、横合いから声が投げかけられた。

 

「……ふたりとも、はじめは盛大に噛んでた」

 

「うっ、うるさいわね!」

「そうよ、この、寝ぼけ艦娘!」

 

 エスペロとオストロは、顔を真っ赤にしてアルマンドに罵声を浴びせるが、当の本人

は涼しい顔をしている。

 

「さて、と」

 

 ルイジはスパルヴィエロの背中に手を回すと、思い切り押し出した。

 

 スパルヴィエロはバランスを崩しながら、部屋の中程まで進むが、何とか踏みとどまる。

 首だけで振り向くと“次はおまえの番だ”といわんばかりにルイジが顎をしゃくりあげる。

 

「はじめまして、みなさん。わたし本、日付けをもって、この第1遊撃艦隊に配属されま

したスパルヴィエロといいます。不束者ですが、どうかよろしくお願いします」

 

 そう言いながら、スパルヴィエロは深々と頭を下げるが、待てど暮らせど、なんの

リアクションも起きない。

 

 そっと顔だけ上げてみると、エスペロとオストロは頭の後ろで腕を組み、てんで違

った所を見ている。

 アルマンドは本を読むことに夢中なようで、スパルヴィエロの存在などきれいさっぱり忘れているようだった。

 トゥルビネは、おろおろしながらアルマンドやエスペロたちを見ていたが、スパルヴ

ィエロと目が合うと慌てて拍手をはじめる。

 

 

 室内に虚しく響きわたる拍手を聞きながら、スパルヴィエロはゆっくりと目線を下げた。

 

 背後でルイジが複雑そうな表情を浮かべ、腰に手を当てスパルヴィエロを見下ろして

いた。

 

 若干一名を除いて、第1遊撃艦隊の艦娘たちは、とてもスパルヴィエロを歓迎している

ようにはみえなかった。

 

 

「はぁ」

 

 

 この先のことを考えると気が滅入り、スパルヴィエロはお辞儀の姿勢を維持したまま、誰にも聞こえないように小さなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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