時は少し遡り奉仕部入部騒動の翌日の放課後。
「どこに行くつもりだ?奉仕部はそっちじゃないぞ?」
八幡が今日はボーダーで忙しそうだなぁと考えながら帰ろうとすると平塚に呼び止められた。
「今日は無理ですよ、仕事あるんで。そもそも部活入るの承認した覚えはありません」
「嘘をつくな、シフト表では今日は防衛任務には入っていないではないか。それに異論反論は受け付けないと言ったはずだ」
八幡はあれはあくまで防衛任務だけの表だからな、と思いながら。
「はぁ、俺は開発室から呼ばれてるんですよ。試作トリガーの試験のために」
「そんな話は聞いたことないぞ。学校には他にもボーダーに所属する生徒はいるが防衛任務とランク戦とやらくらいしかしないとな」
八幡は総武に自分以外がボーダーにいると初めてしり驚いたがすぐに知らなくて当然かと思い直した。八幡のボーダーの知り合いはB級時代の人かB級中位以上もしくはB級でもA級並みの実力者として紹介された人くらいだ。
「あの雪ノ下やF組の葉山なんかもだな。昨年度の1月に入りもうB級に上がりチームを組んでいるそうだ」
昨日の雪ノ下もまさかボーダーだとは……と驚きつつもだいたい4ヶ月近くでまだ良くてB級下位、下手するとランク外レベルとなるとそんな才能ないのかと内心思う、少なくとも緑川や黒江のようなぶっ飛んだ才能は……飛び抜けた技能があるなら自分の耳に入るだろうとも考え。
「それは知らなくて当然じゃないすか。まだ入りたてみたいですし」
「ほう、君は何か?古株で特別な仕事が与えられていると?」
「まぁそんなところです」
仕方ない、鬼怒田さんに話をつけて貰おうと電話を取り出し
「今からする仕事の責任者に電話をかけるんで話してください」
そう八幡は言うと鬼怒田にコールする。
『なんじゃ?電話してる暇があったら早く来い。今日は忙しいぞ!!』
八幡は一言謝ると平塚に捕まっていることを簡潔に説明する。
『ふむ、総武はまだ提携してから日が浅いからのう。大方お前さんのS級と言うことの伝達不備があったんじゃろう。それはともかくその教師と替れ。話をつける』
「どうぞ、先生」
そう言って電話を渡すと
「替わりました。平塚です。」
そこから話していく時間がたつごとに平塚の顔が苦々しくなっていく。
「わかりました。お時間を取らせてしまい申し訳ありません」
そして通話が終わったようだ。
「では帰らせてもらいますね」
「何故S級隊員ということを黙ってた?」
恐らくそこらへんの事でボコボコにされたのだろう。外交関連は別の人の役回りだが開発室室長の鬼怒田も頭が回る。
「それは学校側の不備でしょう。俺は聞かれないだけで隠してませんでしたし。大方俺の見た目とかでそんな隊員ではないと踏んだのでしょうけど……もう少し考えて行動したほうがいいですよ」
「ぐっ……」
言葉に詰まる平塚を尻目に八幡はその場を離れていった。
「今日はありがとうございました。鬼怒田さん」
「ふんっ、別に構わんわい」
無事に開発室に来た八幡は試作トリガーの試験を終えると、鬼怒田に話しかけた。
「今度飯でも食べに行きましょう、小町も連れていきますよ」
「そうだな、楽しみにしとるわい」
八幡は鬼怒田の事をもう1人の父親のように思っている。八幡と妹の小町の両親は大規模侵攻で戦闘はからっきしな上に研究者だったにも関わらず人々を避難させるために行動していた時にトリオン兵に殺されたのだ。
「今日はこれで失礼します」
「うむ」
八幡と鬼怒田の話はいずれ……