遠い日を八幡は夢で見ていた。
「お父さん、此処はなに?」
まだまだ八幡がボーダーの前身組織に入る前、幼い八幡は父親にその組織に連れて来られた。
「ここはお父さんとお母さんが働いてる場所だよ」
「へー」
そこで八幡はトリオンの検査を受け、常人を遥かに超えるトリオンの持ち主だと発覚した。
「お母さん達の夢はね、この世界と向こうの世界。両方に世界の人が自由に行き来できる平和な世界を作りたいの」
母親が語り
「そのためには此方の世界も力をつけなければならない。お前には期待してるぞ」
若かりし頃の城戸がそう言い八幡の頭を撫で、八幡は少しくすぐったそうにしていた。
「あ、シノダさん!」
「八幡来てたのか、また剣を練習するか?」
やってきた忍田に八幡は剣を教えてもらい、八幡はどんどん強くなっていった。
「あたしは小南桐絵、よろしくね」
小南を始めメンバーはその数を少しづつ増やして行った。そして……
「迅の予知通りにネイバーの侵攻が起きてしまった、出撃するぞ」
城戸の言葉により戦闘員は出撃した。その中にはもちろん八幡も入っていた。
八幡達が出撃したあとに比企谷夫妻は住民の避難を助けていたが、八幡はそれを知らずにいた。
「お、親父?お袋?」
住民を助けるために慣れない戦闘をした比企谷夫妻は遺体となって発見された。
八幡はネイバーを憎んだ。両親は常々言っていた。向こうの世界と交流したいと、仲良くしたいと。それにこの仕打ちか……八幡の心は憎悪の炎が己の身まで焼き尽くさんと燃え盛っていた。
そしてついにボーダーは新しい根付や鬼怒田を始めとした新しい幹部を加えその活動を大きくした。
八幡は防衛任務にひたすら行った。人手不足や小町を養うためだけじゃなく、憎悪の炎を吐き出すためだけに戦っていた。
「こら比企谷!!妹ちゃんを泣かせるとはどういう事だ!?」
ある日本部に八幡が帰ると開発室に呼び出された。そこには鬼怒田にしがみつく小町と怒っている鬼怒田が話しかけてきた。小町は最も安全なボーダー本部においていたのだ。そしてよく見ると小町の目は泣き腫らしていた。
「お主の気持ちはわからんでもない!だがな?側にいる大切な人を泣かしてどうするんだ!?」
「お兄ちゃん、ワガママ言ってごめん。だけど小町、寂しいよ……」
そして小町の目からはまた涙が溢れた。
「こ……まち……」
そこで初めて小町に寂しい思いをさせてたのに気づいた。両親がいなくなり唯一の肉親である兄はずっといない……寂しくないわけがない、むしろ今までよく我慢した。
「小町、ごめんな……ごめんな……」
「ひぐっ!お兄ちゃぁぁあん!!」
小町を抱きしめ八幡は涙を流すと小町も一緒に泣いた。
「鬼怒田さん、小町をありがとうございました。そうだ、どうして小町と?」
ちなみにや小町は泣き疲れたのか八幡の膝の上で穏やかな寝顔で寝ている。鬼怒田によると寂しさを紛らわすために散歩していた小町が泣いているのを見つけ保護し、話を聞いたらしい。
「そうじゃ、比企谷よ。提案があるんだが……」
鬼怒田の提案とは開発室の手伝いをしないか?というものだった。それなら開発室から給料も出せるからお金は防衛任務にでなくてもある程度はよくなり小町との時間も作れるという事だった。もちろん八幡程の実力者に試作トリガーなどを試してもらいたいのもあった。
八幡が開発室を手伝うようになりしばらくたったある日のこと
「親父、お袋……どうすれば良い?」
「おーい、八幡。このトリガーの事じゃが……」原作で鬼怒田さんはじゃを使ってない
八幡の仮眠室で八幡の呟きを鬼怒田は聞いてしまい。
「どうした?何か悩みか?」
「鬼怒田さん……あぁ……ちょっと聞いてもらっていいですか?」
そして八幡は話した。八幡はネイバーが憎い。憎くて仕方ないが、両親の理想を追いかけたいという気持ちもあるという事を。この矛盾した感情を八幡はどうすればいいかわからないと……
「なんじゃ、そんな事か」
鬼怒田は笑いとばした。
「ネイバーが憎い、でも向こうと仲良くできる世界を作る。なんも矛盾しとらん。今の地球とてそんな2つの感情で歴史を重ねてきたんじゃ。いずれ八幡にも分かる日がくるだろう。」
「そう……ですかね」
吐き出したのと鬼怒田の言葉で少し気持ちが軽くなった八幡。
月日がたち八幡は1つの答えを出した。
『手の届く範囲は全て守ろう、それがきっと親父たちの夢に繋がる』
ネイバーがなぜ憎いのか?両親を殺しただけではない。己からまた大切な人を奪いかも知れない、それが許せなかったのだ。ならば自分の全霊をもって周りの人を守ろう、そう誓う。きっとその守りたいという範囲は広がるだろう、それが両親の夢に繋がると信じて。
「おはよ!お兄ちゃん!」
「こ…ま……ち」
目が覚めると泣き腫らした後があるが小町は笑顔で兄を迎えた。