本作品は艦これ2次創作です。
鎮守府で働く人とか書けたら面白いなとの思いつきに端を発する舞台裏SSとなります。

捏造設定あり、知識不足要素ありなので、そこら辺は軽く流してふわっとお読みください。

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朝、船渠にて

 時を経て、生まれ変わった彼女は平和を手に入れた。

以前はどんなに欲しても決して手に入らなかった安寧だ。

当時は欲しがることすら申し訳なくなって我慢していた幸福だ。

暖かくて柔らかくて気持よくて幸せな気持ちになる感触だ。

ようやく手に入れたこれを、彼女はもう絶対に手放さないと、そう誓った。

 

 だがしかし彼女は思い出す。

そんなものはたった一声で掻き消えてしまう儚いものなのだと。

 

「ぐぉらぁー!!いぃなぁづぅまぁ!!いつ迄もぐーたら寝てんじゃねえぇーー!!」

 

 そう、布団に包まれて好きなだけ寝ることなど、駆逐艦「電」の船霊である彼女には許されないのだ。

 

「は、はいっ!<老年>さん、おはようなのです!」

 

 声に驚き一気に目が醒めた電が慌てて船壁から顔を出すと、<老年>が青筋を立てて睨んでいた。

<老年>はこの鎮守府における駆逐艦「電」の専属整備士である。

幼いころから船の整備一筋で生きてきたベテランで、人望もあり腕も一流なのだが怒りっぽいのが難点な男だ。

 

「おはようなのです、じゃねぇ!おめぇ今何時だと思ってんでぃ!さっさと起きねぇとこっちは仕事終えらんねぇだろぉがっ!」

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいですぅ!」

 

 彼女たちの憑いている艦船は構造的には普通のそれと変わらないのだが、その性質上幾つか特異な点が存在する。

その一つが『艦船主導権はその船に憑いている艦娘が有する』事である。

簡単にいえば船員がいなくとも艦娘だけで船を操ることが可能であるという事であり、

逆に船員がいても艦娘の許可なしにはエンジン一つかけられないということだ。

 

「まぁいい……起きたな?じゃあ最終チェックすっからとっとと許可くれ」

「わ、分かりましたです!電、暁型四番艦 駆逐艦『電』の起動操縦諸々、許可しました!」

 

 修理、補給の類ならば大部分は彼女たちが寝ている間に進めることも可能なのだが、

それでも動作確認等、どうしても協力が必要な点というのは存在している。

 

「応。んじゃお前は邪魔だから糞して顔洗って飯食ってから提督ん所いって今日の遠征の説明聞いてこい!」

「なのです!」

 

 用が済んだら邪魔というのも酷い話だが、文句をいうとまたどやされる事は既に経験済み。

それに実際に邪魔になってもいけないので、電はペコッとお辞儀をするとドッグの外を目掛けて駆けていく。

<老年>がその姿を建物の影に隠れて見えなくなるまで見送っていると、

 

「相変わらず厳しいよなぁおやっさん」

「俺らに対する時とおんなじノリで接してるもんな」

「電ちゃんが可哀想だよな!(ハァハァ」

「誰かそいつ独房入れとけ!」

「でもあれだろ?電ちゃんの為に布団とかお菓子とか供えてるの、<老年>さんだろ?」

「ああ、この前彼女喜んでたっすね!あれおやっさんか!ツンデレだなぁ!」

 

 背後からこそこそと聞こえる同僚たちの話声と背中に感じる温かい視線。

<老年>は初めは我慢していたが、やはり徐々に肩を震わせて。

 

「ピーチクパーチク喋ってねえでその分手ぇ動かせぇ!!手ぇ抜いて船が余計な怪我負う様な事あったら沈めんぞごらぁ!!」

 

 

 今日も鎮守府は平和である。


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