イリヤ兄と美遊兄が合わさり最強(のお兄ちゃん)に見える   作:作者B

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大変お待たせしました!

ようやくリアルがひと段落ついたので投稿します。
ただ、今回は本編じゃないんだ。すまない……



番外編:シスターカレン

「悪いな、桜。買い物に付き合ってもらって」

「い、いえ!いいんです!私も見たいものがあったので」

 

とある日の夕方、食料や日用雑貨品の買い出しに出ていた俺は、その途中で偶然桜に出会った。話を聞いてみると、桜も目的地は同じデパートだったらしく、途中まで一緒に付き合ってくれることになったというのが今の状況だ。

 

(こ、これは絶好のチャンス!?いつも先輩に引っ付いている遠坂先輩も金髪の人も居ないし。風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、私のほうに―――)

「あら、奇遇ね」

「え?―――あ、貴女は……ッ!?」

 

桜が隣で何やら百面相をしていると、前方から歩いてきた、黒い修道服を身に纏った銀髪の女性に話しかけられた。

ん?どこかで見たことがある様な気がするんだけど、誰だっけ?桜は見覚えがあるみたいだけど……

 

「何?まさか私が誰だか分からないの?あの汗と湿気で空気が籠った昼間の保健室で、貴方の剥き出しの身体にそっと手で触れたあの日のことを忘れてしまったなんて……」

「せ、先輩!?まさか、あの後カレン先生と!」

「ち、違う!そんなこと―――ってカレン先生?」

 

桜の言葉を聞き、目の前の修道女をよく見る。あの日のせいでポニーテールと白衣の印象が強かったけど、よくよく見ればカレン先生じゃないか!

何故分からなかったんだ……いや、もしかしたら思い出したくなかっただけなのかもしれない。あの日以来、保健室には滅多に近づいてないし。

 

「えっと、それで、カレン先生はこんなところで何を?それも、そんな恰好で」

「私のことを尋ねる前に、まずはわたしに謝る方が先なのではないかしら?」

 

むっ、確かにそうだ。いくら相手が相手とはいえ、顔を思い出せなかったのは失礼―――

 

「ほら、言ってみなさいな。『私は肌を晒した女性を忘却の彼方に捨て置き、別の女とイチャイチャしてました』と」

「あんた本当にこんなところで何言ってるんだ!?」

 

言うまでもないがここは公道。勿論周囲には他の人もいるわけで……あっ、ほら!言わんこっちゃない!あっちこっちから『不倫』だの『浮気』だの『二股』だの聞こえてきた!

 

「それで、私の用事でしたっけ?」

 

そして、そんな俺のことなど知ったこっちゃないとばかりに、カレン先生は話を続けた。

……あんた、こんな空気にしておいてよく悪びれもせずにいられるな。

 

「はぁ……まあ、いいや。それで、カレン先生はなんでこんなところに?それも、そんなコスプレまでして」

「コスプレとは失礼な。むしろ、こちらが本職です」

 

本職、修道服ってことは要するにシスターだよな。ということは、つまり―――

 

「え……っ?修道女?カレン先生が?」

「何かしら、その目は」

 

いや、公務員が副業できるの?とか、むしろカレン先生は他人の心を癒すより嬲る方が得意なのでは?とか、色々あるけど。

 

「まあ、いいでしょう。今日は仕事です。シスターには盆も正月もないので」

「言いたいことは伝わるけど、シスターがその喩を使うのはどうなんだ?」

「それは貴方が気にすることではありません。それで、こちらの方から発情した雌の匂いがしたのだけれど……」

 

そういって、カレン先生は視線を俺の少し横にずらす。すると、さっきからやけに静かだった桜の身体がビクッと震えた。

 

「おや。おやおやおや。そこに居るのは、何処とは言わないけれど濡らしながら、厭らしく尻尾を振ってセンパイに駆け寄っていた間桐さんじゃない」

「なッ!違、あれは―――」

「え、何その目。公共施設であろうと構わず盛る雌が私に逆らうの?」

「あ、えっと―――」

「ぽるかみぜーりあ」

「~~~ッ!!」

 

桜の慌てふためく様を見て、頬を高揚させたカレン先生が益々ヒートアップし始めた。さ、流石にこれ以上は見逃せん!

 

「ちょっと、言い過ぎですよ!カレン先生!桜は先生が言うようなそんな下心で看病してくれたんじゃないんですから!」

「ぐはぁッ!」

「え?ちょ、桜!?」

 

カレン先生から桜を庇おうとしたら、何故か桜がその場で膝をついてしまった。

 

「愛しの先輩から守ってもらって、どんな気持ちですか?」

「うぅー…、うわぁーん!」

「さ、桜ぁっ!何処行くんだぁー!?」

 

カレン先生の言葉攻めに耐えきれなくなったのか、桜は全速力で走り去ってしまった。

 

「この間と同じ捨て台詞なんて、芸がないわね」

 

そしてこの言いぐさである。苛めるだけ苛めておいて、最後の感想がそれかよ。

 

「あら、とどめを刺したのは貴方なんだけど、まあいいわ。それじゃ、付き合いなさい」

 

ナチュラルに思考を読むな……って、え?

 

「付き合うって、何に?」

「決まってるわ。異教徒の摘発よ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

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―――――

 

 

 

 

 

「……つまり、カレン先生の所属している教会がこの辺りを仕切っていて、その教会に無許可で活動をしている人が居る、と」

「まあ、そんなところね。摘発とは言ったけれど、結局はただの注意喚起。近頃は、挨拶も碌にできない人が多くて困るわ」

 

カレン先生が溜め息をつく。いや、挨拶よりも余程問題のある人が目の前に居ますけどね。そもそも、挨拶とか摘発とか、思想・良心の自由はどうなってんだと思うけど、そのあたりの話は藪蛇になりたくないのでやめておこう。

それよりも……

 

「先生、ひとつ聞きたいことがあるんですけど」

「何かしら?」

「その……時折襟元から見える紐は何なのかな~っと思いまして」

 

カレン先生の横を歩いていると、身長差でやや覗き込む形になるせいか、襟の内側にロープが見えるのだ。そしてそれは、気のせいでなければ首元を縛ってるよう(・・・・・・)に見える。

カレン先生のことだ。変な理由な気がしてならない

 

「ああ、これは一種の枷よ」

「枷?」

「自らに枷を掛けることで、日々の生活の中に精神修行を取り入れてるの」

 

あれ?どうやらまともそうだ。

 

「そうね、貴方に分かりやすく言い換えるなら……縛りプレイかしら」

「いや、それはちょっと違うんじゃ」

「違わないわよ。ほら」

 

カレン先生が修道服の中を見せる様に襟元を指で伸ばす。すると、中に着ている服の上から、先生の身体を縛るように紐が六角形に結ばれ―――ん?

 

「って、拘束(しばり)プレイってそういうことかよ!少し感心して損したわ!」

「逆に何だと思ったの」

 

この人……!完全に開き直ってやがる……っ!

 

「あのー…ちょっとすみません」

 

俺たちが騒いでいると、向こうから警官がやってきた。なんだ?何か事件でもあったのか?

 

「何?私はこう見えて忙しいのだけれど」

「先ほど住民の方から、此方に『子供の教育のよろしくないようなことをしている人が居る』と苦情がありまして。申し訳ございませんが少々お話をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

俺が先生に視線を向けると、先生はそれを避ける様に視線を逸らした。一応、変なことしてる自覚はあったんだな。

 

「人違いではないですか?私はこの通り敬虔なシスターで―――」

「その人物の特徴は、黒い修道服を着た銀髪のシスターと伺っているのですが」

「……」

 

完全に一致してるじゃないか。しかし、警察にしょっ引かれるのは流石に可哀想だな。ここは助け舟を出すべきか……

 

「ところで、君はそこのシスターの知り合いかな?よければ君も署に―――」

「イエ、私ハ道ヲ尋ネラレタダケノ一般人デス」

「なッ!?この男、いけしゃあしゃあと…………はぁ……っはぁ……っ」

 

俺は我が身可愛さにノータイムでカレン先生を見捨てた。いや、だって、明らかに先生の自業自得だし、こんなことで警察までお世話になりたくない。

だけど、何故先生は俺に見捨てられて息を荒くしてるんだよ。

 

そして、あれよあれよという間に先生は警察の人に連れて行かれてしまった。

……買い物行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~、ようやく終わった」

 

買い物を一通り終えた俺はデパートを後にし、自宅への帰路についていた。

そういえば、カレン先生はどうなったんだろうか。多分注意されるだけなんだろうけど、むしろ連れて行かれた先で変なことをしてしてないか心配だ。

 

「きゃっ!」

「ん?―――おわっと!」

 

そんなことを考えていたせいか、俺は曲がり角を歩いてきた人とぶつかってしまった。咄嗟に相手の手を掴んで転ばない様に受け止めることはできたものの、手に持っていた買い物袋の中身が辺りに散開してしまった。

 

「っと、大丈夫ですか?すみません、ぼーっとしていて」

「いえ、私も前方不注意でしたので。それで、ええっと、もう腕を放していただいても大丈夫ですよ?」

「え?……わぁっ!ご、ごめんなさい」

 

受け止めるときにうっかり相手を抱き締める状態になっていた俺は、相手に指摘されて直ぐに腕の力を緩め、彼女を解放した。

俺の懐から離れて立ち上がった女性は、穏やかな眼差しと清楚な佇まいが特徴の、二十代後半ぐらいの尼僧だった。ただ、カレン先生の修道服のようなゆったりと空間に余裕のある服装とは対照的に、ボディラインを強調するような黒の僧衣を身に纏っているが。

 

「あら、袋の中身が散らかってしまっていますね。お手伝いします」

「い、いえ、大丈夫です。俺が片付けますから」

「他人からの好意はありがたく受け取っておくものですよ?」

「は、はぁ……」

 

彼女の窘めるような言葉に丸め込まれてしまった俺は、結局彼女に手伝ってもらった。なんというか、言葉の節々から母性を感じさせる人だな。ウチの母親とは大違いだ。普段のあの人はどちらかというと、大きな子供みたいだからな。

 

「はい、これで全部です」

「態々すみません。こちらからぶつかっておいて」

「気になさらないでください」

 

しかしなぁ、こんないい人に一方的に迷惑をかけっぱなしって言うのも……

 

「どうしても気になさるのでしたら、ひとつお願いしてもよろしいかしら」

「え?あっ、どうぞどうぞ!遠慮なく!」

 

すると、俺の意思を汲み取ったのか、はたまた偶然か、彼女は俺にお願いをしてきた。

 

「はい。実は私、お恥ずかしながら道に迷ってしまいまして」

「それなら案内しますよ。俺、この辺りに住んでるので土地勘はありますし」

「それはありがたいですわ。それでは、お願いしましょう。実は、ここなのですが―――」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

 

 

「まあ、妹さんが三人いらっしゃるのですか」

「はい。正確には、一人は妹の友達なんですけどね」

 

案内している道中、彼女と世間話に花が咲いていた。どうやら彼女はとある神社?の尼僧で、仕事のついでに布教活動をしようとここに立ち寄ったらしい。その仕事というのも、どうやらカウンセリングらしく、信心深い人には特に好評と言っていた。

 

「しかし、まさか姉妹丼だけでなく他人丼まで頂いている方とお会いするなんて、世界は広いですわ」

 

あれれー?おかしいなー。俺はイリヤたちの話をしてたのに、急に食べ物の話になったぞー。

……服装を見たときから薄々感じてたけど、この人もしかして変態(カレン先生側)なのか?い、いや、ただのムッツリなだけかもしれない!

 

「っとと、着きましたよ」

「何から何まで、ありがとうございます」

「いえ、これもお互い様ですし」

 

彼女の持っていた地図を元に辿り着いたのは、公園の近くにある広場だった。休みの日の為か、そこそこに人が賑わっている。

すると、彼女は急に両手で俺の手を包むように握ってきた。

 

「ここで会ったのも何かの縁ですし。よければ、少しお話いたしませんか?」

「え?ええっと……」

 

こ、これって、テレビとかでよくある勧誘の手口なのか?こ、こういう時はどうやって断れば!

俺があたふたしていると、その様子を見た彼女は軽く笑みを零した。

 

「心配していただかなくとも、ただお話しするだけですわ」

 

そう言って彼女は、俺の頬に右手をそっと添えた。

 

「貴方のような方に初めて会ったものだから、興味が湧いたの」

 

その瞳からは、理性の光の奥底から一点のムラもない黒が映り、その眼は、目の前の俺を見つめていながら何処か別のナニカを見ているようでもあった。

俺は、その純粋なまでに黒く染まった深淵を覗き込もうと―――

 

「何をやっているのかしら?そこの駄犬は」

「へあッ!?」

 

急に声を掛けられて、慌てて辺りを見回すと、広場の方からカレン先生が歩いてきた。

 

「せ、先生!どうしてここに!?というか、警察の方は?」

「そんなの、私の有り難いお話を聞いて悔い改めてもらったわ」

 

い、いったい何をやらかしたんだ……

 

「それで、何故ここに居るのかと問われれば、異教徒の摘発と言ったでしょう」

 

先生は俺の隣に立っていた尼さんを見て、吐き捨てる様に呟いた。な、何だかまずい気がする!

 

「ちょ、ちょっと先生!あまり手荒な真似は―――」

「誰にでもホイホイついていくような駄犬は黙ってなさい」

「あべしっ!」

 

彼女と先生の間に入って仲裁の準備をしようとしたら、その先生に容赦なく蹴られて、そのまま地面を転がった。

痛たたた、何もそこまでしなくとも……

 

「あらあら、ずいぶんとお厳しいこと。そんなことでは愛想を尽かされてしまいますよ?」

「貴女には関係のない話です。そもそも、アレが簡単に他人を切り捨てられるわけないでしょう」

「うふふ。ええ、あのような方は初めて見ました。もっと近くで観察()ていたいものです」

「残念だけど、貴女の出る幕はもうないわね。今度は教会(うえ)に話を通しなさい。もっとも、許可なんて下りないでしょうけど」

「ええ、そうさせていただきますわ。聖堂教会のシスターさん」

 

話してる内容はよく聞こえなかったが、俺が地面に伏している間に決着がついたようだ。とりあえず、穏便に済んだようでよかった。

 

「それでは士郎さん。私はこれで失礼させていただきます。またお会いできる日を楽しみにしていますわ」

「え?あ、はい。お元気で」

 

彼女は一礼すると、そのまま広場を後にしてこの場を去って行った。なんというか、独特な雰囲気の人だったな。

 

「あっ、そういえば、名前聞いてなかった」

「忘れなさい。名とは存在を結び付ける楔。あんな女、気にすることはないわ」

「は、はぁ……」

 

なんだか、先生にしては棘のある言葉だったな。いや、いつも言葉に棘はあるけど、なんというか、普段は相手を嬲るように罵るのに、今の言葉からは只々棘しか感じなかった。

まあ、いいか。大方、別の宗派の人だから気が合わないだけかもしれないし。

 

「何をしているの?さっさと行くわよ」

「は?行くって、何処に?」

「決まってるでしょ?異教徒の摘発よ。あれで終わりなわけないでしょう」

「えぇー…」

 

当然俺に拒否できるわけもなく、そのままズルズルとカレン先生の仕事に付き合わせられる羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        報告書

         20■■年■月■■日

 

 本日、冬木市にて――――――――――

         ・

         ・

         ・

―――彼女はカウンセリングの仕事で新都

に立ち寄っており――――――――――――

         ・

         ・

         ・

――――――――――彼女が担当した患者

の■%が自殺した件との関係性は、現時点

では不明―――――――――――――――

         ・

         ・

         ・

――――――――――個人的見解を言わせ

てもらえば、あれは世間一般で言われてい

る聖人君子ではない。そう見えるだけで、

その真意は(訂正されているため閲覧不可)

 

以上で『殺生院キアラ』の報告を終了する。

 

本日も"異常なし"

     カレン・オルテンシア

 

 

 

 

 

 

 




というわけで番外編でした。

今回はFGO×CCCコラボを見て突発的に書いたものです。
イベントやってたら書かずにはいられなかった。本編を進めず、本当に申し訳ない(メタルマン並の謝罪)

彼女は多分、今後出てこないんじゃないかなぁ、流石に。

一応補足すると、作者は別に桜が嫌いなわけでは無いです。ただ、不憫萌えなだけなのです。



遅ればせながら、アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。
皆様の意見を参考にした結果、あと日常回を1~3回ほど挟んでから本編の話に入ることにしました。今後ともよろしくお願いします。

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