イリヤ兄と美遊兄が合わさり最強(のお兄ちゃん)に見える 作:作者B
今回から時間が飛んで2weiに入ります。
帰宅中に倒れた俺は、おそらく通りがかりの誰かがしてくれたのであろう119の連絡により、病院に運ばれた。
家に連絡が行ったのかイリヤたちはすぐさま駆けつけてくれたのだが、イリヤには泣きつかれたりセラには無理のし過ぎだと説教されたりといろいろ大変だったけど、ただの過労ということで直ぐに退院できたのはよかった。特にこれといって無理をした心当たりなんてないんだけどなあ。まあ、知らず知らずのうちに疲労をため込んでたのかもしれない。なんたって、体中が筋肉痛になって数日は動きがギクシャクしてたぐらいし。
そんなこんなで俺はすぐに普段の生活に戻り、それから3ヶ月ほどの月日が経った。倒れたあの時から何か、こう、思い出せそうで思い出せないモヤモヤとしたものが時々頭を過ぎるが、それ以外は特に何事もなく学園生活を過ごしている。ああ、何事もなくっていうのはちょっと違うな。遠坂とルヴィアがロンドンから留学しにきたり、あとイリヤに新しい友達ができたらしい。
そんなことが頭を過ぎりつつ、俺は弦を引き軋む弓の音を聞きながら、同時に眼前の霞的だけに意識を集中する。静寂が当たりを包む弓道場。そんな中、打起こしから引き分け、会へと至り、矢尻が的へと向けられる。その動作は、一切の雑念が入る余地はないほど完成されたものでありながら、どこか無骨さを感じさせる。そう、その姿は言うなれば王道ではなく邪道、誇り高き騎士ではなく泥臭い傭兵。
刹那
弦が空気を弾く音と共に矢が放たれる。それは、まるで吸い込まれるように霞的の中央の白円『正鵠』を射抜いた。
ふぅ、と一息つき、弓を下して集中力を霧散させる。
「今日も今日とて絶好調だな、衛宮!」
振り返ると、そこには女子弓道部主将である美綴綾子が快活な笑みで近づいてきた。
「美綴だって、今日は調子がいいじゃないか」
「お?それは私に対する宣戦布告か?ここんところ、正鵠から外してるところをほとんど見ない衛宮士郎君?」
「や、やめてくれよ。そんなつもりじゃないって」
美綴が、遠坂がからかう時のような笑みを浮かべていると、ふと視界の外から白いものが現れた。
「もう、美綴主将。あまり先輩をいじめちゃ駄目ですよ?はい、先輩。タオルをどうぞ」
「ああ、ありがとう。桜」
そう言って、差し出されたタオルで額の汗を拭く。その様子を見て、渡した本人『間桐桜』は満足そうに、嬉しそうに微笑む。といってもこのタオルは部の備品ではなく桜の私物であり、最初は流石に悪いと思って断ろうとも思ってた。けど、俺の考えを察してあからさまに悲しそうに落ち込む彼女の姿を見て、何故か異様に心の奥底がきつく締め付けられるのを感じ、それ以来あまり遠慮しないようにすることにしている。
「まったく、こっちは散々よ。弓の腕では敵わないわ、かわいい後輩は取られるわ」
「取られ?!な、何言ってるんですか主将!別にそういうのじゃ!」
「照れるな照れるな。ほら、衛宮だってこんな後輩に尽くされて悪い気はしないんじゃない?」
まったく、何言ってんだ美綴は……
そう思いつつ、なんとなく言われたとおりに改めて桜の姿を見る。紫髪のストレートでスタイルは良し。家事はそつなくこなすし、性格は穏和で献身的。ぐいぐいと引っ張っていく遠坂やルヴィアのようなタイプとは違い、後ろから支えてくれる古き良き大和撫子のような感じだ。以上のことを総合的に判断すると―――
「桜はいいお嫁さんになりそうだな」
「よ、嫁?!」
俺の言葉を聞いて桜の顔が真っ赤に染まる。あれ?やっぱり、お嫁さんなんて軽々しく言うもんじゃなかったかな。
「そんなお嫁さんだなんて……確かに遠坂先輩の居ない部活中にコツコツと好感度を稼いで先輩の卒業式に第2ボタンを貰いつつ告白して私も翌年には先輩と同じ大学に進学してキャンパスライフを楽しみつつ卒業と同時に結婚してゆくゆくは一姫二太郎を授かって幸せな家庭を築こうと思ってますけど先輩が望むなら今すぐにでも私―――」
「あー……衛宮、今日は日直だろ?こっちのことはいいから、ちゃっちゃと片付けちゃいなよ」
「え?あ、ああ。分かった」
桜が自分の世界に入ってしまった。こういうとき、無暗に話しかければ藪蛇になる。遠坂やルヴィア他、色々な女子との交流の中で学んだ処世術だ。
頬に手を当てて顔を左右に振っている後輩を美綴に任せ、俺は弓道場を後にした。
「駄目ですよ先輩、そんな後ろから。鍋が吹いちゃいます。料理が終わったらちゃんと相手してあげますから。え?もう我慢できない?もう、堪え性がないんですから。でも、そんな先輩も―――」
「おーい、桜。何時までもトリップしてないで練習再開するぞー」
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「失礼しました」
職員室で日誌を受け取った俺は、そのまま自分の教室に向かう。流石に朝早いせいか、廊下にはあまり生徒がいない。
「やあ、そこにいるのは衛宮じゃあないか」
するとこんな朝早くというシチュエーションがあまり似合わない人物に声をかけられた。
「あれ?慎二?随分早いじゃないか。どうしたんだ、こんなところで」
「いやぁ、僕もできればこんな時間に来たくはなんだけど、最近遠坂やエーデルフェルトにエンカウントすると碌な目に合わないからな。態々こうして時間をずらしてるって訳さ」
あぁ、そういえば慎二は正体不明の爆発に巻き込まれたり、蛙入りの袋が飛び火して来たり、謎の宝石っぽい石にぶつかって気絶したり、と酷い目に合ってたからな。この事件と二人に何の関連性があるかわからないけど、なんだか慎二はあの二人に苦手意識を持ってるようだ。
「あれ?でも遠坂とルヴィアが編入してきたときは、あんなに熱心に話しかけてたじゃないか」
それを聞いた慎二はふぅ~、と深いため息をつきながら肩を竦める。
慎二は顔立ちも整ってるし女子には優しいから結構モテるんだよな。まあ、誰彼かまわずナンパしてるからなんだけど。
「あのな、衛宮。確かに僕は可愛い子には優しくするし仲良くなろうともするさ。けど、それは人間に限った話であって、人の皮を被ったアクマはその限りじゃあないんだよ」
「アクマって、流石にそれは……」
否定しようと思って、二の句が継げなくなる。
なんというか、遠坂は最初の印象はいかにも優等生って感じだったのに、しばらくしたら、正確にはルヴィアと同じクラスに決まってから妙にハッチャケてるというかなんというか。まあ、最初の猫を被ってたときに比べたら随分と生き生きしてるように見えるし、あの二人は存外相性がいいのかもしれない。(本人達は絶対認めないだろうけど)
「女らしく御淑やかにしろとは言わないけどさ、限度があるだろ!なんなんだよあのインファイト!あの謎の爆発!どう見ても高校生の日常からかけ離れ過ぎてるだろ!いや、あれはもう全国の女子高生に失礼なレベル―――ッ!」
慎二が大声で不満を爆発させていると、急に挙動不審になって辺りを見回した。
「ふぅ……そうだよな。態々こんな朝早くに来たんだから、あいつらが居るわけないよな」
どうやら、居もしない二人の幻影に怯えているようだ。そんなに怖いなら、あんな大声で文句なんか言わなきゃいいのに。
すると、向こうから「慎二くーん」と呼ぶ女子たちの声が聞こえてきた。
「おっと、女の子たちが呼んでるから、僕はもう行くぜ。衛宮、お人よしなのはいいけど付き合う相手はちゃんと考えろよ?」
「ああ。慎二も、偶には弓道場に顔出せよー!」
おそらく暗に遠坂とルヴィアのことを言ってるであろう慎二は、そのまま自分を呼ぶ女子たちの方へ歩いて行った。確かに慎二は皮肉やなところもあって勘違いされやすいけど、なんだかんだ言って俺を心配してくれているあたり、いい奴なんだよな。あと、慎二。お前もあの二人と同じクラスなんだから、結局顔を合わせることになると思うんだが……
慎二たちが遠ざかっていくのを横目に自分のクラスへ向かおうと歩き出す。すると、今度は昇降口の方から女子生徒が駆けてきた。
「あっ!ごっ、ごめんね士郎君!遅れちゃってっ!私も日直なのにっ」
「別にいいって、これくらい」
『森山奈菜巳』
桃色の髪に細目でふわふわとした雰囲気をした、桜とは別ベクトルで女の子らしい人だ。そのお人よしな性格から下級生にも慕われてるけど、その性格故によく遠坂とルヴィアの闘争に巻き込まれてる不憫な人でもある。
「じゃあ行こうか」
「う、うんっ」
森山さんは頬をやや赤く染め、なんだか終始嬉しそうにしていたけど、触れてあげないのが優しさだろう。この前尋ねたときは、急に慌て始めちゃったし。俺は、まだ鞄を持っている彼女と並んで教室まで向かった。
「おはよう、衛宮君」
時間が経ち、クラスメイトもちらほら教室に入ってきた頃、遠坂が今や懐かしい優等生スタイルで挨拶してきた。
「ああ、おはよう遠坂。今日は珍しく一人なんだな」
ルヴィアとよく一緒にいるせいか、二人でワンセットってイメージがあるからな。でも、その言葉を聞いて聞き捨てならないとばかりに、遠坂は笑顔を崩さないまま青筋を立てた。やべっ、地雷踏んだか?
「あのね、衛宮君。貴方の頭の中でどういう思考からその結論に至ったのかは知らないけれど、私とルヴィアは別に好き好n―――いつも一緒に居るわけじゃないのよ?叶うならあんな成きn―――お金持ちのお嬢様となんて、恐れ多くていつか蹴落と―――仲良くなるなんてとてもできないもの」
うふふ、と笑う遠坂のセリフの節々から殺気が零れる。まずい、このままだとなんだかよくわからない理屈の末に怒りの矛先が俺に向かいかねない。
「まあいいわ。そこら辺の話は昼食のときにでも屋上でじっくり教えて―――ぐふッ?!」
「ごきげんよう、シェロ!」
すると突然、会話を遮るように、ルヴィアが遠坂にエルボー・スマッシュを決めながらやってきた。
「お、おう。朝から元気だな、ルヴィア」
「当然ですわ。レディたるもの、常に優雅でなくては―――げはぁッ?!」
あ、今度は遠坂の鉄山靠がルヴィアを吹き飛ばした。
「いきなり何すんのよ金ドリル!」
「ぐッ、知れたこと。ひとり抜け駆けしてあろうことかシェロとランチタイムなどと、この
「なッ?!別にあれはそういう意味じゃ……」
「でしたら問題ありませんわね。さあ、シェロ!本日は我がエーデルフェルト家お抱えのシェフが腕によりをかけたランチを是非お召し上がりに―――」
「あんただって人のこと言えないじゃない!」
そして、今日も今日とて八極拳とプロレス技の応酬が始まった。あぁ~、なんだかいつも通りの光景過ぎて逆に安心してきた。あっ、教室に入ってきた慎二が意味もなく巻き込まれた。なんというか、一成じゃないけど、南無三。
って森山さん!いくらお人よしだからって拳の嵐を巻き起こしてる二人を仲裁するのは危け―――ふ、吹っ飛ばされたぁぁぁッ?!だ、大丈夫か、森山さん?!……よかった、気絶してるだけか。とりあえず、保健室に運ばないと。おんぶは……背中に感じる感触がちょっと危険だから横抱きでいいか。おっ、一成。丁度よかった。森山さんを保健室に運んでくるから、先生にHR遅れるって伝えておいてくれ。
さてと、保健室は確か……ん?ああ、よかった。気が付いたんだな、森山さん。遠坂とルヴィアに弾き飛ばされたときはどうなるかと思ったけど。え?お姫様抱っこ?だって森山さん、さっきまで気絶してたし。何?もう大丈夫だから降ろして?いやいや、一応、保健室で見てもらった方が……って、顔が真っ赤だぞ?熱でもあるんじゃ―――ってまた気絶した?!も、森山さぁぁぁん!
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「いやはや、今日も手伝いに付き合わせて悪かったな、衛宮」
朝の騒動も葛木先生が教室に来たことで鎮静化、気絶した森山さんを保健室に連れて行ったりと、ある意味でいつも通りの日常を終え、今は放課後。一成の手伝いで生徒会の備品の点検を行っていた。
「まったく、遠坂とエーデルフェルトには毎度困ったものだ。神聖なる教育の場であのような取っ組み合いなど」
「まあまあ。いいじゃないか、少しぐらい。二人が来てからクラスが明るくなった気もするし」
「少しじゃないから困っているのだ!まったく、あの女狐共は毎度毎度衛宮を困らせおって……」
まあ、一成の言わんとしていることもわかる。なんせ、あの二人の戦いでトトカルチョが始まる始末だもんな。しかも、率先してるのが藤村先生だし。だけど、そもそもあの二人を止められるなんて、それこそ葛木先生くらいしかいないのが現状だしどうしようもない気が……でも、できれば無関係な慎二や森山さんを巻き込むのは控えてほしい。
「さて、今日はこれくらいでいい」
「え?まだ備品は残ってるぞ」
「馬鹿者。この間倒れたのを忘れたのか?」
この間、というのは俺が入院した時のことだろう。あれは、俺が体調管理を怠ったせいなんだけど、当日仕事を任せてた一成も罪悪感を持っているんだろう。まったく、そんなの気にしなくてもいいのに。
「わかったよ。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
でも、それを口で言っても聞かないのを俺は知ってる。なので、一成の言うことを素直に聞いて、少しでも一成の気の済むようにさせてあげることにしている。
「ああ、具合が悪くなったらいつでもいうのだぞ」
「流石に過保護過ぎだって。じゃあな」
一成に会釈して、俺は今晩の献立を考えながら帰路に着くのだった。
ロリ組が出ない……だと……?!
というわけで、今回は日常回という名のキャラ紹介回でした。
ぶっちゃけ、慎二と桜を出したいがために書いたといっても過言ではない。ただ、本編と絡む関係上、高校生組の出番が今後どうなることやら。
あ、イリヤと美優、さらにクロは次話にがっつり登場する予定です。