イリヤ兄と美遊兄が合わさり最強(のお兄ちゃん)に見える   作:作者B

8 / 13
遅れてしまって申し訳ない!
体調不良とリアルの用事とスランプがトリプルブッキングしてしまいました。


衛宮家に泊まろう!

結局あの後、カード回収の手段はルヴィアが確保することに決まり、そのまま解散になった。なんでも、カードが普通の手段では到底行くことができない場所にあるらしく、準備に時間がかかるようだ。なので、遠坂からのお呼び出しがあるまでは特にやることがない。

なんだか、せっかく意気込んだのに空回りした気分だ。

そんなわけで、イリヤたちも俺もいつも通り夏休みを過ごすことになった。そして今日は―――

 

「「ただいまー!」」

 

おっと、来たみたいだな。

夕食の準備を一時中断し、玄関へと出迎えに行く。

 

「おかえり、イリヤ、クロ。そしていらっしゃい、美遊」

 

玄関から入ってきたのは、買い物袋をぶら下げたイリヤ、クロ、そしてやや大きめの鞄を持った美遊の三人。今朝出かけるときに水着を買ってくると言ってたから、買い物袋の中身はそれかな。

 

「ささ、上がってくれ」

「はい。お邪魔します」

 

明日、イリヤたち3人は俺引率の下、同級生の友達と海へ行く予定になっている。それでイリヤが『どうせだから(ウチ)に泊まって、一緒に行こう』と誘ったらしい。まあ、美遊が今寝泊まりしてるのは新都のホテルだし、あそこからだとちょっと遠回りになるからな。そして、イリヤの提案にお袋も乗り気で了承して、今日美遊が泊まることになったというわけだ。

 

「夕食の支度は今してるから、もう少し待っててくれ」

「お兄ちゃんの料理かぁ。楽しみだなー」

「ああ、今日はクロのときみたいに腕によりをかけて作るから、期待してくれていいぞ」

「クロのとき?それってまさか―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐッ!」

 

今までの攻防に耐えきれず、思わず膝を突く。

 

「いくら料理ができるといっても、所詮は学生!前回は不覚を取りましたが、炊事家事洗濯身の回りのお世話を本職とする、メイドたるこの私に敵う筈がないのです!」

 

無様に床に這いつくばっている俺を、セラは高笑いをしながら見下ろす。

確かにそうだ。俺はセラのような卓越した技術もそれに至る経験も足りない。だが、それがどうした。そんなもの、俺が諦める理由にはならない!

 

「えっと、イリヤ。あれは一体……?」

「あー、聞かないで。というか、聞かれても私にも分からない」

「セラってば、お兄ちゃんと二人きりの世界に入って羨ましいなぁ。まあ、割り込むのは無理そうだけど」

 

俺は膝にまだ力が入るのを確認すると、その場から立ち上がり、床に突いた手を綺麗に洗う。

 

「おや、力の差を思い知らされて猶立ち上がりますか」

 

当たり前だ。ここで引くわけにはいかない。俺はセラの挑発に応える様に、二刀一対の包丁を取り出す。

 

「ッ!それは『ZWILLING(ツヴィリング)』最高峰のモデル、『ツインセルマックスMD67』ッ?!分不相応なッ!」

 

……そうだ。俺は勘違いしていた。俺は料理を極める者じゃない。俺は無限にレシピを内包する世界を作る。それだけが、衛宮士郎に許された調理だった。

 

「セラ、俺はあんたを超える」

 

忘れるな。イメージするのは常に最強の自分。

難しい筈はない。不可能な事でもない。もとよりこの身は、ただそれだけに特化した存在―――!

 

「いくぞ!アインツベルン包丁術―――」

 

俺の言葉を合図に頭上へ人参、玉ねぎ、ジャガイモ、その他野菜や果物を放り投げる。

 

「模倣『瞬撃/千裂断』ッ!」

 

そして、俺の両手に持つ包丁が空中に放られた野菜たちを縦横無尽に切断する。

 

「なんか凄い技が出たーッ?!」

「あ、あれはー」

「知っているの、リズっ!」

「うむ。あれはアインツベルンのメイドに代々伝承される『アインツベルン・調理の法』のひとつ。その包丁さばきは神速に匹敵しながらも極めて繊細で、一瞬のうちに獲物を切り刻むことができるという。民明書房刊『お願い!アインツベルン相談室』より」

「まさか、士郎がこれほどまでの使用人スキルを習得していたなんて。このママの目をもってしても見抜けなかったわ」

「アインツベルンって、凄い……」

「違うから!別にアインツベルンは万国びっくりショーじゃないから!」

 

バラバラになった野菜や果物が、ボウルの中に吸い寄せられるように入っていく。

 

「こ、これは!ここまで丁寧に飾り切りを?!」

 

当たり前だ。これは岩をも砕く大胆さと針穴に糸を通す繊細さを併せ持つ技。幼少の頃、セラが俺の前で実演して見せてくれた、その再現。

 

「いくぞセラ。レシピの貯蔵は十分か」

「は―――思い上がりましたね!」

 

そして、俺とセラは再び調理(せんじょう)の中へ身を窶す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー……、流石に今日は張り切りすぎたな」

 

食事も終え、食べ終わった食器を洗いながら時折肩に手を当て、首をグルグル回してコリを解す。

今日は3人ということもあってか俺もセラも前回以上に白熱してしまい、食材も潤沢にあったせいか結果的にかなり豪快な量になってしまった。まあ、そのほとんどはリズが食べてくれたんで事なきを得たんだが。

そしてセラはというと、前回自分だけダウンしたのが相当悔しかったのか、後片付けを俺に任せて他の家事に向かった。まあ、足元は覚束ない感じだったけど。

 

『ま―、ミユ―――大胆――』

『こ、これ―――――過激――じゃ――かな……』

 

すると、お風呂から出たのか、イリヤたちの声がこっちまで聞こえてくる。3人仲良くお風呂に入る辺り、相変わらず仲は良さそうでお兄ちゃんは安心だ。

 

『……ちょっと行――――』

『み、ミユ?!それ―流石に―――!』

 

それにしても騒がしいな。何かあったのか?

 

「お兄ちゃん」

 

おっと、一番乗りは美遊か。

 

「おう、美遊。どうし―――ぶふぅっ!」

 

キッチン越しに美遊の方へ顔を向けると、そこに居たのはピンクのネグリジェに身を包んだ美遊の姿だった。

 

「どう?お兄ちゃん。似合ってる?ルヴィアさんが持たせてくれたのだけれど」

「そ、それを俺に聞くのか?!」

 

ルヴィアの奴、いったい何を考えて小学生にこんなものを持たせたんだ?!いや、一応寝巻だから別におかしくないと言えばおかしくないけど……あぁー!やっぱり金持ちの思考回路はわからん!

 

「あらー。駄目じゃない、士郎。女の子が服の感想を求めてるんだから、ちゃんと答えてあげないと」

 

俺がパニックになっていると、お袋がニヤニヤしながら横槍を入れてきた。くそっ!相変わらずこういうネタには敏感だな!

お袋に恨みがましい視線をぶつけていると、いつの間に近づいたのか、美遊が俺の腕を掴んだ。

 

「お兄ちゃん。どう、かな?」

 

再び視線を戻すと、美遊がネグリジェの薄い布の奥から湯上りのしっとりとした肌を見せ、その瞳に僅かながらの潤いを持たせながら、上目使いで俺の方を見てくる。

その光景を見た俺は思わず息を飲む。そして―――

 

「何やってるの、お兄ちゃん!」

「ひでぶっ!」

 

突然顔面に向かって投げつけられた丸い輪っか状の物体(というかルビー)に視界を遮られ、そのまま床に倒れ伏した。

 

「ミユも!流石にそれはシャレにならないから!パジャマなら私の貸すから!」

「……分かった。このくらいにしておく…………………………今回は」

「『今回は』?!」

「じゃあミユ。今度は私に貸して~」

「クロも駄目に決まってるでしょ!」

 

三人が騒いで、というかイリヤがクロと美遊を諌めている間、とりあえず俺は床に倒れたままになっておく。こうなってしまえば、下手に会話に参加すると藪蛇にしかならないので、後は嵐が過ぎ去るのを待つしかない。俺の身に着けた処世術の一つだ。

 

『いや~士郎さんの周りは楽しそうですね~』

 

このステッキめ、他人事だと思って……っ!

結局、美遊がイリヤに連行されて再び脱衣所に戻るまで、俺はひたすら床に寝そべって耐え忍ぶのだった。

不幸中の幸いと言えば、この騒動中にセラが下りてこなかったことか?流石にあの場面を目撃されたらどうなるか……想像したくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~intermedio~

「ママ」

「なに?イリヤちゃん」

 

夜もだいぶ更け、皆が寝静まる時間になったころ、イリヤがアイリに話しかける。

 

「あの、なんというか……とっても狭いんだけど!」

 

現在イリヤたちは、アイリの寝室の二つあるベッドをくっ付け、右からイリヤ、アイリ、クロ、美遊の順で同じベッドに入っているのだ。

 

「いいじゃない。せっかくミユちゃんがお泊りに来てるんだから」

「だとしても、ママが居るのはおかしくない?!」

「イリヤちゃんってば、そんなに大きな声を出したら近所迷惑でしょ?」

 

もー!と声を上げるイリヤを難なく往なすアイリ。このあたりが、アイリがアインツベルン家の頂点に君臨する所以なのだろう。

 

「そ・れ・に~女の子のトークタイムはこれからが本番よ?」

「いや、そもそもママは女の子って歳じゃ―――」

 

クロがそう呟いた瞬間、ゾクリ、と首筋に冷たい金属が突き付けられたような感覚に襲われた。幸か不幸か、魔法少女三人の中でずば抜けて勘の良いクロだからこそ、そのイメージがより繊細なものとなって脳裏に焼き付けられた。

 

「何か言った?クロちゃん」

「な、なんでもない……」

 

有無を言わさぬ笑顔を見せるアイリにクロは押し黙り、イリヤも美遊も逆らうのは無意味だと察した。

 

「そ・れ・じゃ・あ~左から順にクラスの誰が好き的な話を―――」

「お兄ちゃん」

 

アイリが台詞を言い切る前に、美遊が即答する。あまりの回答の速さに、というかこんなアグレッシブな性格だったかな~という意味でイリヤは呆気にとられていた。

 

「へ、へぇ~そうなんだ~。でもあれでしょ?ミユの言うお兄ちゃんって、前に行ってた実のお兄―――」

「士郎さん」

 

イリヤの僅かな希望をかけた問いも一刀両断する美遊。一体誰が、誰が美遊をこんな風にしてしまったんだ!

 

「大丈夫だよ、イリヤ」

「え?な、何が?」

 

更なる混乱を極めるイリヤに、美遊が安心させるような声で話しかける。

 

「私は、愛人には理解がある」

「いや何言ってるの?!」

 

そして、さも大したことのないことのように、更なる爆弾発言を繰り出した。

 

「え?だって、義理とはいえ兄妹の結婚は難しいから―――」

「待って!ちょっと待って!それだと、まるで私がお兄ちゃんをす、す、す、好きみたいじゃない!」

「まるでも何も……ああ、なるほど。これが"ツンデレ"なんだね。流石イリヤ」

「ツンデレ違ーう!!」

 

イリヤの絶叫が夜の街を木霊する。こうして、美遊の暴走、イリヤのツッコミは士郎が様子を見に来るまで続くのだった。

因みに、クロは先ほどの殺気のせいで話が耳に入っておらず、アイリは二人の様子をとても楽しそうな笑顔を浮かべて聞いていたという。

 

 

 

 

 

 




という訳で、お泊り回でした。美遊は一体何処へ行くのだろう……
ちなみにですが、本編で出てきた「瞬撃/千裂断」は、作者オリジナルではなく、きちんと元ネタがありますのでご了承ください。

時系列的に次は海回なのですが、正直原作と全く内容が変わらない未来しか見えないので、ネタが無ければバッサリカットするかも。


大地よ 海よ そして生きているすべての みんな
このオラに ほんのちょっとずつだけ ネタをわけてくれ…!!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。