〔ここは神奈川県 横須賀市です! 近年の国際情勢不安から勢力を伸ばしつつある海賊から、我が国のシーレーンを守るため、日本皇国政府は第1護衛艦隊の派遣を決定しました! 奥に見えるのが、第1護衛艦隊に所属する大型空母〈鳳翔〉です! 我が国が今回の派遣に踏み切ったのは海賊対処法、及び国際連合の定める公海安全共同管理法を根拠に決定されたものであり――〕
女性キャスターがカメラに向かってそう叫ぶ。横須賀基地からは日本海軍・第1護衛艦隊が出港しようとしていた。大型空母〈鳳翔(ほうしょう)〉を中心に、軽空母〈加賀(かが)〉、巡洋艦〈大和(やまと)〉〈赤城(あかぎ)〉〈榛名(はるな)〉、駆逐艦〈金剛(こんごう)〉〈高雄(たかお)〉〈足柄(あしがら)〉〈照月(てるづき)〉〈夕張(ゆうばり)〉〈鈴谷(すずや)〉〈村雨(むらさめ)〉、潜水艦〈蒼竜(そうりゅう)〉〈雲竜(うんりゅう)〉から成り、また今回は海上保安庁の最新鋭巡視船〈たつた〉〈かしま〉も加わっていた。
「ゴー・アヘッド(ゴーヘー)」
「ゴーヘー、サー」
〈鳳翔〉の艦橋・操舵室では、海軍士官達が船の操舵をしていた。横須賀のような狭い海域では、艦隊内での連携が重要だ。そうでなければ国民の血税によって建造された数十億単位の軍艦がお釈迦になってしまう。特に、〈鳳翔〉は日本海軍最大の軍艦であるため、操舵には神経をすり減らす。
「全く、シーレーン防衛に空母なんて必要なんですかね? イラクの時は駆逐艦と哨戒機で事足りたのに」
「今はそうならないんだよ。ロシアにエジプトにインドに中国、みんな財政難で兵器を国外に売っ払った結果、重武装の海賊が現れて世界中がてんてこまいだ。おかげで日本は常任理事国になれたが」
「皮肉ですね」
〈鳳翔〉艦橋・展望デッキでは、2人の男が会話をしている。片方は眼鏡を掛けた老齢の男性で、もう片方は若くハンサムな男だった。その眼下の広過ぎる飛行甲板にはアメリカ製艦載戦闘機・F-14DJ スーパートムキャットやF/A-18FJ スーパーホーネット、アメリカ製艦載早期警戒機・E-2J アドバンストホークアイが、後方の軽空母〈加賀〉の甲板には日本皇国陸軍の攻撃ヘリ・AH-64DJ アパッチと垂直離着陸戦闘機・F-35BJ ライトニングⅡが並んでいる。
「山本司令、鏑木航海長、お2人とも配置に着いてもらえませんか?」
2人の背後から、妙齢の女性が話しかける。真っ白な軍服とスカート、腰には拳銃と日本刀、やたらと自己主張する胸の所にあるパッチには「日本皇国海軍 東部方面指令区 第1護衛艦隊 〈鳳翔〉艦長 南雲 京香大佐」と書かれている。
「おっかねぇな、南雲艦長」
「さすが、空母〈長門〉の元エースだわ」
「美人なのに、もったいねぇ」
展望デッキにいた見張り員達がひそひそと話す。若い男は南雲大佐に敬礼し、梯子を降りて仕事場に向かう。
「相変わらずだな、南雲艦長」
「こうでもしないと、女だって舐められますからね。男女同権、女の戦闘機パイロットに戦車兵に潜水艦乗りが生まれる中、女性艦長の数はまだ4人、まだ見下されているのが現状ですから」
南雲大佐はそう言う。第1護衛艦隊司令である山本中将はそれを聞いて頷く。
「たしかにそうだな。でも、最近は女性総理大臣が生まれたから、いくらかはましになるだろう」
第1護衛艦隊は太平洋に出た。
「巡視船〈あきつしま〉、離脱します」
第1護衛艦隊を先導していた巡視船〈あきつしま〉が離れていく。第1護衛艦隊は、戦場へと向かう。