ナチス・ドイツ帝国がポーランドとフランスへの侵略を開始して第2次世界大戦は始まった。ただちにイタリアと日本はナチと手を組み、アメリカ・イギリス・ソ連の連合に対抗した。が、1941年にイタリアが降伏、さらには1944年にはナチス・ドイツ帝国がソ連に占領されてしまった。
一方の日本は、真珠湾攻撃でアメリカやイギリスを相手に優位に立っていたものの、ミッドウェー海戦を筆頭に負け続け、沖縄が陥落した時に降伏した。しかし、ドイツの占領に成功したソ連は東西へと手を伸ばし始めた。それは中華民国、朝鮮共和国、日本皇国への侵略行為であった。ただちにアメリカ合衆国はイギリス、フランス、イタリアと共にソ連に対抗した。そのため、日本軍は解体される事無く、1992年の終戦まで緊迫状態は続いた。1948年に中華民国・ソ連国境で勃発した中華戦争、1969年には東西ドイツ戦争が勃発、たび重なる戦争で疲弊したソ連は、国内での反乱により崩壊、1992年に発足した新ロシア共和国はアメリカとの終戦を宣言した。1939年のドイツによるポーランド・フランス侵攻から始まり、半世紀以上続いた第2次世界大戦はようやく終結した。
しかし、ヨーロッパ共同政府での金融政策の失敗をきっかけに、世界中で財政難が多発した。そして新ロシアやエジプト、インドや中華民国は兵器を海外に売りさばき、財政難を回避した。それが、今世界を悩ませている強武装海賊の出現のきっかけになってしまった。
そして、今に至る。
第1護衛艦隊は最初の経由地であるマレーシアへと向かう。その道中、空母〈鳳翔〉の飛行甲板では、乗員達が大慌てで艦載機や車両を仕舞っていた。戦闘機を2機も運べる巨大なエレベーターで艦載機を格納庫に仕舞い、艦載機の移動に使うトーイングカーや艦載機の修理をするクレーン車、そして小型消防車や電源車を艦橋下部の車両庫へと格納する。
「こちら〈鳳翔〉CDC(広域作戦司令部)、着艦を許可する。アプローチを開始せよ」
【了解】
艦隊の作戦指揮を担う〈鳳翔〉CDCから、日本空軍の中型輸送機・C-130Hへ着艦許可が降りる。輸送機としては中型だが、全長328メートル、全幅74メートルの〈鳳翔〉に対し、C-130Hは全長30メートル、全幅40メートルと巨大だ。機体は水色に塗られ、主翼には日の丸、胴体には「JAF」(Japan Air Forse)と書かれている。
「あんなのが空母に着艦すんのかよ・・・・・・」
「いくらやっても慣れねぇ」
飛行甲板の右舷後方に設けられたLSO(着艦安全士官スペース)では、航空機の安全な着艦を支援する士官達が慌てふためいていた。何しろ、いつも見ている戦闘機とは桁違いに大きく、距離感覚が狂ってしまうのだ。
「くそっ、高度が低過ぎる!」
「速度も速い!」
着艦安全士官は、いつもの感覚でC-130Hに指示を出してしまう。
艦尾に設置された着艦用信号機(ミートボール)には「高度をもっと上げろ」という意味の点滅が出る。しかし、C-130Hのパイロットはそれを無視した。
「このままランディングするぞ! ギアチェック!」
「ギアダウン、確認! ミートボール、インサイト!」
「ミートボールは無視しろ。どうせ連中は戦闘機の感覚で誘導しているだろうからな」
「ラジャー。エンジン出力ダウン」
C-130Hは高度を徐々に落とし、やがて〈鳳翔〉の甲板に接地した。エンジンを切り、後部ランプドアが開く。
甲板脇で待機していた作業員たちがC-130Hに群がり、搭載していた貨物を次々と降ろしてミサイル搬送用小型エレベーターに乗せて収容していく。