大スクリーンの迫力というものは否応なく視線を釘付けにさせるものだから、どうしても
エネルギーが消費される。
先ほどまで手を握り合っていた高校生二人組は、数分は気まずそうに視線を逸らしていた
ものの、恥と空腹ではやはり後者が勝るらしく、まほの「おなか……空きましたね」の一言で変な
緊張感は瓦解した。
青木も同意するように頷き、映画館を出て例のカレー店へ出向くことにする。
その時のまほといったら、「楽しみです、すごく」と、デザートを目前にしたような子供の顔をしていた。
可愛い。
「こんにちは」
「こんちはー、注文どうぞー」
顔も覚えた店主のオヤジが、ラミネート印刷されたメニューボードを差し出す。まほは
「ほうほう」とメニューボードを横から覗う、カレー好きなのは筋金入りらしい。
メニュー自体はシンプルで、お手頃の680円サイズ、デカ盛りの780円サイズ、
しかもカツのおまけつき。
あとは追加するトッピング内容から、甘口から激辛まで。カレー以外で
勝負する気がないということは、逆を言えばここのカレーが最高だという決意表明でもある。
実際美味いし、680円より100円ほど追加すれば目に見えて違う量を盛ってくれる。
「本当に好きなんですね、カレー」
「あ、はい。そうですね……大好きです」
まほが素直に頷く。
このカレー店はどちらかといえば大衆向けで、多少の狭さがかえって「らしさ」がある。
それほど宣伝された店ではないのだが、量を融通してくれることが多く、元気の有り余る青春男子生徒の間では高く評価されていた。
もっと繁盛してくれると嬉しいと思う反面、このままでいてくれないかな、という思いがある。きっと、男子生徒の誰もが考えているだろう。
「ここのカレーは凄くうまくて……通っていれば、多く盛ってくれるんですよ?」
「本当ですか? いきます、今後も通います」
それを聞いて店主が「可愛い子は大歓迎だよ」とからかう。あんた西住まほによくそんなことが言えるなと青木は思ったが、まほのことを知らないだけか、ここがカレー店だからか。
これでいいのだと思う。まほも「ありがとうございます」と礼儀正しく頭を下げる。
「まったく……すみません、店主ってばあんな感じで」
「いえ、いいんです」
まほは、優しげに首を左右に振るう。
「……密かな夢だったんですよ。友達と、こういう気楽な店でカレー食べたりするのって」
まほは真面目だ。しかし真面目に生きるのと、真面目にならなければいけない、のとではまるで世界が違う。
西住まほは強い、しかも西住流後継者で「強豪」黒森峰戦車隊の隊長ときた。周囲は「一緒に
食事なんて無理、立場が違う」と思うだろうし、まほも無理だと察しているはずである。
食いたい時にカレー店に寄って、680円サイズにするか780円サイズかどうかで腹と相談
しつつ、カレーを味わいながら友達と適当に話をする――これが、まほの夢だった。
自分は幸せに生きているんだなと実感する。
――やっぱり、誘ってよかったと実感する。
「……西住さん」
「は、はい」
真剣な面持ちになる。
「ここのカレー、本当にうまいんです。780円サイズなんて注文しようものなら、三日間は
カレーはいいやってくらい食べられます。本当に良い店です」
まほが小さく頷く。
「もし、一人でここに来ることが難しかったら、いつでも僕を呼んでください。僕なんていつも
ヒマなようなものですし、何より西住さんのお願いは喜んで聞き入れます……友達ですから」
店主は黙っている、まほはまばたきをしている。
女の子と目を合わせることに未だ慣れてはいないが、今だけは不思議と勇気が沸いてくる。友達を友達と言って何が悪い。
「……青木さん」
「はい」
「ありがとうございます。やっぱり、手紙をお返しして本当に良かった」
精一杯の、浮かばせたいから浮かばせた笑顔。
そこには、かつて格納庫で見せた無表情の横顔はない。
救いたいから何とかした、心の支えになりたいから色々やった。善意というものは、がむしゃらでも何とかなるらしい。
店主に「今日は三割引きにするよ」とか言われたものだから、青木は「甘口の
780円サイズで」と注文する。まほは「では、辛口の780円サイズをお願いします」と
頼み込む。
水の入ったコップを手渡され、青木とまほは同時に受け取り、同時に飲む。
「……どれくらい大きいんですか?」
「けっこう」
実際のところ、この一言が割かし正解だ。男どもでも苦戦することがあるというのに、女性で
あるまほの胃に入るかどうかは保障できない。
しかもカツが追加されるので、完食しておいて「食い足りねえなあ」とか強がる奴は今のところ存在しないのだった。
「辛口を注文したようですが、好きなんですか?」
「カレーなら辛口でもいけます」
すごい、戦士だ。
心の中で敬礼しつつ、青木はまほに視線を傾けたまま。
相手は友達なのだ。何を恥ずかしがって遠慮する必要がある。
「どれくらい出るんでしょうね……楽しみです」
まほも、こちらに目を合わせてくる。
実に挑戦的で、祭りが楽しみで楽しみでしょうがないように笑うまほが居た。
「あ、あー、もしかしたらそれほどでもないかも?」
「いえいえ。それに量は普通でもいいんです、こうして友達と一緒にカレーを食べられることが
嬉しい」
まほがにこりと笑う。
「――そうですね、その通りだ。友達と一緒に食う昼食って、うまいですもんね」
「はいっ」
今のまほに陰りは無く、隊長としての格差が感じられない。
友達なのだ。遠慮せずに呼ぼう、
「これからも色々なものを食べていきましょう、まほさん」
友達だから、呼ぼう。
名前を呼ばれて、まほの短髪がびくりと震える。
自分には想像もつかない思惑や困惑が、まほの頭の中で駆け巡っているはずだ。まほにとって
実に迷惑な話だと思う。
まほが、「はあ」と小さく息をつく。そして、
「うん。これからもよろしくお願いします、青木君」
流石西住流、反撃の心得を知っているとは。
青木は水をバカスカ飲んで感情をごまかす、まほはくすりと笑っている。
「友達、ですよね?」
少しぎこちないウインク。
強い、西住流は強い。
「と、友達です、ね。え、えへへ……」
しかしまほも相当キツかったのだろう。遅延性の恥が盛り上がってきたらしく、視線をそらして水をごくごく飲み干していく。
「はい、おまちどう。サービスしておいたからね」
ごとん、と音がした。
聞き逃すはずがない。いつもなら「ことん」という軽やかな音が、店内に響くはずだ。
実際にカレーを見てみると、白米が山だわカレールーが海だわカツが装甲のように沢山
張り付いているわで、単純に多い、漫画みたいに山盛りされている。
「……すごい……!」
強敵と遭遇したらしく、まほが西住流の顔になる。しかし口元は正直で、早く食べたい
食べさせろと三日月状に曲がっている。
あの店長、「いいもん見せてもらったから五割くらいサービスしてやるよ」とか
したり顔になっているに違いない。若者の未来を祝福する為に、カレー店の店長は出来るだけの
誠意を一皿にぶち込んだのだろう。実に迷惑だ。
青木とて退き際は知っている。食えないと思ったら「すみません、残します」と素直に宣言することだってある。
しかし、この780円サイズカレーは絶対に残してはいけない。何故なら、このカレーには
友情成立の祈りが込められているのであり、残せばバチが当たるような気がしてならない。
まじない的な要素はおいといても、このカレーは西住まほと出会い、初めて一緒に
食べる食事なのだ。
それを残すことは、男としてどうよ青木。お前はまほが好きなんだろう、そうだろう。
だから、宣言する。
「いただきます」
「いただきます」
今日のカレーは、いつもよりうまかった。
―――――
青木とまほが苦しみながらもカレーを完食し、代金を支払って店から出る際に「がんばれよー」と店主から励まされた。実に迷惑だ。
その後のことはといえば、街中にあるベンチに座って休憩しつつ、カレーの感想を言い合ったりした。さしもののまほも、あの量には危機感を抱いたらしい。
自分は絶対に辛口を完食なんてできないんだろうなあと思いながら、次は何処へ行く? と
質問する。
――その後のデートコースは、ごくごく普通のものだった。
黒森峰学園艦名物、戦車博物館へ寄っては、青木は「ほー」と戦車を眺め、まほは「あ、私の
愛車ですね」とささやかに喜ぶ。戦車に関する知識は疎いが、この戦車こそがまほの人生を決め、そしてこれからも道を定めていくと考えると、思考が遠くなる。
一通り見回った後は、デパートで買い物をする。なんだか新しい帽子が欲しくなってきたと
ぼやくと、まほは「私もです」と賛同した。そういうわけで、帽子屋であれがいいこれがいいと
右往左往する。
その際に、まほが麦わら帽子を試着して「これ、どうですか?」と聞いてくるものだから、青木は本能的に「かわいい……」と反応するしかなかった。まほは真っ赤になり、「じゃ、じゃあ
買います!」と早足でカウンターへ向かっていった場面は、青木が所持する目には見えない
アルバムに一生保存されることだろう。
そして、最後のデートスポットは黒森峰学園艦で一番(自称)の戦車道グッズ店だ。
個人店らしいのだが、それ故に年代物や新しめの商品が所狭しと並んでいる。景気は良い
らしく、店のサイズは狭すぎず広すぎず。
「いろいろありますね……ミリタリーファッション、模型、アクセサリー……」
戦車道にも疎い青木であるが、多種多様の商品を眺めていくうちに興味が沸いてくるのが、
男の子たる由縁である。
身近に慣れ親しんだものだからこそ、まほは楽しそうに。見るもの全てが新鮮だからこそ、青木は興味深そうに。この機に、戦車道を学んでおこうかな、と思ったりする。
「お、これは……タクティカルペンっていうんだ。かっこいいなあ」
手に取ってみて、指でくるりとペンを回す。
「あっ」
それを見ていたのだろう、まほがぽかんと口を開けている。
「……すごい」
「え、何が?」
「青木君、ペン回し出来るんですか? すごい……かっこいいです」
そうなんだろうか、と思う。
うわあ照れるなあ、と思う。
「い、いえ、何かいつの間にか出来てまして」
ちらりとタクティカルペンの値札が見えたが、これがまた良い値段だったので、落とさないで
良かったとつくづく実感する。
青木は祭壇に剣を置くような慎重さで、ペンを元ある場所へ戻す。
「いえ、私は出来そうにないです。どうやるんですか? やってみたいです」
「ま、まあ一回転しかできないんですけどね。あ、あはは」
建前は謙虚であるが、内心は男の自尊心が大炎上していることは言うまでもない。
青木は簡単にコツを教え、まほは「なるほどなるほど」と熱心に聞き入っているのだった。
ペン回しから数分が経過しただろうか。青木は「初心者にもわかる戦車道」という本を片手に、会計でも済ませようかなと、まほをちらりと眺め、
そこには、首飾りらしきものをじいっと見つめているまほの姿があった。
透明のケースに保管され、展示されているそれは、札によると「ドッグタグネックレス」という名前らしい。チェーンには二枚の金属プレートがくくりつけられていて、程よい光沢感を
引き出している。
「これは……なんでしたっけ。軍人が首に下げておくやつ、でしたっけ」
「あ、はい、そうですね。これはドイツ語で書かれていて、いいなって思いまして」
ドッグダグには細かい英文が書かれているが、英語とドイツ語の違いが正直よくわからない。
まほには読めるんだなあと、青木は感心する。
――まほは未だ熱心に、子供のようなまなざしでドッグダグに注目したままだ。
まほは戦車道の人間であるから、心の琴線に触れたのだろうか。これを買うのかなと青木が値札を眺めてみると、
一万円。
一瞬で全てを察し、とるべき行動がすぐ固まった。
「まほさん」
「あ! は、はい、なんですか?」
「あ、いえ、僕はそろそろ会計を済ませようかなと思うんですが、どうしますか?」
ううん、とまほが唸る。
やっぱり欲しいんだなと、青木は読む。まほは名残惜しそうにドッグダグネックレスにちらりと目を向け、「じゃあ、行きましょうか」と苦笑いする。いつもの強い我慢だ。
「あ、戦車道の……」
「ええ、興味が出てきまして」
しかし、まほはにこりと。
「詳しく知らなくても良いんですよ。見て、自分なりに何かを感じ取ってくれれば」
「ありがとうございます。ですが、知っておきたいんですよ」
「そうなんですか」
「はい。……まほさんのこと、応援しやすくなると思うので」
もちろん、クサいセリフだと思った。
まほは「えっ」と慌て、
「そ、そんな、その……あ、ありがとうございます」
視線を横に流し、しかし隠しきれない照れ顔を見て、「ああ、やっぱり戦車道は学ぶべきだ」と、青木の脳ミソに決意が刻まれるのだった。
お会計を済ませ、青木とまほは戦車道グッズ店から出る。気付けば赤黒い夕暮れ、良い子は帰る時間だ。
まほは「また来たいです」と感想を述べ、青木も表面上は「そうですね」と相槌を打つ。
二人の足は、自然と帰路に向く。楽しい時間はあっさりと終わりを迎え、それにどこか安堵を
覚える。
色々あった。
「今日は――本当に楽しかったです。ありがとう、青木君」
「いえいえ、そんな。僕も楽しかったですよ、まほさん」
夕暮れに照らされるまほは、やはり普通の女の子だった。一目惚れしたことに、間違いなどなかった。
「色々ありましたね」
「そうだねえ……あ」
青木がポケットをぽんぽんと叩く。「しまったー」とわざとらしく漏らし、
「ごめん、お会計の時にサイフ置いてきてしまって――すぐ回収してきます、すみませんが待っていてください」
「あ、青木君」
まだ、色々やるべきことがある。
青木は全速力で、黒森峰学園艦で一番(自称)の戦車道グッズ店めがけ突っ込んでいく。
待っていてくれるかなという不安と、自分は凄いことをするぞという緊張感と、女の子にカッコつけられるという高揚感が、頭の中で騒がしくかき混ざる。
自動ドアが開き、店主のオヤジめがけ真っ先に、
「すみません、このドッグダグネックレスください」
あくまで冷静に、息をめっちゃ切らしながら注文する。見たばかりの顔だからだろう、青木を
覚えていた店主は「やるねえ」と言うたげに口元を曲げるのだった。
―――――
さらりとまほの所まで戻るが、内心帰っていないか割かし不安だったりもした。
しかし、まほは当然のように待ってくれていた。「おかえりなさい」と笑顔まで浮かばせて。
「どうでした?」
「あったあった、僕はドジだなー」
最初から無くしてなどいない、右手に持ったサイフを見せる。背に隠した左手には、勿論まほのプレゼントが硬く握りしめられている。
「良かったですね。それじゃあ、帰りましょうか」
「そうしましょう」
それからは、振り向くこともなく己が寮に歩んでいく。
まほも流石に疲れたのか、「うーん」と背筋を伸ばす。
「ほんと、今日は楽しかったですね」
「はい。また、一緒に遊んでください」
麦わら帽子が入った手提げ袋を揺らしながら、まほはゆっくりと見上げる。
星は一つ、二つしか見えない。晴天の夕暮れはとてつもなく真っ赤で、夏特有の寂しさが冷たく肌に透き通る。
明日は日曜日だが、きっと力が抜けきった一日を過ごすのだろう。それくらい遊んだ、食った。
「あ、そうだ」
「はい?」
何の感慨もなく、青木は迷彩柄の包装紙にくるまれた、細長い箱をまほに差し出すのだ。
これが今日最後の遊びだ。
差し出されたものをまほは反射的に受け取る。
「まあ、開けてみてよ」
「は、はい……! あ、青木君、まさかこれって」
流石は西住まほ、自分が考えた安っぽい戦術などはお見通しらしい。
まほは無表情で、しかし焦りを隠せない手つきで包装紙をべりべり剥がしていく。
「あ……」
予想通りだったのだと思う。
けれど、まほは硬直した。当たり前のように我慢を強いたはずなのに、欲しかったものが
手のひらの上にあるのだから。
まほは青木を見る。青木は――もどかしい笑みを浮かばせる。
再び、まほの視線がドッグダグネックレスの入った箱へ落ちる。透明のアクリル製のフタを
開け、まるで宝石を扱うように、丁寧に金属プレートをつまむ。
「これ……」
「どうぞ」
青木に促されるまま、まほはドッグダグネックレスを首にかけた。
――これで、今日の役目は全て果たされた。
青木は、声にならないため息をつく。
「……青木君」
「はい」
「これ、高いんですよね?」
「まあ、一万くらいは」
まほは義理堅く、真面目だ。だから怒るかもしれない、そうじゃないのかもしれない。
それでも、青木はまほから目を逸らさない。
まほが、首から飾られたドッグダグのプレートを指でいじっている。プレートが角度を
変えるたびに、磨かれた光沢が目に映る。
「青木君」
「はい」
目が合う。
「――とても、嬉しいです。ありがとう、ありがとうっ」
初めて愛を知ったように微笑み、恋人のようにドッグダグを両手で抱きしめる。
跳ね上がる心臓が体に痛い、達成感が血液を熱している。不安ははるか遠くに消え、西住まほが愛おしくてたまらない。
―――――
その後、帰路につきながら「安易に高いものを買ってはいけませんよ」と怒られはしたが、まほはドッグダグをつまんだままで決して手放さない。
――気に入って貰えるなら、高いも安いも関係ないよ。
勿論、口にはしない。また怒られそうであるから。
「今日は、本当にお世話になりっぱなしですね。ドリンクも買っていただきましたし」
「いえいえ、男はカッコつけですし」
全く理屈になっていないが、男どもからすれば十分事足りる理由だ。
「かっこつけるにも、限度があります。今度、こういうものを買う時はちゃんと話してください」
「分かりました」
勿論、従うつもりはないのだった。心の中で謝罪する。
「……青木君」
「あ、はい」
「このドッグダグ、大切にします。授業中以外は、つけてますからね」
「えっ、恥ずかしいんですけど」
まほが「何言ってるんだこいつ」と、眉がむっとなる。
「これは青木君がくれて、私が欲しかったものでもあります。なので、つけたがるのは
当然ですよ、ね?」
語尾から無言の威圧感をぶつけられ、青木は観念するように「はい」と返事する。
「まったく」
うんざりしたような、けれども不快に感じていない声色。
「……あなたと出会えて、よかったな」
胸元に視線を向け、金属プレートを撫でる。夕日に彩られたまほの横顔に、泣いているような
笑みがこぼれ落ちる。
好きであるはずなのに、青木は恋に落ちた。誰にも渡したくないと産まれて初めて思った。
だから、青木はまほの手を握った。
びくりとまほが震える、しかし振り払おうとはしない。映画館でも同じようなことがあったが、今違うのは、
まほが、手を握り返した。
―――――
学園近くに到着し、まほが「ありがとうございました」と頭を下げる。するりと手が
離れ離れになり、青木は「それでは、また」と手を振るう。
まほの背中を見届け、ほっとしたように息をつく。
そして、青木も自分が住まう部屋へ足を進ませる。今日の晩飯は何にしようかと考えながら。