問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ? 作:問題児愛
飛鳥達三人は大浴場で体を洗い流し、湯に浸かってようやく人心地着いたように寛いでいた。ローズも人生初のお風呂の割には戸惑うことなく全身を洗って流し、湯に浸かった。
黒ウサギは上を向き、長い一日を振り返るように両腕を上げて背伸びしていた。
「本当に長い一日でした。まさか新しい同士を喚ぶのがこんなに大変とは、想像もしておりませんでしたから」
「それは私達に対する当て付けかしら?」
「め、滅相も御座いません!」
パシャパシャと湯に波を立て、慌てて否定する黒ウサギ。耀は隣でふやけた様にウットリした顔で湯に浸かり、
「ローズは初めてのお風呂、どう?」
「ん?そうだな………知識で知っているだけでは味わうことの出来なかった感覚に、我は今感動しているといったところだ」
瞳を細めて嬉しそうな笑みを浮かべるローズ。それを聞いて嬉しそうに微笑む三人。
「それにしても」と耀がまたふやけそうな顔に戻り、
「このお湯………森林の中の匂いがして、凄く落ち着く。三毛猫も入ればいいのに」
「そうですねー。水樹から溢れた水をそのまま使っていますから三毛猫さんも気に入ると思います。浄水ですからこのまま飲んでも問題有りませんし」
「うん。………そういえば、黒ウサギも三毛猫の言葉が分かるの?」
「YES♪〝
「そっか」と耀はちょっぴり嬉しそうに返事する。コミュニティ内で三毛猫と会話出来るのが私だけではなく、ローズに黒ウサギと二人も居ることが嬉しいのだろう。
飛鳥は長く艶のある髪を纏め直し、夢心地で呟く。
「ちょっとした温泉気分ね。好きよ、こういうお風呂」
右腕を上に伸ばし、左手でそれを擦るとそれだけで素肌が綺麗になる錯覚があった。
「水を生む樹………これも〝ギフト〟と呼ばれるものなの?」
「はいな。〝ギフト〟は様々な形に変幻させる事が出来、生命に宿らせることでその力を発揮します。この水樹は〝霊格の高い霊樹〟と〝水神の恩恵〟を受けて生まれたギフトで御座います。若しも恩恵を生き物に宿らせれば、水を操る事の出来るギフトとして顕現したはずデス」
「水を操る?水を生むのではなく?」
「それも出来なく無いですが、霊樹みたく浄水にするのは難しいです。それに水樹は無から水を生むのではなく、大気中の水分を葉から吸収して増量させているのが正しい解です。完全な無から有限物質を生むとなると、それこそ白夜叉様や龍であるローズさんぐらい自力がないと」
「そう」と空返事する飛鳥。だが〝ローズ〟と聞いてハッとしたように飛鳥はその彼女に向き直り、
「ローズさんは無から水を生み出せるの?」
「ん?無論だ―――【ネロ】」
ローズはニヤリと笑って右手を湯から出してそう呟く。すると彼女の手から少量の水が生まれ、それで小さな水球を作って飛鳥に見せた。
飛鳥は目を見開いて興奮したように声を上げた。
「す、凄いわ!もしかして火とかも生み出せるのかしら?」
「うむ―――【フォティア】」
ローズは頷き今度は左手も湯から出してそう呟き、小さな火を生み出すと、それを今度は火の輪に作って飛鳥に見せた。
それを見た飛鳥はまた興奮したように声を上げる。
「す、凄いわね本当に!………ってあら?〝フォティア〟って私達の服や髪を乾かしてくれた時にも聞いた気がするわ」
「ああ。それはあの時も我は無から火を生み出していたからな」
そう言ってローズは両手にある水球と火の輪を霧散させて再び手を湯の中に沈めた。
「そう」と無から火や水を生み出せるローズを羨望の眼差しで見つめる飛鳥。
そんな光景を眺めていた黒ウサギと耀は「ふふ」と楽しそうに笑って、
「ローズさんには驚かされてばかりです。蛇神様を指一つで打倒したり、更には東側最強の〝
「そうかな?」
「うん、ローズは本当に凄いよ。ギフトも沢山持ってるし、三毛猫とも会話出来るからね」
ローズの事を高評価する黒ウサギと耀。だが耀はローズの顔をじーっと見つめて小首を傾げ、
「だけどローズは、私からしたら龍に見えないかな。どっちかっていうと………お人形?」
「ぬ?」
「そうね。ローズさんの容姿からして龍と呼べる要素が一つもないわ」
「………む」
「そうですね。何といってもローズさんの頭には龍種の純血と呼べるような角が御座いません」
「……………それを言われてしまうと反論出来ぬな」
唇を尖らせながら拗ねるローズ。まあ耀達がそういうのは無理もないことだろう。
妖精めいた儚げな容姿の年若い少女で、手脚は幼い子供のように細く肉付きも薄い。
髪の色は虹色に煌めいており、瞳は焔のような青白い輝きを放っている。
龍が持つ凶刃な爪やら硬い鱗、立派な角などが一切無く、とても頼り無さそうな幼い少女にしか見えないのだから。
だがこんな少女の実力は、白夜叉との決闘を観戦した三人は知っているため、彼女を容姿のみで判断すれば痛い目を見ることぐらいは承知済みだった。
耀はふとローズの虹髪を見つめ、
「それはそうとローズの髪色………どういう仕組みで虹色に見えるんだろう?」
「ん?どうと言われてもな。生まれつきだとしか言い様がないのだが」
湯に浮かぶ虹髪の毛先を弄りながら耀は不思議そうな表情を浮かべる。そんな耀に苦笑して返すローズ。
一方で飛鳥はローズの肌を見つめ、
「そう。虹髪も良いけどローズさんの肌………透き通るような白い肌で羨ましいわね」
「ふむ?そういう飛鳥も白く清らかな肌をしているじゃないか。スタイルも中々だしもっと自信を持っても良いぞ?」
「そ、そうかしら?ありがとうローズさん」
そう言って飛鳥は然り気無くローズの頭を撫でる。子供扱いされたと思い一瞬だけ不機嫌そうな表情を見せるが、撫でられる感覚は不思議と嫌じゃなかったのか飛鳥の手を払おうとはしなかった。
そんな光景をニコニコと眺めていた黒ウサギは、ハッと自分だけ仲間外れにされていることに気付き、
「黒ウサギも仲間に入れてくださいな!」
「「え?」」
「ぬ?」
黒ウサギが勢いよくローズの下へ飛び込み―――ゴッ!とローズと額をごっつんこし、
「フギャア!?」
「「………あっ」」
「………?」
何故かローズにダメージは無く黒ウサギだけが甚大な被害を(額に)受けて、ブクブクと湯船の底に沈んでいく。
その光景を暫し呆然と眺めていた飛鳥と耀が、次の瞬間にはハッと我に返り、
「ちょ、ちょっと黒ウサギ!?しっかりなさい!」
「………えい」
あわてふためく飛鳥の代わりに耀が黒ウサギのウサ耳を鷲掴み、勢いよく引っ張り上げた。
「……………きゅぅ」
「「………あっ、」」
「ふむ、見事に気を失ってるな」
時既に遅く、黒ウサギは目を回して気絶しており、飛鳥達はそんな黒ウサギを湯船から救出したのだった。
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その後、気を失っていた黒ウサギが復活しお風呂から上がったローズ達四人は、パジャマ代わりに用意されたネグリジェを着たまま、明日からの着替えの為に黒ウサギの部屋まで来ていた。
特に飛鳥の場合、正装でこの箱庭に来てしまった為、普段着が一着も無い。耀とローズは依然として変わらないシンプルな服を好んでいたから問題は無かったが、飛鳥はどうにも納得出来ないらしい。
「折角こんな素敵な世界に来たのだもの。相応の衣装を普段着に使っても問題は無いでしょう?」
「それは勿論で御座います。しかし、黒ウサギの衣装棚に飛鳥さんの気に入るようなものがあるかどうか………」
ゴソゴソ。衣装棚を漁る黒ウサギ。
ふっと飛鳥の視線が泳ぐと、奥に在るクローゼットが目に留まった。それに気付いた黒ウサギは、妙案を思い付いたとばかりにウサ耳を跳ねさせる。
「そういえばあのクローゼットには、審判時に着用を求められた衣装が………!」
クローゼットを開く黒ウサギ。其処には様々なコスチュームが飾られていた。
「飛鳥さんの好みはワンピースですか?ツーピースですか?」
「どちらかといえば、ワンピースの方かしら」
「そうですよねー♪黒ウサギもワンピースの方が好きです。スカートはどうです?」
「特に拘りは無いけど………黒ウサギのスカートの丈は、少し恥ずかしいわ」
「うう、そうですよね。黒ウサギもロングスカートの方が好みで御座います………」
ゴソゴソ。一体何着のコスチュームが有るというのか。黒ウサギは取り出しては投げ捨て、それらを物色していく。
クローゼットを漁る黒ウサギが突然声を上げた。
「あ、コレなんて如何でしょう!?」
バサァ、と広がる真紅の衣装。ワンピースのロングスカート―――というよりは完全にドレススカートそのものだ。耀は余りの派手さに三度瞳を瞬かせた。
「………これを普段着に?」
「あら、素敵じゃない?私はこういう衣装も好きよ」
「ほう。飛鳥はこういう服も好みなのか」
感心したように言うローズ。飛鳥は「ええ」と返して早速ネグリジェを脱いでその場で服を着替える。黒ウサギは手伝いながらこの衣装について説明した。
「この衣装は審判用に白夜叉様から戴いた物で御座います。ウサギ達は御依頼が有れば審判と共に進行役としてゲームを盛り上げる仕事も御座いますから」
「そうなの?」
「YES。ですのでこの衣装には、身を守る為の加護が付属されております。明日のギフトゲームの際に着ていくのも宜しいかもしれません」
「そう」と返して飛鳥はドレスを着たまま一歩二歩とステップを踏む。足元まで伸びる美麗なレースの布地は飛鳥のステップに合わせて踊るように舞い、着る事で逆に身軽さを感じるような錯覚があった。
これに飛鳥は感嘆の声を上げる。
「………驚いたわ。こんなに凄く動き易いスカートは初めて―――」
「ふふ、当然で御座います!何といってもこの衣装は、」
「―――だけど、胸が余るわ」
「へ?」と言葉を無くし、飛鳥の胸からボディラインを凝視する黒ウサギ。
飛鳥も十五歳の少女にしては発育が良いのだが、黒ウサギの発育に比べればまだ幼い。
一見して少女のような黒ウサギだが、豊満な胸と臍から臀部に掛けての女性らしい肉付きは理想的なボディラインを描いている。
辛うじて胴回りは同じサイズのようだが、ドレスの胸の部分は完全に余っていた。黒ウサギは慌ててフォローを入れる。
「あやや、こ、これは………!え、えーとですね!こ、今晩のうちに服のサイズを飛鳥さんに合わせておきますので!明日のゲームには間に合うかと………!」
「………そうね。お願いするわ」
複雑な表情で承諾する飛鳥。しかしローズはニヤリと笑い、
「兎の娘、その必要はないぞ」
「え?」と黒ウサギがローズに視線を向けたのと同時に、ローズが指を鳴らす。
すると飛鳥の着ていた服の、胸の余りの部分が一瞬で消失し彼女の体にフィットしたものへと変化した。
「え?嘘、いつの間にか私のサイズに合った服に変わってるわ!」
「え?………あ、本当だね」
飛鳥の驚きの声に、耀も彼女へと歩み寄り確認し、そう言う。黒ウサギはウサ耳をパタつかせながら興奮気味に訊いた。
「ローズさん!もしかしてさっきのは魔術の一種で御座いますか!?」
「ああ。ちょっとした手品のようなものだ。単純に服のサイズを飛鳥に合うように変更する程度のな」
淡々と答えるローズ。そんなローズを飛鳥と耀が瞳を輝かせながら、
「あら、じゃあローズさんは魔法使いなのね」
「確か〝魔術の王〟ってギフトだったから、ローズは魔術師じゃないかな?どちらにしても凄い」
「そうかな?」
ローズは少し照れたように頬を掻く。飛鳥と耀に、友達に褒められたのが素直に嬉しかったのだろう。
そんな様子を黒ウサギは嬉しそうに微笑みながら眺めたのだった。
ようやく原作一日目が終わった!長かった。
そして中々5,000文字以内に収められない………今回は収まったけど。
次回はガルド戦………ではなく待っている間に十六夜VSローズの小ゲームを予定。