問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ? 作:問題児愛
『ギフトゲーム名〝龍の瞳に敵いし者〟
・プレイヤー一覧
逆廻 十六夜
・勝利条件
ホストマスターに一撃与える。
・敗北条件
降参か、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・勝利報酬
〝主催者〟の無限龍がプレイヤーに〝ウロボロスの瞳〟を贈呈する。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、逆廻十六夜にギフトゲームを開催します。
〝ノーネーム〟無限の魔王 印』
開始直後、先に動いたのは十六夜だった。
爆撃音のような踏み込みと共に僅か数メートルの距離を一瞬で詰めると、ローズに第三宇宙速度で殴り掛かった。
しかしそれをローズは苦もなく右手で軽く弾いて凌いでみせる。反撃はしてこない。
ローズの舐めた態度に青筋を浮かべた十六夜は、容赦なく拳を乱打した。その一打一打は全て第三宇宙速度に匹敵する。
けれどローズに焦りは無く、余裕な笑みを浮かべたまま全て弾いて凌いでいく。
十六夜は数千数万と拳を乱打し続けたが、一向にローズに一打を与える事が出来ず次第に焦りを感じ始めてきた。
そして「チッ」と舌打ちした十六夜は拳を引っ込めてローズの脇腹を蹴り抜こうと回し蹴りをする。
だがその一蹴りをローズは跳躍することで回避し、眼下の十六夜をスッと細めて青白い焔のような瞳で見つめ、
「【フォティア】―――
「………!?」
無から火を生み出すと長さ二メートルの火柱に形作り、十六夜目掛けて放つ。
不意打ちに十六夜は一瞬驚くが、すぐに冷静になると拳を握り締め、
「―――ハッ、しゃらくせえ!!」
ローズの火柱を真正面から殴り付け消し飛ばした。
それにローズは笑みを浮かべて、
「流石だな少年。ならば―――〝
今度は両手に火柱を作り計二本の火柱を十六夜目掛けて放った。
十六夜はそれを―――右腕を横一閃に振るうことで掻き消す。
「おいおい、こんなものじゃ俺は傷付かないぜ?」
「ふむ………そのようだな」
十六夜の軽薄な笑みで言った言葉にローズは頷き、
「【フォティア】―――
新たに無から火を生み出して長さ三メートルの火槍に形作り、十六夜目掛けて放つ。
大気を切り裂き、焼きながら迫る火槍を十六夜は、先程よりも力を籠めて殴り付けた。
ローズの火槍は呆気なく砕け散り、火の粉を周囲に撒き散らす。
「ハハ、柱状だけじゃなくて槍状にも出来んのか」
「ああ。他にもまだまだ有るぞ?」
十六夜の食い付きにニヤリと笑うローズは右手を前に出して、
「【フォティア】―――
また新たに無から火を生み出し、今度は直径十センチの火球を形作る。
それを十六夜が見て興味深そうに笑い、
「へえ………今度は火球か」
「ふふ、それだけではないぞ?―――〝
ローズがそう告げた瞬間、火球の数が一から二、二から四、四から八、八から十六………と増えていき、気付いた時には十六夜の全方位を計百二十八個の火球が浮遊していた。
それを確認した十六夜の頬に汗が伝う。
「増殖も出来るのか。………ってヤベッ!?」
「残念だが―――もう遅い」
十六夜はローズが指を鳴らそうとした瞬間に跳び退こうとするが、一手遅かった。
ローズは十六夜が跳び退くより速く指を鳴らす。するとそれが合図だったようで、計百二十八個の火球は一斉に爆発し、十六夜を巻き込んだ。
立ち上る爆炎を眺めてローズは「やり過ぎたか?」と心配そうに呟いて、
「―――隙アリだ、龍ロリ!」
「―――ぬっ!?」
爆撃音と共に爆炎を吹き飛ばしローズの眼前に飛び込んできた
それにローズは「ちぃ!」と初めて舌打ちし第三宇宙速度を超える―――
「ガッ………!?」
地面に叩き付けられた十六夜は、巨大なクレーターを作り苦悶の声を洩らす。
ローズはゆっくりと十六夜の下へ降り立ち、
「してやられたぞ。よもや我に第四宇宙速度で動かざるを得なくさせるとは………天晴れだ少年」
「―――は?第四宇宙速度だと!?」
十六夜は驚愕した。それもそのはず、第四宇宙速度は十六夜が出せる最高速度を以てしても、辿り着く事が出来ない程馬鹿馬鹿しい速さなのだから。
〝第三宇宙速度〟―――それは地球軌道に於ける太陽系脱出速度………秒速約三十キロ。
対して〝第四宇宙速度〟は―――太陽系の位置に於ける銀河系脱出速度………秒速約三百キロ。
第三と第四の宇宙速度ではおよそ
十六夜は己とローズの走力の差を知って、けれども心地良い冷や汗を流す。
「………ハハ、マジか。なら龍ロリ。アンタの本気は―――
「……………さあな」
素っ気無く返すローズ。もしローズの本気が光速―――
それもそのはず、〝第六宇宙速度〟は―――
それを考えただけで十六夜の全身から嫌な汗が噴き出して止まらない。
だが十六夜の心情を察したローズは首を振り、
「流石にそんな馬鹿馬鹿しい速さは出さぬよ。そんなことをしたら―――辺り一帯は消し飛ぶからな」
「………っ!!」
〝出せない〟ではなく、〝出さない〟と告げたローズに、十六夜は予想はしていたが絶句した。ローズは無限を司る龍神―――〝ウロボロス〟だ。限りの無い走力ならば、光速以上で動けても何の不思議もないのだから。
ローズは地面にうつ伏せになってプルプルと震えている十六夜を見下ろし、
「どうした少年?汝はその程度の男ではないだろう?そんなに震えて―――怖じ気付いたか?」
ローズのその言葉を聞いて十六夜は―――ブチッと血管がはち切れたような音がすると共に勢いよく立ち上がり、
「………ハッ、この震えは
凄まじい怒りと殺気を放ち、鋭い眼光でローズを射貫く十六夜。
そんな十六夜を満足そうに見つめてローズは笑い、
「くく、その意気や良し。ならば汝の最高の奥義を振り翳し―――我を楽しませてみせよ!」
凶悪な笑みを浮かべて両手を広げて告げた。
十六夜は「呵ッ!」と笑って、
「なら遠慮はしねえ。覚悟しな―――ローズッ!!」
「………!」
十六夜に〝龍ロリ〟ではなく〝ローズ〟と名前で呼ばれたことに嬉しそうに笑うローズ。
十六夜はそんなローズの胸中に気付くも、今はそんなことを気にしている暇はない、と自分に言い聞かせる。そして、
「―――これが俺の………全力だ!!」
右腕を掲げる。その右手から極光が宿りローズの張っていた透明な結界内を極光が満たしていき―――結界を崩壊させた。
結界崩壊後、黒ウサギは結界があった場所に足を踏み入れて十六夜の下へ駆け寄る。
「十六夜さん!先程の光は一体何だったのですか!?」
「あん?」
黒ウサギの声に反応して十六夜が振り返る。その十六夜の胸元には―――気を失っているローズがお姫様抱っこされていた。
それに黒ウサギはキョトンとした表情で十六夜を見つめ、
「えーと………これはどういう状況で御座いますか?」
「ああ。簡単に言うと―――俺が
「………はい?」
黒ウサギは十六夜が何を言ってるのか分からず瞳を二度三度と瞬かせる。十六夜が取って置きでローズを一度消し飛ばして且つ彼女は無から復活した?と。
十六夜はまあそういう反応をするだろうとは思ってたけどな、と内心で思っていると、
「………う………ん、」
「お?やっと起きたか」
ローズが小さな声を洩らしゆっくりと閉じていた瞼を開けた。
十六夜はそんなローズの顔を覗き込んでニヤニヤと笑い、
「
「………ん、ふむ。我は茨姫などではないが………そうか。我は一度―――
ローズの問いに十六夜は頷いて答える。
「ああ。それはもう見事に消滅してたぜ?だがまあ流石は〝無〟の存在でも在るウロボロスだな。彼処から復活するとかオマエはどんだけデタラメな龍神様だよ」
「ふふ、デタラメ加減では汝には言われたくないな。それはそうと少年。汝という若輩者にお姫様抱っこされるのはその………如何に龍たる我でも恥ずかしいのだが」
「へえ?そいつは良いことを聞いた。つか恥ずかしいも何もお姫様抱っこされたのこれが初めてだろ?何事も経験は積んでおくべきだぜローズ」
「ふ、む。確かにそうかもしれぬな少年―――いや、十六夜。ならば此処は知識通りに汝の首に手を掛けさせてもらおうかな」
頬を微かに赤らめて照れ臭そうに笑いながら十六夜の首に手を掛けるローズ。
そんなローズを見下ろして意外に可愛いところも有るんだな、と素直に感心する十六夜。先の偉そうな態度とはまるで違っていたのだからだ。
一方で黒ウサギは十六夜にお姫様抱っこされてるローズを羨望な眼差しで見つめていると、
「ほう。我がそんなに羨ましいか、兎の娘よ?何なら変わってやっても良いぞ?」
「へ?く、黒ウサギは別に―――ひゃあ!?」
ローズに図星を突かれて黒ウサギがちょっぴり照れ臭そうに否定しようとした瞬間、ローズの居る位置と黒ウサギの居る位置が何の脈絡もなく入れ換わった。
悲鳴を上げる黒ウサギ。それもそのはずローズはさっきまで十六夜にお姫様抱っこされていたのだ。入れ換わったということは―――現在は黒ウサギが十六夜にお姫様抱っこされた状態になっているのだ。
十六夜はこの状況にニヤリと笑い、
「(おお、こいつは役得だな)」
などと内心で呟きながら、この素晴らしい
ローズはどうだと言わんばかりのしたり顔でほくそ笑んでいた。
黒ウサギは赤面しながらも十六夜の顔を見上げておずおずと訊いた。
「あ、あの………十六夜さん。黒ウサギはその………重くは無いですか?」
「あん?何言ってんだ黒ウサギ。俺がお前を抱き上げて重いとでも言うと思うか?」
「………そ、そうで御座いますね。黒ウサギの考えすぎでした」
ウサ耳までも紅潮させながら返す黒ウサギ。恥ずかしそうに視線を十六夜から逸らしながら。
そんな黒ウサギを見下ろしていた十六夜はふと悪戯心が芽生えて、
「あ、悪い。やっぱ重いわ。痛ててて腕の骨が折れそうだぜこいつは………!」
「ええ!?そ、それは大変で御座いますね!?今すぐ黒ウサギは退きますから―――!」
「っておい黒ウサギ!そんなに暴れられると体勢が崩れ―――うおっ!?」
「へ?何ですか十六夜さ―――きゃあ!?」
ドサドサッ!と二人は縺れ合うようにその場に倒れ込んだ。そして黒ウサギが十六夜を組み敷いた状態で腹部に乗っかり、両手は十六夜の頭を挟むような形で地面を突き―――二人の顔の距離は僅か数十センチしか無かった。
これには黒ウサギの髪までもが桃色に染まってボンッ!と頭から煙を噴出させる。
「(これは………またしても役得だな)」
一方の十六夜はそんなことを内心で呟きながらしたり顔でほくそ笑む。
黒ウサギは慌てて十六夜の上から跳び退くと、ローズに視線を向けて訊いた。
「そ、それはそうとローズさん!十六夜さんが試練をクリアなさったのでしたら〝
「くく、そうだったな。十六夜は我が試練を無事クリアしたのだから―――我が瞳をくれてやらねばな」
喉を鳴らしながら笑うローズは、そう言って自らの左目をくり貫こうと手を持っていき、
「ってちょっと待って下さいませローズさん!?まさか今から目玉をくり貫くおつもりじゃ」
「無いぞ。今のは冗談だ。昨日のうちに既に我が瞳は一個抉り取っておいてある。十六夜ならば必ずや我の試練を成し遂げてくれると踏んでいたからな」
「………そ、そうでございますか」
それを聞いて安堵するが、表現がグロテスクで御座いますけどね!とも内心で叫ぶ黒ウサギ。
ローズは起き上がった十六夜の下へ歩み寄り、
「では十六夜よ。汝のギフトカードを此処に。恩恵の授与を執り行おうじゃないか」
「あいよ」
十六夜は己のギフトカードをローズに手渡し、ローズがそれを受け取ると―――十六夜のギフトカードが一瞬だけ光り輝いた。
そしてローズからギフトカードを返してもらった十六夜は、早速それを覗き込む。
そこには〝