問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ? 作:問題児愛
場所は白夜叉のゲーム盤―――水平に廻る白夜と雪原の大地の世界へローズ達七人と一匹は来ていた。
そしてローズの〝
『ギフトゲーム名〝龍を捕らえし者達〟
・プレイヤー一覧
逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
ジン=ラッセル
黒ウサギ
レティシア=ドラクレア
・勝利条件
ホストマスターの捕獲。
・敗北条件
降参か、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝ノーネーム〟無限の魔王 印』
十六夜達は〝契約書類〟に目を通し終えると、まず十六夜が不敵な笑みを浮かべて、
「ローズの捕獲、か。一撃当てるより難易度高そうなゲームだな」
「はいな。〝当てる〟のではなく〝捕らえる〟わけですからかなりの難易度で御座います」
十六夜の呟きに答える黒ウサギ。飛鳥も厳しい表情で〝契約書類〟を見つめていた。
「ローズさんに一撃当てるだけでも困難そうだというのに、捕まえろ………ねえ。私達に出来るのかしら」
「そうだね。でもこれくらい出来無いと魔王戦は勝ち抜けないのかな?」
小首を傾げて耀が応える。レティシアは強化された身体能力で何処までローズに通用するか楽しみだった。
「主の眷属になってからお披露目は初だな。今の私で何処まで出来るか………」
「僕では正直何も出来無い気がしますが………頑張ります!」
ジンも気合いを入れてローズを見る。十六夜達六人とローズの間合いは数メートル。ローズはニヤリと笑って宣言した。
「安心しろ。初日だし手は抜いてやる。そうだな………我が出す最高速度は第三宇宙速度で留めておこう。これなら十六夜とレティシアならばいけるぞ?」
「へえ?そりゃ太っ腹なことだな。つか吸血鬼ロリは俺の速度に付いて来れるようになったのか!それは心強いぜ」
「ふふ、
レティシアがそう言うと、十六夜はマジか!と笑みを浮かべた。
ローズは二人から視線を外して飛鳥達を見つめ訊いた。
「初日だからな。他に制限して欲しいのはあるか汝ら?」
「そうね。ギフトの使用を禁止にして欲しいわ」
「………ほう」
「うん。第三宇宙速度がどれくらいかは分からないけど、ギフト使用可だったら私達が無理」
飛鳥の提案に賛成する耀。ローズは確かにそうだな、と頷き、
「良いだろう。〝契約書類〟に
「「うん」」
「おう」
「ああ」
「YES!」
「はい!」
飛鳥達が首肯し、ローズも頷き手を叩いた。
「うむ。では―――始め」
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最初に動いたのは十六夜だった。大地を踏み砕く勢いで飛び出してローズに肉薄する。
第三宇宙速度でローズを捕らえに掛かるが、同速度で手を弾かれる。
その攻防を繰り返している隙に、レティシアがローズの背後に回って捕らえに掛かる。
その気配を察知したローズは、真横に跳び回避する。流石に速度制限が掛かった状態では、二人を同時に相手するのは分が悪いと思ったのだ。
勿論十六夜とレティシアは、ローズが真横に跳んだすぐ後に十六夜は地を駆け、レティシアは空を翔び追う。
二人は第三宇宙速度を維持したまま地を駆け抜けるローズを同速度で追うという、飛鳥達が割り込む隙が無い追いかけっこが始まった。
光の速さと見紛うかのような三人の速度に、付いていけない飛鳥が呆れたように呟く。
「三人共凄いわね………どうやって私達はローズさんを捕らえればいいのかしらね」
「奇襲を掛けるくらい………かな?」
「そうで御座いますね。取り敢えず、ローズさんが此方に突っ込んで来た時に捕らえに掛かりましょう」
「そう言ってる間に来ましたよ皆さん!」
「「「!!」」」
ハッと視線を前に戻すと、一直線に切り換えたローズが飛鳥達に突っ込んで来ようとしていた。
ローズがわざわざ飛鳥達の方へ来たのは、このゲームは十六夜とレティシアだけの為のものではないからだ。
チャンスが巡ってきた飛鳥達は、まず飛鳥がローズの足止めをしようと一喝した。
「
飛鳥の
「嘘!?全く効いてない!?」
そう、飛鳥のギフトはローズの足止めを一秒足りとも発揮することなく彼女に砕かれたのだ。
それもそのはず、飛鳥とローズの格の違いは次元を超える程の差が生じているのだから。
飛鳥が悔しそうな表情でローズの方を眺め、その彼女は飛鳥の横を駆け抜けようとした。
「………そこっ!」
それを飛鳥の背後で待ち構えていた耀が、グリフォンのギフトで旋風を巻き起こして飛び出し、ローズの眼前に躍り出た。
そして不意を突いてローズを捕らえに掛かる耀。が、ローズは難なくそれを回避した。
「もらいました!」
「ぬっ!?」
ローズが躱したすぐ其処に超音速で飛び込んだ黒ウサギが迫っていた。
不意を重ねた不意打ちに、流石のローズも驚いたが、すぐに真横に跳んで躱わす。黒ウサギの手がローズの服を掠めたところで終わる。
しかし真横に跳んだ其処には第三宇宙速度で低空飛行していたレティシアが居た。
「ふふ。我が主から私のところに飛び込んできてくれるとは嬉しいぞ」
「………!ちぃ!」
回避出来ないと悟ったローズは舌打ちし、レティシアに殴り掛かった。
「―――くっ!?」
レティシアは反射的にローズの拳を防御するが、衝撃は殺せずに後ろに吹き飛ばされてしまう。
ローズは逃げるのみで今回のゲームを行うつもりだったのだが、流石に空中では避けられなかった為、暴挙に出てしまった。
着地と共に振り返ると、ローズの眼前には第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度で跳躍した十六夜が居た。
「もらった!」
「!?」
タイミングはバッチリで速度もローズより速い。勝った―――と十六夜は手を伸ばしながら思ったのだが、
「惜しいな」
いつの間にかローズの手が十六夜の伸ばした手に接近しており、そのまま弾かれてしまった。
「なっ………!?」
完璧だったタイミングで、しかもローズより速い速度で肉薄したはずなのに、捕らえようとした手は弾かれた。
十六夜は一瞬だけ考えるとすぐに結論が出た。
「(まさか、俺の手の内を読まれていた!?)」
そう、速度が速ければ普通はそれより遅いものが足掻こうが無理だ。
だが速度が速かろうが、動きを読まれていたのなら、あとはタイミングを合わせただけでどうとでもなる。
十六夜の速度は確かにローズを上回っていた。が、動きが単調過ぎてローズに読まれてしまっていたのだ。
彼処はただ手を伸ばして捕らえようとするのではなく、フェイクで一度相手を欺くべきだった。
そして十六夜の意識がローズから離れた一瞬の隙を突き、彼の視界から離脱するローズ。
ローズが駆けた先にはジンが居た。このまま突っ込めば彼を余波のみで消し飛ばしかねない。
ならばと左右を確認する。しかし其処には右は黒ウサギ、左は耀と飛鳥が押さえていた。では上は、と視線を向けるが、其処も吹き飛ばしたはずのレティシアが押さえていた。後ろには勿論十六夜が迫っている。
耀達の方は一見簡単に見えるが、すぐ傍には雪原の森林が有る。飛鳥が木々を操れば、それをローズが拳で砕いてる時に隙が出来てしまう。
ギフトの使用は禁じられている。空間制御の魔術ならば簡単に抜け出せるのだが、流石にこれはギフト無しでは切り抜けられない。
「(………ふむ。ハンデが大きすぎたか)」
ローズは苦笑を零し、そのままジンに突っ込んだ。
「「「え!?」」」
「「………は!?」」
「ええ―――!?」
ローズの行動にぎょっとする一同。最も驚いているのはジンだった。
ローズは気にせずジンを優しく抱き止めて駆ける足を止める。
その隙に十六夜が一瞬で追い付きローズの腕を掴んで勝敗は決した。
ローズの捕獲に成功した十六夜達プレイヤー側の勝利に終わったのだった。
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ゲームを終えてローズは頭を掻いて一言、
「ふむ………まさか飛び込んだ先にジンの坊やが居るとはな。してやられた」
「え?いえ、僕は別に」
「ああ。彼処に御チビが居なかったらまた振り出しに戻ってたぜ」
「ええ、助かったわジン君」
「ナイスプレイだったよ、ジン」
ローズだけでなく十六夜・飛鳥・耀からも称賛が贈られて、ジンは照れ臭そうに頬を掻く。
その光景を微笑ましそうに眺める白夜叉と黒ウサギ。しかしレティシアだけは不満そうにローズを睨み付け、
「それはそうと我が主。何故私だけ殴られなきゃならなかったのだ!」
「いや、あれはそうしなければ捕まってたからな。空中では汝を躱せなかったんだ。〝空を飛ぶ〟行為もハンデとして禁止していたんでな」
「そ、そうか」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろすレティシア。自分だけ雑に扱われたのかと思ったのだろう。
レティシアの心情を読み取ったローズはやれやれだな、と苦笑を零した。
これで今日のギフトゲームはお終い―――かと思い気や十六夜が拳を叩いて呟く。
「何か物足りねえな。捕獲ゲームもそこそこ楽しめたが………ねえ?」
「ほう。物足りないか。………ふむ、では―――」
「ふふ。ならば小僧。私の試練を受けるか?」
「ぬ?」
「あん?」
「「「「「え?」」」」」
唐突に割り込んできた白夜叉がニヤリと笑って言う。それに驚く一同だったが、十六夜が嬉々とした笑みで白夜叉に向き直り、
「へえ?白夜叉が相手してくれるのか?そりゃいい」
「うむ。折角私のゲーム盤に来ておるのだからな。私も少しは楽しませろ」
「呵々!」と笑って白夜叉が細めた金の瞳で十六夜を見つめる。
それに十六夜は不敵に笑って一歩前に歩み出て、
「いいぜ。早速殺ろうか白夜叉!」
「ふふ、良かろう。ならば私の試練といこうか!」
そう言って白夜叉は柏手を打ち、十六夜の手元に輝く羊皮紙―――〝契約書類〟が舞い降りた。