問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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あら、魔王襲来のお知らせ?
αα


 ―――〝ノーネーム〟本拠。地下三階の書庫。

 其処には書籍漁りで疲れた十六夜とジンが眠りこけていた。十六夜は首をもたげて呟く。

 

「………ん……御チビ、起きてるか?」

 

「………くー………」

 

「寝てるか………まあ、俺のペースに合わせて本を読んでいたんだから当然だな………」

 

 十六夜は「ふぁ」と欠伸をすると、ふと虹色の何かが彼の視界を掠めた。

 

「あん?」

 

 首を回して右隣を見ると―――床の上で丸まって寝息を立てていた虹髪の漆黒メイドの幼い少女・ローズが居た。

 十六夜は目を丸くして眠っているローズを見つめ、

 

「………何でこいつが此処にいんだ?」

 

 十六夜は眠い頭を起こして推測する。恐らく自分達を捜しに来たはいいが気持ち良さそうに寝ていた為、起こす気にはなれず最終的に彼女も釣られて寝てしまった………といったところだろう。

 十六夜は苦笑しながらも、ローズの頬を指で突っついたり、つねったり、引っ張ったりするが彼女が起きる気配はない。

 次に凸ピンをかましたり、脳天に強烈な手刀を叩き込んだり、スカートの裾を捲って「今日も黒か」と真剣な顔でチェックしたりするがやはり微塵も起きる気配はない。

 マジか、と苦笑いを浮かべながらローズを持ち上げてみる。

 

「………ホント軽いな。本当に無限司ってるのかこいつ。―――つか寝てる時、無防備すぎるだろオイ」

 

 まあ体重が軽いのと無限の恩恵(ギフト)は関係ないだろうけどな、と十六夜は思う。

 だがふとジンとローズを交互に見て、十六夜は面白そうな悪戯を見出だしニヤリと笑った。

 早速行動に移した十六夜はまず、持ち上げていたローズを柱に凭れかけさせ正座させる。

 続いてジンを起こさないようにそっと持ち上げて、彼の頭をローズのメイド服越しの太腿に乗せて寝かせ、顔を彼女のエプロン側に向けさせた。

 これでローズがジンを膝枕させた状態で共に眠っている構図になった。それを見て十六夜はほくそ笑む。

 丁度其処へ、飛鳥達が慌ただしく階段を下りてきた。

 

「十六夜君!何処に居るの!?」

 

「ん?ああ、お嬢様か。ちょっとこっち来な」

 

 十六夜は飛鳥・耀・割烹着姿の狐娘―――リリを手招く。それに飛鳥達は小首を傾げて、

 

「十六夜君?どうかし―――あら?」

 

「………これは、何か良い絵」

 

「ジ、ジン君がローズ様に膝枕されて気持ち良さそうに眠ってます!」

 

 飛鳥・耀・リリがニヤニヤと、ニコニコと仲良さそうに寝ているローズとジンを眺めた。

 すると、騒がしかったのかジンが目を覚ましてゆっくりと目を開けた。

 

「………え?」

 

 そしてジンの視界に広がる漆黒のエプロンと、頭の下から伝わる柔らかい感触。ちょっと身動ぎした瞬間、彼の視界を虹色の髪が掠める。

 ジンはハッとして視線を上に向けると―――人形を彷彿させるようなローズの寝顔が映った。

 

「―――うわあ!?」

 

 ジンは驚きの余り飛び起きる。が、床に散乱していた本を踏んでしまったようでバランスを崩し、

 

「わわっ!?」

 

 柱に背を凭れかからせていたローズを押し倒し、そのまま縺れ合うように二人は床に倒れた。

 

「いたたた………」

 

 ジンはゆっくりと起き上がると、いつの間にか目を覚ましていたローズの青白い焔のような瞳と彼の目が合い、

 

「―――ふむ?これは一体何の真似だ、ジンの坊やよ?」

 

「え?―――あ、」

 

 ローズの問いにジンは血の気が引いた。それもそのはずジンはローズの腹部に跨がった状態で乗っかり、彼の両手は―――彼女の微かな胸の膨らみをエプロン越しに捉えていた。

 

「~~~~~っ!!!」

 

 ジンは全身を真っ赤にすると、慌ててローズの上から跳び退く。そして彼は何度も何度も頭を下げて謝った。

 

「ご、ごごごごごめんなさいローズさん!!僕はその、そんなつもりはなかったんです………!!」

 

「………ん、まあ不慮の事故のようなものだろう?なら我はもう気にしてないから謝罪は良いぞ」

 

 ローズは平然とした態度でジンを許した。しかし彼女の頬が微かに赤く染まっている。裸を見られても全く気にしない彼女だが、異性に触れられるのはまだ慣れていないのだろう。

 その光景を見ていた飛鳥達はニヤニヤと笑ってジンに一言、

 

「あら、ジン君ったら大胆ね」

 

「うん。ローズを押し倒すなんて、ジンは出来る子」

 

「ジン君、不潔です!」

 

「ヤッハハハ!御チビ様、超グッジョブ!」

 

「なっ!?だ、だから僕は違うんですってば―――!!」

 

 憐れな少年、ジン=ラッセルの絶叫が本拠に木霊したのだった。

 

 

αα

 

 

 騒動が一段落着いて、十六夜は飛鳥に問う。

 

「んで、お嬢様達は俺達を捜していたみたいだが………用件は何だ?」

 

「ええ。いいからコレを読みなさい。十六夜君なら絶対に喜ぶわ」

 

「うん?」

 

 飛鳥から開封された招待状を受け取り、十六夜はそれに目を通す。

 

「双女神の封蝋………白夜叉からか?あー何々?北と東の〝階層支配者(フロアマスター)〟による共同祭典―――〝火龍誕生祭〟の招待状?」

 

「そう。よく分からないけど、きっと凄いお祭りだわ。十六夜君もワクワクするでしょう?」

 

 何故か自慢げな飛鳥。十六夜はそうだな、と頷き、

 

「『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会及び批評会に加え、様々な〝主催者〟がギフトゲームを開催。メインは〝階層支配者〟が主催する大祭を予定しております』………か。クソが、少し面白そうじゃねえか行ってみようかなオイ♪」

 

「ノリノリね」

 

 十六夜はすぐさま制服を着込み、ローズに向き直り、

 

「そうと決まればローズ!早速で悪いんだが、空間転移で北側まで俺達を連れてけコラ!」

 

「連れてけコラ!」

 

 十六夜の真似をする耀。ローズは「ふむ」と考え込み、

 

「我は別に構わぬが、一つ、ジンの坊やに訊きたい」

 

「え?何ですかローズさん?」

 

 ジンは小首を傾げて訊き返すと、ローズは「うむ」と頷いて、

 

「火龍というのはもしや―――〝サラマンダー〟の事か?」

 

「え?」

 

「四大元素を司る精霊のうち火を司るもので、手に乗るくらいの小さな蜥蜴もしくはドラゴンのような姿をした、燃える火の中や溶岩の中に住んでいる………サラマンデル、サラマンドラとも呼ばれる奴の事か?」

 

「えっと………〝サラマンドラ〟は精霊ではなく龍なので違いますね。それに彼らはそんな小さくありませんし」

 

「ふむ、それもそうか。それに〝火()〟ではなく〝火()〟だったな。………変な事を聞いて済まぬなジンの坊や」

 

「いえ、別に」

 

 ジンはそう言い、ふとローズの呼び方が気に入らないのかムッとした顔で彼女を睨み、

 

「それはそうと、十六夜さん達は名前で呼んでいますのに、どうして僕だけジンの()()何ですか?」

 

「ほう。年端もいかぬ少年が我の呼び方にケチを付けるか人の子よ?」

 

 ローズにスッと細めた瞳で睨まれて思わず怯むジン。するとそれに十六夜がニヤリと笑って割り込んだ。

 

「おいおいローズ。アンタこそ分かってねえな」

 

「ぬ?何がだ十六夜?」

 

「確かに総合ではアンタが御チビ様より次元が違う程格上だ。それは認める。だがな、立場はどうだ?〝ノーネーム〟最強の龍神様であるアンタの立場は()()()だ。使用人()()が〝ノーネーム〟のリーダーである御チビ様に逆らっちゃ駄目だろ?」

 

「え?ちょ、ちょっと十六夜さん!?」

 

 驚いて十六夜を止めに掛かるジン。しかしそれよりも早くローズは「ふむ」と頷き、

 

「………それもそうだな。いや、済まなかったよ。して我は汝をどう呼べば良い?ジン様か?ジン殿と呼べば良いか?」

 

「え!?あ、いえ………呼び捨てで構いません!」

 

「ふむ?そうか………ならば次からはジンと呼ばせてもらうとするよ」

 

「は、はい!」

 

 坊や、が消えてジンの表情が明るくなった。それを見た十六夜はボソリと呟き、

 

「よし、取り敢えず第一関門はクリアだな」

 

「………?何の話ですか十六夜さん?」

 

「ヤハハ、こっちの話だ。御チビは気にするな」

 

「は、はあ」

 

 十六夜の意味深な言葉にジンは小首を傾げる。ローズも全知でありながら()()()()には疎いのか、不思議そうな表情で小首を傾げている。

 ローズはまあ良いか、と十六夜への疑問を振り払い、視線を飛鳥と耀へ向け、

 

「そういえば飛鳥、耀。彼女達との試練はどうなっている?順調か?」

 

「いえ、全く順調ではないわ。一月も経過してるのに、ティアマトさんをまるで支配出来ないわ」

 

「私も、アペプが中々友達になってくれない。何が足りないのかな………」

 

 ガクリと肩を落としながら答える飛鳥と耀。ローズはそうか、と頷き、

 

「いや、ティアもアペも並みの龍達を遥かに凌駕する最強の存在だからな。寧ろ一月で使役出来てたらそっちの方が驚きよ。故に汝らが凹む事はない。何れは従わせて、友達(とも)にするつもりだろう?」

 

「………!ええ、勿論そのつもりよ。諦めてなんかやらないもの」

 

「うん。絶対に認めさせて友達になってみせる!」

 

「ふふ、その意気だ」

 

 落ち込みから一転、ローズの言葉に俄然やる気を出す飛鳥と耀。ローズはそんな二人を満足げに笑って見つめた。

 そして話を戻してローズは十六夜達を見回し、

 

「さて、北側へ転移するのはいいが………その前に招待状の送り主である白夜叉の話を聞かぬか?何か訳有りのような気がするしな」

 

「そうだな。ならまずは〝サウザンドアイズ〟へ殴り込みに」

 

「いや、殴り込みには行かないからな?話を聞きに行くだけだぞ十六夜」

 

「分かってるよ」

 

「ヤハハ」と笑う十六夜をやれやれだな、という風に肩を竦ませるローズ。

 だが今まで静聴していたリリが慌ててローズ達を引き止めた。

 

「ま、ままま、待って下さい!北側に行くとしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してからじゃないと………!」

 

「ぬ?何故その必要がある?我の空間転移なら無料で北側まで行けるんだが?」

 

 ローズがそう言うと、ジンはハッとして彼女に訊いた。

 

「ロ、ローズさん!此処から北側の境界壁までの距離が何れだけあるか分かってますか!?」

 

「ん?無論だ。全知のギフトで調べてみたが、ざっと九十八万キロといったところだろう?まあ我にとっては()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「はい?」」

 

 一瞬固まるジンとリリ。ローズはニヤリと笑って人差し指を立てた。

 

「我は無限故、生憎と疲れを知らぬ。此処から()()()()()()()()一瞬で転移可能だからな」

 

「「なっ………!?」」

 

 絶句するジンとリリ。十六夜は冷や汗を感じ取りながらもローズを睨んで笑い、

 

「つまり距離関係なく何処でも行けるって事か。ハハ、全く―――」

 

「「「便利な交通手段」」」

 

「汝らよ。我を何だと」

 

「「「え?何か言った、メイドさん?」」」

 

「………いや、何でもない」

 

 ローズは問題児三人に逆らえず、力なく肩を落とした。そんな不憫な彼女をジンとリリは憐れみの視線を向けるも、彼女のギフトの凄さを改めて実感した。

 

「す、凄いのですローズ様!」

 

「うん。これなら大祭の事を皆さんに秘密にはしなくてもよか―――」

 

「「「秘密?」」」

 

 重なる問題児三人の疑問符と、「ほう?」とローズがそれは良いことを聞いた、という風に邪悪な笑みを浮かべた。

 

「………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

 

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのに、とっても残念だわ。ぐすん」

 

「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」

 

「兎の娘だけでなく、我が眷属まで我を欺くとは。この恨み晴らさでおくべきか。ぐすん」

 

 泣き真似をするその裏側で、ニコォリと物騒に笑う問題児三人+龍神メイド。

 全知とは、直訳で全てを〝知っている〟と解釈されがちだが、真の意味は全てを〝理解出来る知恵〟が正しい。即ち、全知全能であるローズも、調()()()()()()()()ということになるのだ。

 ジンとリリは隠す気の無い悪意を前にして、ダラダラと冷や汗を流す。

 十六夜がローズに目配せすると、彼女は頷いて飛鳥が早急に書いた黒ウサギ達宛の手紙を空間制御の魔術で、農園跡地にいるであろうレティシアの手元へ転移させる。

 そしてローズは指を鳴らして、十六夜・飛鳥・耀・ジン・リリの五人を纏めて〝サウザンドアイズ〟支店へと転移させるのだった。

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