問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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αβ

 直接白夜叉の私室へ空間転移したローズ達は、白々しく白夜叉に、

 

「「「「お邪魔します」」」」

 

「………!?おんしらいい加減にせい!これでもう三十回目くらいは不法侵入しておるぞ!」

 

 白夜叉はいきなり現れたローズ達に怒鳴る。それに十六夜・飛鳥・耀はニヤリと笑って答える。

 

「「「その度に黒ウサギが生け贄になるからいい(だろ・でしょう・よね)?」」」

 

「ふん、全く―――仕方が無い奴らだの♪」

 

 白夜叉はノリノリで返してローズ達を許した。扱い易いことこの上ない星霊である。

 その様子を「くく」と喉を鳴らして笑うローズと苦笑するジン。リリだけは今この場に居ない黒ウサギを憐れみ合掌した。

 白夜叉は「オホン!」と咳払いをし、ローズに視線を向けて、

 

「………ローズちゃんが此処に来たということは―――遂に私の専属メイドに」

 

「いや、ならないからな?今日はこの招待状について話を聞きに来たわけだが」

 

 ローズがまたそれか、とゲーム盤を借りに此処へ訪れる度に言われてきた白夜叉の台詞にうんざりする。

 白夜叉はローズから手紙を受け取ろうとして、キラリと瞳を光らせ―――彼女の手首を掴もうとした。

 しかしローズは白夜叉の手を弾く。が、白夜叉はすぐさま追撃し、それをまたローズが弾く。

 その攻防が数秒間に幾千万と続き、やがて白夜叉は「チッ」と舌打ちして、今度はちゃんと手紙の方を掴んだ。

 

「うーむ………不意打ちしても無理か。全く、ローズちゃんには隙が無いの」

 

「ふふ。我の隙を突きたくば、空間跳躍でもするんだな。まあ尤も、その場合は我も空間転移で応じるが」

 

 白夜叉の呟きに得意げな表情で答えるローズ。すると十六夜が割り込み、

 

「何言ってんだよ白夜叉。ローズは寝てる時、隙だらけだったぜ?」

 

「ぬ?」

 

「なんと!?それは真か小僧!」

 

 十六夜の言葉に眉を微かに動かすローズと、驚く白夜叉。それに十六夜は頷き、

 

「ああ。寝てる時のローズに色々ちょっかいしてみたが、ちっとも起きやしなかったよ。勿論、スカートも捲った」

 

「ほう」

 

「「なっ!?」」

 

 キラリと瞳を怪しく光らせる白夜叉。ジンとリリは驚き赤面した。

 一方の飛鳥と耀は、十六夜を冷めた目で見つめ、

 

「寝てる時のローズさんにそんなことをしていたのね十六夜君」

 

「………ちょっと引くな」

 

「ヤハハ、俺の目の前で無防備な寝顔を晒していたローズが悪い」

 

「「あ、それは言えてる」」

 

「ちょ、飛鳥さん、耀さん!?」

 

 掌を返したように十六夜の言葉に一理ある、と頷く飛鳥と耀。その裏切りを怒るジン。

 一方のローズ本人は全く気にしていなかったが、白夜叉の発言により改めることになった。

 

「―――くく、そうか。寝てる時は隙だらけか。………うむ、今度寝込みを襲ってみようかの♪」

 

「……………」

 

 そう、その白夜叉の言葉を聞いて、ローズは寝る前に強力な結界でも張っておくか、と思ったのだった。

 

 

αβ

 

 

 暫くして、脱線していた話を元に戻すと、白夜叉は「うむ」と頷いて、

 

「本題の前にまず、一つ問いたい。〝フォレス・ガロ〟の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが………真か?」

 

「ああ、その話?それなら本当よ」

 

 飛鳥が正座したまま首肯し、それを確認した白夜叉は小さく頷き、ジンに視線を向け、

 

「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」

 

「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番良い方法だと思いました」

 

 ジンの返答に、「そうか」と白夜叉は鋭い視線で返し、

 

「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に魔王を引き付けることにもなるぞ」

 

「覚悟の上です。それに仇の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の組織力では上層に行けません。決闘に出向く事が出来無いなら、誘き出して迎え撃つしか有りません」

 

「無関係な魔王と敵対するやもしれん。それでもか?」

 

 更に切り込む白夜叉に、十六夜が不敵な笑みで答える。

 

「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より強力な魔王に挑む〝打倒魔王〟を掲げたコミュニティ―――どうだ?修羅神仏の集う箱庭の世界でも、こんなにカッコいいコミュニティは他に無いだろ?」

 

「………ふむ」

 

 茶化して笑う十六夜だが、その瞳は笑っていない。白夜叉は二人の言い分を噛み砕くように瞳を閉じる。

 暫し瞑想した後、呆れた笑みを浮かべた。

 

「其処まで考えてのことならば良い。これ以上の世話を老婆心というものだろう。それに―――」

 

 白夜叉は視線をローズに映し、ニヤリと笑って告げた。

 

「いざという時はローズちゃんが何とかしてくれるだろうしのう?」

 

「「「うん」」」

 

「はい!………え?」

 

「………ローズ様」

 

 頷く問題児三人と、頷きかける、否、頷いてしまったジン。リリは不憫なローズを憐れむが、肝心の彼女は全く気にしていなかった。寧ろ信頼されている事が嬉しいとさえ思っているのだ。

 白夜叉は「呵々!」と哄笑を上げて、

 

「しかし考えたのう、おんしら。魔王行為に片足を突っ込みかけたローズちゃんを、コミュニティの方針に泥を塗った罰としてメイドにしてしまうとはな」

 

「ああ。そのお陰でローズを好きに出来るからな」

 

「ええ。してやったりな気分よ」

 

「うん。こき使いたい放題」

 

 問題児三人は白夜叉と悪い笑みを交わす。最早溜め息しか出ないジンとローズ。やっぱり彼女は不憫な子だ、とリリが可哀想な子を見るような目でローズを見つめていた。

 

 

αβ

 

 

 また脱線してしまった話を、白夜叉は「オホン!」と二度目の咳払いをし戻す。

 

「さて。実はその〝打倒魔王〟を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたい事がある。此度の共同祭典についてだ。宜しいかな、ジン殿?」

 

「は、はい!謹んで承ります!」

 

 子供を愛でるような物言いではなく、組織の長として言い改める白夜叉。それにジンはパッと表情を明るくして応えた。

 

「ふむ。では何処から話そうかの………」

 

 白夜叉は何処から話したものか、と中庭に目を向け、遠い目をした後―――ふと思い出したように話し始めた。

 

「ああ、そうだ。北のフロアマスターの一角が世代交代をしたのを知っておるかの?」

 

「え?」とジンとリリが疑問の声を洩らし、白夜叉は頷いて続けた。

 

「急病で引退だとか。まあ亜龍にしては高齢だったからのう。寄る年波には勝てなかったと見える。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭でな」

 

「「「龍?」」」

 

 キラリと光る期待の眼差しを十六夜・飛鳥・耀が見せる。ローズもまた、「ほう」と笑みを浮かべた。この箱庭に棲まう、自分と同じ最強種―――龍の純血に出逢っていなかったので期待しているのだ。

 白夜叉は苦笑しつつ更に説明を続ける。

 

「五桁・五四五四五外門に本拠を構える、〝サラマンドラ〟のコミュニティ―――それが北のマスターの一角だ。ところでおんしら、フロアマスターについてはどの程度知っておる?」

 

「私は全く知らないわ」

 

「私も全く知らない」

 

「我も全く知らぬな」

 

「おいおい、嘘を吐くなよローズ。アンタならとっくに理解してんだろ?」

 

「ふむ、バレたか」

 

 頬を掻いて返すローズ。それを十六夜は呆れたように見つめ、

 

「バレバレだって。―――あ、因みに俺も全く知らねえや」

 

「いや、流石に汝は知っているだろう!?」

 

「ヤハハ、冗談だ。俺はそこそこ知ってるぜ。要するに、下層の秩序と成長を見守る連中だろ?」

 

「………そうだな。〝階層支配者(フロアマスター)〟とは箱庭の秩序の守護者であり、下位のコミュニティの成長を促す為に設けられた制度のことだ。

 主務は箱庭内の土地の分割や譲渡、コミュニティが上位の階層に移転出来るかどうかを試す試練(ゲーム)を行うなど、数多くの役割がある。

 そして秩序を乱す天災・魔王が現れた際には、率先して戦う義務があり、それと引き換えに、膨大な権力と最上級特権・〝主催者権限(ホストマスター)〟を与えられている………だな」

 

「………おう。代わりに説明ありがとよローズ」

 

 代わりに説明してくれたローズに、やっぱ知ってんじゃねえか、と苦笑する十六夜。

 

「しかし、北は複数のマスター達が存在しています。精霊に鬼種、それに悪魔と呼ばれる力ある種が混在した土地なので、それだけ治安も良くないですから………」

 

 ジンはそれだけ説明すると、悲しげに目を伏せた。

 

「けど、そうですか。〝サラマンドラ〟とは親交が在ったのですけど………まさか頭首が替わっていたとは知りませんでした。それで、今は何方が頭首を?やっぱり長女のサラ様か、次男のマンドラ様が」

 

「いや。頭首は末の娘―――おんしと同い年のサンドラが火龍を襲名した」

 

「は?」とジンが、「え?」とリリが小首を傾げて一拍、二度程目を瞬き、

 

「サ、サンドラちゃんが!?」

 

「え、ちょ、ちょっと待って下さい!彼女はまだ十一歳ですよ!?」

 

「あら、ジン君だって十一歳で私達のリーダーじゃない」

 

「そ、そうですけど………!いえ、だけど、」

 

「何だ?まさか御チビの恋人か?」

 

「ち、違っ、違います!失礼な事を言うのは止めて下さい!!それに僕は―――!」

 

 茶化してきた十六夜と飛鳥に怒鳴り返すジン。しかし彼は余計な事を口走りそうになると、ローズがそれに反応して小首を傾げ訊いてくる。

 

「ん?それに、何だ?ジンよ?」

 

「………な、何でも有りません!」

 

 ジンは顔を赤くしながら慌てて誤魔化す。そのジンの態度にローズは不思議に思いまた小首を傾げた。

 ジンの反応を見て十六夜と飛鳥はほくそ笑む。それに耀も察してニヤリと笑ったが、取り敢えず今は置いといて、と続きを促した。

 

「それで?私達に何をして欲しいの?」

 

「そう急かすな。実は今回の誕生祭だが、北の次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねておる。しかしその幼さ故、東のマスターである私に共同の主催者(ホスト)を依頼してきたのだ」

 

「あら、それは可笑しな話ね。北は他にもマスター達が居るのでしょう?ならそのコミュニティにお願いして共同主催すればいい話じゃない?」

 

「………うむ。まあ、そうなのだがの」

 

 急に歯切れが悪くなり、白夜叉は頭を掻いて言い難そうにしていると、十六夜が助け船を出した。

 

「幼い権力者を良く思わない組織が在る。―――とか、在り来たりにそんなところだろ?」

 

「んー………ま、そんなところだ」

 

 途端に飛鳥の顔が不愉快そうに歪み、彼女の目に見えるほど強い怒りと、落胆の色が浮かんだ。

 

「………そう。神仏の集う箱庭の長達でも、思考回路は人間並みなのね」

 

「うう、手厳しい。だが全く以てその通りだ。実は東のマスターである私に共同祭典の話を持ち掛けてきたのも、様々な事情が有ってのことなのだ」

 

「ふむ?本当に()()()()()()()()()()()ならいいけどな」

 

「え?」と唐突に意味深な発言をしたローズに視線を向ける一同。白夜叉がその意味を問い質そうと口を開きかけたが、耀がハッと気が付いたような仕草で制した。

 

「ちょっと待って。その話、まだ長くなる?」

 

「ん?んん、そうだな。短くとも後一時間程度は掛かるかの?」

 

「それ不味いかも。………黒ウサギ達に()()()()()()

 

 ハッと十六夜・飛鳥・ローズの三人も気が付く。一方のジン・リリの二人は「え?」と疑問の声を洩らす。

 

「待って下さい耀さん!黒ウサギ達に追い付かれるとは一体どういう意味ですか?手紙には何を」

 

「………それをジンが知る必要はない」

 

「ふふ、そうだな。ジンが知る必要はないぞ?」

 

「ええ。祭りの事を私達に隠していた黒ウサギ達に()()()()()()()………ね?」

 

「ああ。そんなわけで俺達はもう行く。邪魔したな白夜叉」

 

「む?そうか。北側へ向かうのだな?」

 

 白夜叉の問いに、「うん」と問題児三人+龍神メイドは頷き、

 

「「「じゃあ北側までよろしく、メイドさん」」」

 

「ああ。その言い方は気に食わないが………連れて行こう」

 

 苦笑と共にローズは指を鳴らして、十六夜・飛鳥・耀の三人と共にこの場から掻き消えた。恐らくもう北側へ着いている頃だろう。

 何故か置き去りにされてしまった、手紙の内容を知らないジンとリリ。そんな彼らに白夜叉が声を掛けようとしたその時。

 

「―――白夜叉様!あの問題児様方はまだ此方にいらっしゃいますか!?」

 

「我が主のことだからまず、此処に訪ねて来ていると思うのだが………!」

 

「ん?おお、黒ウサギにレティシアか!そんなに慌ててどうしたんだいやっほぉぉぉぉ!!」

 

「へ?きゃあ―――!?」

 

 白夜叉の私室に慌ただしく入ってきた黒ウサギとレティシア―――と金髪メイドに抱き抱えられた三毛猫。

 しかしその瞬間に黒ウサギは白夜叉のフライングボディーアタックの餌食となり、共に空中五回転半ひねりして吹き飛び………ボチャン!と着水。黒ウサギの怒りはこうして一時的に鎮められた。

 その光景を唖然と見つめるジンとリリ。レティシアはまた主達は不法侵入したな、と呆れたように頭を抱えたのだった。

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