問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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αδ

 ―――東北の境界壁・自由区画・商業区。赤窓の歩廊。

 十六夜と飛鳥は赤いガラスの歩廊に入り、人混みに紛れて黒ウサギ達から身を隠した。

 二人が隠れたのは、店と店の間にある横道。赤い煉瓦の壁際から顔を覗かせ、周囲と上空を窺う。

 

「………いないか?」

 

「ええ、多分。だけどこんなに早く追い付かれるなんて………」

 

「白夜叉が協力したせいだろうな。方法は恐らくローズと似た、空間を操る類いだろ。それにあの手紙は、黒ウサギ達を焚き付ける餌としては、冗談でも効果抜群だったってこともあるな」

 

 安全を確認した飛鳥は大通りに出て、スカートを靡かせるようにステップを踏み振り返る。

 

「へえ?見るからに野蛮で凶暴そうだと思われていたはずだけどな?」

 

「あら?細かい事を気にしていては、素敵な紳士にはなれなくてよ?」

 

 クスクスと互いをからかい合って笑う二人。

 十六夜は肩を竦ませて飛鳥の隣に立つ。

 

「それでは僭越ながら、エスコートの真似事でもさせてもらいますお嬢様」

 

「ええ。それじゃあ行きましょう」

 

 飛鳥はにこやかに笑って十六夜の手を取り歩き出す。

 だがふと飛鳥は、何気無く十六夜の手を取ったは良いものの、よく考えてみたらデートみたいだなあ………と思い急に恥ずかしくなってきた。

 それに気付いたのか、十六夜がニヤニヤと笑いながら訊いた。

 

「どうしたお嬢様?顔が赤いみたいだが」

 

「―――!?き、気のせいでしてよ十六夜君!」

 

「そうか?口調も何か可笑しいぜ?」

 

「―――き、気のせいと言っているでしょうッ!?」

 

 思わず声を上げてしまった飛鳥。ハッと口を手で塞いで十六夜を見るが、彼は特に気にした様子もなく軽薄な笑みを浮かべたままだった。

 ホッと息を吐いて、飛鳥は誤魔化すように話題を振る。

 

「………そ、そういえばジン君とローズさんはどうなってるかしら?あのままデートとかしたりしてないかしらね?」

 

「そうだな。そうだと俺としては面白えが………御チビの頑張り次第だな」

 

「ええ、そうね。そしたら弄り甲斐があるのだけれど」

 

「ああ。今のお嬢様みたいにタップリ弄れそうだな?」

 

「………っ!?」

 

 十六夜の言葉に飛鳥の顔が紅潮する。彼にはバレていたのだ。飛鳥の心情が。

 そもそも十六夜は賢い上に鋭いからバレないはずがないのである。

 しかしそれを飛鳥のプライドが認めなかった。彼女は十六夜から顔を背けて、

 

「………な、何のことか私にはさっぱり分からないわ。それよりも早く行きましょうっ!」

 

 ツカツカと歩き出す。十六夜はそんな彼女の背を面白そうに見つめ、

 

「あいよ」

 

 軽く返事して先を行く飛鳥の背を追うのだった。

 

 

αδ

 

 

 ―――一方、捕まってしまった耀は〝サウザンドアイズ〟の支店でお茶を啜っていた。

 その隣では何故か不機嫌そうに顔を剥れさせるリリと、同じく三毛猫が彼女の膝上で拗ねていた。

 本拠に置いてけぼりにされた三毛猫が拗ねるのは分かるが、リリが不機嫌なのは理解しかねた。

 そういえばジンがローズとデートに向かった後からずっとリリは不機嫌な気がする。もしかして彼女はジンの事が好きなのか?と耀は思い、これは面白いとニヤけた。

 それはさておき、耀は事の経緯を白夜叉に話すと、彼女は「呵々!」と哄笑を上げた。

 

「ふふ。なるほどのう。おんし達らしい悪戯だ。しかし〝脱退〟とは穏やかではない。ちょいと悪質だとは思わなんだのか?」

 

「それは………うん。少しだけ私も思った。だ、だけど、黒ウサギだって悪い。祭りの事を黙ってたんだから、これは相応の罰」

 

 当然の報い、と耀が「ふん」と鼻を鳴らす。するとそれにリリが怒る。

 

「ば、罰にしてはこの悪戯は酷すぎます!黒ウサギのお姉ちゃんが怒るのは当然です!ちゃんと仲直りしてください!」

 

「う………」

 

 リリが真剣な顔で耀を説得する。流石の耀も、子供相手にNOは言えず、小首を縦に振った。

 その様子を「くく」と喉を鳴らして眺める白夜叉。

 だがふと白夜叉は思い出したように手を叩いた。

 

「おお、そうだ。実はおんしに出場して欲しいゲームがあるのだが………どうかの?」

 

「………私に?」

 

 唐突に話を振られて小首を傾げる耀。

 そんな彼女に白夜叉は、懐から一枚のチラシを取り出して見せた。

 

 

『ギフトゲーム名〝造物主達の決闘〟

 

 ・参加資格、及び概要

  ・参加者は創作系のギフトを所持。

  ・サポートとして、一名までの同伴を許可。

  ・決闘内容はその都度変化。

  ・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。

 

 ・授与される恩恵に関して

  ・〝階層支配者〟の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言出来る。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。

 〝サウザンドアイズ〟印

   〝サラマンドラ〟印』

 

 

「………?創作系のギフト?」

 

「うむ。人造・霊造・神造・星造を問わず、制作者が存在するギフトのことだ。北では、過酷な環境に耐え忍ぶ為に恒久的に使える創作系のギフトが重宝されておってな。その技術や美術を競い合う為のゲームがしばしば行われるのだ。そこでおんしが父から譲り受けたギフト―――〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟は技術・美術共に優れておる。人造とは思えんほどな。展示会に出しても良かったのだが、そちらは出場期限が切れておるしの。その木彫りに宿る〝恩恵〟ならば、力試しのゲームも勝ち抜けると思うのだが………」

 

「そうかな?」

 

「うむ。本件とは別に、祭りを盛り上げる為に一役買って欲しいのだ。勝者の恩恵も強力なものを用意する予定だが………どうかの?」

 

「うーん」と余り気乗りしないように小首を左右に折る耀。だが、リリを見た瞬間―――ふと思い立ったように質問する。

 

「ね、白夜叉」

 

「何かな?」

 

「その恩恵で………黒ウサギと仲直り出来るかな?」

 

 耀の言葉に、リリは狐耳をピンッ!と立てて彼女を見る。耀の目的を知ってリリの表情はパッと明るくなった。

 白夜叉も「ほう」と感心したように頷く。

 

「出来るとも。おんしにそのつもりがあるのならの」

 

「そっか。それなら、出場してみる」

 

 コクリと頷く耀。それにリリは嬉しそうに笑って耀に話し掛けた。

 

「耀様!黒ウサギのお姉ちゃんと仲直りしてくれるのですね!」

 

「うん。リリの言う通り、ちょっとやり過ぎかなと思った。だからこのゲームで優勝して黒ウサギと仲直りする。応援してくれるリリ?」

 

「勿論です!頑張ってください耀様♪」

 

「うん、頑張る。リリも………ね?」

 

「………はい?」

 

 きょとんとするリリ。彼女は耀の言葉の意味を理解出来ていないらしい。

 だがそれは都合が良い、と耀はニヤリと笑うのだった。

 

 

αδ

 

 

 ―――その頃、ローズとジンは………飛行デートの真っ最中だった。

 北側の上空を飛び回り、街並みを上から眺める。ジンがローズに後ろから抱き抱えられるような形で。

 最初の方はローズの胸元に顔を押し当てられた状態だったが、顔を真っ赤にしたジンが苦しいと苦情を言った為、抱え方を変更しているのだ。本当は凄く恥ずかしかったからなのだが、これはジンと神のみぞ知ることである。

 ローズの胸が、黒ウサギや飛鳥並みに豊満だったら、ジンは窒息死していたかもしれない。その点では良かったと、失礼ながらも彼は思った。

 また、ローズがジンをお姫様抱っこしようとしたところ、彼は顔を真っ赤にして『恥ずかしいからやめてください!』と怒り却下された。

 ローズは上空を飛びながらジンに訊いた。

 

「ふふ。空からの眺めはどうだ、ジンよ?中々良いものだろう?」

 

「は、はい。これが空を飛べる者達が見ている光景何ですね。とても良い眺めです!」

 

「そうか。………ふむ、そろそろ降りるとしよう。あらかた上から見て回れたからな。次は歩行デートといこうかジン?」

 

「歩行デートとは言わないですが………はい、そうしましょう」

 

「うむ」

 

 ローズは適当な場所でジンを抱えたまま降り立つ。その場所は数多の出店が建ち並ぶ商業区。料理店が多いエリアだ。

 焼く音、揚げる音、元気な店員の声、食べ歩きする者、食べ物を片手に友人と会話を楽しむ者など様々な人達で賑わうこの場所を、ジンとローズは手を繋いで歩き回る。

 ジンはローズと手を繋いでいるせいか顔が赤い。他の人達に見られているせいでもあるのだろう。

 何故なら、ジンは兎も角、ローズの恰好はメイドであり、且つ目立ち過ぎる虹色の髪に人形のような美しい貌を持っているから仕方がない。

 それに加え、彼女から発せられる圧倒的な存在感が、道行く人達を振り向かせていた。ジン達〝ノーネーム〟はもう一月ほど彼女と一緒に過ごしている為、慣れてしまっているが、初めての者にとっては無視出来ない存在なのだ。

 改めてジンは、彼女と自分ではやっぱり釣り合わない気がして深い溜め息を吐いた。

 その溜め息を聞いてローズは不意に立ち止まり、ジンに向き直り言う。

 

「どうしたジン?溜め息など吐いて。幸せが逃げるぞ?」

 

「え?あ、いえ………僕は今、とても幸せなので大丈夫です」

 

「ぬ?」

 

「―――ッ!?な、何でもないです………っ!」

 

 ジンは慌ててローズから顔を逸らす。僕は何てことを口走ってしまったんだ、と後悔と恥ずかしさで彼女の顔をまともに見れない。

 そんなジンを不思議に思い小首を傾げて見つめるローズ。

 

「(………まさかこの少年、我とデートすることが幸せとか言うつもりか?)」

 

 もしそうなら変わった坊やだ、と口元を三日月形に作り笑うローズ。

 見た目こそ幼い少女だが、ジンとは比べ物にならない程長生きしている、人間でいえば老婆なのだ。そんな自分とデートなどして何が幸せか、と彼女は思ったのだろう。

 だが、ローズは自分なんかとのデートで楽しんでくれるなら、それはそれで良いか、と思いジンの手を引き再び歩き出す。

 ジンはふと、自分の手と繋がれたローズの手を眺めて疑問を口にした。

 

「………そ、そういえばローズさん。僕と手を繋いでいるのに恥ずかしくないんですね」

 

「ん?ああ、そうだな。我からの接触は別に恥ずかしくもなんともないよ」

 

「そ、そうですか」

 

 ローズが淡々と返すと、ジンは少しだけ考え込み―――思い切って彼女の左腕に抱き付いた。

 これにはローズも驚いたようで思わず立ち止まり、

 

「ジ、ジン!?いきなり何をするんだ!」

 

「す、すみません!ですが………これでローズさんも今、ドキドキしてますね?」

 

「―――っ!?」

 

 図星を突かれたのか、ローズの顔がみるみるうちに赤く染まっていった。そんな彼女に、ジンも恥ずかしがりながらもしたり顔を見せている。

 この少年、中々やるな、と感心するも異性に左腕に抱き付かれている為、顔は赤いままだった。

 ローズは恥ずかしいのを誤魔化すように「こほん」と小さく咳払いをし、

 

「馬鹿をやってないで早く行くぞ、ジン」

 

「は、はい」

 

 ローズの言葉に頷くジン。自分の左腕に抱き付いて離れないジンを、やれやれだな、と小さく溜め息を吐き、二人はデートを再開するのだった。




恋愛状況は、

ローズのことが好きなのはジン。しかしローズは恋愛に興味がない上、ジンに興味すらない。

リリはジンのことが好き………なのかもしれない。だがローズに取られないか心配している。

十六夜のことが好きなのは黒ウサギ。しかし十六夜は黒ウサギを弄り甲斐のある奴程度にしか思っていない。

飛鳥は十六夜とのデートもどき開始で彼を意識し始めている。が、今のところはちょっと気になる程度。

耀は十六夜にもジンにも興味はない。が、大切な友人と思っている。
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