問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ? 作:問題児愛
匿名で別作品の執筆に夢中で此方を疎かにしてしまいました、すみませんでした。
あ、あと二日遅れですが、明けましておめでとうございます!
その後、女性店員だけは来賓室を離れて、十六夜・飛鳥・耀・黒ウサギ・レティシア・ローズ・ジン・リリ・白夜叉・尖り帽子の精霊がこの場に残った。
白夜叉は来賓室の席の中心に陣取り、両肘をテーブルに乗せこの上なく真剣な声音で、
「それでは皆のものよ。今から第一回、黒ウサギの審判衣装をエロ可愛くする会議を」
「始めません」
「始めます」
「始めませんっ!」
白夜叉の提案に悪乗りする十六夜。速攻で断じる黒ウサギ。そんな三人を「くく」と喉を鳴らしながら見て笑うローズ。
飛鳥はやり取りに呆れつつも、例の真紅のドレススカートについて思い出し、白夜叉に訊いた。
「そういえば、黒ウサギの衣装は白夜叉がコーディネートしているのよね?じゃあ私が着ているあの紅いドレスも?」
「おお、やはり私が贈った衣装だったか!あの衣装は黒ウサギからも評判が良かったのだが、如何せん黒ウサギには似合わんでな。何より折角の美脚が」
「白夜叉様の異常趣向で却下されたのです。黒ウサギはあのドレスはとても可愛いと思っていたのですが………衣装棚の肥やしにするのも勿体ないと思った次第で。飛鳥さんは赤色がとても似合うので良かったのですよ」
「ふふ、ありがとう。黒ウサギの普段着ている服もとても似合っているわ」
飛鳥がお礼を言うと、黒ウサギはむぅっと複雑な表情を浮かべる。
そんな彼女を十六夜はニヤニヤと見つめ、
「ああ。黒ウサギの普段着ているあの服は、中々可愛くてお前に似合ってると俺も思うぜ」
「い、十六夜さん………!」
「―――あとエロさもあって一段といい」
「さ、最後の一言は余計なのですよ!?」
一瞬ときめいた黒ウサギの乙女心を返してください!と内心で叫ぶ黒ウサギ。そんな彼女をしたり顔で見つめる十六夜。
一方で、飛鳥が黒ウサギを嫉妬の眼差しで睨んでいた。どうしてかは分からないが、無性に腹立たしい。
そんな飛鳥を、耀が何かに気づいたようにニヤニヤと笑って見ていた。もしかして飛鳥も十六夜のことが好きなのかな?と。
耀のニヤニヤ顔を見て、ローズとレティシアも察したようにニヤリと笑う。飛鳥が十六夜を好きになっているとは意外だな、と思いながら。
白夜叉は、三角関係が出来そうだのう、とニヤニヤと笑いながらも本題を語り始める。
「ま、衣装は横においてだな。実は明日から始まる決勝の審判を黒ウサギに依頼したいのだ」
「あやや、それはまた唐突で御座いますね。何か理由でも?」
「うむ。おんしらが起こした騒ぎで〝月の兎〟が来ていると公になってしまっての。明日からのギフトゲームで見られるのではないかと期待が高まっているらしい。〝箱庭の貴族〟が来臨したとの噂が広がってしまえば、出さぬわけにはいくまい。黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させて欲しい。別途の金銭も用意しよう」
成る程、と納得する一同。
「分かりました。明日のゲーム審判・進行はこの黒ウサギが承ります」
「うむ、感謝するぞ。………それで審判衣装だが、例のレースで編んだシースルーの黒いビスチェスカートを」
「着ません」
「着ます」
「断固着ませんッ!!あーもう、いい加減にしてください十六夜さん!」
「ヤハハ、だが断る!」
「うむ。当然だの!」
茶々を入れる十六夜に、ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギだったが、効果がないみたい。
十六夜はそれを断り、白夜叉も便乗する。それに黒ウサギは、駄目だこいつら、とガクリと項垂れた。
三人の会話を聞いていたローズが「ふむ」と考え込み、
「……肩紐なしの両肩露出に加え、レース仕様の透け透けドレス服か。確かにそのような破廉恥極まりないものは、審判者が着る物ではないな」
「「なっ……!?」」
「そ、その話はもういいのですよローズさん!?」
ローズの言葉を聞いたジンとリリが顔を真っ赤にする。ぎょっとした表情でローズを見る黒ウサギ。
それに飛鳥と耀が生ゴミを見るかのような目付きで白夜叉を見て、
「最低ね、死になさい」
「うん、死ねばいいよ」
「ふん!小娘共には私の素晴らしきセンスを理解出来んわいっ!―――っておんしら!死ねは酷すぎんかの!?」
容赦ない飛鳥と耀に酷く傷付いた白夜叉。
一方の黒ウサギは、味方してくれた飛鳥達に嬉しく思った。が、飛鳥と耀はニヤリと笑い、
「そんな服より、〝ウサ耳引き抜きの刑〟の方が黒ウサギは喜ぶわよ」
「………へ?」
「うん。〝フギャア♪〟って最初の頃はとても喜んでた」
「誰がいつ喜びました!?って素敵耳引っ張られて〝フギャア♪〟とか黒ウサギは馬鹿でございますか!?黒ウサギはドMになった覚えは断じてございません!!」
勝手なことを言わないでください!と飛鳥達に怒る黒ウサギ。
それに十六夜は「よし」と手を叩き、
「それが本当か確かめてみようぜ!」
「え?ちょっ、十六夜さん!?」
十六夜のとんでもない発言に、ぎょっとする黒ウサギ。更にローズが頷いて、
「そうだな。なら、我がその役を承ろう」
「!?ちょ、ちょいとお待ちを!!」
「ん?」
「ん?じゃないのですよお馬鹿様!ローズさんにやられたら、本気で黒ウサギの素敵耳が引っこ抜けます!!」
「そうだな。なら尚更―――
「何でそうなるんですか!?」
絶叫を上げると、ウサ耳を庇いながら立ち上がる黒ウサギ。
ローズは「くく」と笑いながら立ち上がり、黒ウサギをロックオンする。
蛇に睨まれた蛙ならぬ、龍神に狙われた月の兎だ。
黒ウサギは、ローズから最早逃げられるはずもない状況に冷や汗を滝のように流し、
「「そこまで(です・だ)!」」
ジンとレティシアの一喝でローズがピタリと動きを止めた。
「………ぬ?」
「黒ウサギが可哀想です!やめてあげてくださいローズさん」
「そうだぞ我が主。主殿達なら兎も角、龍神の力では本当に黒ウサギのウサ耳が千切れるからな」
ローズに言い聞かせる
そんな二人にパッと表情を明るくする黒ウサギ。だが、
「ん?ちょっと待ってくださいレティシア様!十六夜さん達なら兎も角、というのは一体?」
「ん?そのままの意味だが?」
「レ、レティシア様!?」
ガーン、と酷く落ち込む黒ウサギ。まさかレティシア様まで問題児様方の仲間入りだなんて、と悲しく思った。
ジンとリリは、そんな黒ウサギを憐れむような視線で見つめる。
ローズは「ふむ」と少し考え込み、
「そうだな。ジンとレティシアが言うなら、我は従うとしよう」
ローズは大人しく引き下がって座り直す。それを確認した黒ウサギとジンはホッと安堵した。
一方、問題児達は面白くなさそうに表情を歪めていたが、ローズはジンを優先するから仕方ない、と肩を竦ませた。
黒ウサギ弄りはこの辺で終わりにして、耀はふと思い出したように白夜叉に訊いた。
「そう言えば白夜叉。私が明日戦う相手ってどんなコミュニティ?」
「ん?済まんがそれは教えられん。〝主催者〟がそれを語るのはフェアではなかろ?教えてやれるのはコミュニティの名前までだ」
そう返した白夜叉は、パチンと指を鳴らす。
すると昼間のゲーム会場で現れた羊皮紙が現れ、同じ文章が浮かび上がる。
其処に書かれているコミュニティの名前を見て、飛鳥は驚いたように目を丸くした。
「〝ウィル・オ・ウィスプ〟に―――〝ラッテンフェンガー〟ですって?」
「うむ。この二つは珍しい事に六桁の外門、一つ上の階層からの参加でな。格上と思ってよい。詳しくは話せんが、余程の覚悟はしておいた方がいいぞ」
白夜叉の真剣な忠告に、コクリと耀は頷き、
「大丈夫。いざという時はローズに助けてもらうから」
「は?」
「ぬ?」
耀の発言に間の抜けた声を洩らす白夜叉。ローズも思わず耀を見る。
「我が汝の助っ人として出場するのか?」
「うん。あ、でもなるべく自分の力で頑張りたいから、ローズには私だけじゃどうしても無理そうな時に助力をお願い」
「………ふむ、分かった。我は耀達のメイドだからな。快く引き受けよう」
「うん。ありがとう、ローズ」
礼を告げた耀に、うむと頷くローズ。これで明日の決勝は耀とサポーターとしてローズが出ることになった。
白夜叉は、まあ、ローズちゃんに頼りっきりではないのなら良しとするかの、と目を瞑った。
何せローズが耀に代わってゲームクリアして良いルールではないので、どのみち最後は耀の手でクリアしなければならないのだ。
一方の十六夜は、〝
「へえ………〝ラッテンフェンガー〟?成る程、〝
「え?」と飛鳥が声を上げるが、黒ウサギと白夜叉の驚嘆の声に掻き消された。
「ハ、〝ハーメルンの笛吹き〟ですか!?」
「待て、どういうことだ小僧。詳しく話を聞かせろ」
二人の驚愕の声に、十六夜は思わず目を瞬かせた。
白夜叉は幾分声のトーンを下げ、質問を具体化する。
「ああ、済まんの。最近召喚されたおんしは知らんのだな。―――〝ハーメルンの笛吹き〟とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ」
「何?」
「魔王のコミュニティ名は〝
「しかも一篇から召喚される悪魔は複数。特に目を見張るべきは、その魔書の一つ一つに異なった背景の世界が内包されていることです。魔書の全てがゲーム盤として確立されたルールと強制力を持つという、絶大な魔王でございました」
「―――へえ?」
十六夜の瞳に鋭い光が宿る。黒ウサギは説明を続ける。
「けどその魔王はとあるコミュニティとのギフトゲームで敗北し、この世をさったはずなのです。………しかし十六夜さんは〝ラッテンフェンガー〟が〝ハーメルンの笛吹き〟だと言いました。童話の類いは黒ウサギも詳しくありませんし、ご教授して欲しいのです」
黒ウサギは緊張した顔で言う。ローズの予言では、魔王襲来は明日のため緊張せずにはいられないのだろう。
十六夜は暫し考えたあと、悪戯を思いついたように立ち上がると、ジンの背後へと移動して座り込むと、彼の頭をガシッと掴んだ。
「成る程、状況は把握した。そういうことなら、此処は我らが御チビ様にご説明願おうか」
「え?あ、はい」
一同の視線がジンに集まる。ジンも承諾したものの、突然話題を振られたせいか顔を強張らせる。
そんな彼をローズが「ほう」と意外そうに見つめ、
「十六夜ではなくジンが説明するのか。これは実に興味深い。早速教えてもらうぞジンよ」
「!!は、はい!」
ローズの興味が自分に向いてくれたことを嬉しく思ったジンは、元気良く返事した。
十六夜はニヤリと笑って、ジンに耳打ちした。
「………早速見せ場が来たな。ローズに成果を見せてやれ」
「勿論です。―――って何でローズさん限定なんですか!?」
「ヤハハ、別に深い意味はないぜ?いいから早くしな」
「む………分かりました」
十六夜のわざとらしい態度にジンは訝るが、言及はやめた。十六夜が元の席に戻るのを確認したジンは語り始めた。
「〝ラッテンフェンガー〟とはドイツという国の言葉で、意味はネズミ捕りの男。このネズミ捕りの男とは、グリム童話の魔書にある〝ハーメルンの笛吹き〟を指す隠語です。大本のグリム童話には、創作の舞台に歴史的考察が内包されているものが複数存在します。〝ハーメルンの笛吹き〟もその一つ。ハーメルンとは、舞台になった都市の名前のことです」
グリム童話の〝ハーメルンの笛吹き〟の原型となった碑文にはこうある。
―――一二八四年 ヨハネとパウロの日 六月二六日
あらゆる色で着飾った笛吹き男に一三〇人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され、丘の近くの処刑場で姿を消した―――
この碑文はハーメルンの街で起きた実在する事件を示すものであり、一枚のステンドグラスと共に飾られている。
後にグリム童話の一篇として〝ハーメルンの笛吹き〟の名で綴られる物語の原型である。
「ふむ。ではその隠語が何故にネズミ捕りの男なのだ?」
「グリム童話の道化師が、ネズミを操る道化師だったとされるからです」
白夜叉の質問に滔々と答えるジン。そんな彼の説明を聞いていた飛鳥が静かに息を呑む。
「(ネズミを操る道化師………ですって………?)」
飛鳥の脳裏に、ネズミに襲われた時の光景が掠めた。そう言えばその際、不協和音のような笛の音を聞いたことを思い出した。
「ふーむ。〝
「YES。参加者が〝
「うん?なんだそれ、初耳だぞ」
「おお、そうだったな。魔王が現れると聞いて最低限の対策を立てておいたのだ。私の〝主催者権限〟を用いて祭典の参加ルールに条件を加えることでな。詳しくはコレを見よ」
ピッと白夜叉が指を振ると、光り輝く羊皮紙が現れ、誕生祭の諸事項を記す。
『§ 火龍誕生祭 §
・参加に際する諸事項欄
一、一般参加は舞台区画内・自由区画内でコミュニティ間のギフトゲームの開催を禁ず。
二、〝主催者権限〟を所持する参加者は、祭典のホストに許可なく入る事を禁ず。
三、祭典区画内で参加者の〝主催者権限〟の使用を禁ず。
四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ず。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟
〝サラマンドラ〟』
十六夜の手元に現れた羊皮紙に目を通し、小さく頷く。
「〝参加者以外はゲーム内に入れない〟、〝参加者は主催者権限を使用出来ない〟か。確かにこのルールなら魔王が襲ってきても〝主催者権限〟を使うのは不可能だな」
「うむ。まあ、押さえるところは押さえたつもりなんだがの」
白夜叉はそう言ってローズを見つめた。
「ローズちゃん曰く、私は明日襲来してくる魔王の特殊な力によって封印されてしまうようでの」
「何?それは本当か、我が主?」
レティシアが真剣な表情で訊くと、ローズは「ああ」と頷いた。
「残念だが白夜叉の要したルールは魔王共には無意味だ。奴らはルールに抵触せず〝主催者権限〟で汝を封印する。今のままでは運命は覆らぬよ」
「何だと!?私の用意したルールでは奴らを縛ることが出来んのか!?」
くっと悔しげな表情を見せる白夜叉。それを聞いた黒ウサギ達の表情も曇るなか、十六夜だけはスッと瞳を細めて笑い、
「へえ?成る程な。ローズが白夜叉の敷いたルールでは魔王を縛れないと言った。それはつまり―――奴らは
「え?」と一同の視線が十六夜に集まる。ローズは「ほう」と感心したように笑い、
「流石は十六夜、鋭いな。そうだ。奴らは参加者
「な、参加者ではないのでございますか!?」
驚愕する黒ウサギに、ローズは「そうだ」と頷いた。
参加者として忍び込んだわけではない。ならば魔王達の侵入方法は一体………と黒ウサギが考え込んでいると、十六夜はある推測を思いついていた。
「(………参加者以外で祭典区画内に潜り込む方法か。考えられるとしたら美術工芸の出展物が怪しいな。〝ハーメルンの笛吹き〟が明日の敵なら、伝承通りに碑文と一緒に飾られている
そう。参加者として来たのならば、白夜叉のルールに縛られて魔王は〝主催者権限〟を行使出来ない。
だが出展物として紛れ込むことが出来るなら、白夜叉のルールには抵触せず魔王は〝主催者権限〟を行使出来る。
「(―――待てよ。ということは魔王を招き入れた黒幕の正体は………〝 〟になるぞ)」
黒幕の正体に気づいた十六夜の表情は、みるみるうちに不愉快そうになる。
そんな十六夜を黒ウサギが不思議そうに見つめ、
「どうかしたんですか、十六夜さん?」
「んあ?………あー、別に。何でもない」
いつもの軽薄な笑みで誤魔化す十六夜。まだ彼の推測でしかないため、それを伝えて黒ウサギ達に余計な不安を抱かせるわけにはいかない。故に此処は黙っておく方がいいのだ。
一方の白夜叉は「うーむ」と唸り、暫し考え込むと、ローズを真剣な表情で見つめ、訊いた。
「ローズちゃん。ちなみにおんしには明日襲来してくる魔王の正体―――分かっておるな?」
「無論だ。未来予知が出来て魔王の正体は分からぬなど、そんな矛盾は生じぬよ」
それもそうだな、と一同は頷く。全知全能たる彼女に、そのような矛盾が生じていいはずがない。
もし矛盾が生じてしまったのなら、彼女は全能ではないことになってしまうのだから。
「―――だが、魔王の正体は教えられぬな」
「え?」
「え?ではない。魔王の正体を知った状態で、魔王のゲームに挑むよりも、知らぬ方が面白いだろう?」
「なっ!?」
ローズの言葉に驚愕の声を上げる黒ウサギ達。十六夜だけは「へえ」と不敵に笑う。
「確かにその方が面白い。………が、代わりにあんたが俺達の身の安全を保証してくれたりするのか?」
「む?」
「それもそうね。私達に魔王の正体を秘密にするのなら、それ相応の働きをしてくれないと、ねえ?」
「………………」
「うん。私達のメイドなら、身体を張って護ってくれなきゃ割に合わない」
十六夜の意見に便乗して飛鳥と耀も口々に言う。ローズは「ふむ」と少し考えて、
「そうだな。我は汝らのメイドだからな。汝らの命の保証は約束しよう。だが我の身体は一つしかないからな。流石に無傷で護り切るのは厳」
「ん?ローズちゃん、全能の癖に分s」
「白夜叉は少し黙っていろ!」
「ゴバァ!?」
ローズは不可視の攻撃で白夜叉を黙らせる。流石の彼女でも不意打ちの不可視の攻撃は避けられなかったのだろう。
額を押さえて悶絶する白夜叉を放っておき、ローズが続ける。
「んん!まあ、あれだ。………汝らの命は我が保証する。故に魔王戦、存分に暴れると良い」
「「「はーい」」」
ローズの言葉に元気良く返事する十六夜、飛鳥、耀。やる気満々の問題児達に苦笑する黒ウサギ達。
だが、ふと不安になったジンは、ローズに向き直り、
「あの………ローズさん」
「ん?何だ、ジンよ」
「え、えっと………僕の説明した情報は、魔王戦に役立ちますか………?」
おずおずと訊いてきたジンに、ローズはフッと笑って彼の頭に手を置き告げる。
「汝の情報は、魔王戦においてとても役に立つ。良くやったなジン」
「!!あ、はい!ありがとうございます!」
ローズに褒められた上に、優しく頭を撫でられて、ジンはとても嬉しそうな笑みを浮かべた。
そんな二人の様子を、いちゃついていると解釈し、ニヤニヤする問題児達と白夜叉。
姉と弟の戯れのように感じてほっこりする黒ウサギ。
ジンの満面の笑みが見れて嬉しく思うリリ。それと同時に、彼のその笑顔が向けられているローズへの嫉妬心が芽生えていた。
だがそんななか、飛鳥はふと自分の膝上で眠っている、尖り帽子の精霊に目を向けて、思い出したように内心で呟く。
「(〝ラッテンフェンガー〟が魔王の配下………?なら、この子は―――?)」
この精霊は確かに自分のコミュニティの名前は〝ラッテンフェンガー〟だと言っていた。
けれど〝ラッテンフェンガー〟は、ジンの説明を聞けば〝ネズミ捕り道化〟を意味する魔王の配下らしい。
しかし飛鳥には彼女がそんな邪悪な者には思えなかった。その事を皆に伝えようかと思ったが、結局伝えられずその場は解散となる。
飛鳥は不安を抱えたまま、宛がわれた自室に向かおうとしたところ、
「飛鳥よ、少しだけ良いか?」
不意にローズが呼び止めた。「え?」と振り返る飛鳥。
ローズの視線が尖り帽子の精霊に向けられていることに気づいた飛鳥は、思わず隠して彼女を警戒した。
だがローズはふっと笑みを浮かべて告げた。
「安心しろ、飛鳥。その精霊の娘は
「………え?」
「だがその娘は、明日襲来してくる魔王共に狙われている」
「!?魔王に、狙われているですって………!?」
瞳を見開いて驚愕する飛鳥。それにローズは「ああ」と頷くと、スッと瞳を細めて、
「故に、汝が―――その娘を護ってやってくれ。………
「………?彼ら?」
飛鳥には一瞬、ローズの言葉の意味を理解出来なかった。が、〝彼ら〟というのは尖り帽子の精霊が本来一緒にいるべきはずの者達―――群体精霊の事ではないかと考えついた。
だから飛鳥は力強く頷いて答えた。
「ええ。この子は私が護ってみせるわ!魔王なんかに渡してなんかやらないもの!」
「フフ、そうか。では任せたぞ、飛鳥よ」
「ええ。任されたわ」
飛鳥の元気の良い返事に満足したローズは、踵を返して自室へと向かっていった。
そんな彼女の背を見送った飛鳥の不安は、尖り帽子の精霊がシロだと分かって払拭された。
そして飛鳥は、その事を教えてくれたローズに感謝しながら、自室に向かい明日に備えるのだった。