問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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一週間後のはずが二週間後に………お待たせしてすみません(´・ω・`)

長期間書いてないと執筆速度が衰えてしまいますね………他のSSに至っては一文字も書けない………参ったorz

それはさておき―――どうしてこうなった。という内容になっております、後悔はしていないが!(`・ω・´)


απ

 ―――境界壁・上空2000メートル地点。

 遥か上空、境界壁の突起に四つの人影があった。

 

 一人目。白髪で露出が多く、布の少ない白装束を纏う女。女の手には、彼女の二の腕程の長さのフルートがある。

 二人目。黒髪短髪で黒い軍服を着た長身の男。男の手には、彼の身長と同等の長さの巨大な笛を携えている。

 三人目………否、三体目と表記するべきだろう。陶器の様な材質で造られた滑らかなフォルムと、全身に空いた風穴。全長五十尺はあろうという巨兵がいる。

 四人目。赤紫色の髪で白黒の斑模様のワンピースを着た少女。二本の黒い角が生えている少女である。

 

 そのなかの一人、白髪の女はフルートを弄びながら舞台会場を見下ろし呟いた。

 

「プレイヤー側で相手になるのは………〝サラマンドラ〟のお嬢ちゃんを含めて五人ってところかしらね、ヴェーザー?」

 

「いや、四人だな。あのカボチャは参加資格がねえ。特にヤバいのは吸血鬼と火龍のフロアマスター。そして―――」

 

「ダントツで最強なのが〝無限の魔王〟ね」

 

 ヴェーザーと呼ばれた黒髪の男に続いて、赤紫髪の少女が無機質の声で呟く。

〝無限の魔王〟と聞いて、白髪の女とヴェーザーの表情が強張る。

 そんな二人に赤紫髪の少女がクスリと笑い、

 

「大丈夫よ二人とも。私には未来から貰った〝龍殺し〟の武器があるわ。貴方達の武器(ふえ)にも〝龍殺し〟が付与されているもの。あの龍神を倒せる機会はきっと訪れるわ」

 

「でもよマスター。仏門へ下って力を抑えてるとはいえ、あの白夜王を凌ぐ怪物が相手だ。幾ら〝龍殺し〟が通用するからといって倒せるとは限らねえと思うが」

 

 ヴェーザーが不安を口にする。赤紫髪の少女は、そうね、と返し、

 

「たしかにあの龍神に勝てるとは微塵も思ってないわ。けど―――〝龍殺し〟が致命的な弱点の〝サラマンドラ〟を庇いながら戦う羽目になるのよ?隙くらいは突けるんじゃないかしら」

 

「「―――!!」」

 

 ハッと顔を上げる白髪の女とヴェーザー。盲点だった。〝龍殺し〟が致命的な弱点の相手は、あの龍神だけではないではないか。

 赤紫髪の少女は薄い笑みを浮かべながら二人を見回し、

 

「さ、ギフトゲームを始めましょう。貴方達は手筈通り御願い。〝無限の魔王〟の相手は私がするわ」

 

「おう、邪魔する奴は?」

 

「殺していいよ」

 

「イエス、マイマスター♪」

 

 

απ

 

 

 場所は変わり、本陣営のバルコニー。

 突如発生した黒い風が白夜叉の全身を包み込み、彼女の周囲を球体に包み込んだ。

 

「―――くっ!?」

 

「白夜叉様!?」

 

 サンドラは白夜叉に手を伸ばすが、バルコニーに吹き荒れる黒い風に阻まれた。

 黒い風は勢いを増し、白夜叉を除く全ての人間を一斉にバルコニーから押し出した。

 

「きゃ………!」

 

「お嬢様、掴まれ!」

 

 空中に投げ出された十六夜はすかさず飛鳥を抱きかかえて着地し、遥か上空の人影を睨む。

 

「ちっ。〝サラマンドラ〟の連中は観客席に飛ばされたか」

 

「い、十六夜君!」

 

「ん?」

 

 唐突に叫んだ飛鳥に、十六夜は目を向ける。彼の目に映ったのは、飛鳥が恥ずかしそうに顔を真っ赤にしているところだった。

 その飛鳥がキッと十六夜を睨み、

 

「ん?ではないわ!早く下ろしてくれるかしらっ!」

 

「ああ―――だが断る!」

 

「え!?」

 

「お嬢様がどうしても下ろして欲しいっていうなら、考えなくもないが?」

 

「なっ!?」

 

 ニヤリと笑いながら告げる十六夜。飛鳥は、十六夜にからかわれていることを悟り、ムッと睨み返す。顔を真っ赤にさせたままだが。

 十六夜はヤハハと笑いながら飛鳥を下ろそうとしたが、急に飛鳥が服を引っ張ってきたのでやめる。

 そして、背後に人の気配を感じ取って、飛鳥を抱きかかえたまま振り返ると―――黒ウサギが立っていた。嫉妬の眼差しを飛鳥に向けて。

 飛鳥のしたり顔を見て、成る程、と十六夜は彼女の行為の意味を理解する。

 飛鳥が羞恥よりも、黒ウサギを挑発する方を優先したのだと。

 十六夜は、飛鳥が自分の服から手を離すのを確認して、彼女を下ろす。

 それから舞台袖から出てきたジン達を確認したのち、黒ウサギに視線を向けた。

 

「魔王が現れた。しかもローズの予言通り、ギフトゲーム終了後にな」

 

「はい」

 

 黒ウサギが嫉妬の感情を消し、真剣な表情で頷く。ローズ以外の〝ノーネーム〟メンバーに緊張が走る。

 舞台周囲の観客席は大混乱に陥っており、我先に魔王から逃げようとする様は、まさに蜘蛛の子を散らすが如くである。

 阿鼻叫喚が渦巻く会場の中心で、軽薄な笑みを浮かべる十六夜だが、その瞳は真剣だ。

 

「白夜叉の〝主催者権限(ホストマスター)〟が破られた様子は無いんだな?」

 

「はい。黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きません」

 

「なら連中は、ルールに則った上でゲーム盤に現れているわけだ。………ハハ、流石は本物の魔王様。期待を裏切らねえぜ」

 

 ローズの昨夜言っていた〝魔王は参加者ではない〟というのは、どうやら本当らしい。

 耀は十六夜を見て訊いた。

 

「どうするの?ここで迎え撃つ?」

 

「ああ。けど全員で迎え撃つのは具合が悪い。それに〝サラマンドラ〟の連中も気になる。アイツらは観客席の方に飛んでいったからな」

 

「では黒ウサギがリリを連れてサンドラ様を捜しに行きます。その間は十六夜さんとレティシア様とローズさんの三人で魔王に備えてください。ジン坊っちゃん達は白夜叉様をお願いします」

 

「分かったよ」

 

 レティシアとジンとリリが頷く。対照的に飛鳥の顔が不満の色に染まる。

 

「ふん………面白い場面を外されたわ」

 

「そう言うなよお嬢様。〝契約書類(ギアスロール)〟には白夜叉がゲームマスターだと記述されてる。それがゲームにどんな影響を及ぼすのか確かめねえと―――」

 

「お待ちください」

 

 一同が声の方に振り向くとそこには、同じく舞台会場に上がっていた、〝ウィル・オ・ウィスプ〟のアーシャとジャックだった。

 

「おおよその話は分かりました。魔王を迎え撃つというなら我々〝ウィル・オ・ウィスプ〟も協力しましょう。いいですね、アーシャ」

 

「う、うん。頑張る」

 

 緊張しながらも承諾するアーシャ。黒ウサギは、分かりました、と頷き、

 

「では御二人は黒ウサギ達と一緒にサンドラ様を捜し、指示を仰ぎましょう」

 

 一同は視線を交わして頷き合い、各々の役目に向かって走り出す。が、

 

「待て、ジンよ」

 

「え?何ですか、ローズさん?」

 

 黒ウサギ達がサンドラ捜索に向かうなか、飛鳥や耀と同じ役割を任されていたジンがローズに呼び止められた。

 ジンは振り向くと、ローズが指輪を手渡してきた。

 

「………?ローズさん?コレは?」

 

 ジンは不思議そうに、ローズから渡された指輪を眺める。

 その指輪は、彼女の象徴図(シンボルマーク)―――〝己の尾を喰らう蛇〟が刻まれており、黄金の指輪にはダイアモンドが嵌め込まれていた。

 それを見た十六夜はニヤリと笑い、

 

「お?なんだ御チビ様。婚約指輪か?」

 

「はい!?」

 

「うむ。婚約指輪(エンゲージメント・リング)だ」

 

「「「………ほう」」」

 

「―――というのは冗談だ。そも、婚約指輪は、婚約する際に男性から女性に贈られる指輪だからな。雌龍の我が男のジンに贈ったところで婚約指輪にはならぬよ」

 

 肩を竦めながら言うローズ。あらそれは残念、と問題児三人が呟く。苦笑を零すレティシア。

 ジンもまた残念そうな表情をしていた。それを見たローズはニヤリと笑い、

 

「何だジン?我と結ばれたいのか?」

 

「ブッ!?な、ななな何を言うんですかローズさん!?」

 

「ん?違うのか?」

 

「え?あ、いや、それは………その………!」

 

 顔を真っ赤にしながら言い淀むジン。ローズは、くく、と笑いながらジンの額に指で触れて言った。

 

「まあ、どのみち今の汝ではそれは無理だがな」

 

「―――――ぇ?」

 

「ジンよ。汝は我が全てを捧げるに価せぬ存在だ。故に我は汝のモノになってやる気は更々ない」

 

「……………っ!」

 

 ローズに拒絶されて絶句するジン。分かっていたことではあるが、ローズ本人の口から言われたことがショックだった。

 ジンの泣きそうな表情を見たローズは、この少年は本気で我をモノにするつもりだったのか、と思い―――『これは面白い』と密かに笑った。

 そしてローズは、スッと瞳を細めてジンに言った。

 

「泣くのはまだ早いぞジン。これから我が言う()()を達成できたら、汝のモノになってやらんでもないぞ?」

 

「な、泣いてなんかいませ―――え?それは本当ですか!?」

 

 ローズの言葉に泣きそうな表情から一転して、パアッと明るい表情に変わるジン。

 何て分かりやすい子か、と苦笑を零す十六夜達。ローズも、くく、と笑い条件を口にした。

 

「ああ。それでその条件だがジンよ、汝が―――()()()()()()()()()()

 

「「「「……………は?」」」」

 

「……………」

 

 ローズの無理難題に素っ頓狂な声を上げるジン達。十六夜だけは無言でローズを見つめている。

 ローズは、ん?と小首を傾げて、

 

「どうした、汝ら?」

 

「どうした?じゃないですよローズさん!?十六夜さんを越えるなんて、僕には不可能です―――!」

 

「そ、そうよ!ジン君の言う通り無理だわ!」

 

「ローズ、それ鬼畜。ジンには絶対無理」

 

「ああ。我が主、その条件はジンには無理があるぞ」

 

 飛鳥、耀、レティシアにも『無理』と言われて凹むジン。

 ローズはやれやれと説明しようとしたその時―――無言だった十六夜が割り込んできた。

 

「待ちなお前ら。ローズが御チビ様に振った条件が〝俺を越えろ〟とか何とか面白そうな内容だが―――何も〝()()ってわけじゃねえだろ」

 

「え?それってどういうことですか十六夜さん?」

 

 十六夜の言葉にジン達が首を傾げる。レティシアだけはハッと気がつき、そういうことかと納得する。

 一方、ローズは、ほう?と感心して十六夜の回答を待つ。

 十六夜はニヤリと笑い、自分の頭を親指で指して答えた。

 

「ローズが言う〝俺を越えろ〟ってのは〝力〟じゃなくて―――〝()()()、だろ?」

 

「………!」

 

 十六夜の返答にようやく気がついたジン、飛鳥、耀は、ハッとローズを見る。

 ローズは、くく、と笑いながら頷き、

 

「ああ。流石は十六夜だな。説明の手間が省けて助かる」

 

「そりゃどうも」

 

「ふふ。ジンよ、〝力〟では敵わずとも〝知恵〟ならば、十六夜を越えられるやもしれぬぞ?」

 

「………〝知恵〟で十六夜さんを越える?僕が………?」

 

 ジンの表情に不安の色が浮かぶ。〝力〟ではないにしろ、〝知恵〟で自分なんかが十六夜に勝てるのだろうか。

 ローズはムッとしてジンを睨み、

 

「何だジン、我が欲しいんじゃなかったのか?」

 

「………!そ、それはもう欲しいに決まってます―――あっ」

 

 わざと剥れてみせたローズの罠にまんまと引っ掛かったジンが本音を洩らしてしまった。

 みるみるうちに顔を真っ赤にするジンを、十六夜達にニヤニヤ顔で見られるなか、ローズは、よしよし、と頷いた。

 

「では、〝我の一日独り占め券〟をかけて、十六夜とジンで勝負してもらおうではないか。一回戦目は―――〝現在行われている魔王のギフトゲームを相手よりも早く解き明かせ!〟でよかろう」

 

「ロ、ローズさんを、一日独り占め!?」

 

「へえ?つまり、俺と御チビ様で〝ハーメルンの笛吹き〟の謎解きに挑戦し、先に答えに辿り着けたものの勝ち、か。御チビ様に勝てば魔王のゲームが終わっても、別のお楽しみが待ってるわけだ?」

 

 興奮気味の声音を上げるジンと、物騒な笑みを浮かべる十六夜。ジンはデート的なことを想像(もうそう)し、十六夜は頭の中でギフトゲーム三昧の計画を立てる。

 互いにローズの〝独り占め券〟の奪い合いをする、男と男の熱い頭脳戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

 ジンと十六夜は互いに睨み合い、

 

「ローズさんは渡しません!僕が先に謎を解いてみせます!!」

 

「ヤハハ、そりゃ楽しみだな。俺より早く答えに辿り着けるかどうか、見せてもらうぜ御チビ様」

 

 ジンと十六夜は真剣な瞳で言い合う。目的は違えど、この勝負は互いに負けられないゲーム。

 そして、ローズは、くく、と笑い、

 

「さあ、開戦だ。ジン、十六夜。汝らの〝知恵〟を見せてもらうぞ」

 

「おう」

 

「はい!」

 

 二人の頭脳戦(たたかい)が幕を開けた。

 飛鳥と耀はジンの下に歩み寄り、エールを送る。

 

「絶対に勝利をもぎ取りなさい、ジン君」

 

「ジン、頑張って」

 

「ありがとうございます飛鳥さん、耀さん!絶対に勝ってローズさんを手に入れてみせます!」

 

「「〝一日独り占め券〟を、ね」」

 

「―――ハッ!?~~~~~ッッッ!!!」

 

 勝手に自爆して赤面するジン。それを見て、ニヤニヤと笑う飛鳥と耀。

 一方、レティシアは十六夜へと歩み寄り、

 

「主殿。この勝負、是非勝ってくれ」

 

「あん?お前は御チビを応援しないのか?」

 

「ああ。これ以上、ジンと我が主の仲が深くなってしまうのは眷属として、私が寂しくなるからな」

 

「………あいよ。ま、俺は負ける気なんざ更々ねえから安心しな」

 

「そうか。頼んだぞ主殿」

 

 レティシアの言葉にヤハハと笑って頷く十六夜。それにしても、レティシアが寂しがり屋なのは意外だなと思う十六夜。

 これはレティシア弄りの良いネタになるな、と一人密かに笑みを浮かべた。

 ジンは、あっと思い出したようにローズの下へ駆け寄り、

 

「ローズさん!」

 

「ん?なんだジン?」

 

「この指輪は何ですか?」

 

 そう言ってジンはローズから受け取っていた黄金の指輪を見せる。

 ローズは、そういえば説明がまだだったな、と呟き、

 

「その指輪には、我の能力の一つを与えている。〝物質結界〟というものだ」

 

「〝物質結界〟ですか?」

 

「ああ。言うなればそれは、物質界そのものの強度を結界にしたモノでな、〝物質結界(コレ)〟は物質界に存在するものでは決して壊せぬ代物だ」

 

「………!もしかしてその結界の正体は、キ○スト教や一部のグノーシス主義で、ウロボロスは物質世界の限界を象徴するものとされている―――これですか!?」

 

 ジンの言葉に、ローズは目を丸くして驚く。

 

「………ほう。よく知っているなジン」

 

「はい。大好きなローズさんのことを調べ尽くしましたから!―――あっ」

 

 またやってしまった、と慌てて口を塞いで赤面するジン。ローズは、ふふ、と笑いながらジンを見つめ、

 

「大好き、か。嬉しいことを言ってくれるなジン。だが、分かっているとは思うが、我は汝の遥か歳上だぞ?ロリババアとやらだぞ?それでも、我を選ぶか坊や?」

 

「はい。なんと言われようとも僕の気持ちは変わりません。それにローズさんは、お婆さんなんかじゃありません!可愛い女の子ですッ!僕の大好きな、可愛い女の子ですッ!!」

 

 ジンは嘘偽りのない言葉を紡ぎ、ローズへの想いを口にする。

 ローズは、ジンに〝可愛い〟を連呼されてほんのり頬を赤らめた。如何に恋愛に興味がなくても〝可愛い〟と言われたら嬉しいし頬を赤らめたりもする。

 それと同時にローズは困惑していた。何故我なのかと、何故年相応の相手を選ばぬのかと。

 年相応の相手なら、リリやサンドラあたりがいるではないか。そっちの方がジンはお似合いではないか。

 それなのに、ジンは我を選ぶ。こんな年寄りと結ばれたところで良いことなどないというのに。

 だが、ふとこんなことを思い始めた。もしも我のお気に入りが十六夜からジンに変わるようなことがあるのならば、我に恋するジンに恋をするのだろうか?

 答えは、調べればすぐに出るだろう。が、我は敢えて知らないでおこう。その答えが変化して別の答えを導き出すかもしれないから。

 ローズはフッと笑うと、ジンを細めた瞳で見つめ、告げた。

 

「ふふ、良いだろう。其処まで我を選ぶというのなら、止めはせぬ。故にジンよ。汝が十六夜を越えて、我の心の臓(ハート)を射止めてみせよ。我を―――()()()()()()()()

 

「―――!はい!絶対にローズさんをデレさせてみせますッ!!」

 

「ああ。その日を楽しみにしているぞ、ジン」

 

 ジンとローズは互いに見つめ合う。絶対にローズさんと結ばれてみせる、とジンは硬く決意する。ジンが我に恋心を抱かせられるか楽しみだ、と笑みを浮かべるローズ。

 そんな二人を問題児達はニヤニヤと笑いながら眺める。レティシアだけは、我が主を盗らないで欲しいんだが、と複雑な表情を浮かべていた。

 するとその時、上空から無機質な声音が聞こえてきた。

 

「―――熱いラブコメ中のところ悪いのだけれど、貴方達は魔王のギフトゲームが始まっているということを忘れてない?」

 

「ぬ?」

 

「ん?」

 

「「「え?」」」

 

「はっ!?」

 

 ローズ達は声のする方に目を向ける。其処には、若干不機嫌そうな表情をしていた赤紫髪の少女がいた。その右隣には黒髪の男、ヴェーザーが。左隣には白髪の女が。背後には陶器の巨兵が控えている。

 ローズは、くく、と笑い、

 

「ああ、無論―――忘れてたぞ?」

 

「そう………って、え?」

 

「おい、違うだろローズ。其処はだな―――うん、俺もすっかり忘れてたわ」

 

「なっ!?」

 

 ケラケラと笑いながら魔王一行を挑発する十六夜。飛鳥と耀が苦笑し、ジンとレティシアは溜め息を吐く。

 赤紫髪の少女は、ハァと深い溜め息を吐いたのち、薄っすらと怒りの表情を浮かべ、

 

「………ヴェーザー、ラッテン、シュトロム。()っちゃっていいよ」

 

「おう」

 

「了解♪」

 

「BRUUUUUUUUUUM!!」

 

 赤紫髪の少女の命令を受けてヴェーザーと、ラッテンと呼ばれた白髪の女、シュトロムと呼ばれた陶器の巨兵がローズ達に襲いかか―――パチン。

 

「「!?」」

 

 ―――れなかった。不意にヴェーザー達の動きが封じられてしまったからだ。

 ローズが指を鳴らして、空間制御の魔術を行使し空間そのものを歪ませ彼らの身動きを封じたのだ。

 ローズはやれやれと溜め息を吐き、

 

「そう急くな。ちゃんと汝らと戯れてやる」

 

「「「………ッ!?」」」

 

「―――十六夜達がな」

 

「「「………は?」」」

 

「は?」

 

「へ!?」

 

 ローズの言葉に素っ頓狂な声を上げるヴェーザー、ラッテン、赤紫髪の少女、レティシア、ジン。

 ポカンと口を開く飛鳥と耀。十六夜だけはヤハハと笑う。

 ローズは十六夜に振り向き、

 

「さて、十六夜。魔王と殺り合う前に―――ヴェーザーとやらでウォーミングアップしてくると良い」

 

「あいよ。その代わり、魔王様を独り占めすんなよローズ」

 

「ふふ、無論だ。では………行ってこい」

 

 パチン、と指を鳴らして十六夜とヴェーザーをこの場から消した。

 急に消失したヴェーザーに、ラッテンと赤紫髪の少女がギョッと瞳を見開く。

 一方、そんな光景が当たり前になっているジン達は特に驚きもしない。

 次にローズは、ジン、飛鳥、耀の三人に目配せして、

 

「ジン、飛鳥、耀。汝らを白夜叉の下へ跳ばすとしよう」

 

「ええ、お願いするわ」

 

 飛鳥が返事をすると、指を鳴らして飛鳥達三人を白夜叉のいるバルコニーへ跳ばす。

 そして、この場に残ったローズと眷属のレティシアは、ラッテン、シュトロム、赤紫髪の少女と対峙する。

 

「待たせたな魔王の娘とその配下共よ。此方の準備は整った。存分に殺り合おうではないか」

 

「………そうね。だけど一ついい?」

 

「ん?」

 

「ヴェーザーを何処へやったの?」

 

 赤紫髪の少女が問うと、ローズは境界壁を指差して、

 

「汝の配下の一人なら、境界壁(アレ)の天辺に跳ばしたぞ。今頃は我の十六夜(おきにいり)と殺り合っているだろうよ」

 

「そう。教えてくれてありがと」

 

 クスリと笑って赤紫髪の少女は名乗った。

 

「私は〝黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)〟よ。手合わせ願うわ―――〝無限の魔王〟」

 

「ふふ、良いだろう。遊んでやる。何処からでも掛かって来るがよいぞ魔王の娘」

 

 今ここに、眷属の吸血姫を傍らに置く〝無限の魔王〟と、一人と一体の配下を傍らに置く〝黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)〟の闘いの狼煙が上がった。




次回はバトルメイン。

十六夜VSヴェーザー(十六夜に〝龍殺し〟は効かないからヴェーザーは原作通りの強さと変わらない)

レティシアVSラッテン&シュトロム(レティシアに〝龍殺し〟が効くからラッテンの強さは変わらないが、笛は原作以上に強化されてるためかなりの難敵)

ローズ(のちにサンドラ)VSペスト(〝龍殺し〟の武器持ちのためペストは原作以上に強化された難敵。ローズはともかくサンドラには厳しすぎる敵)

飛鳥達は原作とは違い最初はラッテンとは衝突しない。
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