問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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一月以上間を開けてすみません。
デアラの方を一巻完結させたくて問題児の方の執筆を止めていました。
しばらくは問題児の方を執筆するつもりです。


ασ

 時を遡り、〝黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)〟と〝無限の魔王(ウロボロス)〟が戦闘を開始した時の舞台会場。

 そこには、金髪吸血姫メイド兼ね龍神(ローズ)の眷属のレティシアと、白髪露出狂女ラッテンと陶器の巨兵シュトロムが対峙していた。

 シュトロムを背後に控えさせているラッテンが、口元に笑みを作って言った。

 

「ふふ。マイマスターも〝無限の魔王〟と戦闘を始めたみたいだし、私達も始めましょう?純血の吸血鬼さん」

 

「………そうだな。私も、我が主に借りている力を早く試したいと思っていたところだ。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

 

 そう言って、レティシアは懐から紅と金と漆黒のコントラストのギフトカードを取り出す。

 

「我が主?………ふうん?よく分からないけれど、それじゃあ見せてもらおうかしらね」

 

 ラッテンは地面を蹴ると、シュトロムの頭部に着地して、様子見を始めた。シュトロムも今のところ動きを見せない。

 それにレティシアは、それでは遠慮なく、という風にギフトカードを掲げて、

 

 

「【ヴロンティ】―――形状(スシマ)雷の槍(ドリィ・ティス・ヴロンティス)

 

 

 レティシアがそう告げると共に、ギフトカードが眩く輝き、そこから凄まじい雷光が迸った。

 そしてその雷光は、レティシアの右手に集まっていき、やがて槍の形を形成した。

 

「………これが、我が主の能力の一つか」

 

 バチバチッ、と放電する雷の槍を眺めてボソリと呟くレティシア。我が主―――ローズに貸し与えられた〝雷の魔術師〟の力の一端である。

 シュトロムの頭部に立って見ていたラッテンが、興奮気味に声を上げた。

 

「あら、何その力!?吸血鬼の力………ではないわね。さっき『我が主』とか言ってたから、その人の力ねきっと!ああ、いいわぁ!ますます欲しくなってきたわ!」

 

 ラッテンがフルートを指揮棒のように掲げると、

 

「BRUUUUUUUUUM!!」

 

 今まで動きを見せなかったシュトロムが奇声を上げ始めた。それから全身の風穴から空気を吸い込み、四方八方に大気の渦を造り上げていく。

 地上に起きた乱気流の渦が、周囲の瓦礫を吸収していき、それらを圧縮、臼砲のように一斉に放出した。

 迫りくる数多の瓦礫を見上げ、レティシアは―――

 

「フッ………!」

 

 ギフトカードを仕舞い、左拳一つで次々と粉砕していった。

 

「「(は・BRUM)?」」

 

 その光景に素っ頓狂な声を洩らすラッテンとシュトロム。

 レティシアはその隙に雷の槍を構えると、

 

「ハアァ―――ッ!」

 

 気合い一閃、ラッテン―――の乗っているシュトロムめがけて投擲した。

 大気を焼き尽くすほど加速した雷の槍は、易々とシュトロムの頭を撃ち貫き破壊する。

 

「う、嘘ッ!?」

 

「BRUUUUUUUUUM!!」

 

 驚愕の声を上げ、慌ててシュトロムの頭部から跳び降りるラッテン。

 雷の槍に撃ち抜かれたシュトロムは、断末魔のような雄叫びを上げながら崩れ落ち、土へと還っていった。

 レティシアは、「ふむ」と顎に手を当てて考える素振りを見せた後、

 

「陶器の巨兵には、ちょっと強力過ぎたな」

 

「………っ!」

 

 地面に降り立ったラッテンが、レティシアの力を目の当たりにして息を呑む。あのデタラメな投擲速度は、明らかに吸血鬼の域を越えている。『我が主』というのはまさか―――あの〝無限の魔王〟!?

 冷や汗を流すラッテンを見て、レティシアはニヤリと笑った。

 

「どうした?私はまだここから一歩も動いてないのだが………魔王の配下の力はこの程度なのか?」

 

「―――ッ!安心して、吸血鬼さん。私の力は、まだまだこれからよ!」

 

 ラッテンはそう言うと、フルートを唇に当て、不協和音を奏で始めた。

 その音を聞いたレティシアは―――

 

「―――ッ!?」

 

 ―――急に眩暈を起こしたように視界がぼやけてふらついてしまう。

 そんなレティシアを見たラッテンは、「あら?」と不思議そうに首を傾げた。

 

「てっきり、私の笛の音色も効かないと思っていたけれど………これは嬉しい誤算だわ」

 

「………ッ、舐め、るなッ!」

 

 怒号を上げ、何とか倒れずに踏み止まるレティシア。更に右手に雷の槍を出現させてラッテンめがけて振る―――『―――♪―――――♪』

 

「………ぐっ、」

 

 ―――えなかった。ラッテンが再び魔笛を奏でて、レティシアの意識を刈り取りにきたことによって。

 呻き声と共に片膝を突くレティシア。雷の槍が形を維持できずに霧散する。

 その様を、ラッテンは上機嫌で見下ろした。

 

「うふふ、いい眺めねえ。もう一度奏でれば、私のものになってくれるかしら?」

 

「だ、誰が貴様のものになるかっ!私の主は、ローズだけだ!」

 

 ラッテンを睨め上げて宣言するレティシア。その勢いで立ち上がろうとしたが、足に力が入らず立てない。

 ラッテンは「へえ?」と興味深かそうな顔を作り、

 

「ローズって誰のこと?もしかして〝無限の魔王〟の名前だったり?」

 

「ああ、そうだが?」

 

 即答するレティシア。〝無限の魔王〟が彼女の主。それはつまり、龍の眷属を意味していた。

 そこでラッテンは気づく。どうして純血の吸血鬼に魔笛の音色が通用したのかに。

 

「ふうん?じゃあ吸血鬼さんは私の音色が効いたんじゃなくて―――あの子に貰った〝龍殺し〟の恩恵が効いたってことね」

 

「―――!?〝龍殺し〟だと!?」

 

 ラッテンの口から飛び出してきた『龍殺し』に、表情を驚愕に染めるレティシア。

 とある龍の純血種によって造られた身体に加え、龍神(ローズ)の血を大量に啜ったことにより、吸血鬼より龍に近い存在となっている。

 そんな彼女に、〝龍殺し〟の恩恵は最悪の相性だった。

 

「………ッ!?」

 

 不意に後から何かが近づいてくる気配がした。レティシアは後ろを見て、驚愕する。

 それは数匹の火蜥蜴、〝サラマンドラ〟の同士であったが、明らかに様子が可笑しい。何せ、彼らが睨んでいる相手は魔王の配下(ラッテン)ではなく、レティシアの方だったのだ。

 ラッテンは「あら?」とやや驚いたような面持ちで首を捻る。

 

「近くに〝サラマンドラ〟の連中が来ていたのね。丁度いいわ、蜥蜴共、私の目の前にいる吸血鬼さんを捕らえなさい!」

 

『GYAAAAAA!!』

 

 ラッテンの命令に従うように、火蜥蜴達が雄叫びを上げながらレティシアに飛び掛かってきた。

 レティシアは「くっ」と苦々しい表情を作ると、右手を天に向けて、

 

「【ヴロンティ】―――放電(イレクトリキ・エッケノシ)!」

 

 そう叫んだ刹那、レティシアの右手から凄まじい雷光が迸り、周囲に放電を開始した。

 

「ちょ!?危ないじゃないの!」

 

 ラッテンは堪らず跳び退いて、レティシアから離れる。

 それをレティシアは安堵の息を吐こうとした。が、すぐに息を呑むことになる。

 何故なら、火蜥蜴達が、レティシアの放電を無視して遠慮無用に突っ込んできたからだ。自分達の命より支配者(ラッテン)の命令が優先ということか。

 

「………っ、なら―――形式(モルフィ)麻痺(パラリシ)!」

 

 レティシアは、ただ近寄ってくるものを焼き殺す雷ではなく、麻痺させる程度に変質させる。

 すると、火蜥蜴達は放電に触れた瞬間、身体が痺れたように動かなくなり、その場に倒れ落ちていった。

 その光景に、ラッテンは感心したように笑い、レティシアに拍手を送った。

 

「同士を傷つけずに無力化するなんてやるじゃない♪でもぉ―――」

 

 ニヤァと邪悪な笑みを浮かべて一言。

 

「私を麻痺させなかったのは失敗ね」

 

「………っ、しまっ―――」

 

 レティシアがラッテンを止めようと立ち上がるが、もう遅い。

 ラッテンは魔笛に唇を当て、奏でた。

 

「う………っ!」

 

 三度目の魔笛の旋律を聴き、レティシアは遂に耐えきれなくなり、その場に倒れてしまった。

 対照的に、ラッテンの傀儡となっていた火蜥蜴達が一斉に起き上がり雄叫びを上げた。

 

『GYAAAAAA!!』

 

 そして火蜥蜴達はレティシアに飛び掛かると、両腕を拘束し強引に立たせた。

 ラッテンは、恍惚な笑みを浮かべてレティシアの下へ歩み寄る。

 

「うふふ、はぁい確保♪」

 

「………っ」

 

 レティシアの顎を持ち上げて満足気に笑うラッテン。

 レティシアは、〝龍殺し〟が付与された音色を三回も聴いてしまったが為に、最早抵抗する力も残っていなかった。

 ラッテンは、ニヤァと邪悪な笑みを浮かべて上空を見上げた。

 

「ふふ、聞いてるかしら〝無限の魔王〟。今からこの吸血鬼さんを私が貰うわぁ。そこで指を咥えて見てなさい」

 

 そう言って、レティシアを完全にものにする為に、魔笛を唇に当てて、奏でる。

 それを耳にしながら、レティシアの意識が薄れていく。そんな中、内心で謝罪の言葉を述べていた。

 

「(………済まない、みんな―――我が主………)」

 

 その言葉を最後に、レティシアの意識は完全に途絶えた。

 

 

ασ

 

 

 時はまた遡り、ローズに空間転移でバルコニーに跳ばされた時。

 黒い球体に囚われた白夜叉の真ん前に跳ばされた飛鳥・耀・ジンの三人は、襲い来る黒い風から、ジンの指に通してあるローズに渡された黄金の指輪から発した透明な結界―――〝物質結界〟に守られながら対話していた。

 飛鳥がまず、白夜叉に訊いた。

 

「白夜叉、中の状況はどうなってるの!?」

 

「分からん。だが行動を制限されておるのは確かだ。連中の〝契約書類(ギアスロール)〟には何か書いておらんか!?」

 

 ハッとジンが拾った黒い〝契約書類〟を取り出す。

 すると書面の文字が曲線と直線に分解され、新たな文面へと変化したのだ。

 飛鳥はすかさず羊皮紙を手に取って読む。

 

 

『※ゲーム参戦諸事項※

  ・現在、プレイヤー側ゲームマスターの参戦条件がクリアされていません。

   ゲームマスターの参戦を望む場合、参戦条件をクリアして下さい。』

 

 

「ゲームマスターの参戦条件がクリアされてないですって………?」

 

「参戦条件は!?他には何が記述されておる!?」

 

「そ、それ以上の事は何も記述されていないわ!」

 

 白夜叉は大きく舌打ちした。彼女の知る限り、この様な形で星霊を封印出来る方法は一つしかない。白夜叉は続けて言う。

 

「よいかおんしら!今から言う事を一字一句違えずに黒ウサギへ伝えるのだ!間違える事は許さん!おんしらの不手際は、そのまま参加者の死に繋がるものと心得よ!」

 

 普段の白夜叉からは考えられない、緊迫した声。

 飛鳥達は大きく息を呑み、白夜叉の言葉を待つ。

 

「第一に、このゲームはルール作成段階で故意に説明不備を行っている可能性がある!これは一部の魔王が使う一手だ!最悪の場合、このゲームはクリア方法が存在しない!」

 

「なっ………!?」

 

「第二に、この魔王は新興のコミュニティの可能性が高い事を伝えるのだ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

「第三に、私を封印した方法は恐らく―――」

 

「ちょっと待ってください白夜叉様!」

 

 そこで急にジンが待ったをかける。

「え?」と驚く飛鳥と耀に、「は?」と間の抜けた声を洩らす白夜叉。

 

「な、何だジンよ!今は早急に黒ウサギに伝えねばならん緊急事態なのだぞ!」

 

「すみません!ですが白夜叉様、どうか―――封印方法は言わないでいただけますか?」

 

「何だと?それは一体どういう意味だ!?」

 

「僕と十六夜さんで勝負しているんです!このゲームの謎を先に解いたものが勝ちというルールで!ですから、僕は自力で白夜叉様の封印方法も解きたいんです!」

 

「魔王の舞台で何悠長な事を言っておるのだジン!?して、その言い出しっぺは誰だ!?」

 

 白夜叉の呆れたような顔で言った問いに、飛鳥と耀も「あっ」と思い出したようにジンと声を揃えて、

 

「ローズさんよ」

 

「ローズだよ」

 

「ローズさんです」

 

「あんの駄龍ッ!!こんな緊急時に何巫山戯とるんだああああああああああ―――――ッ!!!」

 

 白夜叉の怒号が辺りに響き渡った。

 

「………ちなみにジンよ、景品は?」

 

「ローズさん一日独り占め券です!」

 

「いい笑顔で答えるな戯けッ!取り敢えずおんしの用件は分かった。それなら封印方法は胸の内に止めておこう」

 

「白夜叉様!」

 

「だが―――封印が解け次第、ローズちゃんはこの私が本気で火炙りの刑に処すッ!異論など認めんッ!!よいな!?」

 

「わ、分かりました」

 

 クワッと瞳を見開いて宣言する白夜叉。どうせ太陽の炎で焼いても死なんし遠慮はいらんだろ、という目である。

 そんな白夜叉に、ジン達は苦笑しつつ、内心でローズに合掌した。

 白夜叉は盛大に溜め息を吐きつつも、ジン達に向けて告げた。

 

「兎に角!さっき私が話した事を、しっかりと黒ウサギに伝えるのだぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

「ローズちゃんにも!『逃げるなよ』と伝えておけ!」

 

「「「はーい」」」

 

『逃げるなよ』というのは、恐らくゲームからではなく、白夜叉からだろう。白夜叉は本当にローズを焼く気のようだ。

 ジン達はもう一度ローズに合掌した後、黒ウサギを探しにバルコニーを後にした。




ラッテンの魔笛ですが、〝龍殺し〟が付与されたことによって龍種の精神を殺し、操るのに特化した感じです。
まあ、それでもローズだけは操れませんが。


次回の展開は、

レティシアがラッテンの手に堕ちて、主たるローズと戦う。

サンドラもラッテンの魔笛に………

そして一時中断の雷鳴が響き渡った。
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