問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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予告詐欺すみません。
思いの外長引いてしまい、5000文字を突破してしまいました。
審議決議は、次回にお預けです(´・ω・`)


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 ―――境界壁・舞台区画。大祭運営本陣営、大広間。

 宮殿内に集められた〝ノーネーム〟一同と、その他の参加者達。

 魔王が襲来してきたというのに、誰一人と負傷した者はいなかった。

 敵に操られてしまったものはいたが。主に、〝龍殺し〟の影響を受けた〝サラマンドラ〟達が。

 敵と衝突したのは〝ノーネーム〟と〝サラマンドラ〟のみで、そのうち魔王とその配下の一人が〝無限の魔王〟の相手を優先したことが負傷者0人という記録を叩き出したのである。

 黒ウサギ・リリ・飛鳥(と尖り帽子の小さな精霊)・耀・ジンの四人は、十六夜にローズ、レティシアと合流を果たした。

 まず先に口を開いたのは、黒ウサギだった。

 

「十六夜さん、ローズさん、レティシア様!ご無事でしたか!?」

 

「こっちは問題ない。他のメンツも………全然元気そうだな」と十六夜が言うと、

 

「ええ」と飛鳥が、

 

「うん」と耀が、

 

「「はい!」」とジンとリリが返答する。

 

「無論だ。斑娘と笛娘は我とレティシアで、笛男は十六夜が押さえたからな」

 

「いや、我が主?私はネズミ使いに操られて、主に迷惑をかけてしまった身なんだが………」

 

 ローズの言葉に、レティシアが困った調子で訂正する。

 それを聞いた黒ウサギ達が、「え!?」と驚きの声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいレティシア様!操られたって………本当でございますか!?」

 

「あ、ああ。敵は〝龍殺し〟の恩恵を持っていてな。してやられたんだ」

 

 済まなそうに目を伏せるレティシア。

 そんなレティシアに掛ける言葉が見つからず、口を閉じる黒ウサギ・飛鳥・耀・ジン・リリの五人。

 一方、十六夜だけは「へえ?」と面白そうに笑い、

 

「つまり敵はローズの首を獲る気満々、ってことか」

 

「ふむ。我の首を獲ろうとしているものは、〝ペルセウス〟の小僧に、〝グリムグリモワール・ハーメルン〟の魔王とその配下………そして十六夜か。全く―――人気者は辛いな!」

 

「何で命を狙われてるのに楽しそうなんですかローズさんはッ!?………って、十六夜さんのは冗談ですよね!?」

 

「ん?そりゃ勿論―――本気だが?」

 

「なッ!?」

 

 愕然とするジン。ローズも諦めたような表情で苦笑した。

 すると飛鳥が挙手をして、

 

「白夜叉が抜けてるわよローズさん」

 

「ぬ?」

 

「うん。白夜叉が、封印が解けたらローズを火炙りにする、って言ってた」

 

「………ほう?東側最強のフロアマスター様にも狙われているのかー。これはこれは末恐ろしいことだー」

 

「恐ろしいと言う割には棒読みなのですよローズ様!?」

 

 言葉とは裏腹な口調で言うローズに、驚愕の声でツッコミを入れるリリ。

「くくく」と笑うローズと、ケラケラ笑う十六夜。

 飛鳥と耀、黒ウサギ、レティシアは、何時もの調子なローズに苦笑を零す。

 それはそうと、と十六夜が思い出したように黒ウサギを見て、

 

「審議決議ってのは何の事だ、黒ウサギ?」

 

「え?あ、はい。〝主催者権限(ホストマスター)〟によって作られたルールに、不備がないかどうかを確認する為に与えられたジャッジマスターが持つ権限の一つでございます」

 

「ルールに不備とな?」とローズが訊く。

 

「YES。ジン坊っちゃんの伝言によると『今回のゲームは勝利条件が確立されていない可能性がある』との事でした。真偽は兎も角、ゲームマスターに指定された白夜叉様に異議申し立てがある以上、〝主催者(ホスト)〟と〝参加者(プレイヤー)〟でルールに不備がないかを考察せねばなりません。それに一度始まったギフトゲームを強制中断出来るわけですから。奇襲を仕掛けてくる事が常の魔王に対抗する為の権限、という側面もあります」

 

「ほお………?要するにタイムアウトみたいなものか。無条件でゲームの仕切り直しが出来るなら、かなり強力な権限じゃねえか」

 

 思わず感心の声を上げる十六夜。

 だがローズは「ふむ」と顎に手を当てて、

 

「強力過ぎる反面、何らかのリスクもありそうだが………その辺はどうだ、兎の娘よ」

 

「は、はい。ローズさんの言う通り、リスクが生じます。審議決議を行ってルールを正す以上、これは〝主催者(ホスト)〟と〝参加者(プレイヤー)〟による対等のギフトゲーム。………えっと、単刀直入に説明しますと〝このギフトゲームによる遺恨を一切持たない〟、という相互不可侵の契約が交わされるのですヨ」

 

 黒ウサギの説明に、ローズはやはりなと溜め息を吐き、十六夜は片眉を歪ませる。

 

「………つまりゲームで負ければ最後、他の〝サウザンドアイズ〟や〝サラマンドラ〟は報復行為を理由にギフトゲームを挑むことが出来ない、ってことか」

 

「YES。ですので、負ければ救援は来ないものと思ってください」

 

「ハッ、最初から負けを見据えて勝てるかよ」

 

「十六夜の言う通りだな。そも、我がいる時点で『敗北』の二文字はありはせぬよ」

 

 十六夜が失笑し、ローズも肩を竦ませる。

 確かにそうだ。負ける前提で挑めば、勝てるものも勝てなくなる。

 そしてローズの言葉は、一見巫山戯ているように思えるが、そうではない。

主催者(ホスト)〟の勝利条件が、参加者(プレイヤー)を屈服及び殺害。即ちこれはローズも含まれている。

 現在進行形で封印されている白夜叉でさえ殺すどころか屈服させることも出来ない龍神を、一体どうして〝主催者(ホスト)〟に出来るというのか。

 ローズの参加を不可にでもしない限り、〝主催者(ホスト)〟の勝率は0%に等しいのだ。

 いや、もう〝主催者(ホスト)〟は、ローズの参加を認めている時点で()()()()()と言っても過言ではないだろう。

 だからローズの言葉を誰も否定出来ない。現に、死の概念すら通用しないことは、他でもない〝主催者(ホスト)〟が知ってしまっているのだから。

 黒ウサギ達が苦笑いを浮かべていると、大広間の扉が開いた。

 大広間に入ってきたのはサンドラとマンドラの二人。サンドラは緊張した面持ちのまま、参加者に告げる。

 

「今より魔王との審議決議に向かいます。同行者は四名です。―――まずは〝箱庭の貴族〟である、黒ウサギ。〝サラマンドラ〟からはマンドラ。その他に〝ハーメルンの笛吹き〟に詳しい者がいるのならば、交渉に協力して欲しい。誰か立候補する者はいませんか?」

 

 そう言いながら、ローズをジーッと見つめてくるサンドラ。全知全能たる龍神のローズには来て欲しいようだ。

 しかしローズは名乗りを上げずに、サンドラから視線を外して十六夜とジンを見た。

 参加者の中にどよめきが広がる中、十六夜は、ローズの視線に気づくと、ニヤリと笑ってジンの首根っこを掴まえた。

 

「〝ハーメルンの笛吹き〟についてなら、このジン=ラッセルが誰より知っているぞ!」

 

「………は?え、ちょ、ちょっと十六夜さん!?」

 

 突然声を上げた十六夜に驚くジン。声には出さなかったが、リリも驚いていた。

 ローズが「ほう」と瞳を細めてジンを見る。十六夜は悪戯半分本気半分で捲し立てる。

 

「めっちゃ知ってるぞ!兎に角詳しいぞ!役に立つぞ!この件で〝サラマンドラ〟に貢献出来るのは、〝ノーネーム〟のリーダー・ジン=ラッセルを措いて他にいないぞ!」

 

「ジンが?」

 

 キョトン、とした顔を向けるサンドラ。一瞬だけ顔に子供っぽさが出たサンドラだが、次の瞬間には頭を振ってキリッ!と表情を戻す。

 

「他に申し出がなければ〝ノーネーム〟のジン=ラッセルにお願いしますが、よろしいですか?」

 

 サンドラの決定に、再びどよめきが広がる。

 

「〝ノーネーム〟が………?」

 

「何処のコミュニティだよ」

 

「信用出来るのかしら」

 

「決勝に残っていたコミュニティか?」

 

「ありえねえ」

 

「おい、他に立候補者は―――」

 

 他の同行者を求める声が上がるも、現れる気配はない。

 しかし自分達の命運を決めるゲームの交渉テーブルに、〝ノーネーム〟が着くことが不安なのだろう。

 ジンもその空気を察して手を挙げなかったのだが、十六夜は剣呑な表情で囁く。

 

「馬鹿かオマエ。毎夜毎晩書庫で勉強してたのは何の為だ。此処で生かさなくてどうする」

 

「そ、それは」

 

 ジンの瞳が揺らぐ。彼は何も、十六夜の案内をする為だけに書庫に下りていたわけではなかった。

 才能が乏しいからこそ、今後のコミュニティの為に必死で勉学に勤しんでいたのである。今回は偶然にも、その知識が役立つゲームなのだ。

 ………真の理由は、全知のローズに少しでも近づきたい、という思いからなのだが。

 

「周りに気を使うのはまあ、いいことだ。誰にも迷惑をかけねえってのが御チビの処世術なら文句は言わねえよ。―――だけど、お前は俺達の旗頭なんだ。お前が我を見せつけねえと罷り通らねえことが、今後も必ず来る。違うか?」

 

「………っ……」

 

 十六夜の言葉を奥歯で噛み締め、ジンは顔を上げた。途端に周囲の視線が集まる。

 不安と不満。混濁した負の視線の中で、黒ウサギとサンドラ、リリは期待の視線を向けていた。

 一方、飛鳥と耀は何故かニヤニヤと笑ってジンを見ていた。ローズは瞳を細めたままジンを見つめている。

 

「もう寄生虫だの何だの言われたくないんだろ?変わりたいって言ったじゃねえか。ならちょっとカッコいいところを周りに見せつけて、名を挙げてやろうぜ、リーダー」

 

「は、はい………!」

 

「それとローズにもお前の知恵を見せつけてやれ。認めてもらいたいんなら、此処で退いてる場合じゃないぜ」

 

「―――!そ、そうですね!此処で退いたら、ローズさんは手に入りませんよねッ!!」

 

 ジンはグッと拳を握り締めて言う。

 するとローズが「ほう?」と面白そうにニヤリと笑い、

 

「では、ジンの知恵を早速見せてもらおうか。期待しているぞ?」

 

「………!は、はい!」

 

 ローズに期待していると言われて、ジンは俄然やる気になる。

 相変わらず分かりやすい少年よな、とローズが内心で呟き密かに笑う。

 そんなローズの服を摘まんで、レティシアが口を開いた。

 

「我が主がジンに付いていくなら、私も付き添う」

 

「え?」

 

「私は主の眷属だからな。傍にいないのは変だろう?」

 

 レティシアはそう言って、ジンを睨みつける。我が主は渡さない!というような視線を込めて。

 ジンが冷や汗を掻く中、十六夜・飛鳥・耀の三人がニヤニヤと笑ってレティシアとジンのやり取りを眺めていた。

 ローズは「ふむ」と呟くと、レティシアを見て、

 

「我は構わんが、我に十六夜、ジン、レティシアの四名を追加しては、規定の同行者四名を越えてしまうが………」

 

「大丈夫。寧ろローズさんと〝箱庭の騎士〟の同行は嬉しい限りですから」

 

 サンドラの言葉に、「そうか」とローズは短く返し、頷いた。

 一方、他の参加者からまたどよめきが広がる。

 

「〝ノーネーム〟からの立候補者が四人もだと」

 

「というより今〝箱庭の騎士〟って言わなかった!?」

 

「あっちの虹色の子は確か………純血の龍種と神霊の高位生命(ハイブリッド)とか名乗ってたような………!?」

 

「何でそんな大物が、何処のコミュニティとも知れないところに所属してるんだ!?」

 

 そんな話を聞きながら、黒ウサギも〝ノーネーム〟なのですよ!と黒ウサギが内心で叫んでいた。

 確かに可笑しい話だ。〝箱庭の貴族〟に〝箱庭の騎士〟。そして龍神までもが何処のとも知れない〝ノーネーム〟に所属しているのだ。しかも龍神と吸血姫はメイドとして。

 他の参加者達にとっては理解し難い状況であった。

 そんな彼らの反応に、飛鳥・耀・リリの三人が、どうよ、と言わんばかりに鼻を高くしていた。

 十六夜も「決まりだな」と呟くと、ここぞとばかりにジンを肩に担ぎ上げ、周囲に見せつけた。

 

「よっし、じゃあ行くぞ御チビ様!この一件で名が売れたら、本格的にチラシでも刷るか。〝魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください〟ってな」

 

 ブッとジンは吹き出して叫んだ。

 

「ぜ、絶対嫌だって言ったじゃないですか!というか名前は入れなきゃ駄目なんですか!?」

 

「当たり前だ。旗頭だって言ってるだろうが。………まあ、御チビ様がどうしても嫌ってなら〝魔王にお困りの方、ジン○ラッセルまでご連絡ください〟とかでも、」

 

「お か し い で し ょ う!?一番伏せなくていい所を伏せてるじゃないですか!!!」

 

 あーだこーだと抗議するジンと、からかう十六夜。

 それにローズが悪戯半分で、

 

「ふむ、ではこうしよう。〝魔王にお困りの方、龍神様(われ)お墨付きのジン=ラッセルまでご連絡ください〟でどうだ」

 

「―――え!?ローズさんお墨付きですか!?是非それでお願いしますッ!!」

 

『切り替え早ッ!?』

 

 ジンがあっさりと手のひらを返したことに、他の参加者達が絶叫する。

 ローズ付きならチラシを刷ってもいいようだ。

 相変わらずのローズ好きなジンに、十六夜・飛鳥・耀がニヤニヤと笑う。

 本当に扱い易いな、とローズがクックッと笑う。

 黒ウサギは苦笑。

 サンドラ・リリ・レティシアの三人は複雑―――いや、嫉妬していた。サンドラとリリはローズに。レティシアはジンに。

 そんな感じで話は進み、サンドラに同行するマンドラ・黒ウサギ・十六夜・ジン・ローズ・レティシアの六人は、審議決議が行われる貴賓室へと向かった。

 そんな彼らを見送った飛鳥・耀・リリの三人は、これからの事を話し合おうとした。だが、

 

「―――え?」

 

 飛鳥は、ふとあの子がいないことに気づく。

 

「………?どうしたの飛鳥?」

 

 耀が不思議そうに小首を傾げて訊いてくる。リリも心配そうに見てくる。

 

「あの子がいないのよ!尖った帽子を被っている小さな精霊さんが!」

 

「「!?」」

 

 切羽詰まった調子で言ってくる飛鳥に、耀とリリは驚愕の表情を見せる。

 

「本当にいませんでしたか!?服の中とかは!?」

 

「確認したけどいなかったわ!さっきまではいたはずなのに………ど、どうしよう………っ!」

 

 焦る飛鳥の手を、耀は自分の手を重ねて言う。

 

「飛鳥、落ち着いて。取り敢えず宮殿内から見て行こう?私も手伝うから」

 

「わ、私も手伝います!」

 

 リリも挙手をして協力する旨を伝える。

 そんな頼もしい友達に、飛鳥は表情を明るくした。

 

「ありがとう、春日部さん!リリ!お願いしてもいいかしら?」

 

「うん」

 

「はい!」

 

 即答する二人。飛鳥は、本当にいい友達を持ったと笑みを浮かべた。

 

「それじゃあ、手分けして探しましょう!私は向こうを見るから、春日部さんとリリはあっちをお願いするわ!」

 

「「了解(しました)!」」

 

 三人は一斉に行動を起こす。尖り帽子の小さな精霊を捜しに。

 そんな中、貴賓室では間もなく、審議決議が行われようとしていた。




そう言えば、審議決議で不正がなかった場合は、主催者側に有利な条件でゲームを再開………とあるけど、どの程度までルール改変出来るのだろうか?

私の考えている次回の審議決議、いやこれは無理だろ、とかにならないといいのですが(^_^;)
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