問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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5000文字超えてしまった………


ε

「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」

「しかもゲームの日取りは明日!?」

「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」

「準備している時間もお金もありません!」

「一体どういう心算(つもり)が有ってのことです!」

「聞いているのですか三人共!!」

 

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 飛鳥・耀・ジンの三人の口裏を合わせたかのような言い訳を聞いて激怒する黒ウサギ。

 それをニヤニヤと笑って見ていた十六夜が止めに入る。

 

「別に良いじゃねえか。見境無く選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

「い、十六夜さんは面白ければ良いと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるモノは自己満足だけなんですよ?この〝契約書類(ギアスロール)〟を見て下さい」

 

 黒ウサギが〝契約書類〟を見せると、それをローズが眺めて、

 

「〝参加者(プレイヤー)が勝利した場合、主催者(ホスト)は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する〟―――ふむ、確かに自己満足だな。時間を掛ければ立証可能なものを、チップに〝罪を黙認する〟などというものにし、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させているわけだからな」

 

「でも時間さえ掛ければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は………その、」

 

「そう。人質は既にこの世に居ないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間が掛かるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間を掛けたくないの」

 

 言い淀む黒ウサギに、頷いて飛鳥が言う。飛鳥は真剣な顔になり黒ウサギを見つめ、

 

「それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲内で野放しにされることも許せないの。ここで逃がせば、何時かまた狙ってくるに決まってるもの」

 

「ま、まあ………逃がせば厄介かもしれませんけど」

 

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

 飛鳥の言葉に、ジンも同調する姿勢を見せる。黒ウサギは諦めたように頷いた。

 

「はぁ~……。仕方が無い人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度ならローズさんと十六夜さんが居れば楽勝でしょう」

 

「ぬ?」

 

 黒ウサギの言葉に、ローズが眉を顰める。十六夜と飛鳥も怪訝な顔をして、

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?勿論龍ロリも参加させねえし」

 

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ。勿論ローズさんもね」

 

「フン」と鼻を鳴らす十六夜と飛鳥。黒ウサギは慌てて二人に食って掛かる。

 

「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと―――って何然り気無くローズさんも参加させないって言っちゃってんですかこの人達は!?」

 

「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」

 

 十六夜が真剣な顔で黒ウサギを右手で制し、

 

「いいか?この喧嘩は、コイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺や龍ロリが手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

 

「あら、分かっているじゃない」

 

「………ローズさんは参加して下さいますよね?」

 

 この二人に何を言っても無駄だ、と悟った黒ウサギは、ローズに訊いた。が、ローズは小首を振り、

 

「飛鳥が我の助力を不要と言っている。済まぬが我は飛鳥の言う通りにするよ」

 

「………ああもう、好きにして下さい」

 

 そうくると思ってましたよ!と心の中で叫んだ黒ウサギは「はあ」と深い溜め息を吐きつつ、肩を落とすのだった。

 

 

ε

 

 

「それでは皆さん!ギフトゲームが明日ということなので〝サウザンドアイズ〟へギフト鑑定に行きましょう。この水樹の事もありますし」

 

「〝サウザンドアイズ〟?コミュニティの名前か?」

 

「YES。〝サウザンドアイズ〟は特殊な〝瞳〟のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフト鑑定というのは?」

 

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出処は気になるでしょう?」

 

 同意を求める黒ウサギ。ローズ以外の三人は複雑な表情で返す。ローズはそのギフト鑑定に興味があるのか「ほう」と笑みを浮かべている。

 拒否の声は無く、コミュニティに戻っていったジンを除いた五人と一匹は〝サウザンドアイズ〟に向かった。

 

 

 日が暮れて月と街灯ランプに照らされている並木道を、飛鳥は不思議そうに眺めて、

 

「桜の木………では無いわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていても可笑しくないだろ」

 

「………?今は秋だったと思うけど」

 

「ん?」と噛み合わない飛鳥・十六夜・耀の三人は顔を見合わせて首を傾げる。それに黒ウサギが笑って説明した。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元居た時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「へぇ?パラレルワールドって奴か?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども………今からコレを始めますと一日二日では説明し切れないので、またの機会ということに」

 

 曖昧に濁して黒ウサギは振り返る。商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。

 それを眺めていた飛鳥がふと、思い出したようにローズに振り返り、

 

「あ、そういえばローズさん。貴女の元居た世界の季節は何だったのかしら?」

 

「我の世界の季節か?済まぬが知らんな」

 

「………え?知らないってどういうこと?」

 

 小首を傾げて訊き返す耀。ローズは「ああ」と頷いて、

 

「我は宇宙を漂っていたからな。地球(ほし)の季節など知らぬよ」

 

「「「「―――……は?」」」」

 

 ローズのぶっ飛んだ発言に素っ頓狂な声を上げる四人。まあそうなるのは無理もない。ローズが人間ではないにしろ、宇宙で過ごす龍って何ぞや?という風に思ったのだろう。

「そんなことより」と話を切ってローズが店先を指差し、

 

「今にも店が閉まりそうだが………急がなくてよいのか?」

 

「え?―――あっ!?」

 

 黒ウサギはローズが指差す方向に目を向け、蒼白した。日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員を見たからだ。

 黒ウサギは慌てて駆け込みストップを、

 

「待っ」

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 ストップを掛ける事も出来なかった。黒ウサギは悔しそうに店員を睨み付ける。

 

「何て商売っ気の無い店なのかしら」

 

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。貴方方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐め過ぎで御座いますよ!?」

 

「キャーキャー」と喚く黒ウサギ。店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。

 

「成る程、〝箱庭の貴族〟であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですよ。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を宜しいでしょうか?」

 

「………う」

 

 一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

 

「俺達は〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。では何処の〝ノーネーム〟様でしょう。良かったら旗印を確認させて頂いても宜しいでしょうか?」

 

「ぐ」と黙り込む。だがローズが前に歩み出て、

 

「ふん。汝は阿呆か?〝ノーネーム〟に旗印があるわけなかろう?」

 

「え?ちょっ、ローズさん!?」

 

「阿呆とは失礼ですね。勿論知ってましたよ、貴方方に旗印が無いことは。御協力感謝します」

 

 一礼してローズ達に背を向けた店員―――その刹那、

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久し振りだ黒ウサギイィィィィ!」

 

 店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女が黒ウサギにフライングボディーアタックをかました。

 

「きゃあーーーーー…………!」

 

 真っ白い髪の少女と共にクルクルクルクルクと空中四回転半捻りして街道の向こうに在る浅い水路まで吹き飛んだ。

 ボチャン。そして遠くなる悲鳴。

 ローズ達は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。

 

「………おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「何なら有料でも」

 

「やりません」

 

 真剣な表情の十六夜に、真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。

 フライングボディーアタックで黒ウサギを強襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めて擦り付けていた。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、此処が良いか此処が良いか!」

 

 スリスリスリスリ。

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れて下さい!」

 

 白夜叉と呼ばれた少女を無理矢理引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げ付ける。

 クルクルと縦回転した少女を、十六夜が足で、

 

「龍ロリ、パス!」

 

「ゴバァ!」

 

 ローズに向かって蹴り飛ばした。ローズはニヤリと笑い、

 

「―――フッ!」

 

「………!?」

 

 軽く握った拳を白夜叉目掛けて振り抜いた。

 白夜叉は身の危険を察して空中だというのに体勢を立て直し、

 

「―――せい!」

 

 ローズの拳を、空中回し蹴りで迎え撃つ。

 ゴッ!と鈍い音がし其処から凄まじい衝撃波が発生した。

 しかし咄嗟に白夜叉が結界を張ったのか、周りの建物に被害は出なかった。

 白夜叉はバック宙して着地しローズを睨み付けた。

 

「小娘………私を殴り飛ばそうとしたな?」

 

「ふふ。汝から強大な力を感じたのでな。少し試させてもらっただけだ」

 

「何?」

 

 ローズの言葉に怪訝な顔をする白夜叉。暫く睨み合う二人だったが、白夜叉が、そういえばもう一人自分を蹴っ飛ばした失礼な奴が居たな、と思い出し、

 

「おんしも、飛んできた初対面の美少女を足で蹴るとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。以後宜しく和装ロリ」

 

「ヤハハ」と笑いながら自己紹介する十六夜。

 一連の流れの中で呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に話し掛ける。

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉様だよ御令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢の割に発育が良い胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」

 

 変態発言した白夜叉に女性店員が冷静な声で釘を刺す。

 一方の黒ウサギは濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がり、

 

「うう………まさかまた濡れる事になるなんて」

 

「因果応報―――え?また?」

 

『なんやウサ耳の姉ちゃん。いつの間にか濡れてたんか』

 

「はいな………あの時はローズさんに乾かしてもらいましたが―――あ、そうだ!ローズさん!」

 

 良い案が思い付いたのか、黒ウサギはローズに駆け寄り、

 

「何だ?」

 

「すみません。黒ウサギはまた濡れてしまったので、ローズさんの力で乾かして頂けませんか?」

 

 その話を聞いていた白夜叉が瞳を怪しく光らせて、

 

「何!?黒ウサギが濡れ濡れだと!?」

 

「黙らっしゃい御馬鹿様!!」

 

 それを黒ウサギが速攻で断じる。その様子をローズは「くく」と笑いながら黒ウサギに触れて、

 

「―――【フォティア】」

 

 黒ウサギの全身を焼く。否、彼女に付いている水分のみだが。

 それを女性店員と白夜叉がぎょっとした顔でローズを見て、

 

「何をしてるんですか貴女は!?コミュニティの同士を焼き殺すつもりですか!?」

 

「こんがり焼けたリアル黒ウサギを作る気なのかおんしは!?」

 

「大丈夫です、乾かしてもらってるだけなのですよ!―――あと白夜叉様はもう本当に黙らっしゃい!!!」

 

 慌てる女性店員を宥め、巫山戯た事を抜かす白夜叉に怒る黒ウサギ。

 ローズは、やれやれといった調子で黒ウサギから手を離し火を消滅させた。

 

「ふむ、これで良し。終わったぞ兎の娘」

 

「あ、はい。ありがとう御座いますローズさん♪」

 

 お礼を言う黒ウサギ。「どういたしまして」と返すローズ。

 白夜叉もローズに乾かしてもらおうかと思ったが、さっきの件があったためやめにした。

 気を取り直して、ローズ達を見回してニヤリと笑った。

 

「ふふん。御前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は………遂に黒ウサギが私のペットに」

 

「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!それとローズさんは人間ではなく龍です!」

 

「何?龍とな………!?」

 

 白夜叉は驚いてローズを見つめる。

 虹色の髪に青白い炎のような瞳を持つ幼い少女。角が無いためただの人間と錯覚してしまっていたのだ。

 だが白夜叉は、ローズが〝神格〟持ちだということを悟り、

 

「(あの小娘は神格持ち………なら龍神か。くく、とんでもない協力者を手に入れたようだの黒ウサギ)」

 

 ニヤリと笑みを浮かべた白夜叉は、ローズ達を店に招く。

 

「まあ良い。話があるなら店内で聞こう」

 

「宜しいのですか?彼らは旗も持たない〝ノーネーム〟のはず。規定では」

 

「〝ノーネーム〟だと分かっていながら名を訊ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

 

「む」と拗ねるような顔をする女性店員。そんな彼女に睨まれながら五人と一匹は暖簾を潜った。

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