問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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太陽について調べてたら遅くなりましたすみません。


η

『ギフトゲーム名〝星霊と龍神の決闘〟

 

 ・プレイヤー一覧

 空星(うろぼし) ローズ

 

 ・勝利条件

 一、ホストマスターを打倒。

 二、ホストマスターの降参。

 

 ・敗北条件

 一、プレイヤー側の死亡又は降参。

 二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 〝サウザンドアイズ〟印』

 

 

契約書類(ギアスロール)〟に目を通し終えたローズは、「ほう」と獰猛な笑みを浮かべて、

 

「汝を打倒若しくは降参させればクリアか。くく、面白くなりそうだな」

 

「ふふ、喜んでもらえて何よりだが―――準備は良いな?」

 

 ローズに対峙した白夜叉が訊く。

 

「ああ。我は何時でも構わぬよ」

 

 その問いに答えて頷くローズ。そして両者は身を低くし―――姿を消した。

 

「「「え?消えた!?」」」

 

 白夜叉が張った結界で守られている四人のうち、飛鳥・耀・黒ウサギの三人が驚愕する。

 彼女達には見えなかったが、決闘開始と共にローズと白夜叉は第三宇宙速度を優に超えた馬鹿馬鹿しい速度で同時に飛び出し激突していた。

 その後も両者は神速と喩えるに相応しい速度で飛び回りながら幾千万もの衝突を繰り返している。

 その衝突は、例えるならば白銀と虹炎の二つの流星同士がぶつかり合っているような感覚だ。

 大気には目視可能な波紋が無数に発生し、その度に轟音と衝撃の余波を撒き散らし、雪原の大地を浅く抉っていく。結界が無ければ飛鳥達も今頃巻き添えを喰らっていたことだろう。

 十六夜は常人外の動体視力をもって二人の殴り合いを眺め、アレが星霊と龍神の戦いか、と戦慄しながらもあの中に交ざりたい気持ちで一杯になっていた。

 

 だがその戦いは不意に両者が飛び退くことで終わりを告げた。ローズと白夜叉はこれ以上拳で語り合っても均衡は崩れないと悟ったのだ。

 白夜叉は扇を取り出して開き力一杯振るう。すると巨大な竜巻が発生してローズに襲い掛かった。

 しかしローズは躱すことさえせず、腕を横一閃。たったそれだけで巨大な竜巻が掻き消えた。

 白夜叉は扇を閉じて懐に仕舞い、双掌から巨大な火柱を生み出しローズに放つ。

 迫り来る炎熱を真正面から捉えたローズは、そこへ飛び込み回し蹴りで蹴り砕く。

 先の白夜叉が放った炎熱で凍っていた湖畔は溶けて湖に戻っていた。

 それを確認した白夜叉は右腕を振り上げる。すると湖の水が凄まじい勢いで巻き上げられて何千何万トンもの水を吸い上げる。

 それは瞬く間に巨躯な龍の姿をした水流となり、それを確認するや否やで白夜叉が振り上げていた右腕を振り下ろす。

 それが合図だったようで、巨躯な龍の姿をした水流はローズ目掛けて襲い掛かった。

 ローズはソレを眺めて不敵に笑い―――真正面から受け止めてみせた。しかし、ローズの行動はそれで終わりではなかった。

 

「再び凍てつき眠るがいい―――【パゴス】」

 

 ローズがそう告げた瞬間、巨躯な龍の姿をした水流は、ローズの触れていた頭から凍りつき、あっという間に氷像と化した。

 それを確認したローズは氷の龍と化した氷像を殴り付けて跡形も無く粉砕した。

 白夜叉は舌打ちして、夜叉の神格が通じないことを悟り、次の一手に出た。

 

 

η

 

 

 白夜叉の張った結界内で観戦していた飛鳥達は唖然としていた。

 

「す、凄いわねローズさん!白夜叉と互角に戦っているわ!」

 

「うん。相手は最強の〝主催者(ホスト)〟なのに、全く引けを取ってない」

 

「そ、そうですね………というより白夜叉様の攻撃を殆んど生身で凌いでるのですよ………」

 

 飛鳥と耀は驚嘆の声を洩らし、黒ウサギも顔を引き攣らせながら呟く。

 十六夜だけは羨望の眼差しでローズと白夜叉を見比べて、

 

「………俺もあの中に交ざりてえな」

 

「「え?それ本気?」」

 

「超本気」

 

 飛鳥と耀の問いを「ヤハハ」と笑って返す十六夜。

 そんな十六夜を呆れたような表情で見る黒ウサギ。だがこの男なら本当に交ざりに行きかねない。決闘(ギフトゲーム)じゃなければとっくに交ざりに行っていたことだろう。

 だがふと、白夜叉の雰囲気が一変したのを逸早く気付いた黒ウサギは冷や汗を流す。

 

「(白夜叉様、まさか………本気でローズさんを殺しにかかるおつもりじゃないですよね………!?)」

 

 しかし黒ウサギの懸念を嘲笑うかのように、本当の死闘が始まろうとしていた。

 

 

η

 

 

 白夜叉は深呼吸し、真剣な眼差しでローズを見つめて告げた。

 

「さて、私もそろそろ夜叉の神霊ではなく―――太陽の星霊として相手しようかの!」

 

「ぬ?」

 

 ローズが身構えた途端、極小だが数百数千もの光球が白夜叉の周りを埋め尽くしていた。

 それらの温度は約六千度………太陽の表面の温度に匹敵する高温だった。金属を易々と溶かし消滅させられるだけの炎熱に、掠りでもすれば致命的だ。

 白夜叉はそんなことはお構い無しに、数百数千もの太陽の光球をローズに向けて放った。

 ローズはそれらを殴って破壊しようかと思ったが、数がかなりあったため断念する。そして、

 

「汝が太陽の光を行使するならば、我は対極の力を解放するまでだ―――【スコタビ】」

 

 ローズがそう呟き右手を前に突き出す。すると彼女の右手から濃密な闇が生まれ、白夜叉の太陽の光球の全てを余すことなく呑み込んだ。

 白夜叉は唖然とし、同時にローズの生み出した闇の濃密さに息を呑む。

 だが首を振り、闇などに恐れるものかと、白夜叉は新たに太陽の恩恵を行使した。

 それは天を衝くかのような程高い、数千もの極細いガスの柱だった。温度は約一万度と約六千度の太陽の光球の温度を凌駕する超高温なガスの柱だ。

 しかしローズの表情に変化は見られない。襲い来る数千ものガスの柱に対し、彼女は両手を広げた。

 それに応じるように闇は膨張し、天地を呑み込みそうな程広がりガスの柱と衝突。暫し鬩ぎ合うも健闘虚しくスピキュールは全て闇に呑み込まれていった。

 ローズは「はあ」と溜め息を吐き、落胆したように白夜叉を見つめて言う。

 

「その程度で我が闇を晴らせると思ったか?我が闇を晴らしたくば―――もっと汝の輝き(ひかり)を見せよ!」

 

 ローズはそう言って容赦なく濃密な闇を白夜叉に向けて放った。

 自分を呑み込まんと迫り来る闇を、白夜叉は鋭い眼光で一瞥し、

 

「この星霊(わたし)を―――舐めるでないわッ!!」

 

 激昂し、白夜叉は全身から目が眩む程の光を放ち、ローズの闇を掻き消した。

 想像以上の輝きにローズは嬉しそうな笑みを浮かべる。やはり太陽はこうでなくては、闇などに決して屈しては駄目なのだと。

 そんなローズを見て、闇が晴れた今が勝機だと、白夜叉はまた新たに太陽の恩恵を解放した。

 

「焼き尽くせ―――紅炎(プロミネンス)!」

 

 白夜叉の突き出した双掌から巨大なガスの赤い炎が発生した。その温度は約一万度とスピキュールと同等な超高温なガスの赤い炎だった。

 辺り一帯を埋め尽くさんとする太陽の紅炎を前に、ローズは青白い炎のような瞳を獰猛に光らせて突撃した。

 そしてローズはそのまま太陽の紅炎を殴り付けて跡形も無く消し飛ばしてみせる。

 白夜叉は、太陽の紅炎も通用しないのかと苦々しい表情をした。

 一方のローズは愉しそうに笑っていた。生まれて初めての決闘は、これ程にも楽しいものなのかと。

 だがそれもそろそろ終わらせないと不味い。白夜叉が本気で自分を殺せる力を振るって来る前に。

 ローズは苦々しい表情をしている白夜叉へ特攻を仕掛けた。その速さは第三宇宙速度を遥に凌駕する速度で白夜叉へ肉薄する。

 白夜叉は咄嗟に両腕をクロスして防御し―――ボギン。

 

「ぐっ………!?」

 

 片腕がへし折れた音がして白夜叉の表情が驚愕に染まる。

 

「(この小娘!まだこれ程の力を隠し持っておったか………!)」

 

 白夜叉は折れた左腕を庇いながらローズから離れる。先の殴り合いとは比べ物にならない一撃に冷や汗を流しながら。

 だがそれをローズが許さなかった。離れようとした白夜叉に一瞬で追い付くと、強烈な蹴りを叩き込もうとした。

 白夜叉はその蹴りを、その場から掻き消えることによって回避する。

 ローズの蹴りは標的が突如消えたことにより空振り虚空を切り裂く。

 

「ぬ………?」

 

 標的を見失ったローズは目を凝らして周囲を見回す。前方左右後方下を見てもいない。

 ならば上かとローズが見上げた刹那、超高速で迫ってきた光線に胸元を撃ち抜かれた。

 白夜叉が空間跳躍でローズの上空に移動し、一万度を優に超えた光線を音も無く放ち、ローズの胸を撃ち抜いたのだ。

 人間ならば即死の一撃。龍神といえどこれは致命的なダメージを負ったに違いない。だが、

 

「―――惜しかったな星霊の娘。我を討つのならば………我が全身を焼き尽くし塵一つ残さず消滅させることだな」

 

「何!?」

 

 白夜叉は驚愕する。本気で命を奪うつもりで放った光線。その光線は確実にローズの胸を撃ち抜き仕留めたはずだった。

 だが殺すには至らなかった。ローズの胸元に開いた風穴は、一瞬で塞がり元の状態に戻ったからだ。

 そのデタラメな回復速度を目の当たりにして、白夜叉は戦慄しローズの正体を看破した。

 

「おんしまさか―――ウロボロスか!?」

 

「ほう、正解だ」

 

 ローズは満足げに笑って首肯した。

〝ウロボロス〟―――古代ギリシャ語で(ドラコーン・)ウーロボロスを語源とする、〝尾を飲み込む(蛇)〟、ギリシャ語でウロヴォロス・オフィスを語源とする、〝尾を飲み込む蛇〟で己の尾を喰らう蛇若しくは龍を図案化した古代の象徴の一つだ。

 蛇は脱皮して大きく成長する様や長期の飢餓状態にも耐える強い生命力を持つなどから、〝死と再生〟や〝不老不死〟などの象徴とされる。その蛇が自らの尾を喰らうことで、始まりも終わりも無い完全なものとしての象徴的な意味が備わった。

 ウロボロスは多くの文化・宗教に於いて用いられてきており、〝循環と回帰〟、〝死と再生〟、〝全知全能〟etcなどと意味するものは広い。

 

「(不味いな。ウロボロスが相手ならば………今の私では勝てんかもしれないのう)」

 

 白夜叉は苦々しい表情でローズを見下ろす。額には冷や汗が伝う。

 ローズは「お喋りはそこまでだ」と言い凶悪な笑みを浮かべて、白夜叉へと突貫した。

 白夜叉は再び空間跳躍で回避しようかと考えたが………やめた。逃げるのは簡単だが、『星霊たる自分が逃げるとは何事か!』と内心で大一喝。

 そして白夜叉は折れていない右の拳に今出せる最高の一撃を籠めて振り下ろす。

 それを見てローズは凶悪な笑みを嬉々とした笑みに変えて左の拳を振り上げる。

 ゴッ!と轟音を響かせて互いの拳をぶつけ合った。今までの比じゃない衝撃の余波が撒き散らされて辺り一帯の山河や大地を深々と抉り、森林を悉く吹き飛ばす。十六夜達を守っていた結界にも大きな亀裂を走らせて壊しかねない。

 暫し鬩ぎ合い、押し合う両者の拳。だが弱体化している今の白夜叉では、更に力が増していくローズの一撃に耐え切れなかった。

 白夜叉の拳は弾き飛ばされて、ローズの拳が腹部に突き刺さる。グチュッと嫌な音がして白夜叉の五臓六腑の殆んどが潰れ大破した。

 喀血し空中高くかち上げられる白夜叉。霞む視界にローズが映り込む。止めを刺しに来たのだろう。

 だが白夜叉の予想とは違ってローズは止めを刺さずに、追い越して白夜叉を抱き止めた。

 そしてローズは心配そうな表情で白夜叉の顔を覗き込み、

 

「生きてるか?白夜叉」

 

「………ふん。この程度のことで、星霊(わたし)は死なんよ」

 

 そうは言うものの、ローズが振るった拳は星をも砕きかねない一撃だったに違いない。白夜叉がズタボロなのがその証拠だ。

「そうか」と返してローズは真剣な表情で訊いた。

 

「どうする?汝がまだ続けるというのならば―――今度は一切手加減せずに殺してやるが」

 

「………それも面白そうじゃが、それでは流石に眼下の童達を巻き添えにしてしまうわい」

 

「ふむ?では」

 

「ああ。私の負け………降参だ」

 

 白夜叉は苦笑と共に負けを認めた。ローズはそれに満足そうな笑みを浮かべたのだった。




【パゴス】―――ギリシャ語で〝氷〟を意味する。

【パゴス】―――触れたものを凍らせる能力。絶対零度。


【スコタビ】―――ギリシャ語で〝闇〟を意味する。

【スコタビ】―――全てを呑み込む能力。弱ければ光さえ呑み込む。
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