問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ? 作:問題児愛
決闘を終え、白夜叉の傷が癒えたところで早速黒ウサギは本題に入った。
「あの、白夜叉様。今日は鑑定をお願いしに来たのですけど」
「………よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」
気まずそうな顔で返す白夜叉。困ったように白髪を掻き上げ、着物の裾を引き摺りながら四人の顔を両手で包んで見つめる。
「どれどれ………ふむふむ………うむ、三人は共に素養が高いのは分かる。ローズは素養とは無縁のようだがの。しかしこれでは何とも言えんな。おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「把握済みだな」
「うおおおおい?いやまあ、私と決闘したローズは置いといて、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」
「別に鑑定なんて要らねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」
ハッキリと拒絶するような声音の十六夜と、同意するように頷く飛鳥と耀。
但しローズ一人だけは十六夜達に同意せず白夜叉を興味深そうに見つめて待っている。
困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだのかニヤリと笑った。
「ふむ。何にせよ〝
白夜叉がパンパンと柏手を打つ。すると四人の眼前に光り輝く四枚のカードが現れた。
コバルトブルー
逆廻 十六夜
ギフトネーム
〝
ワインレッド
久遠 飛鳥
ギフトネーム
〝威光〟
パールエメラルド
春日部 耀
ギフトネーム
〝
〝ノーフォーマー〟
ダークネスブラック
空星 ローズ(真名:ウロボロス)
ギフトネーム
〝無限の魔王〟
〝原初的混沌〟
〝光と闇〟
〝陰と陽〟
〝善と悪〟
〝男と女〟
〝太陽と月〟
〝精神と自然〟
〝破壊と創造〟
〝理想と現実〟
〝死と再生〟
〝相反物の統一〟
〝世界の霊〟
〝人間精神の元型〟
〝宇宙の根源〟
〝不老不死〟
〝全知全能〟
〝悪循環〟
〝永劫回帰〟
〝無間地獄〟
〝永遠〟
〝不滅〟
〝不変〟
〝円運動〟
〝魔術の王〟
〝世界蛇〟
〝物質界の限界〟
〝円環の宇宙観〟
〝主催者権限〟
〝神格〟
etc………
それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。
黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で四人のカードを覗き込んだ。
「ギフトカード」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「恩恵札?」
「ち、違います!ローズさん何かそれはちょっと違う気が―――というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納出来る超高価なカードですよ!耀さんの〝生命の目録〟だって収納可能で、それも好きな時に顕現出来るのですよ!」
「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」
「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
黒ウサギに叱られながら四人はそれぞれのカードを物珍しそうに見つめる。
「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは〝ノーネーム〟だからの。少々味気無い絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」
「ふぅん………もしかして水樹って奴も収納出来るのか?」
何気無く水樹にカードを向ける。すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。
「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」
「出せるとも。試すか?」
「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティの為に使って下さい!」
「チッ」とつまらなそうに舌打ちする十六夜。黒ウサギはまだ安心出来ないような顔でハラハラと十六夜を監視している。
ローズはその様子を「くく」と笑いながら見つめる。白夜叉も高らかと笑いながら見つめた。
「そのギフトカードは、正式名称を〝ラプラスの紙片〟、即ち全知の一端だ。其処に刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった〝恩恵〟の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」
「へえ?じゃあ俺のはレアケースな訳だ?」
「ん?」と白夜叉が十六夜のギフトカードを覗き込み、
「………いや、そんな馬鹿な」
パシッと白夜叉はすぐさま顔色を変えてギフトカードを取り上げる。
「〝正体不明〟だと………?いいやありえん、全知である〝ラプラスの紙片〟がエラーを起こすはずなど」
「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」
パシッとギフトカードを白夜叉から取り上げる十六夜。だが白夜叉は納得出来ないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。
十六夜は白夜叉の視線に気になったが、それよりもとローズを見つめて、
「龍ロリのギフトネームが気になるな。白夜叉に圧勝した力の正体がよ」
「ふむ?我がギフトが気になるか少年?」
「ああ、超気になる」
十六夜が瞳を輝かせて言う。ローズは「ふっ」と笑って、
「良いだろう。別に大したギフトは書かれてないがな」
ローズはそう言って十六夜にギフトカードを渡す。すると気になっていたようで飛鳥・耀・黒ウサギ・白夜叉の四人が十六夜の持つローズのギフトカードを覗き込んだ。
「「「「―――――うわお」」」」
「ど・こ・が、大したギフトは書かれて無いですか!?多すぎなのですよ御馬鹿様!!!」
驚きの声を上げる十六夜達四人。黒ウサギも驚きの余りローズに激怒した。
十六夜は「ヤハハ」と笑ってローズを見つめ、
「何だよ、龍ロリも魔王様なんじゃねえか!ひょっとするとアンタを叩き潰せば隷属出来たりすんのか?」
「そうなるかもな。しかし何故我は魔王扱いされねばならぬのだ。我はただ元居た世界の宇宙を漂っていただけなのだが」
不貞腐れたように唇を尖らせて言うローズ。白夜叉は「ほう」とローズを見つめて考察する。
「(確かに変だの。箱庭に来たのが初めてなはずのこやつが〝主催者権限〟持ちの魔王………か。いやそれよりもこやつが〝主催者権限〟を持っておるのは何故だ?)」
白夜叉は「うーむ」と頭を悩ませる。
何れにしろローズが〝主催者権限〟持ちの魔王ということは、それを悪用した場合は〝
「(今の私ではこやつには勝てんしのう………暫く様子見させてもらおうかの)」
〝原初的混沌〟とか〝宇宙の根源〟とか物騒なギフトが見えたが、白夜叉は取り敢えず………何も見なかったことにした。
θ
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦する時は対等の条件で挑むのだもの」
「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「我と白夜叉の決闘を観戦しておきながら、戦意を削がれていないとは………中々面白い人間だな汝ら」
「ふふ、そうだの。うむ、よかろう。楽しみにしておけ。………ところで」
白夜叉はスッと真剣な表情でローズ達を見る。
「今更だが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」
「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻す為に、〝魔王〟と戦わねばならんことも?」
「聞いてるわよ」
「………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
黒ウサギはドキリとした顔で視線を逸らす。そして同時に、もしコミュニティの現状を話さない不義理な真似をしていれば、自分はかけがえのない友人を失っていたかもしれないと思った。
一方で飛鳥が白夜叉の問いにニヤリと笑い、
「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
「〝カッコいい〟で済む話ではないのだがの………全く、若さ故のものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰れば分かるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………其処の娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」
白夜叉は飛鳥と耀に視線を向けて予言するように断言する。二人は一瞬だけ言い返そうと言葉を探したが、白夜叉の助言は物を言わさぬ威圧感があった。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧とローズは兎も角、おんしら二人の力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、何時見ても悲しいものだ」
「………ご忠告ありがと。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」
「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。何時でも遊びに来い。………但し、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」
「嫌です!」
黒ウサギは即答で返す。白夜叉は拗ねたように唇を尖らせた。
「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三食首輪付きの個室も用意するし」
「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!」
怒る黒ウサギ。笑う白夜叉。だがふと白夜叉が真剣な表情でローズに向き直り、
「ふふ、ローズよ。私は何れおんしを倒し隷属させてやるからな。覚悟しておけ」
「ほう、それは面白い。我も楽しみにしておくぞ」
ローズは不敵に笑って返す。それに十六夜が「ムッ」と白夜叉を睨み、
「おい白夜叉。龍ロリを倒して隷属させるのは俺だ。横取りはさせねえからな?」
「ぬ?」
「ほう?ならばどちらが先にローズを倒せるか、競おうではないか小僧」
「ハッ、望むところだ!」
「望まないで下さい御馬鹿様!!コミュニティの同士を倒して隷属させようなどこの黒ウサギが断固させません!!」
スパァーン!と怒った黒ウサギはハリセン一閃。十六夜は黒ウサギに叩かされながらも「ヤハハ」と笑うのだった。
θ
白夜叉とのゲームを終え、五人は〝ノーネーム〟の居住区画の門前に着いた。
「この中が我々のコミュニティで御座います。しかし本拠の館は入口から更に歩かねばならないので御容赦下さい。この近辺はまだ戦いの名残が在りますので………」
「戦いの名残?噂の魔王って素敵ネーミングな奴との戦いか?」
「は、はい」
「丁度いいわ。箱庭最悪の天災が残した傷跡、見せてもらおうかしら」
先程、白夜叉に虫のように見下されて機嫌が悪い飛鳥が言う。
黒ウサギは躊躇いつつ門を開ける。すると門の向こうから乾ききった風が吹き抜けた。
砂塵から顔を庇うようにする十六夜達三人と、気にせず門の中を見つめるローズ。彼らの視界には一面の廃墟が広がっていた。
「っ、これは………!?」
「………ほう」
街並みに刻まれた傷跡を見た飛鳥と耀は息を呑み、十六夜とローズは瞳を細める。
十六夜は木造の廃墟に歩み寄って囲いの残骸を手に取る。少し握ると、木材は乾いた音を立てて崩れていった。
「………おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは―――今から何百年前の話だ?」
「僅か三年前で御座います」
「ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この風化しきった街並みが三年前だと?」
そう、十六夜の言うように〝ノーネーム〟のコミュニティは―――まるで何百年という時間経過で滅んだように崩れ去っていたのだ。
美しく整備されていたはずの白地の街路は砂に埋もれ、木造の建築物は軒並み腐って倒れ落ちている。要所で使われていた鉄筋や針金は錆に蝕まれて折れ曲がり、街路樹は石碑のように薄白く枯れて放置されていた。とてもではないが三年前まで人が住み賑わっていたとは思えない有り様に、十六夜達三人は息を飲んで散策する。
「………断言するぜ。どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方は有り得ない。この木造の崩れ方なんて、膨大な時間を掛けて自然崩壊したようにしか思えない」
十六夜は有り得ないと結論付けながらも、目の前の廃墟に心地良い冷や汗を流している。飛鳥と耀も廃屋を見て複雑そうな感想を述べた。
「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわ。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」
「………生き物の気配も全くない。整備されなくなった人家なのに獣が寄って来ないなんて」
黒ウサギは廃墟から目を逸らし、朽ちた街路を進む。
「………魔王とのゲームはそれ程の未知の戦いだったので御座います。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達も皆心を折られ………コミュニティから、箱庭から去って行きました」
黒ウサギは感情を殺した瞳で風化した街を進む。飛鳥と耀も複雑な表情で続く。
しかし十六夜は瞳を爛々と輝かせ、不敵に笑って呟く。
「魔王―――か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか………!」
そんな十六夜を呆れたようにローズが見つめ、
「やれやれ、この光景を目にしてそんなことを言えるとは………やはり汝は面白い人間だな」
「ヤハハ。そういう龍ロリは顔色一つも変えねえんだな。それはアンタの力なら、同じことが出来るとかいう口か?」
「そうだな。可能といえば可能だが………我が力を振るえば寧ろ何一つと残らんだろうな」
ローズの言葉を聞いて十六夜は「へえ?」と瞳を物騒に光らせる。
「そういえばウロボロスには二つの解釈があったな。
一つは、己の尾を喰らっても食べきることが出来ない〝無限〟の意味。
もう一つは、己の尾を喰らい続け最後には自らを食べきって消えて無くなる〝無〟の意味が」
「ほう、よく知っているな少年。如何にも。我は〝無限〟であり〝無〟でもある。正確には〝無〟に還ることが出来るということだがな」
博識な十六夜を興味深そうに見つめるローズ。十六夜はふと思い出したように呟き、
「………龍ロリならこの風化しきった街を元に戻せるんじゃないか?」
「そうだな。だが我は何もせぬよ」
「それはどうしてだ?」
「ふふ、確かに我はあの兎の娘のコミュニティの手伝いをしてやるとは言ったが………一応我はあの兎の娘に喚び出されたわけでもない部外者だからな。その我が、これから汝らで成し遂げんとする功績を独り占めするわけにはいかぬよ」
ローズの言葉に十六夜は「あっそ」と返すも、彼の口元には笑みが浮かんでいたのだった。
ギフトネームは取り敢えずWikiなどで調べて分かった象徴を詰め込んだものです。他にもあるでしょうから後はetcで。