問題児たちとウロボロスが異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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「あ、皆さん!水路と貯水池の準備は調っています!」

 

「御苦労様ですジン坊っちゃん♪皆も掃除を手伝っていましたか?」

 

 ワイワイと騒ぐ子供達が黒ウサギの下に群がってきた。

 

「黒ウサのねーちゃんお帰り!」

 

「眠たいけどお掃除手伝ったよー」

 

「ねえねえ、新しい人達って誰!?」

 

「強いの!?カッコいい!?」

 

「YES!とても強くて可愛い人達ですよ!皆に紹介するから一列に並んで下さいね」

 

 黒ウサギが指を鳴らす。すると子供達は一糸乱れぬ動きで横一列に並ぶ。

 

「(マジでガキばっかだな。半分は人間以外のガキか?)」

 

「(じ、実際に目の当たりにすると想像以上に多いわ。これで六分の一ですって?)」

 

「(………私、子供嫌いなのに大丈夫かなあ)」

 

「(ふむ。この者達が年端もいかぬ人の子らか。頼り無さそうだが………果たしてどうかな?)」

 

 ローズ達四人はそれぞれの感想を心の中で呟く。

「コホン」と仰々しく咳き込んだ黒ウサギは四人を紹介する。

 

「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、空星ローズさんです。皆も知っている通り、コミュニティを支えるのは力の有るギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加出来ない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時に彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」

 

「あら、別にそんなのは必要無いわよ?もっとフランクにしてくれても」

 

「駄目です。それでは組織は成り立ちません」

 

 飛鳥の申し出を、黒ウサギは厳しい声音で断じる。

 

「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼らの齎す恩恵で初めて生活が成り立つので御座います。これは箱庭の世界で生きていく以上、避ける事が出来ない掟。子供のうちから甘やかせばこの子達の将来の為になりません」

 

「………そう」

 

 黒ウサギは有無を言わさない気迫で飛鳥を黙らせる。これを聞いて同時に飛鳥は、自分に課せられた責任は、私が思っていたものより遥かに重いのかもしれないと思ってしまった。

 

「此処に居るのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子も居りますから、何か用事を言い付ける時はこの子達を使って下さいな。みんなも、それでいいですね?」

 

 

「「「「「宜しくお願いします!」」」」」

 

 

 キーンと耳鳴りがする程の大声で二十人前後の子供達が叫ぶ。

 

「ハハ、元気がいいじゃねえか」

 

「ふむ、そうだな。思っていたよりも元気が良くて安心したぞ」

 

「いえ、元気が良すぎるでしょう?」

 

「(………本当にやっていけるかな、私)」

 

「ヤハハ」と笑う十六夜と「くく」と喉を鳴らして笑うローズ。飛鳥と耀は何とも言えない複雑な表情をしていた。

 

「さて、自己紹介も終わりましたし!それでは水樹を植えましょう!黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」

 

「あいよ」

 

 長年水が通っていない水路だが骨格だけは立派に残っている。しかし所々がひび割れして砂も要所に溜まっていた。

 耀は石垣に立ちながら物珍しそうに辺りを見回す。

 

「大きい貯水池だね。ちょっとした湖ぐらいあるよ」

 

『そやな。門を通ってからあっちこっちに水路が在ったけど、もしあれに全部水が通ったら壮観やろなあ。けど使ってたのは随分前の事なんちゃうんか?どうなんやウサ耳の姉ちゃん』

 

 黒ウサギは苗を抱えたままクルリと振り返る。

 

「はいな、最後に使ったのは三年前ですよ三毛猫さん。元々は龍の瞳を水珠に加工したギフトが貯水池の台座に設置して在ったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました」

 

 黒ウサギの話を聞いて十六夜がキラリと瞳を輝かせた。

 

「龍の瞳?何それカッコいい超欲しい。何処に行けば手に入る?」

 

「さて、何処でしょう。知っていても十六夜さんには教えません」

 

 黒ウサギが適当にはぐらかすと、十六夜はふと良い案が思い付いたのかローズに向き直り、

 

「ならアンタの瞳を貰うしかねえな、龍ロリ?」

 

「え?」

 

「ほう。龍たる我の瞳を所望するか少年?………ふふ、良いだろう。だが、タダではやらぬよ。折角〝主催者権限(ホストマスター)〟があるからな、何れ我が瞳を景品にして汝にギフトゲームでも開いてやろう」

 

「ハハ、マジかよ!そいつは是非楽しみにしてるぜ龍ロリ」

 

 ローズの提案に嬉々として返す十六夜。一方でジンがぎょっとした顔でローズをマジマジと見つめ、

 

「え?ローズさんは龍だったんですか!?」

 

「ん?そうだが?」

 

 ジンの驚きに平然と返すローズ。そんなジンを呆れたように十六夜は見下ろし、

 

「おいおい御チビ。俺がそいつの事を龍ロリっつってんだから、正体が龍だってことくらい察しろよ」

 

「う………すみません」

 

 そう言えばそうだったとジンは頭を掻いて謝る。そんな二人を余所にローズの周りにはいつの間にか子供達が群がってきていた。

 

「ローズのねーちゃん龍なの!?」

 

「凄いなあドラゴンとかカッコいいなー!」

 

「髪の色も虹色に輝いていて綺麗!」

 

「ねえねえ、どんな髪してるの!?触らせて!」

 

「ん?我は別に構わぬよ」

 

 ワイワイと子供達が瞳を輝かせてローズの虹髪を触ったり梳いたり引っ張ったりする。

 子供達と戯れているローズを眺めていた黒ウサギ達四人は、こうして見ると白夜叉に圧勝した最強の龍神には見えないなと思った。

 ジンも苦笑いを浮かべながら眺め、「あっ」と思い出して話を戻した。

 

「水路も時々は整備していたのですけど、あくまで最低限です。それにこの水樹じゃまだこの貯水池と水路を全て埋めるのは不可能でしょう。ですから居住区の水路は遮断して本拠の屋敷と別館に直通している水路だけを開きます。此方は皆で川の水を汲んできた時に時々使っていたので問題ありません」

 

「あら、数キロも向こうの川から水を運ぶ方法が有るの?」

 

 苗を植えるのに忙しい黒ウサギに代わってジンとローズに群がっていた子供達が答えた。

 

「はい。皆と一緒にバケツを両手に持って運びました」

 

「半分くらいはコケて無くなっちゃうんだけどねー」

 

「黒ウサのねーちゃんが箱庭の外で水を汲んで良いなら、貯水池を一杯にしてくれるのになあ」

 

「………そう。大変なのね」

 

 飛鳥はちょっぴりガッカリしたような顔をした。

 黒ウサギは貯水池の中心にある柱の台座までピョン、と大きく跳躍すると、

 

「それでは苗の紐を解いて根を張ります!十六夜さんは屋敷への水門を開けて下さい!」

 

「あいよ」

 

 十六夜は貯水池に下りて水門を開ける。黒ウサギが苗の紐を解くと、根を包んでいた布から大波のような水が溢れ返り、激流となって貯水池を埋めていった。

 水門の鍵を開けていた十六夜は驚いて叫ぶ。

 

「ちょ、少しは待てやゴラァ!!流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!」

 

 ローズに二度も乾かしてもらってはいるが、もう水に濡れるのは懲り懲りだと十六夜は慌てて石垣まで跳躍する。

 封を解かれた水樹の根は台座の柱を瞬く間に絡め、更に水を放出し続ける。

 

「うわお!この子は想像以上に元気です♪」

 

 水門を勢いよく潜った激流は、一直線に屋敷への水路を通って満たしていく。水樹から溢れた水は想像以上の量となって貯水池を埋めていった。

 昔のように並々と満ちていく水源を見てジンも感動的になるのだった。

 

 

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 屋敷に着くと、月明かりのシルエットで浮き彫りになる本拠はまるでホテルのような巨大さであった。耀は本拠となる屋敷を見上げて感嘆したように呟く。

 

「遠目から見てもかなり大きいけど………近付くと一層大きいね。何処に泊まれば良い?」

 

「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加出来る者には序列を与え、上位から最上階に住む事になっております………けど、今は好きなところを使って頂いて結構で御座いますよ。移動も不便でしょうし」

 

「そう。其処に在る別館は使って良いの?」

 

 飛鳥は屋敷の脇に建つ建物を指して黒ウサギに訊いた。

 

「ああ、あれは子供達の館ですよ。本来は別の用途が有るのですが、警備の問題で皆此処に住んでます。飛鳥さんが百二十人の子供と一緒の館で良ければ」

 

「遠慮するわ」

 

 飛鳥は即答した。そして十六夜達三人は箱庭やコミュニティの質問などはさておき、『今は兎も角風呂に入りたい』という強い要望の下、黒ウサギは湯殿の準備を進める。

 ローズに乾かしてもらっているとはいえ、今日は色々有ったから風呂に入ってゆっくりしたいのだろう。ローズも知識では知っているものの、初めての風呂に内心ではワクワクしていた。

 その湯殿だが、暫く使われていなかった大浴場を見た黒ウサギは真っ青になり、

 

「一刻程御待ち下さい!すぐに綺麗に致しますから!」と叫んで掃除に取り掛かった。

 ローズ達四人はそれぞれに宛がわれた部屋を一通り物色し、来客用の貴賓室で集まっていた。

 

『お嬢………ワシも風呂に入らなアカンか?』

 

「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」

 

「………ふぅん?聞いてはいたけど、オマエは本当に猫の言葉が分かるんだな」

 

「うん」

 

『オイワレ、お嬢をオマエ呼ばわりとはどういう事や!調子乗るとオマエの寝床も毛玉だらけにするぞコラ!』

 

「駄目だよ、そんなこと言うの」

 

 耀が三毛猫にそう言うと、ローズは「ほう」と感心したように三毛猫を見つめ、

 

「其処の少年に喧嘩を売るのはやめておけミケ。もれなく首根っこ掴まれて〝世界の果て〟まで投げ飛ばされるぞ?」

 

『んなぁ!?そ、そない恐ろしい事を言わんでくれや龍の姉ちゃん!』

 

「くく、ならば喧嘩を売る相手は慎重に選ぶんだな。まあ、ミケは主想いの良き相棒ではあるが」

 

『り、了解や。肝に銘じとくわ。忠告ありがとな、龍の姉ちゃん』

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 ローズはニコリと笑って三毛猫の頭を撫でた。その光景を見ていた三人のうちまず耀がローズに問い質す。

 

「え?ローズも三毛猫の言葉が分かるの?―――というより三毛猫の事を〝ミケ〟ってアダ名っぽく呼んでるけど………二人はどういう関係?」

 

「無論だ。ミケとの関係とな?別に大した仲ではないぞ。タダの友だよ。なあ、ミケ?」

 

『そやそや。ワシと龍の姉ちゃんはタダの友達みたいなもんやでお嬢』

 

「そうなんだ………友達なんだ」

 

 耀はじーっと三毛猫を羨望の眼差しで見つめた後、ローズに向き直り一言、

 

「ローズ、私とも友達になって下さい」

 

「ぬ?」

 

 ローズは耀の言葉を聞いて「成る程な」と納得してニヤリと笑い、

 

「我は構わぬよ。改めて宜しくな、耀」

 

「うん、宜しくローズ」

 

 二人は笑みを交わし握手する。それを見ていた飛鳥も、照れ臭そうに髪の毛先を弄りながら、

 

「ローズさん。そ、それなら私とも友達になってくれないかしら?」

 

「ん?」

 

「ほ、ほら。ローズさんって元居た世界では宇宙で暮らしてたのでしょう?だから今まで友達いなかった貴女が可哀想だから………ね?」

 

「ふむ?」

 

 飛鳥の言い分を理解したローズは「くく」と笑って頷いた。

 

「ああ。それは嬉しい提案だな。照れ隠しで言ってくれたようだが、飛鳥は酷い事を言うな。我に友がいなかっただと?」

 

「べ、別に照れ隠しで言ったつもりはないわ!―――え?ローズさん友達居たの?」

 

 飛鳥の問いに「うむ」と頷き両手を広げてローズが告げた。

 

「元居た世界(うちゅう)の全てが我の友達(とも)だッ!」

 

 ズドオオオオオン!という効果音が聞こえそうな程の勢いで告げるローズ。

 それを聞いた飛鳥達は眼を丸くして、

 

「「「『は?』」」」

 

「………済まぬ。今のは聞かなかったことにしてくれ。言い出した我自身が恥ずかしくなってきたのでな」

 

「「「『え?嫌だ』」」」

 

「……………ふむ。まあ、あれだ。飛鳥も、改めて宜しくな」

 

「「「『(あ、誤魔化した)』」」」

 

 ニヤニヤと笑う飛鳥達三人と一匹。まあローズの恥ずかしそうに頬を赤く染めている顔を見れただけ収穫は大きかった。龍神といえどこんな顔をするのだなと。

 飛鳥も仕返しとばかりにニヤリと笑い、

 

「ええ、宜しくねローズさん。それとそうムキにならなくても良いわよ?宇宙暮らしなら友達いなかったのは仕方が無いことだもの」

 

「む………別にムキになってはないぞ!我は至って冷静だからな!」

 

「ヤハハ、唇を尖らせながらじゃ説得力ないぜ龍ロリ?」

 

「………ぬ」

 

 十六夜に指摘されて反論出来ず頬を赤く染めながら拗ねるローズ。それをニヤニヤと見つめる十六夜達。

 十六夜はふと白夜叉も黒ウサギに拒絶されて拗ねていたことを思い出して、龍神も星霊も中身は子供なんだなと笑いを噛み殺した。

 だが急にローズが「ふん」と鼻を鳴らすと十六夜を見上げて、

 

「そういう少年はどうなんだ?我らと友にならぬのか?」

 

「あん?………そうだなあ。オマエらがどうしても俺と友達になりたいってんなら考えてやらなくても―――」

 

「あら?それじゃあ十六夜君なんかとは友達になってあげないわ」

 

「うん。私も十六夜なんかと友達になってあげない」

 

「ふむ?飛鳥と耀がそういうのならば我も少年なんかとは友にはなってやらぬよ」

 

「あん?んだとゴラァ!!」

 

 飛鳥達の態度に額に青筋を浮かべながら激怒する十六夜。俺なんかとはどういう意味だと。

 その様子にしたり顔の飛鳥達はニヤリと笑って、

 

「というのは嘘よ」

 

「あ?」

 

「うん。冗談だから元気出して十六夜」

 

「は?」

 

「ふふ。見え透いた罠に嵌まるとは………少年も愚かだな」

 

「………チッ」

 

 十六夜は罰が悪そうな顔をして舌打ちする。すると其処へ黒ウサギがやって来て、

 

「ゆ、湯殿の用意が出来ました!女性様方からどうぞ!」

 

「ありがと。先に入らせてもらうわよ、十六夜君」

 

「………ああ。俺は二番風呂が好きな男だから特に問題はねえよ」

 

 先の事もあり不機嫌そうな顔で返す十六夜。そんな十六夜の下にローズが歩み寄り、

 

「ふむ。ではな、少年。外の奴らは汝に任せたぞ」

 

「………へえ?やっぱりアンタは気付いてたのか龍ロリ」

 

「無論だ。一応別館と此処には結界を張っておいたが………万が一の際は頼んだぞ少年」

 

「あいよ」

 

 十六夜がそう返すとローズは人生初のお風呂を堪能しに大浴場へと向かうのだった。

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