So Am I 作:伊織
次の日の朝、いつも通り教室に行けば友達に囲まれた。何故だかわからないが皆興奮している。
「おっはよー美桜!ちょっと聞いて!」
「どうしたの?」
「昨日の放課後私達怪談してたじゃない?」
ああ、あの誘われたけど生徒会の仕事があって断ったやつか。
「それが?」
「そしたらね、渋谷先輩っていう転校生が来て!」
「もう!その人が超イケメンなのーっ!」
転校生?転校生なんてこの時期にいたっけ?生徒会の資料で読んだ覚えはなかったはずだけれど。
「肌白くて背高くて!服が全部黒かったけど逆にそれが引き立ててる感じ!!」
「…ふーん」
なるほど、最近はチャラいのじゃなくて見目麗しい男の人が人気なのか、なんてどこか観点の違う事を思っていたら、皆が溜息のような、どこか安心した様な息を吐いた。
「美桜はほんっと男に興味がないねー」
「そんな良い顔してるのに!」
「まぁこれでライバルは減ったじゃん。」
失礼な、と剥れると、「ごめんごめん!」と笑いながら謝って来る彼女達にワザとらしく溜息を吐いた。
「じゃー私もその先輩狙ってみよーかなー…」
ニヤッと口角を上げれば皆はうっ…となり後ずさる。
「美桜はダメっ!絶対ダメ!」
「そーだよ!」
「アタシ達勝ち目ないじゃんっ!」
「いやそんな事ないと思うけど…」
肩をガタガタと揺すぶられてううっ…と頭に手を置く。
「もー冗談に決まってるじゃん!」
「そ、そーだよねっ!」
「ふーっ…」
そんなこんなで会話していると、先生が入って来て皆が席に座る。その時ふと、麻衣がまだ来ていない事に気がついた。
「あれ?ミチル、麻衣は?」
「え?…いないねー。寝坊かなー?」
コソコソ話していると、勢いよくドアが開き息を切らした麻衣が立っていた。
あまり遅刻をするような子ではないんだけれど、何か問題でもあったのかな、なんて思いつつ、話し始めた先生へと意識を移した。
____
________
授業が終わった途端、麻衣が私の席まで飛んで来て抱きついてきた。そんな麻衣を私も抱きしめる。
「もー美桜~!聞いてよーっ!」
「聞いたげる聞いたげる。どうしたの?」
体を離し椅子に座れば麻衣も向かいに座った。その顔は「面倒、ウザい、最悪」としっかり書いてある。
「…もしかして遅れてきた理由?」
そう問えば、「そう!!」と言って語り出した。なんでも今日はいつもより早く出たらしいのだが、ふと旧校舎が気になって寄ってみた。すれば何故だか中にはカメラが置いてあったという。
さぁ所で、皆さん「好奇心は猫をも殺す」ということわざをご存知だろうか。好奇心が強すぎると、身軽な猫でさえ死んでしまう。それと同じで過度の好奇心は持たないように、という意味なのだが、今朝の麻衣はどうやらその猫となってしまったらしい。
気になって中へ入り、カメラを触ろうとすれば何処からか男の人の声。それに驚き飛びのけば後ろの靴箱へ見事直撃し、ドミノ倒しになったそうな。その男性は怪我を負い、そこで登場したのがあの見目麗しい怪談の君。そこでチャイムが鳴ったのを知らされ慌てて教室に向かったという…
「「「…麻衣が悪いじゃん」」」
と三人で声を揃えて言えば、麻衣は「なんでー!?」と立ち上がった。
「まず旧校舎は立ち入り禁止じゃない。」
「人様の物を勝手に触るのも言語道断。」
「それで挙句遅れて来た訳でしょ?」
「ううっ…」
ついに机に突っ伏した麻衣の頭を撫でる。
「まぁ当分学校にいるでしょうし…ちゃんと謝らないと、ね?」
そう締めくくれば、「美桜~!」と腰に抱きついて来た。あぁ本当に猫みたいだ。
「美桜は厳しーんだか甘いんだか…」
隣で友人達が飽きれていた事を私は知らない。
_____
________
放課後、いつもより生徒会の仕事を早めに切り上げ校門へ足を向ける。すればそこには茶色の髪の小さな女の子もとい麻衣がいた。
「おまたせ。遅くなってごめんね。」
「大丈夫だよー早く行こっ!」
2人で帰路に着く。すれば麻衣から口を開いた。
「聞いてよ美桜!」
なんか休み時間にも聞いたな、と思いながら耳を傾ける。
「美桜が教室出た後でさ、あの渋谷さんが教室に来たの!んで呼び出され助手の代わりをしろって脅されてさあ…」
そのまま麻衣の口は止まらない。どうやらその彼はかなり自尊心が高いようだ。そこで麻衣が名付けたのが【ナルシストのナルちゃん】。正直そのまんまだ。
「つまり、調査が終わるまで助手代わりとして働くのね?」
「そーなの!やーだー!!」
地団駄を踏む麻衣に苦笑する美桜。麻衣は怪談ならともかく怖いものに案外弱い。
「まぁまぁ…私も手伝えに行ける時行くから!て言っても今は忙しくて…土曜日行こうかな。」
「本当に!?やったー!!」
さっきまで泣き真似までしてたのに美桜がそう言った瞬間周りに花が咲く位微笑んだ。
「うん。差し入れも持って行くから。」
そう言えば「甘いものね!」と要望を付ける。はいはい、と苦笑しながら定期券を取り出し改札を潜る。
「じゃ、また明日ね!」
「うん!また明日ー!」
それぞれ違う方面のホームへと足を向けた。