So Am I 作:伊織
「……っ!美桜っ!」
「……え?」
「もー大丈夫ー?朝からずっとそんな感じだよー?」
「あはは、ごめんね。大丈夫だから心配しないで?ありがとう。」
「そう?」
そう言って麻衣が離れた所で溜息を吐いた。昨日のまどかの電話の後結局眠れず、今も授業に集中できない。
『…ナルが日本に?』
『そうなの。渋谷に日本支部を置いて、そこの所長をしてるわ。リンが部下』
『リン苦労してるんだろうね』
『多分ね』
リンの苦労が手に取るようにわかるな…と遠い目をしていたが、ふと何かが足りないことに気がついた。
『そういえばジーンは?ジーンはイギリスに残ってるの?』
前は毎日と言ってもいい位電話してきてたのに、数カ月前から全く来てない。
『…いいえ、ジーンも日本よ』
一瞬つまった…?と思いながらも話を続ける。
『あぁ今ね、ナル達どこかの高校の旧校舎を調べてるらしいわ。案外美桜の学校の近くだったりしてね』
『旧、校舎?』
旧校舎なんて…私の学校と同じじゃない!そんな、だってナルにはどこの学校かなんて言ってないのに。
『ねぇ、ナルって偽名使ってたりするの?』
『え?よくわかったわね!偽名はねぇ…』
その続いた言葉に、口を抑える手が震える。
『美桜?どうしたの?』
『…ま、どか……そのナルが調べてる学校…うちの学校だよ。』
『え!?そんな、うそ!』
まどかも驚きを見せた。本当に偶然とは恐ろしい。
『…この機会にナルに会ったら?』
『無理、だよ。まどかだって知ってるでしょう?私、前みたいにナルに接せれる自信ない。』
『いーじゃない別に!ナルはずっと美桜に会いたがってたのよ?冗談抜きで日本にまで会いに行こうとしたんだから!…無理にとは言わないけど、会える内に会っておきなさい。』
『…わかった。ありがとう。』
そう言って電話を切りそのままソファーにまた倒れこむ。
苦しい。
会いたいってこんなに心は叫んでるのに会えない自分の弱さがそれを止める。いつのまにこんな距離が開いてしまったのだろう。
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「……あのクソ校長」
ポツリ、と美桜はそう呟いた。今日は土曜日にも関わらず気を紛らわす為に生徒会の仕事に一人没頭していた美桜は、たまたま残っている生徒がいないか探しに来た先生に出くわしてしまい、なんでも昼の祈祷中に怪我をした校長の代わりにお茶や焼き菓子を持っていく事になったのだ。
そう、一番行きたくなかった旧校舎へと。
ここまで来るともはや運が悪いとしかいいようがない。いや、運が良いとも言えよう。会いたいと願った人に会えるのだから。それでも会いたくないと思うのは、単に怖いから。
馬鹿な位今更なのに。勝手にいなくなって勝手に戻って来るなんて酷い話だ。別に悪口雑言はどうでもいい。ナルの嫌味をかわせなければ4年も一緒にいるなんてまず無理なのだから。
だけど一度見てしまえばもう離れたくないと思ってしまうかもしれない。また依存してしまうかもしれない。
「…ほんっとう、弱虫なんだから。」
そう自嘲しながら重い足取りで旧校舎へ向かう。前に着いた所で校舎を見上げた。確かに古そうだがただそれだけの様な感じで、特別何かがいそうとかはない。
「…お邪魔しまーす……」
なんとなく言ってみるものの返って来る声もなく、玄関を潜ればギシッと音がした。そのまま暫く廊下を歩いていると、前方の教室から着物を着た小さい女の子が出て来て奥へ向かって行く。
「あの!」
声を掛ければ、くるっと振り向いて顔を横に傾げた。日本人形のような大きな目に小さい顔。本当に綺麗な子だ。
「私、この学校の副会長を務めます藤原美桜です。霊能者の方ですね?」
「…えぇ。原真砂子ですわ。」
彼女に近づき手を差し出す。すれば彼女は頭にハテナマークを浮かべた。
「あ、ごめんなさいっ…私イギリスに住んでいて、初対面の人と握手をするのが習慣付いてるんです。」
そう言えば、キョトンとした後クスクスと笑い私の手を取ってくれた。わたしはその手を握り返しながらゆっくり瞬きをして手を離す。
「ありがとうございます。」
「いいえ。では、私はこちらを見て回りますので。」
また後ろを振り向いた彼女に、反射的に声をかけた。
「原さん!」
「?」
「あの…」
言うか迷う。それでも彼女の心の憂いが少しでもとれたら、と思った。
「…私は貴女の事信じてます!だから、自信、持ってください」
そう言えば、驚いたように私を見た後、さっきよりももっと綺麗に微笑んでくれた。
「…真砂子ですわ。そう呼んで下さいまし、美桜。ありがとう。」
「どういたしまして、真砂子。」
そう言って今度こそ行ってしまった彼女を見送り、私は声がする方のドアの前に立った。
気配を消して開けっ放しのドアから覗く。何やら口論をしているようで、麻衣が呆然と眺めていた。そしてふと振り向いた方向にいる男性に目を止める。
真っ黒な服を着て、白い肌に変わらずの黒いサラサラな髪、そして顔は無表情。伸びた背は優に私を越していた。
久しぶりに彼を見れてこんなに嬉しいのに、置いてかれたみたいに寂しい。
美桜がぼーっとしていると、麻衣がふと気がついて声を上げた。
「美桜っ!来てくれたんだね!」
「あっ…うん。遅くなっちゃったけれど。」
抱きついてくる麻衣の頭を撫でる。いつもなら猫みたいって呑気に思うのに緊張してるからか頭が真っ白だ。
「おじょーちゃん、そこの綺麗なおじょーさん誰?」
茶髪の頭のチャラい男性が麻衣の後ろから現れる。こんなんが霊能者とかもはや詐欺だと思うのは私だけ?
「この子がさっき話してた美桜!すっごくかわいーでしょ!」
「いや可愛くはないけど…私、この学校の生徒会副会長を務める藤原美桜です。校長に頼まれて此処に来ました。」
集まる視線の中で一つ、違うものを感じる。それでもその方向にはどうしても向けなかった。
「これお茶と焼き菓子です。よろしければどうぞ。」
「あ、どーも。」
茶髪のお兄さんに渡し、また麻衣と向き直った。
「ずっと仕事してたの?」
「うん。新入生のやら何やらで忙しくって。そしたら先生に捕まって此処に来たってわけ。」
「…先生に言われなかったら来る気なかったんでしょ。」
睨んでくる麻衣にあはは、と空笑いをすれば「もーっ!」とかわいらしく怒られた。
「藤原さんは谷山さんと同級生なんやですか?」
なんだ?今の不思議な言語は。そんな事を失礼ながら考えていたら、麻衣が苦笑しながら教えてくれた。
「ジョンは関西で日本語を習ったんだって」
「あーなるほど…そうや。どうぞよしなに。あんた日本人やないやろ?」
と京言葉を使えば皆さんポカーンとして、ジョンは目をキラキラさせた。
「へぇ。オーストラリアです。」
「美桜、流暢だね?」
「元は京都出身だからね。」
「あーなるほど、なんか多才そうだな。俺は滝川法生、高野山の坊主だ。」
坊主って髪の毛あるんだ。そう言えば「破壊僧」と綺麗なお姉さんが突っ込む。
「貴女は?」
「私は松崎綾子、見ての通り巫女よ。」
巫女って、もっと清楚なイメージ……と思いながらも言ったら怖いので黙っておいた。まぁ実際は信仰心の問題なのだけれど。
「僕はエクソシストやがんなです。」
「なんか、バリエーション豊富だね。坊主に巫女にエクソシストにゴーストハンターって」
と言えば笑う皆の中で、麻衣が疑問を述べた。
「あれ?なんでゴーストハンターって…」
「…麻衣自分で私に言ったじゃない。渋谷さんのこと。」
そう言えば「あ、」と麻衣が笑った。
「あ、よかったら話続けて下さい。私もう行くので」
「え!もう行っちゃうの?」
麻衣が私の服の裾を強く握る。可愛いなあ、と抱き締めたくなったが、如何せん人様の前なので自重した。
「まぁ生徒会室にはいるから。…では失礼しました。」
一礼し部屋を出ようとドアに手をかけた時だった。
ーピシッー
「…ラップ音か?」
「ってユーレイが出る時するっていうアレ?」
うげぇ、と麻衣が顔を歪めた瞬間、パキッという音がして勢いよく黒板が横一文字に割れた。そしてその瞬間遠くから聞こえる悲鳴。
「原さんっ!」
ジョンが叫び皆が振り向くと、彼はカメラの映像を見ていた。
「原さんが二階の教室から落ちたです!」
「真砂子!!」
急いで真砂子が落ちたという校舎の西側に向かう。すれば木材などの間に倒れている真砂子を見つけた。
「っ……美桜……?」
「やだ…怪我は?大丈夫!?」
顔を覗きこめば弱々しいが確実に意識があり、ほっと息を吐く。
「今滝川さん達が救急車呼んでるから、ね?他の人達もすぐ来るよ。」
「そう、ですの…」
意識はあるものの、やはり良い状態とは言えないのだろう。顔色も悪く、少し体を動かそうにも顔を歪めている。
…少しだけなら、大丈夫よね。と真砂子の額にそっと手を添え目を瞑った。
「【痛いの痛いの飛んでいけー】」
確かに端から見れば15歳にもなってまだ信じてんのかと笑われる所だが、私の言うこれには本当に効果があるのだ。現に真砂子の顔色もよくなってきた。
「美桜…?貴女何を…」
そう疑問を口にする真砂子の唇に人差し指を当てて止める。
「おまじない。内緒だよ?」
微笑めば、遠くから騒がしい足音が聞こえ、ナル達がやって来た。それを機に立ち上がり、皆にばれないようそっとそこを離れた。
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カタカタカタ、とリズム良いタップ音が小さい部屋に響き渡る。しかしふとそのタップ音が止まったと思えば、少女はメガネを外し机に肘を乗せて頭を支えた。重い沈黙が辺りを包む。
「…変わって、なかったなあ」
ポツリ、とそう呟いてポケットから携帯を取り出す。すればその待受には少し幼い自分と、両隣りに顔がそっくな美少年達がこちらを向いていた。美桜と一人の少年が花が綻ぶような笑みを浮かべており、もう一人の少年は無愛想な表情を浮かべている。
何度夢に見ただろう。
何度会いたいと泣いただろう。
それ位大切な人達。その片割れに会えた事に胸を馳せながらも、罪悪感は拭えなかった。溜息を吐きながらも、それを振り払う様に立ち上がり処理し終わったファイルを持って奥の本棚に近づく。ファイルの元の場所を探しながら戻していると、ふと背後のドアが開く音が聞こえた。そして誰だ?と思いながらもそちらを見なかった…否見れなかった。
先生や麻衣ならすぐに声を掛けてくれる。
滝川さん達ならノックをしてくれるはず。
なら、思い当たるのは一人しかいなかった。
「…何故イギリスの名誉ある心霊学会に属している天才博士が偽名を使って日本にいらっしゃるのかお聞きしても?
Dr.Oliver Davis?」
シニカルな笑みを浮かべて反対方向を向けば、そこにはあの見目麗しい彼が立っていた。感情を伺えない無表情を徹っしている。相手に感情を伺わせてはいけない、と美桜も心を沈めナルを見る。
「…何故お前がこの学校にいる?」
「この学校の生徒だからよ。私の服装を見ればわかるでしょう?」
無言の睨み合い。しかしナルは目を閉じて溜息を吐き、美桜に近づいていく。美桜は本棚があるため動けず、じっとナルを見つめていた。ナルの腕が美桜の顔の横に伸び、音がする位強く本棚に手を添え、美桜が逃げられないようにした。
「何故僕にだけ秘密にしていた?」
「…何を?」
「日本に帰る事をだ!」
至近距離で怒鳴られビクッと美桜の肩が震える。何かを言おうとしたが、口を噤み俯いた。彼が怒るのは最もなのだ。ナルにだけ何も言わなかったらそりゃ怒るに決まってる。返す言葉がなかった。重い沈黙が流れ、お互い無言でいると、私の顔の横にあったナルの腕が動いて私の頭を後ろから掴む。突然の事で反応できなかった私はそのまま腕の動く方へ、ナルの胸に押し付けられた。
痛い位に抱き締められる。
前は何かある度に抱き締めてくれたあの腕が情けない。昔は震える私を抱き締めてくれていたのに今はナルが私に縋ってるみたいだ。
「ナル…?」
「美桜まで僕の前から消えるな…」
私【まで】?それじゃまるで
誰かがナルの前から消えたみたいじゃない。
「どういう意味?」
聞いても答えてくれず、私の肩口に顔を埋める。ナルが今まで、こんなに感情的になった事があっただろうか。
何故ナルは彼に相談しないのだろう。何故彼はナルの側にいないのだろう。何故まどかは彼の事を【日本にいる】と言って、【ナルと来ている】と言わなかったの?何故彼はもう何ヶ月も連絡して来ない?彼と最後に話したのはいつ?
彼とは、日本で会った時が、最後。
「…ジーンはどこ?」
ポツリ、と疑問が口に出た。考えてみればおかしい事だらけなのだ。いつでもひっつき虫みたいにナルの側にいて支えて来た彼がいないなんて。毎週のようにきていた電話もプッツリと途切れて。ナルは急に日本に来て。
「ねぇ…なんでジーンはナルの側にいないの?なんで急に日本に来たの?」
質問攻めにしても何も答えない彼にイライラが募る。何故答えてくれないの?ねぇ、ジーンは普通に元気だって、煩いくらいだって言ってよ。
嫌な想像しか浮かばないじゃない。
「ナル、答えて。…答えないなら【視る】わよ」
そう言った私をナルは少し離し、真っ直ぐ見つめた。黒曜石の綺麗な瞳が私をしっかりと映している。そして紡がれた言葉は、静かな空気を切り裂いた。
「ジーンは死んだ」
思考が停止した。そしてすぐ、笑えないジョークだ、と脳が判断しようとしたが、ナルの顔を見てそれがジョークなんかじゃないと悟った。
「そ、んな…どうして……!」
訳がわからない。ジーンが、死んだ?あんなに優しい人が?絶望の淵にいた私に光を教えてくれた彼が?誰よりも私を応援して、支えてくれた彼が?信じられる訳ないじゃない。
バッとナルの手を取り握る。そして目を瞑れば、すぐにその映像に辿り着いた。
何処か山の中、海…いや、湖を眺めている。するとふと視界の隅に現れた車。次の瞬間にはもう倒れていた。誰か…女性の足が近づき、また離れて行く。見えなくなって、一旦車が下がったら…また凄い勢いで近づいて来た。
そこから画面が眩しく…ハーレンションの様な状態に移った。地面を引きずられて、トランクに入れられて、何処か暗い場所で何かに包まれて船に乗って…
「やめろ」
パッと放心状態になっていた私の手をナルが離す。私は力を込める場所がなくなり足から崩れた。
受け入れられる、訳がなかった。私だけ何も知らなくて。【また会える】そればかり考えていて。
それが私の心を支えてたのに。
理解できていないはずなのに目が潤んできて、ポタポタとスカートに染みをつくっていく。何かがせり上がってきそうなのにそれが何かわからない。
「…日本で会った時彼、ナルに会いたいって言った私に【僕が二人の架け橋になりたい】って言ったの」
全部鮮明に覚えてる。あの時のジーンの温もりも、声も、香りも。だけど、もう記憶は記憶でしかない。
「こんな風に架け橋になるなんて望んでなかったっ!!」
【また三人で】したい事が沢山あった。もうそれは叶わないと知っていても、馬鹿な願いでも。
そんな風にただ泣き続ける私を、ナルは昔の様に抱き締めてくれた。私はそんな腕に縋るしかなかったんだ。
「っ…もう大丈夫……」
暫く泣き続けて、大分落ち着いて来た所でそう言ってナルから離れた。ナルの気遣う視線を感じながら静かに口を開ける。
「…ジーンの死体は見つかっていないのね?だから探しに来たのでしょう?」
「そうだ。あんな場所なら捜索願いを出しても見つからないだろう。だからSPRの日本支部を足場にして、調査もしながら探す事にしたんだ。」
「そう…」
つまり、ナルは当分日本にいる。日本語がいくら喋れると言っても不自由は多いはずだし。
「私も今回の調査手伝う。」
そう言えばナルは存外そうな顔をした。私が手伝うとは思わなかったのか、失礼な。
「自分の学校の事だもの。手伝うのは当然でしょう?それに…超自然科学の一博士としても気になるわ。」
「…好きにしろ。」
ナルがどこか諦めた声で呟いた。私は苦笑いを零す。
…ごめんね
勝手に消えた理由を言わなくて。
とりあえず資料を出すかな、とまた本棚に手を掛けた時、机に置いていたインカムから声が聞こえて来た。ナルがそれをとって耳に着ける。私も聞くために耳を近づけた。すればその声は麻衣のものだった。
「ナルっ!ジョンが祈祷してたら突然天井が落ちてきて…とにかく戻って来て!」
そんなこんなでナルは皆を帰すために一旦旧校舎へ戻り、その間に私はここ一帯の地形図や郷土資料を取り出した。資料や新聞のスクラップをペラペラと見て行く。確かに旧校舎で事故や事件が多かったのは事実だが
「用意したか?」
ナルが戻って来たので資料を指差せば同じようにペラペラと繰っていく。私は隣に座った。
「…私はあの旧校舎に心霊的な何かはいないと踏んでいるの。」
「何故?」
「確かに旧校舎に事件が多かったのは事実だわ。だけどそれらは全部理由が証明されてるでしょう?それに幽霊を見たっていう噂も大体は友達の友達、とかって感じで確証を得たものではないし。まぁ時々見たって人はいるけど、それは大体噂と被ってるのよね。
しかもその噂で出てくるような幽霊が過去に此処で何かあったという事実もない。嘘でないにしろ、先入観によってもたされたものだと思うわ。」
根拠を言えば、ナルが手を止めあからさまに顔を顰めた。そんな顔をしても美人なのだから不思議なのだが。
「何故それを校長に報告しない。」
「別に依頼されてないもの。ただの純粋な興味よ。貴重なサンプルになるかもしれないのに逃す手はないでしょ?」
これを他人に言えば学者バカと言われそうだがナルにだけは言わせないぞ、私は。
「…ポルターガイストについては?」
「それはまだわからない。だってナル達が来るまでそんなものはなかったんだもの。時々木材がグラウンドに落ちるとかはあったけど。」
そう言えばナルは黙り、地形図を手に取った。私は必要のなさそうな資料を戻していく。
「…これだ」
「わかったの?」
ナルの近くに寄れば資料を見せられる。水脈図?学校の方を見てみれば、大きな二つの水脈が流れていた…旧校舎の真下に。その上最近は人の出入りが激しい校舎にとって保つのは厳しいはず
「ああ…地盤沈下?」
「あぁ。水脈の水の度量を調べればすぐわかるだろう。」
「それなら任せて。」
ノートパソコンを開きインターネットで市役所のホームページを検索する。そしてそこからこの地区の地形についての項目を探した。
「信憑性はあるのか?」
「えぇ。近年の日本では様々な権利を保障する為に様々な制度が作られていて、その一つに知る権利を守るための情報公開制度があるの。だからこれは絶対に正確。」
ナルには正確性を伝えとかないと面倒なのでそう言って最近のボーリング調査などの欄をクリックすれば、一発で出てきた。
「裏付けはとれた。後は旧校舎がどれ位傾いているか調べる必要があるな…」
「まさか今から二人でするなんて言わないわよね?」
顔が引き攣るのを自覚しながら聞けば、ナルは嫌な位清々しい笑顔を向けてきた。
「よくお分かりで。さっさと始めるぞ」
その言葉に意気消沈したのは言うまでもない。