So Am I   作:伊織

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Day.6

 

朝、早く起きて渋谷にあるナルの事務所、つまりSPRの日本支部に向かった。まだ人通りがまばらな道玄坂をタクシーで登って行く。

 

「ここ?」

「そうだ。」

「これ、全部SPRからでしょう?ナルのパトロンとかの支援は一切なしの。」

「ああ。」

 

腐っても流石は歴史あるSPR。今は昔に比べ人数が減っているがそれでもまだこれだけの力があるのか、と悶々と考えている内にナルはドアを開け既に入っていた。私も慌てて中に入る。

 

「ここが資料室でここが所長室。」

「…汚いね。」

「お前の仕事が増えていいだろう。」

「過労死したら幽霊になってナルに憑いてやる。」

「望む所だな。いいデータがとれそうだ。」

「研究馬鹿!」

 

ぐちぐちいいながらも暗示に必要な道具をとっていく。結構な荷物量だが、手で持てない程じゃない。そのまま二人でまたタクシーに乗り込んで学校に向かった。学校では部活に入ってる生徒達が既に来ていて元気な掛け声が響いている。

 

「失礼します」

 

ノックをして校長室に入れば、ナルがあらかじめ言ってあったのか校長が既にいた。事情を説明し、協力を依頼すれば快く快諾してくれた、

 

「ねぇナル、暗示の対象物は?」

 

セッティングをしながら聞けば、ナルは目も向けずに話す。

 

「まだ取って来てない。だから取って来い。」

「…なんでそんな偉そうに言われなきゃいけないのよ。」

「じゃあお前の今の立場は?」

「…ナルの助手。」

「ということは?」

「…取ってきます!」

 

なんなのよなんなのよっ!わかったわよ取ってこればいいんでしょっ!?と足並み荒く校長室を去って行った。

 

 

校長室に帰って来ると松崎さんや滝川さん、それにジョンが既に席に着いていた。大人組2人はじっとナルを睨んでいるものの、昨日の様に何か突っかかる事はなかった。

ナルが校長に協力を依頼したのもこのためだった。依頼主の手前いい歳した大人が17歳の子供に暴言を吐くなんて事はしないだろう事をわかっていたからだ。

 

「失礼します。…あら、美桜!」

「真砂子!退院できたのね、体調は大丈夫?」

 

ノックが鳴り入って来たのは先日怪我をして入院していた真砂子だった。変わらない顔色に安心する。

 

「えぇ大丈夫ですわ。きっと美桜のおまじないのお陰ですわね。」

「よかった!あ、ここに座ってもうすこし待っててもらえる?」

「わかりましたわ。」

 

そう言って座った真砂子はニコリと私に微笑んでいて、美人の微笑みって癒しだ、なんて思っていた矢先またノック音がして麻衣と黒田さんが入って来た。

 

「おはよう麻衣、黒田さん。そこに座ってもらえる?」

「これで関係者は全員だな?」

「はい。」

 

ナルと目配せをして頷きカーテンを閉めた。そしてドアの前で待機しておく。

 

「では少しお時間を頂きます。」

 

スイッチを押しチカッチカッと点滅する。皆がその方向に集中した。

 

「…光に合わせて息をしてください

ゆっくりと肩の力を抜いて…

自分の呼吸が聞こえますか

心の中で呼吸を数えて下さい…

椅子に深く凭れてしまっても構いません…」

 

 

皆が段々力を抜いていく。暗示が成功している証拠だ。ナルは暗示が上手い。私は【心理療法】の実験の時しか使わなかったが、それでもこれがどれだけ難しい事かはよく知ってる。

 

 

「ーー今夜何かが起こります

旧校舎の二階にあったイスです

イスが動きます…

今夜は旧校舎の実験室の中にありますーー」

 

 

ナルが私に目配せをし、私が電気を着けカーテンを開く。皆は眩しそうに目を細めている。

 

「ありがとうございました。」

 

皆が立ち上がって目を擦る。すれば前に置いてあるイスを見た。暗示は成功だ。

 

「お疲れ様です。今日は放課後生徒会があるから旧校舎に行くのは無理だと思います。旧校舎の近くで部活をしている人たちを移しときますね。」

「わかった。」

「じゃあまた明日。」

 

そう言ってナルは校長室から出て行った。私は未だイスを見ている麻衣の肩を叩く。

 

「麻衣、教室に戻りましょ?」

「…えっ?あ、えっと…私ナルに聞きたい事あるから先に行ってて!」

 

そうして麻衣も廊下に消えて行く。どうしたんだろう?と思いながらも、授業をサボると内申に響くと急いで教室に戻ることにした。

 

 

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