東方悲恋録〜hopeless&unrequited love〜   作:焼き鯖

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拝啓 愛する人

 久しぶり。どうしたんだよそんなに汚れちゃって。

 全く、お前は私がいないと本当にダメなんだから。取り敢えず綺麗にするぞ。

 

 ……よし、綺麗になった。いつも通り、私が愛したかっこいいお前だ。

 これ、お土産。お前の好きな羊羹持ってきた。腐らせるといけないから、箱詰めされたまんまだけどな。

 さて、じゃあ何から話そうか。この前と同じように、私の近況からか、それとも里であった出来事にするか……うーん、少し悩ましいけど、まぁいいや。私の近況から話そう。

 みんなお前のこと、心配してたよ。あ、みんなって言うのは鈴仙とか、永琳とか、てゐとか。後……輝夜も。久しぶりにお前の姿を一目見たいって言ってたぜ。本当だったら今日みんなで来るつもりだったんだけど……生憎急患が入ったらしくて。だから今日は私一人。だから……ほら、えっと……いつもはみんながいるから、今日は二人きりってことだよ。

 あ、今お前照れてるって思っただろ。いーや、絶対思ったね。女の勘は絶対に当たるんだ。……今、女と呼べる年でもねぇだろとも思ったな。こいつめ、私が死んだら化けて出てやるから。

 

 ……嘘だよ。お前を揶揄いたくなっただけさ。いつものようにな。

 えっと、何の話だっけ? あぁそうそう、近況だったよな。今話すよ。

 

 私の方はそんな代わり映えしたことはないさ。朝起きて、ご飯食べて、洗濯して、買い物行って、輝夜と殺し合いをして、風呂入って、寝る。そんな事の繰り返しだよ。何世紀前から変わらない、私の日常さ。

 それでも、世界っていうのは変化していくもんでさ。結構変わったよ。いろんなことが。

 まず、博麗の巫女が代替わりしたんだ。

 お前があんだけ可愛がってた霊奈、あいつが博麗の巫女の名を襲名したんだ。霊夢の奴、まだまだひよっこって言ってたけど、私には成長した娘の事を喜んでるように見えたよ。今、あいつは幻想郷中を飛び回ってる。お母さんみたいに立派な博麗の巫女になるんだって張り切ってるよ。多分、お前の耳にも入っているとは思うけどな。

 そうそう、あの白黒魔法使いの子どもも大きくなったぞ。いつか霊奈を追い抜いて偉大な魔法使いになるんだって息巻いててさ。あの子、魔法の筋がいいし、魔理沙と同じで努力家だから、すぐに霊奈を追い抜くと思うな。私は。

 慧音は寺子屋の校長になったし、董子は今やオカルト研究の第一人者として教鞭をとってる。みんな、変わっていくんだよなぁ。変わらないのは私と輝夜と、永琳位なもんか。おいていくんだったら、最後に挨拶していってほしいくらいだよ。本当に。

 まぁ、人の成長を見るのは楽しいし、今は別にもうどうでもいいって思ってるけど。

 

 あ、そういえばさ、いつだったっけな……覚えてるか? 私とお前が初めて会った時のこと。あれは傑作だったよなあ。確か……二十数年前のことだったか。

 

 その日の私はずったぼろだった。輝夜とどっちが首をくくるかの勝負に負けて吹っ飛ばされてさ。その日は運が悪くて野獣の餌にもされた。ふらふらしながら家帰って、あー約束だし首くくるかーって、外の物干しざおを目いっぱい高くして、縄をそこに巻いて、さーやるぞ―って時に、籠を担いだお前が現れた。

 久しぶりにびっくりしたね。だけどお前はそれ以上に驚いて、自殺はいけません! とか、死ぬことはありません! とか、一人で勝手に心配して喚いてるんだよ。私からすれば何言ってんだろって思ったね。だからその時は気にせずに輪っかに首を通して首吊ったら、焦ったお前に縄切られた。何すんだよって怒ったらそれはこっちの台詞ですよ! って逆に説教。あれは正直イラっとしたね。一般人が蓬莱人に命云々を語るんじゃないって。

 だからアレを見せてやったんだ。正直、すまなかったと思ってる。見せた途端にお前、腰抜かして逃げ出したもんな。いい気味だって、当時は思ったけど。

 それから一週間後、今度は里で会ったな。あの時の不死身女! って不謹慎なこと言ってくれちゃって。その時の私の乙女心に少なからず傷がついちゃったよ。

 

 ハハ、これも冗談だ。思い出したら揶揄いたくなっただけだよ。

 

 でも、そこからだよな。私とお前の関係が始まったのは。会うたびに口喧嘩してさ、お前の方からくだらないちょっかい掛けたり、逆に私の方から仕掛けたり。そうやってぶつかっていくうちに、いつからか慧音と同じように接することが増えて、気づいたら友達になってた。縁って不思議だよなってつくづく思うよ。

 

 あ、後、こんなこともあったよな。

 

 冬の日の夜中だったか。私が寝ようとしてた時、突然お前が家に来て流星群見ようぜ! っていきなり言い出してさ。私はもうびっくりしちゃって、どうやってここに来たとか色々言いたいことはあったけど全部吹っ飛んだ。それ以上に流星群? 今更? ってその時は思った。

 何せ私は平安の昔から生きてるからね。星なんて見飽きてるし、流星群なんて何回も見た。だから星座とか星の流れとか全く興味がなかったんだ。

 だけど、お前はそんな私のことなんてお構いなしで、いいから行こうってずっと呼び掛けたよな。まぁお前があまりにも行きたそうにしてたから、私が折れて結局行ったけど。その時のお前、すごく嬉しそうだったのを覚えてる。

 良い場所知ってるんだっていうお前に連れられてきたのは、小高い丘の上だったよな。長いことここで生きてきた私も、流石にそこは知らなかった。だからどうやって流星群を見るのかなって少なからず期待はしてた。

 けど、お前は着くなり原っぱに寝そべって夜空を眺めるだけ。それ以外に何もしなかったよな。私がそれだけ? って聞いても、これが一番いい星の見方だって言ってそれっきり。私は呆れて帰ろうとしたけど、あんな寒い日の夜中にここまで来たんだから、流れ星の一つも見ないと割に合わない。仕方なく私もお前の隣に寝そべったんだ。

 そうして何時間くらい経ったか、ただただ時間だけが流れるばかりで星なんて一向に流れて来やしない。その割にはもう少しだから、もう少しだからと眺めるばかりで、つまみも、酒も持ってこなかったお前にイライラして、とうとう私は帰るって言いだしたよな。でもお前はもうちょっと待って欲しいって言うだけ。あんまりそれしか言わないから、なんでここまでして星を見たいんだって聞いたら、お前と一緒に星が見たいんだって言ってさ。あぁ、そうそう、お前と一緒だからこの寒さも耐えられるんだとも言ってたな。

 クサい台詞だったよなぁ、あれ。女を引き止める文句としては落第点だぜ? まぁそれでころっと引き止められたその時の私もどうかと思うけどさ。結局星は流れないし、お前は風邪ひくしで散々だったな。もう二度とやりたくない。

 でも、私の事を楽しませようって考えてやってくれたんだよな。嬉しかったよ。本当に。

 

 永遠亭の連中と交流し始めたのも、確かこの頃だったよな。

 

 馬鹿やって風邪ひいたお前をおぶってってさ。あの時は大変だったよ。お前がギュって私にしがみついて離さないもんだから、着いた時に降ろすのに苦労したし、輝夜からはアンタのこれ? って小指立てられるし。まぁその時の私は単なる友達としてしかお前を見れてなかったんだけど。で、これに恩を感じたお前が、月に二、三回野菜を送るようになったんだよな。あれ、今だから言うけど内心もやもやしてた。

 だってそうだろ。お前が永遠亭を行き来するって事はさ、必然的に輝夜とも話す機会が増えるって事だから。もしお前が輝夜とくっついちゃったら、私と過ごす時間も減っちゃうし……なんて事を、今考えた。

 ごめんな。当時の私には、お前が好きだって言う気持ちなんて分からなかったんだ。恋なんてとうの昔にしたっきりだったし、お前といるのが心地いいのも、単に趣味があって、話しやすくて、それが友達関係だからとしか思えなかったんだ。それでもよく分からない胸のもやもやは募るばかりで、輝夜に会ったお前を見たら、なんか独り占めされた気がしてずるいって思って、お前に八つ当たりしてたんだよ。あれ、迷惑だったよな。本当にごめん。

 

 そんな簡単なことに気づかないまま、私達の関係は続いていったよな。私と、お前と、あと輝夜。不本意だけどな。あの頃が楽しかったと思うよ。お前を巻き込んで馬鹿やったり、三人で里行って団子食べたり。お前と過ごす時間だけは輝夜との喧嘩もなかったな。私も輝夜も一番穏やかに過ごしていたと思う。

 

 お前への恋心に気づいたのも、この頃だったよ。何というか、パンドラの箱が開いちゃったって感じだった。多分、それは輝夜も同じだったと思う。

 

 その日は丁度、永遠亭に来ていた。久しぶりに輝夜と勝負をするために来ていたんだ。

 いつものように縁側に向かっていったら、輝夜の楽しそうな笑い声。そっと覗いてみたら、お前と輝夜が楽しそうに笑ってるのが見えた。それだけだったらまだよかったけど、お前がいきなり顔を近づけるもんだから驚いたよ。

 ちくっと胸が痛んだね。離れた後の輝夜のあんな顔、私初めて見たからさ。どうしたらいいか分からなくて、お前たちに気づかれる前に逃げ出した。家に帰って泣いたよ。自分の気持ちに初めて気づいたし、輝夜もそうなんだって知ってどうしようって思ったんだ。もっと早くこの気持ちに気づいて行動を起こせばよかったとも思ったよ。

 ひとしきり泣いた後、私は気づいたんだ。おまえの幸せを願うことが一番大事なんじゃないかってさ。もしお前も輝夜のことが好きなら、それを応援するのが筋ってもんじゃないのかって思ったんだ。

 うん、そうだよ。私は自分の恋心を封じることにしたんだ。我慢するのは慣れっこだし、大好きな人には笑ってほしかったからな。

 それで、先に輝夜に祝福しようと夜になってからもう一回永遠亭に行ったんだよ。

 そしたら輝夜がなんて言ったと思う? あいつが好きなのはあんた、つまり私の方だって言うんだよ。そこで私は思ったんだ。あぁ、こいつもお前のことが好きなんだなって。

 あり得ないって? ハッ、まだまだお前も私たちのことを分かってないんだな。意外と似てるんだよ私と輝夜はさ。まぁこれは私たちの間でしか分からないから無理もないけど。

 兎に角、私と輝夜はどっちがあいつと付き合うべきか口論になった。お互いに相手の方が相応しいのかを言い合うっていう滅茶苦茶な口論だったけどな。で、まぁ予想通りだとは思うが、そのまま殺し合いになっちまった。お互いに相手の方が良いっていうもんだからいつも以上に激化しちまってな。後で永琳にしこたま怒られちまった。

 どっちが勝ったかって? そんなもん、私に決まってるだろう。だって、お前と、不本意だけど輝夜も、二人とも幸せになってほしいって思うのは、当たり前のことだろう? それでも輝夜は私に対して最後まで貴女の方が幸せにならないとおかしいって言ってたけど、顔面に一発入れて黙らせた。あいつも私のことに対して思うところあったんだろうな。

 

 まぁ、ここから輝夜のアプローチが始まったんだよ。知らなかっただろ? こんな裏話があったなんてな。でも満更でもなかっただろ? あんだけ絶世の美女に言い寄られたんだからな。この女たらし。

 

 で、まぁお前が輝夜と結婚して、それを私が祝福して。暫くは平和だったよな。子供は出来なかったけどお前と輝夜は本当に幸せそうで、見てるこっちも幸せな気分になったよ。でも時々、私とお前が結婚したらって妄想はしてた。子供とかは期待できないけどさ、小さな家を買って、二人だけで静かに暮らす。ささやかだけど、幸せな日々を想像してたよ。……って、この話前にも話したっけか。すまん。

 

 それはそうと、お前は霊奈の事をめちゃくちゃ可愛がったよな。

 結婚してから三年目くらいで霊夢の奴が結婚して、その一年後に霊奈が生まれた。出産祝いで博麗神社に行った時はお前の豹変っぷりに驚いたよ。大の大人があんなにちっちゃな赤ん坊にメロメロだったもんな。私も輝夜も、滅多なことでは動じない永琳や霊夢ですらドン引きしてた程だったから。印象に残ってるよ。

 ……でも、お前の気持ちも分からなくはない。これに関しては私や輝夜の問題だ。お前に自分の子供を抱かせてやれなかった事が唯一の心残りだよ。本当にごめん。

 

 まぁ、それはいいとして……だ。お前の病気が分かったのが、結婚して八年位経った後だったよな。

 

 私と輝夜、永琳とお前の四人で永遠亭で花見してた時だったよな。厠に行くって言って立ち上がった瞬間にお前が突然ふって倒れてさ。お前は急に力が入らなくなったって言って笑ってたけど、輝夜と永琳は笑ってなかったよ。無論、私も笑えなかった。なんか嫌な予感がしたからな。

 その予感は大的中。出された病名は筋萎縮性何たらってやつだった。永琳の説明によれば、筋組織の萎縮やらなんやらでいずれ動かなくなる病気で、永琳でも直せる薬は出ないって言われたときは当事者じゃない私でもショックだったよ。

 何せその時のお前は健康そのもので、特に悪いところなんて何一つないのに、このままいったら一緒に歩くことはおろか笑う事も、喋ることもなくなって死んでいくって突然言われたんだぞ。ショックを受けなくてどうするって話だよ。

 唯一の望みといえば、お前も私達と同じ蓬莱人になることだったけど、それを口に出すのは憚られた。やっぱり、お前はただの人として最後まで生きてほしかったからな。それは輝夜も、永琳も同じだったはずだ。だからこそ、最後の最後まで口にすることはしなかったからな。

 みんなが混乱している中で、お前だけは一人違ったよな。全てを悟ったような、いたずらがばれた時の子どもみたいな顔で笑ってさ。なんで黙ってたんだよ。もっと早く言っておけば、もっと早い段階で全部治ったかもしれないのに。

 そう私が問い詰めても、お前は心配かけたくなかったの一点張りで、深い理由なんて語ってくれやしなかった。言わなかったお前もお前だったけど、気づかなかった私も馬鹿だったって悔しかったんだぞ。

 まぁそれも、今となっては過去の出来事だ。今だったらお前の気持ちも分かるよ。だからここで蒸し返して責めようとは思ってないさ。でもやっぱり悔しかった。それだけは忘れないでいて欲しいな。

 

 それからは闘病生活まっしぐらだったよな。永琳が症状を遅らせる薬をすぐに作って飲ませて、筋力を衰えさせないように運動も積極的にやって、出来ることは全部やった。私は私で漢方薬を使った治療をしてみたし、輝夜は輝夜で珍しい道具を使ったリハビリを提案して実践していたよな。

 

 でも……そんな努力も虚しいくらい、お前の病状は悪化していったよな。

 

 最初は箸が持てない程度の軽いもんだったけど、段々と重いものが持てなくなったりして、遂には歩く事も出来なくなって、車椅子で移動するようになった。それでもお前は明るく振る舞ってたよな。それが、私にはとても痛々しく思えたよ。

 

 でも、お前がそう言う男だって事は、私が嫌と言うほど知っている。だから何も言わなかった。

 

 覚えてるか? お前と初めて会った時、お前、小刀を持ってたよな。あれ、本当はお前も死ぬつもりだったんだろ? でも、私が死のうとしてる瞬間を見ちゃったもんだから、自分の事なんかほっぽりだして助け出した。お前は優しい男だよ。私はお前のそこに惚れたんだ。

 

 ……そうして、お前が笑ってる間にも、病気の進行はどんどん進んで、それでも十年は生きたけど、とうとうその時が来ちゃったよな。

 

 あぁ、あの時のことはよく覚えてる。

 もう寝たきりになったお前の世話をしてた時だったな。丁度輝夜が飲み水を汲みに外へ出た時だった。顔を拭いてた私に、お前は震える声で、私に頼み事をしてきたよな。

 

 俺を殺してくれって、掠れる声で、言ったよな。

 

 あれはびびったよ。普段滅多な事で頼み事をしないお前の、最初で最後の頼みだったから。

 勿論断った。断らざるを得なかったよ。いくら私でも、自分が愛した人を手にかけるなんて酷い事は出来ないからな。

 それでもお前は頼むって言って、濁りかけた目を見開いて私に懇願したよな。なんで私なんだって聞いたら……これが、本当に、傑作……だったよ。

 

 お前に殺されて逝きたい……って。

 

 そんな、そんな馬鹿な事を、大真面目な顔で、言うもんだから、私はどうしたらいいか分からなくなって、でも、もうお前が今日のうちに死んじまうって事をこの時悟って……。

 

 ホント、お前は最期まで勝手な奴だったよ。

 

 でも、これが惚れた弱みって奴なのかもな。こんなお前の無茶な願いを、涙と鼻水でグッチャグチャの顔のまま受け入れたよ。仕方ないなって。そしたらお前は心底安心した顔つきになって、ありがとうって言ったな。

 

 その一言で、私がどれだけ救われたか、お前は知りもしないだろうよ。

 

 だからせめてもの感謝として、お前の全身を保ったまま、心臓を内側から包むように焼いた。荼毘にするのは、葬式が済んでからにしようと思ったから。

 

 その後入ってきた永琳と輝夜にはしこたま怒られた。何を勝手な事をしているんだってな。けど、お前たっての頼みだったって泣きながら言ったら、あの人らしいわねって、おんなじように泣きながら呟いたよ。

 

 その日は三人、抱き合って泣いた。涙なんかとうに枯れたと思ってたけど、まだ私達にも流れる涙があったらしい。

 

 その後は早かったな。お通夜をやって、葬式を執り行って、三回忌七回忌ってやってくうちに、もうすっかり二十年経っちまったから。時の流れって奴は、残酷すぎていけない。

 

 あの頃は毎日が楽しかった。時間ってものが永遠に思えて、このままずっと幸せなまま続くんだろうなって思ったよ。実際、お前が願えばそれも出来ただろうけどさ。

 

 けれど、私の知る限り、時間って奴は薄情だ。過去に戻ってやり直す事も、その場に止まって永遠に保存する事も出来ない。ただ、前に進むだけだ。それを、お前との関わりの中で嫌と言うほど思い知ったよ。

 

 だから、今日だけ、今日だけは思い出して語らせてくれ。もう戻らない、あの楽しかった日々を思い出して笑わせてくれ。

 今日、今日だけでいいんだ。過去の思い出話に花を咲かせて、ありもしない未来について馬鹿らしく語って、そんな、時が止まったようなひと時を、どうか私に与えてくれ。

 それが、今の私がお前に頼む唯一の事だ。

 

 こういうのってあんまり、カッコ良くはないけど……大丈夫。今、ここにはお前と私一人だ。

 

 私達のことなんて、誰も見ちゃいないからさ。

 

 

 

 


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