落第騎士の英雄譚  兇刃の抱く野望   作:てんびん座

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感想、及び誤字報告ありがとうございます。



だが私は謝らない!

 傀儡たちが動きを止め、祝が霊装を解いたことで戦闘は完全に終了となった。

 小屋の目と鼻の先が岩だらけとなったこと以外に祝たちの被害はない。祝の持つ知識では巨人が山小屋を粉砕していたため、相対的に被害は皆無と言って過言ではないだろう。

 その後、祝たちは改めて山小屋の中で雨宿りをすることとなり、それから雨が上がったのは日が暮れ始める時間帯となってからだった。

 その間に祝は巨人撃退の報告を刀華にしたのだが、その戦闘の余波で山の木々がかなり押し潰されてしまったことについて小言を言われそうになったことは些細なことである。もちろん祝はその瞬間に生徒手帳の通話を切り、そのまま電源までオフにしたのはさらにどうでも良いことだった。

 

「そういえばハフリさん。すっかり忘れていたけど、さっきの傀儡を操っていた伐刀者は放置していていいの? こうして下山している最中にまた襲ってきたら厄介よ?」

 

 小屋の中で乾かした制服を着込んだステラは、祝が持ってきた薬のおかげでかなり症状が治まっている。

 しかし薬が抑えているのはあくまで症状であり、風邪が完治しているわけではない。そのため祝たちはステラに負担をかけないよう、ゆったりと散歩するようなペースで山を降りていた。

 そんな最中のステラの質問に、先頭を歩いている祝は「あ〜」と苦笑する。

 

「傀儡の裏にいた犯人を捕らえるのは、この面子ではちょっと無理だと思いますね。捕まえようにもちょっと距離が……」

「ああ、遠隔操作って言っていたものね。一体どこから操作していたのかしら」

「さぁ? 細かい距離を測る前に糸を切断されたので正確なものはわかりませんが、向こう側に到達するまでにかかった時間から逆算するに少なくとも100キロメートル以上は――」

「「100キロッ!?」」

 

 ステラと、その後ろを歩いている一輝の声が重なった。

 二人は祝の言葉に驚愕を隠せない。それも当然のことで、そこまで遠距離から魔術を行使できる伐刀者など二人は聞いたこともなかった。それが事実ならばその鋼線使いは祝とは違うベクトルで非常識な存在であることは間違いない。

 

「こ、鋼線使いってそんな距離から攻撃できるものなの……?」

「まさか。流石にここまでべらぼうな鋼線使いは私も見たことがありません。1キロ2キロくらいなら聞いたこともありますけど、100キロなんて桁違いもいいところですよ」

 

 もはや次元が違うと言うべきだろう。

 祝の持つ原作知識ではこの鋼線使い――平賀玲泉の正体は結局明かされず仕舞いだったので詳しいことはわからないが、あるいは彼こそが話に聞く《魔人(デスペラート)》という存在なのかもしれない。

 己の可能性を極め尽くし、それでもなお力を欲する伐刀者だけが至れるという領域。彼らはその限界突破の末、生涯変動することがないとされる魔力総量すらも上昇させてみせるという。原作でもそれっぽいことが示唆されており、実際に一輝がその段階に至ったのは祝としても間違いないと思っている。

 祝としては伐刀者に限界などないという事実が知れたため、非常に憧れる存在ではある。大鎌の可能性に自分が付いていけず、その未来を潰してしまう可能性がこれで消えたからだ。そんな領域など祝にはまだまだ見えてはいないが、これで安心して修行もできるというもの。

 

「というか、疼木さんはその鋼線使いの糸を辿ったって今言ったよね? どうやってそんなことを……」

「別に特別なことはしていませんよ。傀儡に張り巡らされた魔力の糸に絡み付かせるようにして魔力を流し込んで、それを薄く引き伸ばす感じで糸を辿ったんです。その時に糸を私の魔力でホールドして傀儡の動きを掌握、そのまま()り手にその魔力が到達するまで延々と魔力を伸ばしていきました」

「……傀儡を抑え込みながら、そのまま100キロメートルも?」

「はい」

 

 平然と答える祝だが、一輝とステラからすれば理解できる領域にない。糸を魔力でホールドって何だ。どうすればそれほど遠距離まで魔力を途切れさせずに伸ばせるというのだ。

 

「じゃあ、もしかするとその鋼線使いはまた攻撃を仕掛けてくるかもしれないのね」

「流石にもう襲ってこないとは思いますよ? ここまで伸びている糸を切断したということは、ここに攻撃するための手段を失ったということでもありますから」

 

 そして祝は余計なこととわかっているため口にこそしないが、糸を通じて適当に反撃もしている。それにそこそこ手応えがあった以上、例え攻撃手段が残っていたとしてもこの辺りが引き際と相手もわかっているだろう。手傷を負った状態で再び襲撃するのはどう考えても得策ではない。

 そんな話をしながら山を下っていた三人は、どうにか周囲が暗くなりきる前に合宿所に到着することができた。

 合宿所の前では刀華たち生徒会の面々が待ち構えており、特に刀華はステラが体調を崩したことを心配していたらしく飛ぶようにステラへと走り寄ってきた。その勢いのまま容体を確認すると、大事ないということを理解したのか安堵の溜息を吐く。

 

「良かった……まだ少し熱はありますけど、とりあえず大丈夫そうですね。でも大切な選抜戦が控えていますし、念のために病院でお医者さんに診てもらいましょう」

「と、トーカさん。大袈裟よ、これくらい。もう体調も戻ったし」

「駄目です! 病気を甘く見ると酷い目に遭うんですよ!? 例え風邪だろうと油断してはいけません!」

 

 真剣な目でステラに語り掛ける刀華に聞こえないよう、一輝と祝に近寄ってきた御祓が「刀華の両親は病気で亡くなったんだ」と囁く。彼女が風邪一つにも過敏な反応を示すのはそれが原因らしい。

 それを苦笑しながら眺めていた一輝に、他の生徒会役員たちの後ろで黙っていた砕城が「黒鉄」と声をかけた。

 

「砕城くん、どうかした?」

「うむ、実は貴殿に客人が来ている」

「僕に?」

「あっ、そうそう! ヒイラギから巨人をぶっ飛ばしたって連絡があってからすぐに来たんだった。今はカナタ先輩が対応しているよ?」

 

 そういえば、と一輝が周囲を見回せばその中に貴徳原の姿がない。どうやら兎丸の言う通り、彼女が客人の対応をしているようだ。

 しかしその客人とやらだが、一輝には欠片も心当たりがない。電話ではなく直接出向いてきたという辺りから学園の知り合いというわけではなさそうだが。

 

「えっと、その人はどこの誰なんですか?」

「ああ、確か……そう、“赤座”と名乗る中年の男性だったな」

「――ッ」

 

 砕城が告げたその予想外すぎる名前に、一輝は思わず絶句した。

 一輝が知る限り、中年の赤座と名乗る男性で思い当たる人物は一人しかいない。しかしその男が自分を訪ねてくる理由が一輝には全くわからなかった。

 そして一輝のその動揺が収まらない内に、その男はのっそりと姿を現した。

 

「おやおやぁ~? 随分と遅いお戻りですねぇ、一輝クン?」

 

 耳にこびり付くかのように粘着質な声色。

 それを撒き散らしながら現れたのは、砕城の言葉の通り中年の男性だった。でっぷりとしているその小柄の体つきはまるで樽のようだ。赤いスーツに高級そうな帽子が特徴的なその男は、「んっふっふ」と何かを含むかのような笑みを浮かべている。

 

「イッキ、誰なのこの人……?」

「……この人は赤座守さん。黒鉄の分家の当主を務めている人だよ」

 

 一輝のただならぬ様子から良い予感はしていなかったステラだったが、一輝の実家の関係者だということを知った途端にその理由を理解した。一輝は実家では迫害も同然の扱いを受け続けてきたのだ。その連中の一人が突然来たとなれば、決して歓迎できる理由ではないということは明白だ。

 その瞬間、警戒心を露わにしたステラと不気味な笑みを浮かべる赤座によって剣呑な空気が作り出された。これには赤座を案内してきたカナタを含め、生徒会の面々も戸惑いの様子を浮かべる。

 唯一、祝だけがどうでも良さそうに「お腹空いたな」と余計なことを考えていた。

 

「そんなにツッケンドンな態度をしないでくださいよぉ。私としても君なんかのために奥多摩くんだりまで足を運ぶのは手間だったのですからねぇ。同じ黒鉄の血を引いていなければ、私だって君のような能無しのためにここまで来なくて済んだのですよぉ?」

「な、何なんですか貴方はっ! 事情は知りませんけど、ちょっと言葉が過ぎるんじゃありませんか!?」

 

 あまりに敵意に満ちた赤座の言葉。これに噛みついたのは刀華だった。

 しかし赤座は気にした様子など微塵もない。

 

「おやおや、これは《雷切》の東堂さんではないですかぁ。どうやらウチの出来損ないがご迷惑をかけたようで本当に申し訳ありませんねぇ。私としても、彼のことは情けなさのあまり涙が滲みそうなのですよぉ。生徒会の皆様方も、本当に申し訳ありませんでしたぁ」

 

 謝罪に見せかけた一輝への中傷に全ての生徒会役員は理解する。この人物が一輝の敵であり、決してその来訪を歓迎するべき人物ではないということを。

 一方的に頭を下げた赤座は、ニタニタとした笑みを浮かべたまま一同を見回した。

 

 

 そして――その笑みが一瞬だけ、本当に刹那の間だけピシリと強張った。

 

 

 その視線の先に佇むのは、赤座になど毛ほども興味がないと言わんばかりに黒い瞳を余所に向ける祝である。あまりに自然に気配を消していたため赤座は今の今までその存在に気付かなかったが、彼女が視界に入った瞬間、彼は自分の口の端が僅かに震えたのを感じていた。

 

「…………おやぁ、《七星剣王》の疼木祝さんもいらっしゃったんですねぇ。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

「ええ、どうも」

 

 祝が赤座に視線を寄越したのもまた一瞬だった。軽く会釈を返すと、再び空気になったかのように存在感がなくなる。まるで本当に消えたかのように錯覚させられるその気配からは、そこに刀華たちが露わにするような敵意は欠片も見当たらない。

 それを理解すると赤座の表情には再び元の笑顔が戻り、そして安心したように目の前の出来損ないへの攻撃を再開した。

 

「んっふっふ、それでですねぇ。私がここまで足を運んだのは私のお仕事の関係でして。まぁ、それを説明する前にこれを読んで戴いた方が話が早いでしょう」

 

 そうして赤座が取り出したのは、今日の日付が記された複数の夕刊である。これが何なのかと一輝たちは訝しむが、しかしその一面に記載された記事は一輝たちにとって予想外に過ぎる内容だった。

 

『不良少年が姫の純潔を奪う!?

『ヴァーミリオン国王激怒か!?

『箱入り娘を手籠めにするその卑劣さ』

『日本とヴァーミリオン皇国の国際問題に発展!?

『若者の性の乱れ』

 

 そのショッキングな見出しに、ステラは「何よこれ……」と声を震わせることしかできなかった。

 その新聞にも一輝とステラのキスシーンが大きく張り出されており、その論調は完全に二人の交際を不純なものとしている前提の下に構成されている。

 

「んっふっふぅ~? もう世間では本当に大騒ぎなんですよぉ? ここに来るまでの車内でニュースを観たんですけどねぇ、もうこの話題で持ち切りでしたぁ。()()としても若者の恋愛にまで口出しするのは心苦しいのですがぁ、これだけ世間で騒がれると庇い立てできないのが現状でしてぇ」

「ッ、こんなのおかしいわよ! この記事、一輝の悪口ばかり書かれているじゃない!」

 

 実際、その内容は当の本人である一輝にも到底容認できないようなものばかり書かれていた。

 過去の経歴として恐喝や窃盗をしていたというものまであり、ご丁寧にその被害者のコメントまで載せられている。他にも淫らな女性関係や素行の悪さなど、よくもこれほどの嘘八百を並べ立てられるものだと逆に感心してしまうほどだ。

 ステラや一輝と付き合いのある生徒会役員はこれを信じるつもりなど毛頭ないが、しかし彼を知らない世間一般の人々はこれを見て何を思うだろうか。決して良い印象を抱かないだろうということは想像に難くない。

 

「さて、この報道を受けましてですねぇ。我々『国際魔導騎士連盟・日本支部』としては早期に対応を取りたいという結論が纏まりましてぇ、本件に対する査問会が開かれることになったんですよぉ。そこで私が所属する『倫理委員会』が中心となってこれを執り行うということになりましたぁ」

 

 笑みを深める赤座に、ステラは背筋が震えあがった。

 国際魔導騎士連盟――それは騎士たちを取りまとめる巨大な国際組織だ。日本支部とはその名の通り日本の騎士たちを管理する組織であり、そして彼の父である黒鉄厳(くろがねいつき)はその日本支部を取り纏める“支部長”である。

 これを一輝から聞かされていたステラは確信した。これはただの誤報やスキャンダルの炎上ではなく、黒鉄家からの一輝に対する攻撃であるということを。

 そして事態の重さを大まかに理解した刀華は、緊張と警戒を表情に浮かべながら赤座に問いかける。

 

「も、もしもですよ? もしもこの記事が本当だと連盟に判断されたとしたら、黒鉄くんとステラさんはどうなってしまうんですか?」

「私はそんなことはないと信じていますがねぇ。もしもこの記事が本当のことだと証明されてしまった場合……んっふっふ。ステラ殿下は被害者なのでお咎めなしなのは当然として、一輝クンは最悪の場合、騎士連盟を“除名”という形になりますぅ」

「じょ、除名ですってッ!?」

 

 ヒステリックにステラは叫んでいた。

 騎士連盟から除名されるということは、魔導騎士としての資格を剥奪されるということだ。当然ながら連盟の下に運営される破軍学園は退学になる。そうなってしまえばもはや七星剣武祭どころの話ではない。

 そういった野良伐刀者になってしまったが最後、一輝は連盟に所属する国家や組織の中で伐刀者として生きていくのは不可能となってしまうだろう。あるいは伐刀者としての道を捨てて一般人として生きていくことはできるかもしれないが、そうなれば一輝の志す信念は挫けたも同然だ。

 それをわかっているのか、一輝の表情は非常に厳しいものだった。

 

「これは倫理委員会からの正式な招集でしてねぇ。一輝クンにはこれからすぐにでも査問会に出席してほしいんですよぉ。既に準備は整っていますぅ」

「イッキ、そんな馬鹿げた招集に従う必要なんてないわ! コイツら、査問会なんて名目でイッキを甚振るだけに決まってる! 元凶の日本支部が開く査問会がイッキの話なんて聞くはずがない!」

「んっふっふ、ステラ殿下は酷いことを仰る。私たちはあくまで一輝クンから事情を聞き、そこから事態を解決しようとしているんですよぉ? もちろん私たちは一輝クンがこんな記事の通りの男ではないと信じていますからぁ、つまり私たちは一輝クンを助けるために査問会を開いているわけでぇ」

「こンのッ、白々しいことをよくもペラペラとッ!」

 

 怒りのあまり、遂にステラの全身から淡い燐光が漏れ始める。漏れ出た淡い魔力が能力によって発火現象を起こしているのだ。

 もはや赤座はステラの逆鱗に触れる寸前だった。あと一押しでステラは爆発し、目の前の男を灼熱の炎で焼き尽くすだろう。しかしそうなる直前、ステラの肩を叩いてそれを諫める者がいた。

 

「ステラ、落ち着いて。僕は大丈夫だから」

 

 怒り狂うステラとは対照的に一輝は極めて冷静だった。

 未だに表情に険しさは残っている。しかし気分を荒立てることもなく、それどころか微笑すら浮かべてステラを安心させようとしていた。

 そうも気を遣われてしまえば、流石のステラといえども矛を収めざるを得ない。納得できているとは口が裂けても言えないが、ひとまず荒々しい気配を鎮める。

 

「んっふっふ。一応言っておきますとぉ、ステラ殿下の言うように査問会の出席を断ることもできますよぉ?」

 

 もちろん、そんなことをすれば一輝の立場はより悪いものとなるだろうが。

 疚しいことがないのならば逃げたりはしないはずだ――世論はそう囃し立てるだろう。そんな墓穴を掘れば、一輝は世間からより白い目で見られるようになるだけだ。

 だからこそ、一輝は逃げも隠れもするつもりはなかった。

 それに何より、一輝は赦せなかったのだ。自分とステラの交際がまるで悪事であるかのように他人から罵倒されるなど。自分の気持ちが不埒で不純なものと決めつけられるなど。そしてなにより、ステラが好きだと言ってくれた事実を嘘にしてしまうことなど。そんなこと、誰からの言葉であろうとも一輝は認めることはできない。

 だからこそ、一輝は例え勝ち目のないこの戦いを前にしても絶対に逃げることはしなかった。例え殺されようともこの首を縦に振るつもりは毛頭ない。

 

「そんなことはしませんよ。僕は招集に応じて査問会に出席します。案内してください」

「素直で非常に宜しいですねぇ。では、早速行くとしましょうかぁ?」

 

 赤座は踵を返すと、見た目通りの鈍重な動きでその場を去っていく。

 その背中を追いかけながら、一輝はステラに「大丈夫だよ」という意思を含んだ視線を送る。それを最後に赤座へと付いていった一輝を、ステラと生徒会の面々は不安そうに見送ることしかできなかった。

 今日この日。一輝と黒鉄家の血の流れない、されど壮絶な戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 ――なお、祝だけは赤座が置いていった新聞を読みながら「明日の天気は晴れか」と全く別のことを考えていた。

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 黒鉄が赤座というオジサンに連行されてから数日。

 世間では未だに黒鉄とステラさんのスキャンダルを騒ぎ立てている。ニュースやらワイドショーでもこの話題で持ち切りで、今や学園の教室ですら天気の挨拶のようにこの話題が持ち上がる始末だ。

 ハッキリ言って、凄まじくどうでもいい。これも有名税というものなのかもしれないが、どうして世間は有名人のスキャンダルが大好きなのだろうか。別に誰と誰の痴情が縺れようと当人たちの勝手ではないか。大団円に収まろうと破滅しようと勝手にやってほしい。別に私は咎めもしなければ心配もしないから。

 

 そしてそんな話題で持ち切りとなれば学園でステラさんに注目が集まるのは当然というもので。

 しかし時々校内で見かけるステラさんはいつも不機嫌そうに目つきを鋭くしており、その威圧感から彼女に事情を訊ねようとする野次馬は皆無のようだった。

 そして今日もその様子は変わることもなく。普段は弁当派なのだが今日は気まぐれに食堂に赴いてみれば、ステラさんの周りだけATフィールドが全開になっていた。少なくともステラさんの隣三つまでは空席ができている。

 席を探していた私としてはちょうど良かったので、「ここいいですか?」と話しかけながら隣の席に陣取る。これは便利だ。これから騒動が治まるまではステラさんの近くに座って席を確保してみよう。

 

 

「おい……あれって《告死の兇刃(デスサイズ)》の疼木じゃねぇか……!?」

「《百人斬り》の疼木が《紅蓮の皇女(Aランク)》に近寄るって……また戦争を始めるつもりなのかよ、アイツは……!」

「全員退避ーッ! 《狂犬》の喧嘩に巻き込まれたくない奴は今すぐ逃げるんだ!」

「う、嘘よ……せっかく平和に戻った破軍が《死神》のせいでまた世紀末に……ゔぅぅ……」

「ちょ、去年のトラウマで体調不良の子が出ているんだけど!?」

「誰か生徒会長か理事長呼んでこい!」

「何やってんだ、一年! もたもたしていないでお前らも逃げるんだ! 死にたいのか!」

 

 

 そして私が定食を乗せたトレーをテーブルに置いて視線を上げると、食堂は(もぬけ)の殻になっていた。

 ……別に逃げられるのは構わない。自分がそれだけのことを去年やらかしたということの自覚はある。でもさ、なんで誰も私のことを《七星剣王》って呼んでくれないの? 私って一応、世間では学生騎士の頂点にして憧れの的の立ち位置なんだよ? それなのにこんな……

 私が愕然としていると、心なしか優し気な表情になったステラさんが「ご飯、食べましょ」と言ってきた。

 憐れむなよぉ……

 

「……何だか異常なほど食堂がガランとしているんだけど。これってどういう状況なの?」

 

 そうして二人で大人しく食事をしていると、長身のイケメンが声をかけてきた。その隣には眼鏡をかけた少女がイケメンくんと同じように戸惑った表情で佇んでいる。

 二人とも食堂のトレーを持っていることから食事に来たのだろうが、どうやらこの静かすぎる食堂に困惑しているらしい。

 彼らはステラさんを挟んで私の反対側に座ると、たった今起こった出来事を聞くなり「何やってんだこの人」という視線をこちらに向けてきた。

 

「色々とお話は聞いていたけど、悲鳴をあげられるほどだったとは知らなかったわ。何はともあれ初めまして、疼木さん。あたしは有栖院凪よ。呼ばれ慣れているからアリスって呼んでね」

「はぁ~い。初めまして、アリスさん。……ふふっ、イケメンなのにアリス。そういうギャップってカッコいいですよね。私は凄く好きですよ、そういうの」

 

 イケメンくんのことは知っている。

 原作でも結構目立っていたし、何より『影を操る』という能力が印象的なのでよく覚えているのだ。

 あとオカマ。

 すると彼は私のリアクションに驚いたのか、少しばかり目を丸くした。

 

「意外ね。あたしと初対面の人って、大抵驚くか戸惑うかなんだけど。名前をカッコいいって言われたのは初めてよ」

「あはは、祝さんのセンスは独特だから。あっ、私の方はお久しぶりですね。ちゃんと覚えていてくれてますか~?」

「ちゃんと覚えていますから安心してください。またいつでも取材に来ていいのですよ?」

「そ、それは……考えておきますね、あはは……」

 

 なぜ表情を引き攣らせる?

 本人の言葉通り、この日下部加々美さんと私は知り合いだ。以前、新聞部として取材をしたいと私の下を訪ねてきたので顔を覚えている。去年までは新聞部など破軍にはなかったのだが、どうやら彼女が今年から創部したらしいので驚かされた。

 その際、色々と私のことを知りたがっていたので大鎌について語ってあげたら泣いて喜んでくれたのは記憶に新しい。放課後から一晩かけて翌日の朝まで取材に応じてあげたのだが、最後は彼女も「大鎌万歳」しか言わなくなるくらいには大鎌について理解を示してくれた。取材が終わった後は「キャッホーイ!」と叫びながら私の部屋を去っていったので、余程私の取材ができて嬉しかったのだろう。

 

「それにしても、最近のステラちゃんはまるでモーセね。貴女が歩く度に人垣が割れる光景も見慣れてきたくらいよ。随分と殺気立っているわね」

「……当たり前でしょ。あんな記事を毎日のように書かれて平然としてろっての?」

 

 ステラさんが再び殺気立つ。

 そんな彼女に苦笑しつつ、日下部さんもその意見には同意した。

 彼女が知り合いの報道関係者から探ってきた情報によれば、どうやら今回の異常な騒動には裏があるらしい。どうやらあの汚いドラえもんみたいなオジサンがいる倫理委員会が、報道に対してかなりの圧力をかけてきたらしい。

 そのやり口には私も心当たりがある。何を隠そう、去年の私の『シンデレラ(笑)』報道の件だ。本当に連盟っていう連中は情報統制が大好きな連中だよ。

 ちなみに寛大な私は去年のことを水に流すことを決めたが、今年も私に同じようなことしたら主犯格は殺すと誓った。

 

「……信じられないッ! 親子の確執にここまでするなんて、黒鉄長官は異常よ! 彼は一体何を考えているの!?」

「――そういう父親なんです」

 

 憤慨するステラさんの向かいに一人の少女が静かに着席する。

 短い銀髪の下から鋭い視線を覗かせる彼女は、黒鉄の妹の黒鉄珠雫だ。

 

「私にも昔からあの人は理解できません。しかし、昔からあの人はお兄様を毛嫌いしていました。まさかここまで大それたことをするほど目の敵にしていたとは思いませんでしたけど」

 

 トレーを置いた彼女は、こちらに「どうも」とだけ軽く頭を下げた。

 そして視線をステラさんたちに戻すと、再び剣呑な口調で話を再開する。

 

「少し聞いた感じでは、日下部さんは黒鉄(ウチ)について知っているみたいですね。ならば単刀直入にお聞きしますが、今回のようなケースで一人の学生騎士を除名してしまうなど可能なことなのですか?」

「無理じゃないかなぁ」

 

 日下部さんは即答した。

 彼女によれば、今回の騒動はどう捉えてもマスコミの空騒ぎでしかないらしい。なので法的には黒鉄の過失など欠片もなく、このまま進めば盛大な言いがかりとして事態は収束することになるだろうということだ。

 

「もしも先輩が査問会で言質を取られればちょっと危ういけど、先輩だってそこは充分に気を付けているはず。それにこの程度の騒動で騎士を除名するなんて、連盟の方針としてあり得ないことだと思う。特に心身ともに成長過程である学生騎士を追放しようだなんて普通じゃない。本当にそれは最終手段になるからね」

「最終手段? それはどういうことですか?」

 

 首を傾げる珠雫さんに、日下部さんは懇切丁寧に説明する。

 これまでに連盟が取った統計によれば、除名によって連盟から追放された伐刀者は高確率で犯罪者に身を落としてしまうらしい。つまり伐刀者たちの秩序として成り立っている連盟が、自分から犯罪者を輩出してしまうという本末転倒な事態に陥ってしまうのだ。

 よって連盟は騎士の除名を極力避ける傾向がある。しかもその命令を下せるのは連盟の本部のみで、支部はあくまでそれを本部に提言することしかできない。

 これらの条件から、高々この程度のスキャンダルで騎士を除名するなどほぼあり得ないと考えられている。

 

 ……っていうか、日下部さんの話を聞いていて思ったけど、私って完全にお邪魔虫だよね。

 だって完全に私に関係のないことだもの。

 なのでさっさとこの場を去ろうとトレーに手を伸ばした私は、しかし日下部さんの「例えば祝さんだけど」と言い出したことで動きを封じられた。私が何ぞ?

 

「これって裏が取れていないんで確認がてらなんですけど、祝さんも一回だけ除名されそうになったことがありますよね?」

「「「ッ!?」」」

 

 その瞬間、日下部さん以外の三人の視線が一斉に集められた。

 ま、ますます引き上げにくくなった……!?

 

「ほ、本当なのハフリさんっ!?」

「……えぇ、まぁ。去年、七星剣武祭が終わった後に連盟の日本支部に呼び出しを受けました。その時はちょうど海外にいたので無視することになってしまったんですけど、それのせいで心象が悪くなったらしくそのまま流れで」

 

 あれは七星剣武祭が終わって3ヶ月くらい経った頃のことだ。

 私は趣味でよく海外へ修行をしに出かけるのだが、その時に少しばかり派手なことを仕出かしてしまった。それが日本のメディアで報道されるようなことはなかったようだが、どこかのルートから連盟には伝わってしまったらしい。

 そろそろ帰国しようかな、と考えていた私はあら不思議。事態が事態だけに大っぴらにはできなかったのか、連盟の日本支部から極秘で招集を受けてしまったのだ。この時は流石に焦った。

 当時その国は連盟の息がかかっていなかったため大丈夫だったが、もしも連盟の加盟国だったのなら私は拘束されていたかもしれない。

 その時の仕事の先生が「連盟を出たら俺の女兼小間使いにしてやるぜ?」とノリノリだったのが記憶に残っている。仮にも教え子の将来を案じようとは思わないのだろうか、あのオッサンは。グラサン割れるか死ねばいいのに。「性格はクソだが身体は好み」って喧しいわ。

 

「七星剣王が除名って、どうして連盟はそんなことをしたのよ」

「あくまで噂だからハッキリとした理由はわからないんだ。でも漠然と七星剣王のスキャンダルみたいな噂は流れてきて、ブン屋の界隈は騒めいていたって話だよ。……そっか、本当だったんだ」

「……それで? 除名の理由なんてどうでもいいですから、疼木さんはその時どうやってその状況を回避したのですか?」

 

 身を乗り出すようにして黒鉄妹……面倒だから珠雫さんが迫ってきた。

 先程までの興味のなさそうな態度が嘘のようだ。本当にこの人は黒鉄のことが好きなんだなぁ。原作では妹として、ではなく女として黒鉄のことだと描かれていたが。

 ハッキリ言わせてもらう。ああいうのはコッソリとやるのがロマンなのであって、彼女のように公言して憚らないのは本当に邪道の極みだと思う。ヨスガるのは家の中だけにしろ。

 

「う~ん……私の場合はあまり参考にならないと思いますよ?」

「というと?」

「私は除名の可能性が強くなった時点で、色々な組織から勧誘を受けるようになったんですよ。例えば連盟と仲が悪い《大国同盟(ユニオン)》とか、意外なところだと《解放軍(リベリオン)》とかからも来ましたね」

「ッ、《解放軍》って……犯罪組織じゃないですか!」

 

 この世界は、三つの巨大な組織が拮抗することで平和が保たれている。

 《国際騎士連盟》、《大国同盟》、そして《解放軍》だ。

 この三つの組織は数多くの戦力と強力な伐刀者を保持しており、それらが三竦みとなって牽制し合うことで秩序が完成されている。他にも大小様々な組織がこの世界には存在しているが、彼らもこの三大組織が築く秩序を崩すほどの力はない。

 しかしどこの組織も強力な伐刀者は有事に備えて常に確保しており、新たな戦力のスカウトにも余念がない。私も彼らのアンテナに引っかかったらしく、帰国する直前に様々な組織のエージェントが接触を図ってくるようになった。《大国同盟》や《解放軍》はもちろん、小さな組織やPMC、果てにはカルト教団などからも勧誘されており、私は連盟の庇護下を抜けても次の就職に全く困らない状況になっていた。

 なので私は「連盟で大鎌を有名にできないのなら別の場所でもいいや」という結論に至り、転職活動に嬉々として臨むようになったのだが……

 

「それを知った連盟は血相を変えて除名を取り消しました。そして『除名する動きなどそもそもなかった』ということで私の件は闇に葬られて、めでたしめでたし。私は何事もなかったかのように帰国し、素知らぬ顔で学園生活に戻りましたとさ。はい、お終い」

「本当に参考になりませんね」

 

 心底失望したように珠雫さんは嘆息した。

 その一方、日下部さんは「ネタゲットォ!!」と凄まじい勢いで手元のメモに何やら書き込んでいる。一応言っておくけど、そんなことを公開したら連盟の裏組織とか子飼いの暗殺者(スイーパー)に消される可能性があるからやめておいた方がいいと思うよ?

 

 あと、さらに言うのなら実はこの話には続きがある。

 一旦は私を繋ぎ止めることに成功した連盟だったが、しかし除名処分に至るまで私を放置していた当時の理事長先生が槍玉に挙げられて責任を追及されてしまったらしい。これによって空席となった理事長の座に収まったのが新宮寺先生だ。

 彼女個人の思惑はどうあれ、連盟としては私が再び他の組織に移るようなことにならないように監視する必要があった。加えて私という面倒な爆弾を非常時に処理できる戦力として新宮寺先生は期待されているのである。彼女は育児のためにブランクがあるとはいえ、KOKで3位という実績を持つ最強クラスの騎士。その能力の性質からもいざとなれば私を抑えつけるのに最適の人材だったというわけだ。

 

 これを聞いた時、「歴史の修正力って怖ぇ」と思わされた。

 原作では『何年も七星剣王を輩出できなかった』という理由から前理事長は職を辞することとなったが、今回は私という実績を叩き出したのにこの結果である。

 どちらにしても私のせいだと言えなくはないが。

 

「話を戻すけど、祝さんがやらかすレベルのことをしないと除名なんて処分は下されない。でも日本支部はどうも本気でこれを実行しようとしている。ということは……」

「お兄様の言質に全てがかかっているということですね。酷い目に遭わされていないか心配です」

「流石に彼を直接的に痛めつけるようなことはしないと思うけどね。この時代にそんなことをしたと知れたら、それこそ日本支部のお偉いさんの首が飛ぶことになるわ」

 

 アリスさんが神妙に呟く。

 まぁ、どうだろうね。そんなものいくらでも誤魔化しがきく。最悪、幻想形態の霊装でチクチクやれば傷痕なんて残らない。荒事に慣れた組織では幻想形態を用いた拷問部隊が存在するという噂もあるし、あまり楽観視はできないと思うな。

 それにアリスさんもわかっているようだが、人間を痛めつける方法などいくらでもある。毒なり疲労なり精神攻撃なり、査問会が行われている連盟の施設ならばいくらでも取れる手はあるのだ。

 

「……全部、アタシのせいだ」

 

 ステラさんが目に涙を滲ませる。

 確かに今回の件に限るのなら、ステラさんは黒鉄の足枷として機能してしまっている。黒鉄はこれまで誰からの助けも得られないという状況にあった一方、逆に自身を縛る枷のない自由な立場を維持することができた。

 つまり今回の騒動は、彼がステラさんと交際を始めたことが原因と考えられないこともないのだ。ましてや彼女は他国の王族。黒鉄家から見れば恰好の餌に見えただろう。

 

「アタシが普通の女の子だったら、イッキの重荷になることなんてなかったのに。……アタシ、やっぱりイッキと別れた方が――」

 

 その瞬間、ゾワリと殺気が膨れ上がった。

 閃光のように霊装《宵時雨》を抜き放った珠雫さんは刹那の間に氷塊を形成。先端を鋭く尖らせた氷の槍をステラさん目がけて撃ち放つ。

 様子を豹変させた珠雫さんにステラさんは全く反応できない。咄嗟に炎を纏うことで氷撃を防御するも座った体勢では踏ん張りがきかなかったらしく、食堂の壁を粉砕しながら外に吹き飛ばされていった。

 それはどうでもいいんだけど、その音を聞いた外の連中が「やっぱり疼木が始めやがった!」と騒ぐ声を聞いてしまい地味に傷ついた。

 

「……本気で言っているんですか?」

 

 殺気をその身に纏い、その魔術とは裏腹に灼熱の如き怒りを言葉に乗せる珠雫さん。

 どうもマジギレしているらしく、漏れた魔力のせいで周囲の気温が一気に下がり始めた。私が自販機で買ってきた麦茶がピシピシと凍り付いていく。あの、このままではせっかく買ってきたのに飲めないんですが……

 

 珠雫さんがマジギレしているのは、どうやら今更になって二人が別れてしまえば黒鉄の決意が無駄になってしまうためらしい。

 黒鉄は交際に疚しいところなどなく、加えて自分たちの名誉を守るために単騎で敵陣へ飛び込んでいったわけなのだから、ここでステラさんが怖気づくなど珠雫さんとしては論外なのだとか。というかここで別れたら地の果てまで追って殺すとか言っているよ、この人。本当にヨスガっているんだなぁ、彼女は。

 

 そんなことを考えながら麦茶を飲むために人肌で何とか解凍しようと四苦八苦していると、事態を聞きつけたらしい新宮寺先生が食堂にやってきた。

 そして状況を見回すと真っ先に私の下にやってきて――

 

「疼木、今日は何をしたんだ? 怒らないから言ってみろ」

「超理不尽なんですけどッ!?」

 

 絶望した! いきなりの犯人扱いに絶望した!

 と思ったらこれは新宮寺先生なりの冗談だったらしい。しかし彼女が足を運んだのは先程の逃げ去った生徒たちから連絡を受けたためらしく、最初は本気で私が壁を砕いたと思っていたと真顔で言われてしまった。

 やっぱり理不尽じゃん!

 

 それから先生は《時間操作》によって壁を修復すると、ステラさんに何やら話があるらしく彼女を伴って去っていった。

 珠雫さんも食事の気分ではなくなったらしく、肩を怒らせながら食堂を出ていく。

 残されたのは私とアリスさん、そして日下部さんの三人だけ。それ以外は人っ子一人食堂には残っていない。

 

「……二人とも辛そうだったわね。珠雫はああ言っていたけど、ステラちゃんの気持ちもわかるし。私たちではどうすることもできないのがとても歯痒いわ」

「そうだね。私、また知り合いに頼んで先輩の情報を融通してもらえるように頼んでみるよ。何かわかったらすぐに皆に伝えるから」

「ありがとう、かがみん。お願いね」

 

 真剣な様子で語り合う二人には悪いが、空気的にどうやらこれで私も引き上げられそうだ。

 さっきまで怒涛の展開だったため引き時を見失ってしまったが、今がその時だろう。

 私のそんな心情を悟ったのか、日下部さんは「あっ、最後に一つだけいいですか!」と私を引き留める。

 

「祝さんって、どうして除名処分されそうになったんですか? さっきも言いましたけど、学生騎士を――それも七星剣王を除名にしようとするなんて余程のことがないとあり得ませんし」

 

 「もちろん祝さんが良ければですけど」と断る日下部さんだが、私は別にそんなことは気にしないので安心してほしい。

 といっても、私自身は成り行きの結果そうなってしまっただけなので、除名されるほどのことをしたという実感はあまりないのだが。

 

「別に大したことではないのですけどね。あくまで私は雇われで、それに実行したグループの露払いだったというだけなので言いがかりもいいところなのですが……

 

 

 

 

 ……ちょっと新興国の国家転覆(クーデター)の片棒を」

 

 

 

 

 先生に誘われなければ絶対に旧政権の重役暗殺なんて関わらなかったのに。

 おかげで連盟のブラックリスト入りしちゃったみたいだし。本当、この世界はこんなはずじゃなかったことばかりだ。

 

 




早く七星剣武祭を書きたい……

どうでもいいことですが、赤座は本当にヘイト集めとして優秀なオジさんですよね。喋り方から立ち位置から退場まで、原作の中でも最高に完成されたキャラだと思っています。

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