ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第16話:プレゼント

「いくぞ!」

 

体力を取り戻したオールバックがこちらに突っこんでくる。

 

「まずは1つ目のプレゼント!」

 

そういって取り出したのはなんの変哲もない道端で落ちてるような石ころ。

顔面めがけて思いっきりぶん投げる。

オールバックの男はそれを軽々とかわす。

 

「ふ、何がプレゼントだ!一つ目の策はつぶれてしまったようぐえぇ!!」

「だーれが一発だけって言った?」

 

初発を避けて調子に乗って油断したところで投げられた2発目に対処しきれず、オールバックの顔面に石が当たって後ろによろめく。

 

「く、俺の顔に石をぶつけるとは…許さなぐはあ!」

「しゃべってる暇があったら避ける努力をするんだな」

 

石ころを次々取り出してマシンガンのように投げつける。

石は来る途中目に入ったものをすべて拾ってきたので弾は数えきれない。

 

「1つ目のプレゼント、お題は雪合戦。どうだ、面白いだろ!」

「ぐ、うおあ!この、卑怯だぞ…!」

「手に持てる限りはいくらでももっていいんだよね?ならルールは無視していない!よって卑怯ではない!」

 

無理矢理な理論を通して、石を投げまくる。

オールバックは両手で顔を覆って、ガードの姿勢をとっている。

剣で防がないのが、少し妙だ。

 

 

 

「それにしても、投げる石のスピードが桁違いだ。さっきまでの攻撃は今のために温存して抑えていたのか?」

「まさか、そこまで計算していたなんてっ!サンタさん、なんという策士!」

 

ラストとマイがこちらを見て話していているのが聞こえる。相変わらず僕にプラスになるように勘違いをしていて、僕は悪くないのに、罪悪感で胸が痛い。

実際は2人が思うほどの計算なんてしていない。

さっきまでの打ち合いは温存なんかではなく全力だ。それに温存なんて、疲れない僕には意味がない。

 

ではなぜ先ほどの全力が、今よりも遅く感じてしまうのか。

 

おそらくだが、その答えは武器熟練度である。

 

素手以外がZランクのために武器が使えない、という理由で角材を選んでいた僕だったが、買った当初のままだったらきっと今と同じスピードが出せていた。

しかし、僕がギャラリーに角材を馬鹿にされて、マイに装飾を頼んでしまったことにより、相棒は姿を変えられてしまった。

普通に装飾を付けるだけならよかったのだが、この美少女は性格も美少女で、なんと角材の角を削り、気を遣って持ち手まで作ってしまったのだ。

 

マイの技術は完璧であり、もはや相棒はタダの角材ではない。

彼は棍棒、もしくは何かの武器へと進化してしまったのだ。

そうなってしまっては武器の熟練度がすべて地の底に落ちている僕にはZランクの補正がかかり、攻撃もスピードも大したことのないものになってしまったのだ。

まあ、そんなことは言ってもステータスの概念なんてないしわからないだろうが。

 

オールバックが両手で覆ってガードを解こうとしないので、そろそろ石を投げるのをやめる。

 

「ぐっ、攻撃が止んだ…弾切れか?」

「1つ目のプレゼントはなかなかよかっただろう。それじゃあ、2つ目のプレゼントだ!一気にいくぜ!」

 

思いっきり地面を蹴ってオールバックに急接近する。

急な接近で動揺しながらも、剣でこちらを迎え撃とうと、剣を斜めに振り上げる。

防御の術がない僕の右肩から斜めに切り裂くつもりなんだろう。

 

「それじゃあ2つ目のプレゼント、くらいな!」

 

パリィン!

 

右斜め上から飛んできた剣に向かって右手で対抗する。

オールバックの剣は僕の拳を受けると、刀身が爽快な音を立てて、後方に飛んでいく。

 

「何!?何故、俺の剣が、武器を持たない貴様なんかに…まさか、魔法使いか!?」

「いや、よく見ろ。悪いけど時間が無かったから用意が足りなくてね。2つ目のプレゼントも、石だ。お題はサプライズ。おまけして、ちょっと大きめの石にしたよ」

 

そういって攻撃の瞬間に袋から取り出した大きめの石を見せる。

攻撃の瞬間に石で迎え撃ち、素手の補正がかかった僕の石は、もはや剣なんて比にならない。その威力は、大剣を超える、はずだ。その証拠に、剣は折れて、その上半身は後方に突き刺さっている。

 

「なるほど。さっき剣で石を受けなかったのは、折れるかもしれないっていう不安要素があったんだな」

「ぐっ…!しかし!俺にはまだ、剣がある!」

 

そういってこの至近距離でタックル気味に突っこんできた。瞬間的に避けると、その隙に僕の背後の地面においてある先ほど僕が捨てた剣のところへと、全力でかけていく。

そういえば、剣おいてたんだっけ。

 

「いいのかい?対戦相手に背中なんか向けちゃって。よし、相棒、出番だぜ!ぐんぐにーる!!」

 

ゲームで習った技名を叫びながら、袋から眠っていた相棒を再び取り出し、槍投げのように直線に放つ。

背中を向け、さらには防御の術がないこいつには最高の一撃になるはずだ。

 

「ぐああ!」

 

案の定相棒の一撃を背中に受け、オールバックは転んだように倒れる。

そのまま剣を掴むことはできたようで、反射的にこちらに振り返り、防御の姿勢に入ろうとするが、もう遅い。

 

オールバックに飛び乗り、マウントポジションで右手を振り上げる。

 

「お前との決闘、なかなか勉強になったぜ。サンキューな。それじゃあ、これでおしまいにしよう。全身で受け取れ、3つ目のプレゼントォ!」

 

渾身の一撃を力いっぱい振り下ろす、オールバックの顔面に、拳がめり込まれる。

鈍い音がして、オールバックの体が一瞬跳ねたかと思うと、白目を向いて気を失っている。

 

「3つ目のプレゼント。お題は素手による敗北。…っぷっ。ははは!」

 

情けない顔をして気絶をしているオールバックに笑いがこらえきれず、スマホを取り出して、その情けない顔を写真に収める。

気が付くと、いつの間にか静かになった周囲に、立ち上がって声をかける。

 

「最後までご覧いただきありがとう!以上、夢と希望にあふれる、サンタクロースの決闘でした!それじゃあ、メリークリスマス!」

 

もはやメリークリスマスの意味がわからない。

しかし、まあこの世界じゃあ意味わかるやつ一人もいないし、いいだろう。

 

「るう、ん、んん!ルールにのっとり、片方意識不明のため、決闘終了!勝者、サンタクロース!」

 

名前忘れんなよ。

ごまかして僕の名前だけ大げさに言うんじゃないよ。

 

「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」

「まじか、本当に勝ちやがった」

「熱い一発だったぜ!」

「あの石、飛んでこないか怖くて仕方がなかったよう」

 

広場は歓声に包まれる。

そして後ろから、ラストが歩み寄り、前からマイが駆けつてきて僕に飛びついてくる。

 

「いやあ、お疲れさん!最高だったぜ!」

「もう、心配しましたよ?最初、やられるかと思いましたよっ!」

「あ、ああ、心配かけたな。それとマイ、あいつの名前、わからなくてごまかしただろ。せめて名前くらいは覚えてやれよ」

 

本当にかわいそう。こんなかわいい子にまでそんな扱いされたら、剣士のプライドとか折れるどころじゃねえぞ。

 

「え、まあ、いいじゃないですか!それより、どうでしたか私の武器の出来は!」

 

ハイテンションかつ倒置法。もう武器って認めてるのね。

 

「ああ、武器になったおかげで、最悪の使い勝手だった」

「え~!自信作だったのにぃ…」

 

熟練度についてはわからないはずだが、わかりやすく落ちこんでいるご様子。

とりあえず慰めようと、頭をなでる。

 

「えっと、まあ、役には立った。さんきゅーな」

「ふあ…は、はいっ!」

 

真っ赤になって、それから恥ずかしそうに微笑む。

感情の変化が激しいやつだ。

 

「そ、それでラスト。いくら稼いだんだ?」

 

マイのチェーンソー芸を、機転を利かせて金に変えた男に尋ねる。

 

「ああ、それか。見ろ、この通り」

 

そういって見せる袋には、いっぱいの硬貨が入っていて、見ただけでもなかなかの額であることがわかる。

 

「臨時収入だ!この金で、祝勝会もかねて、飲みにでも行こうぜ!」

「やったあ!今日は、朝まで飲みましょうっ!」

 

お前ら飲みすきだな。大学生かよ、僕もそうだが。後、どうせノンアルコールしか飲まないだろうが。

ともあれ、初めての対人戦は勝利を収め、ついでに死ななかったことに、僕はほっとして、目の前ではしゃぐ2人を見ていた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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