「さてと、、」
何度目かのレベルアップ通知で一段落する。
スマホで確認すると、もう夕方の4時だ。
3時間はこもっていたのか。スライムと戯れると時間を忘れてしまう。
後ろでゼリー拾いをしているラストに声をかける。
「ラスト、もう帰ろう。腹減ったよ」
「ああ、そうだな…お疲れさん」
家に戻る途中、ラストが口を開く。
「なあ、サンタ。お前、いつもあんな感じでやってたのか?」
「まあな。最近は店で働き始めたからあまりきてないけど」
「それで冒険者じゃないってのが本当に謎すぎるぜ…」
別にスライムくらい、だれでも余裕だと思うが。
お前くらいだろ。
「まあ、生活できればなんでもいいんすよ」
「そういうもんか…後さ、その四角いのってなんだ?」
ラストは僕の手の中にあるスマホを指さして訪ねてくる。
そうか、ここにはないものだもんな。
「ああ、これはスマートフォンといってな。前に住んでた国の文明の象徴だ」
「へえー」
適当にごまかしたがまあ説明してもわからないしいいだろう。
「それ、魔法で動いてるのか?」
そこで言われて初めて気づく。ここにきてもう1か月は経っているはずなのに、電池が切れることは無い。
もしかしてサンタのじいさんが魔法でもかけたのか?
「まあ、そんなとこだ」
「そうなのか。今度何に使うか教えてくれよ!」
時計、写真、後は…そのくらいか。
電波がないと不便極まりないな。
「まあ、機会があったら、な」
適当にだべりながら家につくとマイがルドルフと一緒にもうそりを作り始めている。
もう暗くなってきているというのに、なんていう集中力だ。
まあ、最近まで3週間スライムと遊んでいた僕に言えたことじゃないが。
「おう、まだやってたのか」
「あ、おかえりなさい!見てください、骨組みはできましたよ!」
「おお!」
見ると本当にそりの形ができていて、底に板さえ張れば機能しそうなほどだ。
仕事が速い。ここ最近毎日受ける注文も難なく処理しているし、そり一個作るのもそれと同じということだろうか。
「それじゃあ僕も手伝うよ。ここからは何をすればいいんだ?」
「んー、作業は一人の方が捗るので、見守っていただければ!」
「あ、はい」
素人がでしゃばるとこじゃなかったね。
なんかすいません。
「あ、でも、完成したら色を塗るのは手伝ってくださいっ!」
「あい、わかった。んじゃ、ラスト、晩飯作ろうぜ」
「おう、そうだな。そういえば、お前が来てからはほとんど店で食ってたし、たまにマイが作るくらいで、俺の料理は初めてなんじゃないか?」
確かに、ここ最近は歓迎会だの祝勝会だの売り上げ最高記念だの適当な理由を付けて飲んでばっかりだった。
普通はマイが作ってくれるが、ラストの料理は初めてだ。
「そういえばそうだな。一応、期待していいんだよな?」
「当たり前だ、俺が店を始めたら、この街の料理店が泣きついてくるぜ?」
「ほう、そいつは楽しみだ。本当に期待してるよ」
「おう、任せな!」
僕たちは今店の二階にいる。
うちの店は二階建てになっていて、店のカウンターの奥にある扉を開ければ、奥の部屋と、二階に通じる階段があり、主に二階が生活するための部屋となっている。
そしてキッチンに立つラストは料理をしていて、リビングの椅子に腰かけている僕は天井のシミをただ数えている。
ラストの手伝いをしようと思ったのだが、こいつも職人気質があるのか、一人でやるから自由にしていろというので何もできない。
僕、無能説浮上。
至れり尽くせり。まさか異世界でひもかニートに属するものに転生するとは思わなかったぜ。
そんなことを考えながらしばらくぼんやりと天井を見つめていると、ラストが声を上げる。
「よっし、完成!サンタ、マイを呼んできてくれ!」
「あいよー」
言われるがまま階段を下り店の外へ向かう。
「おーい、晩飯できたってよ」
「はーい、わかりました~」
そういっても作業をやめないマイ。
話聞いてないなこいつ。
ゴー・マイ・ウェイ。我ながら寒い。
「なあ、聞いてる?」
「何がですかー?」
「スカートからパンツ見えてるぞって言ってんの」
「聞いてますよー、って、ええ!?」
手を止めてこちらに向き直る。
スカートを抑えながら、真っ赤な顔で恥ずかしがっているのが暗くてもよくわかる。
「冗談だよ。ラストが飯できたから来いってさ」
「なんですかもう!それならそういってくださいよっ!」
「言ったけど聞こえてなかったぽいからさあ」
「うー、恥ずかしい…」
別に本当にみえていたわけではないのに、マイは恥ずかしがっている。
一言一言で笑ったり赤くなったり、かわいいやつだな。
「かわいいやつだな」
「ううぇえ!?何言いだすんですかっ!?」
声に出てたらしい。
どうしよう、新たな黒歴史が増えちまったぞ。
「ごめん、今のは忘れてくれ。思ったことがつい口に出ちまった…」
「は、はい…」
お互い気まずい雰囲気で店の中に入る。
「忘れられるわけないじゃないですか…」
途中、マイが何か言った気がしたが、ルドルフの鈴の音でうまく聞き取ることができなかった。
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