この章はサンタ君が色々と頑張ります。
第21話:恩返し
「おう、来たか!ん、マイ、どした。なんか顔赤いぞ?」
「ん、まあちょっとな」
「ううぅ…」
「…まあ、座れよ。いつ作っても最高傑作!俺の料理に、酔いしれな!」
ドヤ顔のラストの一言で晩餐が始まる。
結果から言うとラストの料理は絶品だった。
ラストにより調理された肉はなんの肉かわからなかったが今まで食べた中では一番おいしいと断言できるほどだし、味だけでなく皿の盛りつけ方も三ツ星レストランで出されてもおかしくないほどの見た目だった。
自分で遠回しに街一番と自負できるのも納得できる。
まあ強いて言うなら、米が欲しかったが。
僕の止まらないフォークを見て、ラストは誇らしげに頷いていた。
食後。
食器を片付けるラストと、僕の隣で機嫌よく鼻歌を歌うマイ。
いつの間に機嫌が良くなったのかわからないが、さっきのことを怒っていないならそれでいい。
「なあ、二人とも」
「なんだ?」
「なんですか?」
ラストは手を止め、マイは鼻歌を止めて僕に注目する。
僕は前から考えていたことを二人に切り出した。
「しばらく店を休みにできないか?」
「まあ看板立てとけば休めるけど、どうしたんだ?」
「ちょっとね。旅行に行きたい」
「旅行?」
「旅行、ですか?急ですね…」
二人は店を休みにすることよりも、僕が急に旅行に行きたいと言ったことの方が不思議だったのか、旅行という単語に食いついてくる。
「今まで色々と世話になったからな。ちょっと前から考えてたんだ。そりができたら、どこかに連れていこうって」
これは僕なりの恩返し。この世界で僕を家族に加え、慕ってくれる二人への休暇も兼ねた旅行という名のプレゼントだ。
これはちょっと、照れくさいな。
少し恥ずかしくなって視線を下げてしまったが、見上げると二人は嬉しそうな目をしていた。
「サンタ…そいつはまた…粋な計らいじゃねえか!俺は嬉しいぜ!」
「そんなこと考えてくれてたなんて…いきましょうっ!絶対!」
よかった。
断られるかと思ってた。
ほっと胸をなでおろして、帽子を脱いで立ち上がる。
「それじゃあ、行きたいところを決めておいてくれ、道案内さえしてくれれば、どこにでも行けるからな」
「よっしゃ!今日は眠れねえな!旅行の準備と、計画もしねえと!」
なぜかラストが、まるで明日出発するかのようにそう言った。
特に日程は決めてないが、明日とは言っていないぞ?
「いや、今日は寝れないって…明日行くとは言ってないよ?そりができてからじゃないと…」
「何言ってるんですか?そんなこと言われたら、明日までに完成させたくなっちゃうじゃないですかっ!旅行の準備、しててくださいよ?」
「まじかよ…」
「思い立ったが吉日ってもんよサンタ!お前も明日に備えて、早く寝るんだぞ!」
そこからいきなり動画を倍速にしたかのような速さで動き出す二人。ラストは食器をさっさと片付けて自室にこもり、マイは部屋へ戻ったかと思うとすぐ戻ってきてピンク色のチェーンソーを片手に階段をかけ下りる。
僕だけは一人取り残され、二人の食いつきに呆気に取られていた。
「まあ、いいか。寝よう」
疲れもしない体を休めるというよりも、二人のテンションが伝染しないように、急遽明日に割り込んだ旅行が楽しみになって湧き上がる興奮を抑えつけるために、無理矢理ベッドに入り、目をつぶった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。