「かんぱ~いっ!」
「かんぱーい!」
「乾杯!」
夕方。
部屋に戻ってすぐに温泉に浸かり、日が暮れたあたりで部屋に運ばれてきた料理を囲んで乾杯をして第一回戦祝勝会をしている。
「いやあー、サンタ、一回戦突破、おめでとう。おかげで俺も、懐が温かいぜ!」
横にある袋の中をジャラジャラと漁って見せる。
「本当にうれしそうですね…普通に働いていればいつか貯まるのに…」
賭けをしなかったマイはすねたようにいう。勝たなかったものにはわからないだろうが、一瞬にして大金が手に入ると、働くのが馬鹿らしくなってくるんだよ。
ソースは僕。
「まあどうせ、一週間もここに泊まる予定だろうから、100万近くは無くなるけどな」
「それでも、俺には45万は残るからな!全然問題ないぜ!」
ドヤ顔を決めるラストだが、マイが何かを思いついて悪い顔で笑いだす。
「全然問題ない?あ!45万残るなら、後3日伸ばして、10日間は泊まれますねっ!」
「んな!?」
「おー、いいねえ。そいつは名案だな。じゃあマイ、せーの」
「「改めて、ごち(そうさま)でーす!」」
「うわあああああああ!俺の貯金があああああ!」
悶絶してその場で倒れこんだ。
かわいそうだが…調子に乗るからだ。
その後、ラストを放っておいて料理を味わっていると、マイがまた何かを思い出したように、僕に話しかける。
「あっ!そういえば、あの雪のこと、話してくださいよっ!」
「げ、思い出したか」
「おおう!そうだ、サンタ、教えろ!」
ラストも復活して問い詰められる。
もう逃げられない、悟った僕は、面倒そうに口を開く。
「スキルってわかる?それ。はい終わり」
「なるほどなあ…って終わりかよ!?」
一応スキルというものはわかるらしいな。
「ほかに説明のしようがない」
「魔法じゃないんですか?」
マイが当然の疑問を口にするが、バンベルトに言ったようなセリフをまた言う。
「僕は生まれつき魔力がないって前にも言わなかったっけ。あれは魔力じゃなくて、僕の体力を削って発動しているんだ。まあ魔法のようで魔法じゃないみたいな感じだ。僕にもわからん」
僕以外の人にはレベル、ステータスの概念がないから説明が難しい。これで納得してくれればいいが。
「魔力を使わない魔法、ですか…なんだかとっても素敵ですね!」
「そうかな。魔法の方が素敵だと思うけど」
僕も一応元の世界では自主休講っていう魔法くらいは使えたんだが。
わかりにくい曖昧な説明だったが、どうやら納得したようだ。マイは頭が良くて助かる。
「なあ、サンタ。お前それ、他にもなんか使えるのか?」
「ああ、まあいくつかは」
目を輝かせるラストが、身を乗り出しながら尋ねてくる。
「他には何ができるんだ?」
「一人遊びが超上手になるのだったり、目印をつけて道に迷わなくなったりできるぞ」
明確に内容を言うとやれと言われそうなので、可能な限りぼかして夢の無いもののように話す。
「ん、なんかいまいちだな…まあそのうち見せてくれよな」
「そのうちね」
僕への追及は終わった。
そこで僕も、ラストに尋ねる。
「ところで、もう大会は棄権でいいんだよな?金も稼いだし、目的は果たしただろ」
「何言ってんだ。ここまできたら優勝するしかねえだろ!」
僕としてはもう面倒だったので棄権したかったのだが、ラストは譲らなかった。
どうせまた賭けで大儲けしたいんだろ。
目が¥のマークになってるぞ。
「ふえ?どうしたんですか?大会、やめちゃうんですか?」
「ああ、あくまで今日のイベントとして出ただけだからな。流石にもう飽きただろ」
味方をつけようとマイを説得して、どうにか大会を棄権する道を推す。
しかし、
「そんなことないですよ!やりましょうよ!見てるだけでも楽しいです!」
こんな具合に目を輝かせている。こっちは純粋に楽しんでるな。
「それに、かっこいいとこ、もっと見たいです」
何を言ったか聞こえなかったが、まあ試合観戦が好きだとか、そんなことでも言ったんだろうな。
「そうか、でももう疲れたよ。対戦相手、性格が合わなさ過ぎて、すげーストレスたまるんだよ」
これが本音。
血気盛んな連中の、自分大好き野郎との会話とか、ストレスで禿げそう。
「頼むよサンタあ。後4回で優勝だからさあ。対戦相手の情報は、俺が調べておいてやるからよお。優勝でも準優勝でもいいから、賞とってくれよお!」
こちらに飛びついて、絡みついてくる。
「くっつくな。…ったく、しょうがないなあ。その代わり準優勝までだからな」
「ありがとよ!全力でサポートするからな!」
大会に出るのも面倒だが、こいつの粘着にこれから耐えて過ごす方が面倒だ。
仕方がないから、良いところで負けるか、適当に終わらせよう。
「因みに準優勝も賞品がもらえるので、頑張ってくださいね!応援してますから!」
マイもこちらに寄りかかってくる。
こいつら今日は結構絡んでくるな…。
「だあーもう!離れろ!飯が冷めるだろ!」
「いいじゃないですか、明日も食べられますし♪」
「よーし、俺たちみんなで、優勝狙うぞお!」
「だから準決勝までだって…」
その後も若者らしく、隣の部屋から苦情が来ないか不安になるほど騒ぎ、刻々と夜は更けていった。
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