ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第38話:止めの一撃

「「「ノーウ!!」」」

 

5体の雪だるまが一斉射撃を行う。

 

「くそ、簡単にはやられねえぞ!」

 

大きく袋の口を広げて雪玉を吸収する。

 

「へ、粘るなあ!でもそんなことをしても、全部は防ぎきれねえぞ!」

「ぐう、いってえ…!」

 

ラストの言う通り、正面の3体の攻撃は袋で無力化できるが、左右の2体の攻撃は防ぎきれず、雪玉によるダメージは着々と溜まっていく。

雪だるまといえども、ステータスは僕のステータスに比例しているため並ではない。

普通の雪玉の威力も相当なもので、顔面に当たるたびに視界が揺らぎ、意識が飛びそうになる。

 

味方の赤い4体がこちらにきて、右側の1体を倒しにかかる。頭を飛ばしたおかげで1体を無力化して右側からくる攻撃はさえぎることができたが、左からくる容赦のない攻撃は止まることは無い。

 

「おまえら、僕の援護は2体でいい!他の2体は砦に戻って反撃の用意だ!」

 

そう叫ぶと、狼狽えながらも2体は壁の内側に駆けていく。

これで僕の陣営は僕と2体の雪だるまが4体の相手をして、残りの4体とマイが裏で反撃の体制をとっている形になる。

 

3体が行動不能で4体全員が僕を狙うラスト陣営が手薄なので、準備ができ次第反撃をすれば耐えられえるはずだ。

 

「みんな、あと少し耐えるんだ。準備ができれば、反撃に出られる!」

「ノーウ!」

「はあ!4対3で少しでも負担を減らそうってか!?悪くないが、俺の存在を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

「なんだって!?」

 

見ると先ほどまで向こうの壁の上で指揮をとっていたラストの姿はなく、声のした方を見ると、僕が倒した2匹の頭と胴体をくっつけていた。

 

「これで6対3だ!」

「ノオオオ!!!」

 

復活した2体は雄たけびを上げながらこちらに向かって走ってくる。

 

そしてすぐに1体の復活作業を行うと、僕への攻撃を開始した。

 

「どうだ、これで俺の兵隊は全員復活、さらに俺が加わって8対3だ!お前ら、3方向から攻めてサンタをうてえ!」

「ノオオオオ!!」

「やべえ、こんな数防ぎきれない!」

「反撃の準備だか知らないが、王様を討ったら戦争は終わりだ。サンタ、自分を守る盾くらいは、十分に用意しとくんだったなあ」

「う、ぐう!ぐああ!」

 

グーで殴られるような打撃に近い雪玉が左右から飛んでくる。

全身に走る痛みと冷たさで、体の感覚が徐々に失われていき、広げていた袋も落としてしまう。

 

「ついに守ることもできなくなったな。これで終わりだあ!」

「っ!」

 

顔面に2、3発、雪玉をくらう。

その直撃によってついに僕は力尽き、雪の上に伏す。

 

「うぅ…ここ…まで…か…」

 

心配そうに駆け寄る2体の赤いスノウマンに対して、必死に意識を保ちながら目で合図する。

 

 

 

僕の心配なんかしなくていい。

早く裏に引っ込め。

 

 

 

「ノ、ノ―――!」

 

僕の合図を受け取って、裏に全員が引っ込み、僕の周りはラストの全軍のみになった。

 

「へ、王を捨てて逃げたか。とんだ腰抜けだな」

 

ラストが僕の近くに歩み寄って、声をかける。

 

「まだ意識があるとは流石だな。どうだ、冬将軍の戦略、最強だっただろ?」

「ああ、正直、なめてた…よ…」

「反撃とか言ってたな。間に合わなかったみたいだけど。サンタよ。降参すれば、俺もとどめを刺さなくて済むんだが、降参する気はないか?」

 

冬将軍の最後の情けだろう。

だが僕は残った力を振り絞って手を振ってそれを拒む。

 

「…最後まで戦うことを選ぶか。サンタ、男だな。それじゃあまた後で、あのポーションで起こしてやるよ!」

 

雪玉を構えて腕を振り上げる。

 

「ラスト、一つだけ、言い残したことがあったよ…」

「ん?言ってみろ」

 

僕は凍り付いた顔を無理矢理引きつらせて、ぎこちない笑顔を浮かべる。

 

「勘違いしてるみたいだけど…リーダー…僕じゃないんだ…」

 

「…ん?なんだって?」

 

 

 

 

 

「さあみんな、反撃ですよ!」

「ノーウ!」

 

突然、砦の方からマイの声が上がり、それにつづいてスノウマンの叫ぶ声がする。

そして反撃の狼煙とでもいうかのように、ラストたちに向かって壁から無数の雪玉が飛んでくる。

 

「なんだなんだ!?みんな、下がれ!」

 

ラストたちが自分の陣地に退がるのを確認して、マイと2体のスノウマンが壁から飛び降りてきて、僕に駆け寄る。

 

「お待たせしました。準備はできましたよっ」

 

2体に担がれて、僕は壁の内側に連れていかれる。

壁の内側の様子をみて、準備が万端だということを確認する。

 

「ああ…さんきゅー、な…」

 

震える手で親指を突き立てると、マイは僕の手をそっと包み込んで優しく微笑む。

 

「ここからは私たちに任せて、後は休んでてください!」

「は。悪いね…任せた、よ…」

 

袋から小瓶を数本だけ取り出してから、マイに袋を手渡す。

 

そして僕は、目を瞑った。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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