ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第39話:動かぬ反撃

「サンタが王様じゃないだと?」

 

俺は全軍を率いて陣地に戻って、雪玉を固めながら気持ちを落ち着かせる。

確かにサンタ自身がリーダーだと宣言した覚えはない。

もしかして、サンタが向こうの雪だるまを赤く染めたのは、赤い帽子の自分自身を自分がリーダーであると錯覚させるためだったのだろうか。

 

「俺の勘違い。ということは…向こうの王は…」

 

ちょうどその時、俺が予想した奴の声がする。

 

「ラスト~!よくもサンタさんをやってくれましたね~!もう好きにはさせませんよ~!」

「あいつか…!」

「ユキちゃんたち、サンタさんのかたき、絶対にうちますよ!」

「ノ―――ウ!」

 

向こうは先ほどの守ってばかりの時とは違い、勢いが増しているように思える。

まさか、マイがずっとでてこなかったのは、サンタが狙われている間に反撃の準備をしていたというのか?

 

「ノー」

「ん?」

 

服を引っ張られ、振り向くと、俺の兵である雪だるま共が準備ができたというように、雪玉を抱えている。

ぴょんぴょんと飛び跳ねて今にも突撃しそうなので、俺はそいつらを慌てて制止する。

 

「ま、待て!反撃に備えろ!何が来るかわからないから、今は城の守りを固めろ!」

 

やつらの様子を窺うべく、俺は城壁の一番上に登って見渡す。

しかし、先ほど上げた叫び声の割には誰一人としてこちらに攻めてくることは無い。

向こうの壁の上で、マイが一人でこちらに吠えまくっているだけだ。

 

「どうしたんですかー?もしかして怖くて来れないんですか?」

「なんだ?反撃とか言ってたのに、全然こっちに攻めてこないぞ?何か意味があるのか?」

「どうして攻めてこないかって顔してますねえ!」

 

考えを読まれちまった。

 

「まあ、いいでしょう。教えてあげます!私たちはここで、籠城します!」

「籠城だって?」

 

ここまできて防衛戦かよ!

そんなのさっきと同じじゃねえか。

何言ってんだあいつは。

 

「私たちはチャンスが来るまでは、こっちで籠って持久戦に持ち込みます!だからほら、どんどん攻めてきてくださいよっ!」

 

胸を張って、俺を見るマイ。

籠城だと…?

へっ、笑わせてくれるじゃねえか…!

 

「籠城ねえ。そうかい、それならこっちも、遠慮なく攻められるなあ!お前ら!さっきと同じ、各2体ずつ、右、左、上から攻め込んで制圧だあ!」

「ノーウ!」

 

先ほどと同じ陣形で攻めの体制に入る。

最初と違うことは、相手がこちらの攻めに対抗して雪だるまが出て来た数が左には1体しかいないことと、壁の上で守っているのがサンタではなくマイになっていることだ。

他に、何故か右からは3体の赤い雪だるまが防御に徹していて、右からの進行は難しくなっている。

 

 

左側は2対1で赤い雪だるまを倒すと、難なく敵の陣に入り込んでいく。

 

このまま左から攻め込んで中で暴れれば、やつらは圧倒されて、サンタも、逃げ場もないマイには、降参という選択肢しか残らない。

 

左だけ守りが少ないのは何かの罠かとも思うが、外に4体出ていてマイも壁を登ってくる雪だるまの阻止に手いっぱいだ。

さらにサンタは瀕死状態。しばらくは立ち上がれないだろう。

 

数で言うと戦力は8。

そして外の4体とマイ、さらに戦えないサンタを引くと、壁の内部を守るのは2体のみだ。

 

「よし、お前も左から言って攻め込むんだ。壁の奥も2対3になればこっちの方が有利だ」

「ノオウ!」

 

手元に置いていた1体を送り出すと、全力でかけていく。

 

「よし、俺も右側の援護に入るか」

 

城壁から飛び降りて応援に向かう。

その途中、向こうの壁の中から甲高い悲鳴が上がり俺の耳に届く。

 

「へ、俺が攻めるまでもなかったか」

 

おそらく2体が内部で暴れているのかもな。

城が手薄で籠城なんて良く言えたもんだ。

 

「うわあ!こっちに来てます!どうしましょうっ!」

 

マイが壁の方を向いて大げさに焦っている。

無理もねえな。護衛がやられて、残るはあいつ一人。後は壁を登ってるやつらも攻め込めば、囲んで集中砲火でゲームセットだ。

 

 

 

「なーんて、ね!ほんの冗談です♪」

 

「はあ?」

 

ペロッと舌を出してこちらを見下ろすマイ。

そして壁の中から緑色の何かがこちらに飛んでくる。

 

どさっという音がして後ろを振り返ると、緑色の雪だるまの頭が二つ、雪の上に転がっていた。

 

「の、のおおおぉ…」

「さっきの悲鳴はこっちのだったのかよ!」

「てへっ♪ついでにこれもっ!」

 

そして追撃用に送り込んだ1体の頭も飛んできた。

 

「おいおい…2対3だぞ?こっちが全員やられるなんて、ありえない。まさかサンタが復活したんじゃ、、いやでも、あいつはもう戦える状態じゃないはず…」

 

思考を巡らせていると、またもマイの声が上から聞こえる。

 

「そんなに気になるならこっちに来ればいいじゃないですか!そうすればその謎も、解けるかもしれませんよ?」

 

「くそ…お前ら!壁を登るのはやめだ!こいつらさっさと倒して、俺たち全員で突っ込むぞ!」

「ノーウ!」

 

壁を登っていた2体は飛び降りてこちらに向かってくる。

そして俺を含め5人で3体の赤い雪だるまを倒して、内側に入り込もうとする。

 

しかし。

 

「壁が…広がってる?」

 

壁は1枚ではなく、奥にも続いていて、当初一の字だった壁はいつの間に口の字になっていて、本当に城のようになっていた。

 

「やっと気が付きましたか」

 

マイが高らかに叫ぶ。

 

「そう、さっきサンタさんが攻撃を受けている間、私たちはこっちで壁を作っていたんです。サンタさんの守りが薄かったのは、この壁を作るために、無駄な配置は許されないという、サンタさん本人の意思です!」

「まじかよ…あいつ、自分が盾になって時間を稼いでいたのか…」

 

考えてみれば囲まれていようが走って壁の内部に逃げれば良かったものを、サンタはあえて動かずにその場ですべての攻撃を受けていた。

そうすることで、内部への侵入を防ぎ、城壁の強化を気づかれることなくできたというのか。

 

「…俺はまんまと、サンタにしてやられたってわけか。…おもしれえ、こんなに腕のなる雪合戦は久しぶりだぜ!」

「さあ、私たちが作ったこの城壁、敗れるものなら破って見せてくださいっ!!」

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
そろそろ雪合戦も終盤です。
それではまた、次の話で。
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