「とりあえず入り口を見つけねえと…!」
外周を探ろうと、裏側に回ると、入り口はすぐにみつかった。
「あ、ここね…」
あっさり見つかり拍子抜けだったが、今は気にすることではない。
「それにしても、これは小さすぎるな…」
入り口と思われる穴は小さく、四つん這いにならないと入ることはできない。
「そうか、入り口を小さくしてるから、一人ずつしか入ることはできない。だから入り口をくぐって文字通り丸腰の状態で攻撃を食らって、それでやられたんだな」
道理で中には計算上2体しかいないはずなのに3体かかってもやられたわけだ。
しかしそれさえわかれば対策の仕様はある。
簡単なことだ。
「入り口を壊して、全員で入れるようにしろ!」
「ノオオオオ!」
雪だるまたちは全員で壁を殴る、掘るなどを繰り返して横幅を大きくする。
壁は頑丈で壊すのは困難だったが、それでも全員が一斉に通れるだけの穴ができた。
「これで一斉に行けるな。お前ら、突撃だあ!」
全員で入り口をくぐって中へ入る。
「っ!これは…!」
しかし入り口をくぐった矢先、俺はそこで目の当たりにする。
目の前に立ちはだかる無数の赤い軍勢を。
「ようこそ、私たちのお城へ♪」
声のした方を見上げるとマイが城壁から降りてきて、腰に手を当ててドンと構える。
「流石はラストです。入り口を壊して一斉に入ってくるとは、なかなかやりますね」
「マイ…なんだ、これは…?」
城の内部には赤い雪だるまが何体もいて、それらすべてがこちらを睨んでいる。
「ふふっ、驚きましたか?これは私たちの作戦です」
「ヌウウ!」
「ノオウ!」
突然、大勢の中の1体がこちらに雪玉を投げてきた。
その不意打ちに反応しきれず、こっちの1体の頭に命中して頭を飛ばされる。
「くそ、どうなってやがる!」
焦って手当たり次第に雪玉を投げつけるこちらの雪だるまたち。
しかし全く手ごたえはなく、所々から雪玉を投げつけられ、早くも俺の軍は崩れはじめる。
そして4体いた雪だるまはついに半分の2体にまで減ってしまっていた。
焦る俺を見て、マイが微笑みながら声をかける。
「それじゃあヒントです♪冷静に、よく見てみたらどうですか…?」
「冷静に…見る…?」
周囲の攻撃に気をつけながら、じっと目を凝らして、観察する。
「!」
そして気づく。
ほとんどすべての雪だるまが行動をしていないということに。
「これは…ただの雪だるまか!」
「その通り♪でも、動けるユキちゃんが中に紛れていますよ」
―――そう、このたくさんの雪だるまは意思を持たないただの雪だるま。
反撃の準備中、サンタが防いでいる間に、壁を築きながらマイが作り上げたものだった。
雪だるまを作り、サンタに手渡された袋からポーションを出して色を付ければ本物同様だ。
「私と、ユキちゃん達の腕にかかれば、どれも本物同然に作ることができます。だから躱そうとしても、どれが本物か、わからないんじゃないんですか?」
確かにマイの腕は本物だ。
手作業なら何でも完璧にこなせるあいつなら、こんな二頭身どもを作ることなんて造作もない。
一目見て、生きていると思ってしまうほどに、できすぎた造りだった。
本物に近い偽物に紛れて、本物たちの攻撃が飛んでくる。
目で追おうとしても、雪玉を躱すたびに途中で見失ってしまう。
「さあ、どうですか!このままじゃやられるのも時間の問題ですよ?降参するなら今のうち―――」
「くそ、こいつらの相手をするのはやめだ!お前ら、マイを狙うぞ!」
「え?」
「ノーウ!」
雪玉を躱しながら、マイのいる一番奥めがけて走り出す。
「わわっ、そういえば忘れてました!私を守る人が誰もいないじゃないですか~!」
よく考えたら全滅が勝ちじゃない。
王様を倒せば、それで終わりだったんだ。
「お前の偽物はいない!王女を討ち取ったら戦は終わりだ!この勝負、もらったあ!」
マイを取り囲み、俺は思わず勝利を確信する。
「お前を倒すだけなら、ここにいる2体がいれば十分だ」
「ノ――ウ!」
「サンタさん、どうしましょう!?…あれ?サンタさんは?」
鋭い二つの直球が、マイに向かって吸い込まれるようにして飛んでいく。
「きゃあ!」
勝った。
少し予想外の出来事があったが、これで終わりだ。
俺の、勝ちだ。
「はっはっはっは!これが冬将軍の実力よ!」
「マイ、言ったよな。お前には一発も当てさせないって」
「え…?」
手応えのない2つの弾ける音。
二つの雪玉はマイに当たることは無く、突然壁を飛び越えてマイの前にやってきた男によって遮られる。
「んな…!お前、なんで…!」
目の前の男は、その象徴である赤い帽子を被り直してこちらを見据える。
たまに見せる、片方の口角を釣り上げた意地の悪い笑みを浮かべながら。
「お前、さっき倒したはずだろ…?なんでぴんぴんしてんだよ?サンタ!」
俺が王と間違い、大勢で囲んで倒したはずの男。
サンタクロースが、そこにいた。
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