ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第40話:その手は

「とりあえず入り口を見つけねえと…!」

 

外周を探ろうと、裏側に回ると、入り口はすぐにみつかった。

 

「あ、ここね…」

 

あっさり見つかり拍子抜けだったが、今は気にすることではない。

 

「それにしても、これは小さすぎるな…」

 

入り口と思われる穴は小さく、四つん這いにならないと入ることはできない。

 

「そうか、入り口を小さくしてるから、一人ずつしか入ることはできない。だから入り口をくぐって文字通り丸腰の状態で攻撃を食らって、それでやられたんだな」

 

道理で中には計算上2体しかいないはずなのに3体かかってもやられたわけだ。

しかしそれさえわかれば対策の仕様はある。

簡単なことだ。

 

「入り口を壊して、全員で入れるようにしろ!」

「ノオオオオ!」

 

雪だるまたちは全員で壁を殴る、掘るなどを繰り返して横幅を大きくする。

壁は頑丈で壊すのは困難だったが、それでも全員が一斉に通れるだけの穴ができた。

 

「これで一斉に行けるな。お前ら、突撃だあ!」

 

全員で入り口をくぐって中へ入る。

 

 

「っ!これは…!」

 

 

しかし入り口をくぐった矢先、俺はそこで目の当たりにする。

目の前に立ちはだかる無数の赤い軍勢を。

 

 

 

 

「ようこそ、私たちのお城へ♪」

 

 

 

 

声のした方を見上げるとマイが城壁から降りてきて、腰に手を当ててドンと構える。

 

「流石はラストです。入り口を壊して一斉に入ってくるとは、なかなかやりますね」

「マイ…なんだ、これは…?」

 

城の内部には赤い雪だるまが何体もいて、それらすべてがこちらを睨んでいる。

 

「ふふっ、驚きましたか?これは私たちの作戦です」

「ヌウウ!」

「ノオウ!」

 

突然、大勢の中の1体がこちらに雪玉を投げてきた。

その不意打ちに反応しきれず、こっちの1体の頭に命中して頭を飛ばされる。

 

「くそ、どうなってやがる!」

 

焦って手当たり次第に雪玉を投げつけるこちらの雪だるまたち。

しかし全く手ごたえはなく、所々から雪玉を投げつけられ、早くも俺の軍は崩れはじめる。

 

そして4体いた雪だるまはついに半分の2体にまで減ってしまっていた。

 

焦る俺を見て、マイが微笑みながら声をかける。

 

「それじゃあヒントです♪冷静に、よく見てみたらどうですか…?」

 

「冷静に…見る…?」

 

周囲の攻撃に気をつけながら、じっと目を凝らして、観察する。

 

「!」

 

そして気づく。

ほとんどすべての雪だるまが行動をしていないということに。

 

「これは…ただの雪だるまか!」

「その通り♪でも、動けるユキちゃんが中に紛れていますよ」

 

 

―――そう、このたくさんの雪だるまは意思を持たないただの雪だるま。

反撃の準備中、サンタが防いでいる間に、壁を築きながらマイが作り上げたものだった。

雪だるまを作り、サンタに手渡された袋からポーションを出して色を付ければ本物同様だ。

 

 

「私と、ユキちゃん達の腕にかかれば、どれも本物同然に作ることができます。だから躱そうとしても、どれが本物か、わからないんじゃないんですか?」

 

確かにマイの腕は本物だ。

手作業なら何でも完璧にこなせるあいつなら、こんな二頭身どもを作ることなんて造作もない。

一目見て、生きていると思ってしまうほどに、できすぎた造りだった。

 

本物に近い偽物に紛れて、本物たちの攻撃が飛んでくる。

目で追おうとしても、雪玉を躱すたびに途中で見失ってしまう。

 

「さあ、どうですか!このままじゃやられるのも時間の問題ですよ?降参するなら今のうち―――」

「くそ、こいつらの相手をするのはやめだ!お前ら、マイを狙うぞ!」

「え?」

「ノーウ!」

 

雪玉を躱しながら、マイのいる一番奥めがけて走り出す。

 

「わわっ、そういえば忘れてました!私を守る人が誰もいないじゃないですか~!」

 

よく考えたら全滅が勝ちじゃない。

王様を倒せば、それで終わりだったんだ。

 

「お前の偽物はいない!王女を討ち取ったら戦は終わりだ!この勝負、もらったあ!」

 

マイを取り囲み、俺は思わず勝利を確信する。

 

「お前を倒すだけなら、ここにいる2体がいれば十分だ」

「ノ――ウ!」

「サンタさん、どうしましょう!?…あれ?サンタさんは?」

 

鋭い二つの直球が、マイに向かって吸い込まれるようにして飛んでいく。

 

 

「きゃあ!」

 

 

勝った。

少し予想外の出来事があったが、これで終わりだ。

俺の、勝ちだ。

 

 

「はっはっはっは!これが冬将軍の実力よ!」

 

 

 

 

 

 

「マイ、言ったよな。お前には一発も当てさせないって」

 

「え…?」

 

 

 

手応えのない2つの弾ける音。

二つの雪玉はマイに当たることは無く、突然壁を飛び越えてマイの前にやってきた男によって遮られる。

 

「んな…!お前、なんで…!」

 

目の前の男は、その象徴である赤い帽子を被り直してこちらを見据える。

たまに見せる、片方の口角を釣り上げた意地の悪い笑みを浮かべながら。

 

 

「お前、さっき倒したはずだろ…?なんでぴんぴんしてんだよ?サンタ!」

 

 

 

俺が王と間違い、大勢で囲んで倒したはずの男。

サンタクロースが、そこにいた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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