動揺するリィナに僕が軽く説明する。
「実はね…」
「で、結局言い出せずに、ずるずるとここまで黙ってたってわけね」
説明をしている途中から、なぜか僕たち3人は正座をして彼女に説教をされているような構図が出来上がった。
「はい」
「ばれてないからって調子こいてすいませんでした」
「なんで俺まで…」
対戦相手だということを黙ってたことを怒られて今に至る。
おっさんに至っては完全にとばっちりのような気がするが、最後まで黙ってたのでこの人も同罪だ。
「でも、一応言い訳するけど、騙すつもりはなかったんだよ。最初は対戦相手だって、知らなかったんだ」
「言い訳はいい」
「すんません」
「はあ…まあいいよ。それじゃあ、後でまた会いましょう」
呆れたようにため息をついて、それだけ言うと、特に怒ることもなくこちらに背を向けて歩いていった。
姿が見えなくなったあたりで正座をといて立ち上がる。
「ああ、まさか公衆の面前で正座とは」
「足がしびれてうまく立てねえ」
「ったく、お前らのせいで俺まで怒られちまったじゃねえか」
道行く人に見られながら、僕たちは体制を立て直す。
「まあ、おっさん。とりあえずごめん。んで、ここからはちょっと真面目な話だ」
「…なんだ?」
帽子を脱いで真剣な顔で言うとおっさんの顔も神妙になる。
ここからはちょっとだけ真面目な話。
「今は準決勝だが、これに勝ったら決勝戦だよな」
「そうだな」
「それで、ラストが言ってたんだが、決勝では大会特有のルールがあるらしいじゃないか」
「途中棄権禁止のことか」
おっさんもこの変わったルールのことは知っていた。
すぐにそれが出てくるあたり、他に危なそうなルールはなさそうだ。
「ああ、そうだ。それで質問なんだけど、大会に残ってる僕とリィナ以外の後二人のうち、ヤバいやつはいるか?」
この質問の返答次第では、僕の次の試合の勝敗が決まる。
「…いるな。帽子の兄ちゃんならともかく、そいつと当たったら嬢ちゃんじゃ優勝はできないかもな」
僕の質問の意味を悟ってか、おっさんはリィナが優勝できないということを教えてくれた。
「そうか…」
「あの子が心配か?」
おっさんが尋ねる。
ラストはただ腕を組んで黙っている。
「まあね」
「一応、嬢ちゃんでも勝つ確率はある。でも、それは決勝戦の相手がどっちになるかにかかってる」
「片方はめちゃくちゃ強いのか?」
「前回の優勝者だ。冒険者としての腕はないが、対人に至ってはとんでもねえプロだ。反面、戦い方はめちゃくちゃでな。やりあったやつはほとんど体のどこかに消えない傷を残す。そいつの相手はベテランだが万年いいとこどまりだから、きっとそいつが決勝に出ると見て間違いはないだろうな」
「…」
この大会、僕が負けたら優勝は間違いなくそいつのものになるだろうな。
そしてリィナは大会のルールで死ぬか戦闘不能を悟るまで痛めつけられる。
しかしその反面、僕が勝ったら、彼女は夢をあきらめなければならない。
『…いいね。その夢。絶対に叶えようぜ』
あんなに寂しい笑顔を見せたやつの夢を、応援した僕が潰さなければいけないなんて、それほどまでに酷なことがあるだろうか。
「うーん、どうしたものか…」
考え込むこと数分。
悩む僕に、ラストが口を開く。
「なあ、サンタ。お前何を悩んでるんだ?」
「この試合、勝つべきか負けるべきか」
「んなもん、勝つしかねえだろ」
ラストが躊躇なくそういうものだから、僕も自分がなんでここまで悩んでるのか、不思議に思える。
「いやでも、僕が勝ったらリィナの夢が…」
「…お前、すげー良いやつだな」
僕の肩に手を置いて、ラストが諭すように呟く。
「あの子も、最初のお前と同じで、今は一人なのかね…」
一人、か。
そういえば僕も一か月くらい前までは、一人でスライム殺戮マシーンとして生きてたんだっけ。
んでマイにあって、それからラストとマイの店に拾ってもらって、家族になって…
「…ん?…そうか」
「どうした?」
ラストが僕の声に気づいて、こちらを見る。
「ラスト、すげえいい方法を思いついたんだ」
「ほう。それで?お前はどうするんだ?」
ラストにニヤリと笑って返す。
そしておっさんの方を見て、威勢よく声を上げる。
「おっさん。今日の賭けの時間だ」
リィナ。その夢、絶対に叶えようぜ。
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