ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第78話:クリスマスパーティ、開幕

建物を飛び越えて我が家へ数十秒で向かうと、閉店の看板をぶら下げた店の姿が視界に映る。

その横でぴょんぴょんとステップを踏むルドルフと、そばでのどを鳴らして動かないコメットは、僕を見つけると各々のスピードで僕へと歩み寄ってきた。

 

「おー、留守番ご苦労だったな。さあ、そろそろ時間だから、お前らも行くぞ」

「ギエエエアアア!」

「ちょっと待ってろよ」

 

二匹を待たせて店の中のリビングへと向かう。

まっすぐキッチンへいき、冷蔵庫の扉を開ける。

我が家の大きな冷蔵庫の中には、冷蔵庫の役割を果たすための氷の魔法を込めた道具が隅にあり、真ん中には大きなケーキが鎮座して僕を待っていた。

 

「相変わらずすごい出来だ」

 

そのすごい出来のケーキはさすがに袋に入れることはできないので、両手で抱えて慎重に階段を下る。

 

「お待たせ、それじゃあ行こうか」

 

近くに置きっぱなしのそりの後ろの席に丁寧に乗せて、前の席に飛び乗る。

ルドルフはそりを引くと、そりは宙を舞う。

 

「コメットは…乗せられないから、歩いて来れるか?」

「ギアアアアアアア!」

 

コメットはいつものように不気味な鳴き声で答えると、普段ののろさからは考えられないスピードで路地を駆けていった。

 

「おい、まだ道教えてないんだけど…まあいいや。ルドルフ、頼んだぞ!」

 

空はすでに星がきらめき、街の明かりがつき始める中、ケーキを見ながらゆっくりと孤児院へと向かった。

 

 

 

 

 

「ようこそいらっしゃいませ」

「え?えっと」

 

チビたちと帰ってきた姉ちゃんは俺のウェイター姿に戸惑っているようだ。

どうだ、決まってるだろ?

 

入ってきた客の中にあの赤い帽子は見つからない。

やっぱサンタは一緒じゃないか。

今頃ケーキを運んでるだろうな。

 

「お客様方、本日の招待状をご提示ください」

「招待状?なにそれー?」

 

うん?

まさかサンタのやつ、入れるの忘れてきたか?

流石にそれは冗談きついぞ…?

 

「招待状?…あら、これは…?」

 

姉ちゃんがポケットから手作り感満載の紙束を取り出す。

良かった。あったみたいだ。

サンタの野郎、気づかないように忍ばせるなんて、粋な計らいしやがるぜ。

 

「はい、確認しました。それでは中へどうぞ」

「私の家なのに…」

 

そんな顔するなよ。サプライズなんだからよ。

とりあえず適当にお辞儀をして、奥の食堂に逃げ出す。

食堂ではマイとリィナが二人固まって最終確認をしていた。

 

「おい、マイ。準備はいいか?」

「やっと来ましたか?こっちはいつでも大丈夫ですよっ!」

「よし、後はリィナ。頼んだぜ!」

「が、頑張るから!」

 

 

 

「わー、すごーい!」

「きれいな飾り!」

「この料理、おいしそうだね!」

 

ぞろぞろとチビたちが来て席に座りだす。

目の前の料理とあたりの飾りに興奮しているようだ。

みんなが座ったあたりで、リィナが声を張り上げた。

 

「え、っと!本日はお集まりいただき、ありがとうございます!今日は日ごろの感謝をこめて、クリスマスパーティを開催することにしました!心ゆくまで、楽しんでください!」

 

日頃の感謝って。それ俺とマイのセリフだっての。

よくわからないテンションで、チビたちからは拍手喝采が起こる。

 

「まずは目の前の料理をお楽しみください!両手を合わせて…いただきます!」

「いただきます!」

 

そこはメリークリスマスだろ。

意味は分からないけどな。

 

「ラスト。行きましょうっ」

「おう、そうだな」

 

リィナの進行が終わり、みんながみんなにぎやかな雰囲気で料理を口にする。

その騒ぎに紛れて、マイとともに中庭へと向かった。

 

もう中庭にいるはずの、あの赤い帽子を探しに。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
パーティ開幕ということで、そろそろ大詰めです。
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