ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第79話:それぞれの視点

中庭に出ると、もうそんな季節ではないのに、次の季節の訪れを否定するかのように雪が優しく降り、所々に積もっている。

その中心で、小さなトナカイと一緒に、赤い帽子のあいつが一人立っていた。

 

「よお、待ちくたびれたよ。それと、待たせたね」

「おう、待たせたな。俺も、待ちくたびれたぜ?」

 

こいつはこんな感じの、面白い言い回しができるから、俺は結構気に入っている。

まあ、ただ俺と価値観が似てるだけっていうのもあるけど、今まで年の近い友達がいなかったからかもしれないな。

 

「今どうなってるんだ?いい感じか?」

「ああ、俺のフルコースを堪能してるだろうよ。後はリィナもいることだしな」

「へえ、よかったよ。サンキューな」

「いいってことよ。後は、ここの準備を済ませるだけだな」

「そうだね。それじゃあ、始めようか」

 

そういうとこいつはしゃがみこんで、いつものように雪に手をあてる。

いつものように雪に光が宿り消えると、今回は俺より背の高い大きな雪だるまが3体湧き上がってきた。

 

「いろいろテーブルとか基本的なものはラストたちが昼間にやってくれてたみたいだから、お前らはケーキの配置とか、ラストの指示に従って動いてくれ」

 

雪だるまたちは頷いて俺のもとへ集う。

あいつはその場で座り込んで疲れた表情を浮かべている。

 

「僕は少しだけ、休んだらマイとツリーの飾りつけをするよ」

 

でかいの3体も出したら、やっぱ疲れるのな。

 

「おう、任せとけ!」

 

姉ちゃん、驚くかな。

足元に転がっていたチビたちが片付け忘れたボールを、思いっきり蹴って、ケーキのもとへ駆け出す。

 

「始めるか!」

 

 

 

 

 

 

「うわあ、おいしい!」

 

流石はラスト。

これなら王国都市部でお店を開いたって歓迎されるほどの腕前だろう。

目の前のごちそうを口に運ぶ手の動きが止まらない。

 

「ねー、お姉ちゃん」

「へ?あ!どうしたの?」

 

隣の女の子が突然話しかけてきた。

 

「これ食べたら次は何をするの?」

「んー、みんなで遊ぼうと思ってるよ」

「やった!また遊べるんだね!」

 

そういうと嬉しそうな表情でまた食べ始める女の子。

危ない…食べるのに夢中で何をしているのか忘れるところだったよ。

ラスト。この料理、おいしすぎるよ!

 

 

それにしても、私だけ一人で食べててよかったのかな。

中庭の方に子どもがいかないように、見張っておいてっていわれたけど。

 

「私もここで食べようかしらね~」

「あ、ユウリッドさん。どうかしましたか?」

「あら、お邪魔だった?」

「あ、そんなことは…」

 

やっぱり慣れないなあ。

隣に腰かけたユウリッドさんは私の苦手な人でもある。

だって、この前すごく気まずかったから。

 

「いつもあの子たちと一緒にいる、あなたと、少しお話がしたかったのよ。なんとなく、ね?」

「そ、そうですか…」

 

優しく笑うユウリッドさんはお母さんみたいな雰囲気がただよう。

あの子たち、か。子を想う親の気持ちなのかな。

 

「あの子たち、ちゃんとうまくやってるの?」

「はい。マイは仕事だけじゃなくて料理もできるし、ラストの作る薬はとても人気で、毎日売り切れるくらいなんですよ!」

「そう。しっかりやれてるのね。よかった」

「それにサンタも、私たちにできないことはやってくれるし、困ったときは助けてくれますから。今はみんなで、楽しく暮らせてます!」

 

サンタ、今は向こうで準備してるのかなあ。

 

「…サンタ君ね」

「?サンタがどうかしました?」

 

その名を聞いたユウリッドさんの雰囲気が少し変わったような気がした。

 

「少し聞きたいのだけど、もしサンタ君があなたたちと一緒に暮らさなくなったとしても、あなたたちは今まで通り、楽しく暮らせるかしら」

「え、サンタが…それってどういう…」

 

優しい笑顔で、ユウリッドさんは付け加える。

 

「ふふっ。例えばの話よ。サンタ君がどこか別の場所で暮らすことになって、あなたたち3人になっても、3人で幸せに暮らせると思う?」

 

例えばかあ。びっくりしたあ。

ユウリッドさん、なんでそんなこと聞くんだろう。

でも。

 

 

 

サンタがいなくなったら、か。

 

 

 

「う〜ん。3人でも、材料は私が取りに行けるし、店の方は問題なく回るかもしれないですね。ラストもマイと一緒に店番してる時も楽しいから、楽しくは暮らせそうです。でも」

「でも?」

「今まで隣にいたサンタの分のご飯が食卓から一人分減るのも、毎日のおはようとおやすみの回数が減っちゃうのも悲しいですね。後、私たちは家族ですから。家族がいなくなるのは、なんとなく嫌かなー、なんて思ったりしちゃいます」

 

私たちもまだ若いし、いつかサンタが言ったみたいに誰かが結婚とか、他のことで家を出て、いつかはいなくなっちゃうかもしれないけど、やっぱりみんなでいたいよ。

 

「…そう。ごめんなさいね。こんな話、例えばでもするものじゃないわよね」

 

しまった、顔に出ていたみたいだ。

うまく取り繕って、話題をかえる。

 

「いえ、全然大丈夫ですよ!そういえばサンタはどこ行ったのかなー?」

「ふふ、忘れ物を取りに行っているそうよ」

「あー、なるほど!」

「…仲、いいのね」

 

微笑むユウリッドさん。

でもその笑顔はいつもより、少しだけ何かを思うような、影のあるように感じた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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