ようこそ、ファンタジー世界へ。   作:zienN

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第83話:メリークリスマス:ラスト

「うわあ、きれー!」

「おっきな木!」

「すっげー!うまそうなケーキ!」

 

中庭へやってきたちび共は先ほどまでの遊びが楽しかったのか、普段はもう寝る時間なのにずいぶんと興奮しているようだ。

サンタの姿はない。

まあ、どっかでスタンバってるんだろうな。

さて、頃合いを見計らって、始めるとするか。

 

「ラスト、サンタさんはどこいったんですか?」

「ん?よくわかんねえけど、どっかに隠れてるんじゃね?」

「サンタなら、あそこにいるよ」

 

リィナが夜空の方をさしながらこっちに来る。

 

「ん?屋上にいるのか?」

「うん、出番になったら呼ぶようにって」

「なるほどな!あいつもわかってるじゃねえか!」

 

屋上からの登場か。

あいつ、何か準備でもしてるのか?

となると、少し時間を稼いだ方が良いだろうか?

もうちょっと待って…げ、姉ちゃん!

 

「あらあら。ずいぶんとまあ、好き勝手にやってくれたみたいね」

「ね、姉ちゃん!ごめん!終わったらちゃんと片付けるから!」

「ごめんなさい!今日だけですからっ!」

 

中庭にはなかったでっかい木に、積もった雪。

流石に中庭をここまでいじるのはまずかったか…?

 

 

 

「…ふふ、そんなに謝らなくてもいいわ。まあ、お代はサンタ君から貰ってるから、それでよしとしようかしらね」

 

思いっきり怒られるかと思ったが、姉ちゃんは俺たちを怒ることはなかった。

何もいうことなく木の下のちび共のもとへと向かっていった姉ちゃんの姿に、俺とマイはほっと息を吐く。

 

「死ぬかと思ったぜ」

「大げさでしょ」

「そんなことないですよ…!」

 

リィナ、怒った姉ちゃんは本当に怖いんだ。

前に店に来た時、お前はサンタと逃げたから知らねえだろうが、まじでこえーんだぞ。

 

「ラスト、姉さんの気が変わらないうちに、早く始めましょう」

「お、おお、そうだな!」

 

サンタ、もう始めるからな。

期待してるぜ?

 

 

 

 

「おーい、注目―!」

 

手を叩いてこちらに関心を向け、騒いでいたやつらもようやく静かになる。

 

「今から今日の最後のメインイベントを始めるぞ!」

「えー、最後!?」

「いやだ、もっと遊びたいー!」

 

残念そうな声が上がるが、構わずに続ける。

 

「最後はこのパーティの主役、サンタクロースから、お前らへプレゼントがあるらしい!それじゃあご登場願いましょう!サンター!」

 

上の方で待機しているらしいサンタに向けて、声を張り上げる。

 

 

 

しかし一向に、サンタが降りてくる気配はない。

 

「…あれ?おーい、サンタ、出番だぞー!」

 

呼びかけても、なんの反応もなく、むなしく声がこだまする。

 

「リィナ。サンタさん、上にいるんですよね?」

「うん、呼んでくれって言ってたはずだけど…」

 

次第に周りもざわつき始める。

 

くそ、全然降りてこねえじゃねえか!

まさか、寝てんのか?

 

「おーい、サンタ!出て来いよ!おいってば!」

 

出せる限りの声で叫ぶ。

そしてやっと、俺の呼びかけに応えるように小さな鈴の音が鳴り響いた。

 

少し遅れて視界に映った、なんの塗装もないそりを引くトナカイと、赤い帽子をかぶった今日の主役。

 

 

 

「ホッホーウ!メリークリスマス!」

「あ!来ましたっ!」

 

そりに乗ったサンタはその後ろに同じような雪の帽子をかぶる雪だるまをのせて円を描くようにゆっくりと降りてきた。

後ろの雪だるまのもつ袋から光があふれて、そりの軌跡をなぞるように光が降り注ぐ。

出来上がった光の螺旋階段が、木の周りを囲む。

 

「ったく、粋なことしやがるぜ…」

 

 

「わー!すげー!今のどうやったの?」

「空飛んでた!僕も乗りたい!」

 

 

時間をかけてようやく着地したサンタのもとには、ちび共が群がる。

 

「おー、割とうけてるみたいだな。よかったぜ」

「ノー!」

 

今日の主役はのんきにそう言う。

アドリブにしては中々の演出だったぜ、サンタ。

 

「まあみんな、落ち着いてくれ。それじゃあ今から、良い子の君たちに、サンタクロースからプレゼントだ」

「わーい!」

 

そしてサンタは一人一人にかわいく包装されたプレゼントを配る。

中身はマイの手作りの小物らしいから、まず喜ばないやつはいないだろう。

プレゼントも配り終わり、最後にケーキを切ったら、すべての演目が終了する。

 

「それじゃあ、僕からのプレゼントはおしまい。みんな、サンキューな!」

 

サンタのその宣言で、俺たちが用意したすべての演目が終了した。

さて、後はケーキを切るだけ…

 

「よーし、ケーキ、切るぞー!」

 

 

 

 

 

 

 

「でも、ケーキを食うその前に、最後に僕たちから、今日という日の思い出を、プレゼントだ!」

 

りんりん。

鈴の音が響き渡り、上から何かが降ってきた。

何だ、あれは…?

 

「…雪?」

 

大粒の雪かと思ったが、一つ一つが光っていて、動いているようにも見える。

 

「あれは、なんだ?」

 

目を凝らして見つめていると、隣にいたマイがつぶやく。

 

「もしかして、小さな…ユキちゃん?」

 

そのつぶやきで気づく。

よく目を凝らさないとわからないくらいの小さな雪だるまが、体中に光をまとって、ふわふわと降りてきていた。

 

サンタはそれに気づいた俺たちを見渡せる正面のところまで歩いてくると、一つ咳ばらいをする。

 

「冬の夜に舞い降りた小さな音楽隊。彼らとともに、一曲、ご用意してまいりました」

 

そして俺らの方にお辞儀をして、両手を上げる。

 

「それでは後の時間もお楽しみください。クリスマスソングメドレー、立体音響バージョン」

 

サンタの指揮が始まると、ところどころから、小さな歌声が聞こえてくる。

小さい音だったが、それぞれが集まると、中庭全体に届くくらいの大合唱になる。

 

楽器はサンタの隣にいるルドルフがたまに鳴らす鈴の音だけのはずなのに、何故かどこからか楽器の音も聞こえてくる。

 

上からも下からも、まるで頭の中に直接流れ込んでくるように、至るところから演奏と歌声が耳へ流れ込んでくる。

 

数分間、曲が終わるまで誰も音を発することなく、まばらに落ちた小さな音楽隊のすべてが着地するとともに、それは終わりを告げた。

 

 

「ご清聴、ありがとう。それじゃあ最後まで、楽しんでください!」

「のう!」

 

小さな雪だるまたちは俺たちの足元を駆け巡って、真ん中にそびえる大きな木を登り始めた。

それから木の枝を踊るように動き回りながら、明るい雰囲気の演奏を始める。

 

「どうだった?イルミネーションが作れなかったから、雪だるまに光ってもらうことにしたんだ」

 

拍手を浴びながら俺たちのいる方へ歩いてきたそいつは、帽子の中をかきながらこちらに歩いてくる。

 

「サンタさん!素晴らしい指揮でした!そんなこともできたんですねっ!」

「楽器もないのに、なんかオーケストラみたいだったよ!」

「まあ、ちょっと昔にやったことがあって。後、楽器はあいつら持ってるよ?」

 

そう言って帽子の中に手を突っ込むサンタ。

 

「え?あ、ほんとだ!」

 

帽子の中に紛れていたらしい雪だるまをつまんで手に乗せてこちらに向けてくる。

それは自分で作ったのだろう、雪でできた小さな楽器を持っていた。

 

「さあ、後はケーキを食っていっぱい遊ぼうぜ!マイ、ケーキ切ってやってくれ」

「任せてくださいっ!」

「私も!」

 

マイとリィナがケーキを切りに向かう。

残された俺とサンタ。

ケーキに集まるちび共を横目に、サンタが口を開く。

 

「いやー、ラスト。さっきのは必死に呼びすぎだって」

「はあ?お前が何回呼んでも降りてこないから、こっちは結構焦ったんだぞ?」

「え?そんな呼んでたの?ごめん、一回しか聞こえなかった」

「お前なあ…っぷ!はっはっは!」

「ごめんごめん、ふっ、ははは!」

 

何がおかしいのか、どちらともなく、互いに笑い出す。

それが収まってから、手を前に出す。

 

「サンタ、ありがとな。あいつらも、喜んでると思う」

「おう」

 

前に出した俺の手を叩いて、ぱん、と音を立てる。

 

「ケーキ、もらいに行こうか」

「そうだな。俺の最高傑作、とくと味わってくれよな」

 

輝く雪と木の上で始まった光のパレードは、まだまだパーティが終わるのを許さないかのように俺たちを賑わせ続けた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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