Fate/DARK Order   作:えんま

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長らく投稿せず申し訳ありません。
また同時に第六章の続きではないものの投稿であることも深く謝罪させていただきます。

あまりにもモチベーションが出ず、モチベーションを上げるために書いていた第七章の決戦が書き上がり、悩んだ末に先に投稿させていただきます。

多くのご不満あるかとは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。

※まだダクソ3のDLCができていないので、その設定は反映されておりません。


第七章
第七章:絶対魔獣戦線メソポタミアI


「…ふむ、二柱の女神による真体の足止め、

薪の王と彼が召喚した霊体達による迎撃、

ウルクを餌にした冥界の落とし穴、

"天の鎖"による拘束、冥界の刑罰、

そして私の綺麗なだけの花」

 

マーリンは、どこか自慢げに言葉を進める。

あるいは期待感に駆られて。

 

「■■君、そして英霊達よ。ここに至るまで、実に多くの手を尽くしてきた。

 

だが、まだ足りない(・・ ・・・・・・)

 

その絶望的とも思える言葉を、しかしマーリンは笑顔で告げる。

まるでそんな絶望はないかのように。

希望がまだ残っているかのように。

 

「あれはまだ恐怖を知らない。天敵を知らない

彼ら(・・)という死を(・・)終焉を知らない(・・・・・・・)

 

一層マーリンの微笑みが深まる。

その言葉に、様子にたまらずマシュが口を挟む。

 

「彼ら……?他にまだ助っ人さんがいるのですか?」

 

「ああ、いるとも!とっておきの凄いのがね」

 

マシュの問いにマーリンは一も二もなく答えを返した。

そしてマーリンは彼女、人類最後のマスターを見つめる。

とても眩しいものを見るように、まるで自分の大好きな物語のヒーローを前にした子供のように。

 

「ではまず、()はいったい誰に呼ばれたか?ギルガメッシュ王でもない。魔術王の聖杯にでもない。

……言うまでもない。キミだ、■■君」

 

その言葉に、彼女は首をかしげる。

彼女にはこの特異点において英霊召喚を行った記憶がなかったためである。

その様子にまた一つ微笑みを深くすると、マーリンは言葉を続けた。

 

「彼はキミに礼を返すためにその冠位を捨てると言った。そして敵は人類悪、ビースト。

初めから、彼がこの地に現れる条件は整っていたんだよ」

 

「まさか」

 

マーリンの言葉にロマンがいち早く反応した。いつも動揺やら何やらで揺れている声が、今回はことさら驚愕に濡れていた。

 

『以前、この冥界で■■ちゃんの生命反応が消えていたのはもしかして……!』

 

「その通り!」

 

ロマンの言葉を引き継いだマーリンが、声を張り上げながらティアマトに、ビーストⅡに向き直った。

 

「さあ天を見上げるがいい原初の海よ。

そこに、貴様の死神が立っているぞ」

 

彼女や、マシュ、マーリンたち、そしてビーストⅡもが仰ぎ見るはるか上方。

ウルクに穿たれた大穴のふちに、その男は居た。

 

「死なくして命はなく、死あってこそ生きるに能う。そなたの言う永劫とは歩みではなく眠りそのもの。

災害の獣、人類より生じた悪よ。回帰を望んだその慈愛こそ、汝を排斥した根底なり」

 

「あれは…!」

 

かつてウルク市にて、あるいはかつて冥界に落ちた際に巡り合った老翁。

だが、ことここに至れば、彼女にも彼が何者であるのかは察することができた。

 

「冠位など我には不要なれど、今この一刀に最強の証を宿さん」

 

姿が老翁から移り変わる。

鎧を纏った、髑髏の面の大柄な戦士の姿へと。

 

「獣に堕ちた神と言えど、原初の母であれば名乗らねばなるまい」

 

おおよそ暗殺者の姿とは思えぬその男こそ、第六の特異点にて縁を紡いだ、尋常ならざる暗殺者。

偉大なるファラオをして畏敬せずにはいられず、魔術を使わず嵐を呼び、聖槍の女神よりギフトを授かった太陽の騎士を剣技で圧倒して見せたその男こそー

 

「幽谷の淵より暗き死を馳走しに参った。

 

山の翁ハサン・サッバーハである」

 

う、うおおおおお、と彼女は思わず叫んでいた。

あまりにもかっこよすぎる、頼もしすぎるその援軍に、リンカーとギルガメッシュを失ったことで沈んでいた彼女の胸に熱が灯る。

そして、飛翔しようとしたビーストⅡの翼が、一刀にて両断される。

そしてロマンより告げられるのは、ビーストⅡ、ティアマト神に死の概念が付加され、その霊基が通常のサーヴァントと同様のものになったという事実。

その山の翁のあまりの規格外さに一同が絶句する中で、しかし、死の恐怖を知ったビーストⅡは我武者羅に冥界より逃げ出そうと駆け出した。

 

「わ、わ、わ、まずいよ!一歩一歩の大きさが違いすぎる!!このままじゃ逃げられちゃう!!」

 

慌てて追おうとする彼女の肩を、そっとマーリンが掴んだ。

 

「ま、マーリン?」

 

焦る彼女が振り返れば、そこには未だ、山の翁の到来を語っていた時のままの微笑みを浮かべたマーリンがいた。

少し遠くを見れば、山の翁もまた、剣を地に突き立て、逃げるビーストⅡの姿を眺めていた。

そういえば、と彼女は思い返す。

 

マーリンは、彼ら(・・)と言っていなかったか?

 

「そう」

 

マーリンが、彼女の思考に答えるように相槌を打った。

 

()は呼ばれたんじゃあない。ではどうやって現れたのか?

それは、一つでも何かが違えばありえなかったことが起きたのさ」

 

マーリンは静かに告げる。

その間も、ティアマトは冥界の壁に向かっている。

しかし、不思議と彼女から焦燥は消えていた。

それはマーリンの落ち着きによるものなのか、それとも別のものなのか。

 

「もしギルガメッシュ王が不死の霊薬を探す旅に出なければ

もしそこで、不必要に深淵をより降り、とある遺灰を受け取らなければ

もし彼が、彼の民が最後まで滅びと抗い続けると決意しなければ」

 

ふと、彼女はビーストⅡの向かう冥界の壁の、その上を見た。

 

「もしキミが最初のカルデアの爆破テロで死んでしまっていたら

もしキミが人理救済の旅路に進まなければ

もしキミがロンドンで、目前に迫った死に諦めていたら

もしキミがその結果、かの薪の王を召喚していなかったら」

 

その冥界の壁の向こうが、わずかに明るい。

まるで、頭を地平から覗かせた朝日に照らされるように。

 

 

「もし、ギルガメッシュ王が彼に、彼の遺灰を渡さなければ」

 

 

突如、ロマンが叫んだ。

 

『な、なんだ!?冥界に続く大穴の淵、その一点が突如として神代回帰!!この数値はジュラ紀すら通り越して……いや、待て待て待て!!

これは本当に地球(この星)の反応か!?』

 

「■■君」

 

ロマンの狼狽をよそに、マーリンは彼女に呼びかけた。

 

「うん」

 

彼女は振り返らず、その一点を見つめ続けた。

 

 

「君たちの、キミと、マシュと、カルデアと、そしてこれまで共に戦った全ての英霊と、そしてギルガメッシュ王とウルクの民の、その戦いは、全てに意味があったのさ」

 

 

「うん……っ」

 

 

そして、空が、霧で覆われた。

ビーストⅡ、ティアマト神が、怯えるように、後ずさりした。

 

「な、何が起こっているのだわ!?」

 

その言葉に答えるように、冥界に声が響いた。

 

ーかつて、火の時代において、時は覚束無く、過去と未来が交わり、現在(いま)が現在と現在に枝分かれし、そしてその現在と現在が交わることが多くあった

 

「この……声は……」

 

マシュが震えた声で呟く。

 

ーしかし、時代の転換点において、必ずその戦場は霧に覆われ、時は確固たるものとして収束し、そして戦いからの逃亡を妨げた

 

「さあ、ご登場だ」

 

マーリンが、声を弾ませる。

 

ー今、この戦い、間違いなくこの世の行く末を左右しよう……故に、逃げ道は塞がせてもらった、原初の母よ

 

「AA、AAAaaaaaaaa!!!!」

 

自我の薄いはずのビーストⅡが、誰が聞いても恐怖に震えているとわかる、そんな慟哭を上げた。

 

そしてその視線の先で、大火が燃え上がり霧に覆われた天を衝く。

昏いはずの冥界が赤々と照らされる。

まるで地に太陽が落ちたかのように。

その大火より、人影が現れた。

焼け焦げ、煤け、傷つき、歪んだ騎士甲冑を身にまとい、その手には螺旋状の剣を握っていた。

 

「彼の生きた時代は、第三魔法が魔術の基本。彼らは(ソウル)を通貨代わりにすらしたという。

さて、そんな時代に生き、ソウルの深奥を窮めた彼の分霊たる存在に、彼の遺体()を与えたらどうなるか、わかるだろう?」

 

呆然と、彼女はその姿を見つめていた。

マーリンの言葉は耳に届いているのかいないのか、彼女はマーリンの言葉に反応を返さなかった。

それでも彼は言葉を続ける。

とある王の話をするために。

 

「ロマン、君はさっき彼の霊基反応がこの星のモノか、と言ったね。

答えはノーだ。当然だろう?だって、彼の偉業を以って地球(この星)は始まるんだ。

肉体を獲得した彼の、その霊基反応が地球のものであるはずがない。彼は地球の人類史の英雄じゃあないんだからね!」

 

そして、とマーリンは続けた。

 

地球の人類(我々)から見れば、彼と言う英雄はこの星の開拓者だろう。あるいは創造主に近い神霊かな?…では、彼の生きた時代、すなはち火の時代にとっての彼を、我々の概念に当てはめれば、どうか」

 

再び、リンカーの声が響いた。

老いたような風韻の、しかし若々しい声音が冥界に木霊する。

 

ー山の翁も名乗ったのだ……私も名乗らなければならないだろう

 ティアマト神、原初の母、回帰の獣よ

 

 

ー私こそ薪の王、火の時代を終わらせた者、あるいは《終焉》の理を司る獣、『王たちの化身』である

 

 

 




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