Fate/DARK Order   作:えんま

5 / 16
もしステータスで筋技99が、リアルに反映されたら、っていうのを書きたくて。
プレイヤーによる操作っていう多分主人公にとっては一番の縛りがないと、いわゆるカンストってこんな感じかなーって。

なんかランキング入りしておりました。
拙作を評価していただいた方、お気に入り登録していただいた方、本当にありがとうございます。

書きたい話を書くつもりなので、ところどころダイジェストっぽいですが許してください。
全部書いてたら心が折れてしまうんです。


誤字報告機能でしたっけ、それで「たとい」という言葉を誤字として報告していただきました。
誤字報告自体は非常にありがたいのですが、「たとい」は一応誤字ではありません。
「たとい」は仮令・縦・縦令と漢文とかでは書くと思うのですが、順接仮定、逆接仮定を表す副詞です。
辞書にも載ってます。
ご指摘いただいた通り、確かに普通は「例え」などを使うのでしょうが、自分がちょっと硬くてかっこいい文章を書こうと思って使っております。
ですのであれ?と思う方も、スルーしていただければと。
紛らわしい表現を使い申し訳ありません。
誤字脱字の報告は非常にありがたいです。今後もよろしくお願いします。


第五特異点:太陽の子

第五特異点独立戦争真っ只中の北米であった。

いや、真っ只中の北米であるはずだった。

レイシフトを行ったカルデア一行を待っていたのは間違っても歴史の教科書には書かれてないような惨状であったのだ。

なぜかいるケルト。

なぜかいるどこかで見たようなフォルムの機械化歩兵。

まかり間違ってもイギリス対アメリカ(正確には後にアメリカ合衆国となる植民地群)の戦争ではなかった。

カルデア一行は野営地にてバーサーカーのサーヴァント、ナイチンゲールに出会い、その後特異点修正のために野営地を離れようとした時だった。

サーヴァント、キャスター・ブラヴァツキーと遭遇し、行く手を阻まれることとなった。

そして

 

「じゃ、カルナ!ちゃっちゃとやっちゃってー!」

 

プラヴァツキーの言葉に反応したのは呼ばれた本人であるカルナだけではなかった。

生前、ありとあらゆる方法で奇襲、待ち伏せ、罠に嵌められたリンカーにとって、いついかなる時も警戒を怠らないことは必然であった。

彼女のすぐ後ろより霊体化を解き現れ、彼女の前に立ち螺旋の剣を抜き放った。

 

「この霊器数値、トップクラスのサーヴァントだ!」

 

ロマンの言葉とともに、上空にサーヴァントが現れる。

そのサーヴァントは既に、宝具を放つ準備を終えていた。

 

「『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』!」

 

その宝具に対し、マシュが彼女の前で盾を構え、彼はその螺旋の剣を振るった。

彼の身に貯蔵されたソウルを薪に炎が噴き出し、斬撃となって衝突した。

凄まじい轟音とともに破壊的な衝撃が周辺に撒き散らされる。

 

「む……防がれたか」

 

突如として現れたサーヴァント、カルナと呼ばれた彼は一つ、そう呟いた。

 

「先輩、ご無事ですか!?」

 

マシュはすぐさま彼女の安否を確認する。

あまりの衝撃に意識は失っているものの、目立った外傷はないことを確認すると、彼女はホッと安堵のため息をついた。

 

「急患ですね、見せなさい。脳震盪は処置を誤れば取り返しのつかないことになります。私がいる限り、そんなことは絶対にさせません」

 

すぐさまナイチンゲールが彼女へ看護を始める。

そしてその背後では…

 

「…ぬんっ」

 

激しい衝突音とともに、螺旋の剣、火継ぎの剣とカルナの大槍とがぶつかり合う。

カルナは魔力放出(炎)により、その一撃一撃に焔が宿り、同じようにリンカーもまたその得物に炎を宿らせそれを振るう。

一合一合武器と武器が触れ合うたびに、周囲に火の粉が飛び散る。

リーチに勝る大槍の、その神速の突きをその剣でもって逸らしながら、己の間合いにカルナを捉えようと果敢に前進する。

壁のような突きの嵐にもかかわらず、リンカーは確かな一歩を刻み行く。

カルナもまた、そんな彼を懐に入れまいと大槍を振るう。

その穂先は致命的な傷は与えずとも、リンカーの鎧に確実に傷をつけていた。

カルナの渾身の突きが、盾のように構えられた火継ぎの剣と衝突し、互いの距離が離れる。

 

ーマハーヴァーラタに名高き施しの英雄、カルナか

 

「そうだ…そう言うお前は、その身より奔る原初に近き火、その螺旋の剣、火の時代最後の英雄か」

 

ー然り

 

ふと、2人は言葉を交わした。

それはいわば確認作業であり、それぞれが互いの胸に抱く感情をより明確にする行いだった。

リンカーはある男を思い出していた。

太陽の長子、名を剥奪された戦神、古竜の同盟者、無名の王。

あの偉大なる存在もまた、目の前の施しの英雄と同じく太陽の子であった。

その威容は、今思い出しても身震いしてしまうほどのものだった。

そしてこの男もまた、数合武器を打ち合わせればわかる。その武威はかの戦神に勝らずとも劣らない超常のものだ。

彼は目の前の男に、まさしく畏敬の念を覚えていた。

 

同時にカルナもまた、自身が望外の幸運に見舞われたことを悟り、静かに天に座す自身の父に感謝を捧げた。

火の時代における最大の不死の英雄。数多の神々、怪物を屠った埒外の猛者。

座において聞き知った知識では、彼はその身の業を窮めきっているという。

事実、たった今、数度武器を合わせただけでその積み上げられた武が己に匹敵するか、あるいは、というほどのものであるとカルナは認識した。

サーヴァントとしてマスターに仕えること、それのみに注力すると決めた身ではあるものの、目の前の強者と矛を交えることができることに彼は最上の喜びを感じていた。

 

両者は睨み合う。

ことここに至って、2人が互い以外の周りの有象無象に意識を割くことは困難であった。

 

「かような地でお前ほどの男と(まみ)えるとは、俺の幸運も捨てたものではないらしい」

 

ー貴公ほどの戦士と相対せねばならんというのは、私たちにとってはまさしく不運だろう

 

「そうか…だが手加減はしない。悪く思え」

 

2人が再び激突しようとした時だった。

 

「はい、そこまでよ、そっちの甲冑さん。悪いけれど、あなたのマスターに無事でいて欲しいなら剣を納めなさい。カルナも、こんなとこで大暴れなんてやめて頂戴よね」

 

ブラヴァツキーのその言葉に、リンカーは動きを止める。

彼がマスターの方を見やれば、ナイチンゲールに抱えられた意識のない彼女が機械化歩兵たちに銃口を突きつけられながら囲まれている姿だった。

 

「ふむ…すまない。どうやら少々昂ぶっていたらしい。不死の英雄よ、お前との決着はまた別の機会に持ち越しのようだ」

 

まずカルナがその大槍を納めた。

リンカーは目の前の敵にのみ集中し、みすみす己がマスターを危険に晒した自身の不明を恥じた。

その剣を納め、抵抗の意思がないことを示す。

 

ブラヴァツキーとしては、2人が矛を収めてくれて実に安心であった。

カルナだけでなく、甲冑の方の英雄もまた超級のサーヴァントだ。

もし2人がここで暴れれば、この野営地は吹き飛んでいただろう。

今は東のケルトと国の存亡を賭けた戦争の最中、少しの損害も惜しいのだ。

 

「じゃあ、あなたたちには私たちの王様に会ってもらうから、着いてきて頂戴ね」

 

 

 

 

 

 

 

彼女は、自分が夢を見ていることを自覚していた。

これまでも似たような経験は何度かあったし、彼の記憶はあまりに絶望に満ちていてわかりやすい、ということもあった。

パスをつないだ英雄の記憶を夢として見る。

正直なところ、彼女はそれがあまり好きではなかった。

無断で人の教えたくない、知って欲しくないところまでも覗く。

それはとんでもない不義理のように思うのだ。

現代日本では、土足で人の家に上がることは非常に無礼な振る舞いだ。

それと似たような、捉えようによってはそれよりも無礼な振る舞いをしているという自覚が、彼女にはあったのだ。

以前、彼の夢を見たときに彼にそのことを伝えれば、逆に自分が心配されてしまった。

見るのもおぞましいものだっただろうと、怖くは、不快ではなかったか、と。

確かに、彼の記憶は恐ろしいものだった。

理性を失った亡者に取り囲まれ殺される瞬間。

汚泥に汚れたネズミに囲まれ食い殺される瞬間。

焼かれ、斬られ、殴られ、潰され、溺れ、貫かれて死ぬ瞬間。

死に方の見本市とは、彼の記憶のことなのかもしれないとのちに思ったことは、彼には内緒にしている。

それだけ、死に濡れた記憶だった。

カルデアに来るまではただ普通に生きていた自分には理解できなかった。

なぜ、彼が心折れずに居られるのかが。

今見ている記憶もそうだ。

とんがり帽子のような、不思議な形をした鉄兜を被った戦士たち。

すでに彼は、その戦士たちに何度も殺されている。

幾人もの英霊を見てきた彼女には、彼らがそれらの英霊にも劣らぬ卓越した剣技を駆使していることがわかった。

それでも彼は諦めない。彼はいつも前を向いている。

武器に防具、魔法の組み合わせを考え、どうにかして彼らかつての薪の王を屠らんとしている。

それがその後もずっと続くのだ。

何度死のうとも彼は再び立ち上がる。不屈なんていう言葉も生温い。

その姿こそ、その精神性こそよほど不死という言葉が似合うと彼女は思った。

とある大敵との戦いが長く続いていた。

山の頂、大鐘楼を鳴らした末に、嵐とともに現れた戦神。

彼は、珍しくその大敵の攻略の糸がつかめないでいた。

何度挑もうともその圧倒的な力に蹂躙される彼。

多種多様な英霊を見てきた彼女をして、無名の王の力は圧倒的だった。

果たして何度目か、彼が篝火で死から目覚めた時だった。

 

ー強い……強いなぁ……太陽は……

 

すでに何度もその無名の王に殺されているというのに、彼の声は楽しげだった。

それまで、使命のために大敵を屠ってきた彼が、楽しげな様子を見せることはなかったというのに。

実のところ、この無名の王との戦いは彼の使命には何ら関係のないものである。

彼女としても、どうしてそんなにもあの戦神にこだわるのか疑問だった。

 

ーああ…太陽、太陽か……あれはお前の太陽か?戦友(とも)よ……いや、違うのかもな……

 

彼の言う戦友が誰なのか、彼の記憶を見てきた彼女にはすぐにわかった。

太陽の戦士、ソラール。おそらく、彼に多大な影響を与えた熱い男。

その生は志半ばにして彼によって終止符を打たれることになる。

偽りの太陽をその頭に戴いて。

ソラールは、名を剥奪され追放された太陽の長子への誓約を結んだ太陽の戦士であった。

 

ーあるいは、こここそが、貴公の求めた場所だったのか……今更分かりようもないか……

ああ、だが、喜べ、戦友よ……太陽はお前の言うように、でっかくて、偉大だぞ……こんなにも勝てないのは初めてだ!!

 

それから彼は、ちくしょうめ、と晴れ晴れしく叫んだ。

そして楽しげに笑い声をあげた。

 

その後、彼はかの太陽の長子を打倒することになる。

竜狩りの大弓で持って嵐の竜を射落し、最後はかつて戦神であった者と真っ向からの勝負で打ち勝った。

竜鱗の鎧に覆われた巨躯、その腹部に深々と彼の直剣が突き刺さった。

エスト瓶の中のエストは使い切り、保有する数の少ない女神の祝福すら使い切った末の勝利だった。

その主が消え、嵐が止んだことであらわになった太陽に向かって彼は勝利の咆哮を上げていた。

満身創痍のその身を慮ることなく、勝利を噛み締め、そしておそらく、戦友への思いを噛み締める彼。

その姿はまさしく、英雄譚の主人公の姿であった。

 

彼女はそこで、自分が目覚めかけていることがわかった。

結局、勝手に彼の記憶を見ておいて、なんで彼が心折れずにいられたのかはわからずじまいだった。

でもきっとそれで良いと彼女は思った。

なぜならそれは、直接彼から聞くべきことだと思ったが故に。

意識が急速に浮上する。

 

 

 

 

 

 

 

発明王、否、今は大統王と名乗るエジソンとの協力を拒んだ結果、カルデア一行は牢屋に幽閉されることになってしまった。

マスターとサーヴァントとのつながりを遮断する特殊な牢屋に入れられた彼らは脱出を模索する。

そんな中、キャスターのサーヴァント、アパッチ族の戦士ジェロニモが現れ、彼の助力により彼らは無事牢屋から出たものの、カルデア一行は出口でカルナと遭遇する。

 

「リンカー?」

 

一行の中から、リンカーが進み出た時、彼女が声を上げた。

 

ーここは私に任せよ……案ずるな、すぐに追いつく

 

「何を言って……!」

 

ジェロニモの言葉を止めたのは、マスターである彼女だった。

 

「大丈夫なの?」

 

その言葉には幾つかの意味が込められていた。

今、彼はサーヴァントの身。幾度となく死ねる躰ではないが大丈夫か、ということ。

相手はまさしく超級のサーヴァント、それも武芸に優れた英霊だ。

ただでかく、攻撃力のある怪物とはわけが違うが、大丈夫か、ということ。

それに彼は、右手を掲げて親指を立てた。

 

ー私が、燃えかす同然とはいえ太陽の光の王も、またその長子も屠ったのだ

 

心配があるか。

言外に彼は語った。

彼女は、彼のその雰囲気が、まさしくかの太陽の長子と戦っていた時の彼に近いことを悟った。

彼女の決断は早かった。

 

「行こう、みんな」

 

その言葉にまず真っ先にナイチンゲールが反応し走り出す。

それに続いてマシュや彼女が走り出し、ジェロニモもそれに続いた。

 

「いいのか?カルナは桁外れに強いぞ」

 

ジェロニモの言葉に、彼女は笑って答えた。

 

「大丈夫。リンカーはもっと桁外れだよ。たぶん」

 

 

 

ー追わないのか

 

「お前を前にして他に気を割けるほど俺は驕っているつもりはない」

 

彼女たちが去るのを背にしているのは、本来追うべき側のカルナである。

一見すればカルナの怠慢にも見えなくはない状況だが、カルナは一瞬でも目の前の男から目をそらせば自身の死が現実味を帯びることを直感的に把握していた。

おもむろに、彼は螺旋剣をしまい、ある武具を取り出した。

 

「それは……」

 

珍しく、カルナが驚きに満ちた声を上げた。

 

ー似ていよう……貴公のその槍を見てから、私もそう思っていたのだ

 

リンカーがその手に握ったのは、かの無名の王が、竜狩りの戦神であった頃から振るっていたという剣と槍の機能を併せ持つ剣槍である。

 

ーこれはかの太陽の光の王、その長子が振るっていた剣槍だ

太陽神スーリヤの子たる貴公が振るうそれは、確か神々の王、雷神であるインドラより賜ったものであったな

この剣槍は、かの長子が大王より引き継いだ大雷の力を宿している

これが単なる偶然か、それとも故あってのことかわからんが……

 

貴公を相手にするには良い武器であろう

そう続けたリンカーは、一気呵成にカルナに攻め込んだ。

先程と違い、火花、火の粉だけでなく雷も衝突の度に散る。

 

「ハァァァァァッ!!」

 

カルナがその槍の大きさをものともしない神速の槍捌きを見せる。

リンカーはその中の危険度の高い攻撃に絞って剣槍を用いて捌き去なす。

時折放電しながら雷のような鋭い突きを放ち、カルナのその黄金の鎧から露出した肉体を狙い穿つ。

剣身に雷を纏わせ、さながら特大剣のように長大な剣身を生むと、リンカーはそれを薙ぎ払った。

筋力値A+の怪力でもって振るわれる剣槍は進路上の空気を食いちぎりながらカルナを屠らんと襲う。

カルナはそれを、魔力放出によって生み出した炎を、リンカー同様大槍に纏わせて迎撃する。

地が揺れ大気を鳴動させる轟音が鳴り響く。

筋力に勝るリンカーの攻撃を無理に踏ん張って受けることなく、カルナは自ら地を蹴って衝撃を殺す。

剣槍にあった雷は炎でもって相殺したためにカルナのその身を痺れさせることはなかった。

地に着地した瞬間に、カルナはすぐさま再び地を蹴った。

直後、彼の居たところに突き刺さる落雷。火の時代における太陽の力の発露である。

その雷に己が父に似た気配を感じつつもカルナは目の前の敵に意識を注目させた。

そこにはすでに先ほどまでの焼き焦げた甲冑を身にまとった男はいなかった。

逆立つ灰の長毛と黄金の冠を頭に戴き、その身にくすんだ黄金の鎧をまとっている。

 

ー太陽の長子、その鎧だ

 

リンカーが口を開いた。

すでに立ち位置は大きく入れ替わり、カルナがデンバーに築かれた城を背にしている。

 

ーこの鎧は鋭い竜鱗でできている

すなはち、燃えることはない

 

リンカーにとって、カルナの魔力放出(炎)はかなり厄介な代物であった。

ならば丁度いい機会だと、決して燃えることのない戦装束を着込んだのだ。

その鎧の威容にカルナは身震いした。

それは無論怖気によるものではなく、武者震いである。

同時に、その姿に太陽を幻視した。

否、事実太陽となりうるほどの力を得た英雄が、目の前の男なのだとカルナは思い直す。

故に、だからこそ彼は獰猛に笑いならが彼を見据えた。

戦士としての己が、目の前の英雄とのさらなる闘争を望んでいた。

 

ーゆくぞ

 

再びリンカーから攻めかかる。

剣槍の剣としての機能を活用し、大上段から剣槍を振り下ろす。

紙一重で避ければ、雷を纏ったそれからダメージを受けることは避けがたい。

故にその軌道を大槍で弾きそらすと、カルナは己が四肢でリンカーを急襲した。

 

ーグゥッ

 

腹を蹴り上げられ、後方へ吹き飛ぶリンカー。

それを魔力放出による炎を推進剤としてカルナが追従する。

カルナはその鎧の堅牢さを蹴った足の痛みで再確認した。

宙に浮いたままカルナの槍の振り下ろしを剣槍の柄で受けるリンカー。

地面に叩きつけられるも、すぐさま回転しながら起き上がり、その剣槍を振るった。

すでに放たれていたカルナの突きをその穂先の横っ腹を殴りつけるように弾く。

その剣槍に追従するように雷が迸るもカルナの炎に迎撃される。

しかしその炎を突っ切りカルナへとリンカーが肉薄する。

その身に纏う竜鱗の鎧は一切カルナの炎を受け付けない。

 

「くっ」

 

剣槍を短く持ち、剣として振るうリンカー。

柄のためにその太刀筋は制限されるも、窮め切られた業は彼にその武器を最善の用い方で振らせる。

大槍のリーチの内側に入られたカルナは、しかしその卓越した武技で対応する。

 

「おおっ!」

 

ーはっ!

 

その状態で幾度となく剣戟を重ねる2人。

不利な間合いで耐えるカルナも、本来と別の間合いで武器を振るい、距離をとらせぬリンカーも、双方ともに尋常ならざる技量であった。

雷と炎が弾け、しかし互いに決定打を与えることができない。

カルナはその黄金の鎧の力により、軽い傷はすぐさま快癒する。

リンカーはその身に刻まれた不死の呪いが、スキルとして作用し軽い傷であればすぐに塞がった。

一進一退。

どちらも退かず、相手を攻め立てる。

2人の踏み込みだけで、地面に次々とひびが入る。

 

ーぬぅん!

 

しかし、その均衡も崩れるときが来た。

気合一閃、振り上げた剣槍がカルナの大槍を上に弾いた。

リンカーとカルナの視線が交錯する。

リンカーは振り上げた剣槍を逆手に持ち変える。

雷の杭という奇跡がある。

それは失われた古の竜狩りの奇跡だ。

曰く、竜の鱗を貫くのなら、槍を投げるのではなくその手で直接杭を突き立てるのだと。

リンカーは、それを大雷の力を引き継いだ竜狩りの剣槍で以って再現した。

剣槍がまばゆい大雷と化し、地面に(・・・)打ち込まれた。

岩の古竜の、その岩の鱗すら砕く一撃は、正しく大地を割った。

大雷は地だけでなく空にも伸びて空気を引き裂き、大地は砕かれ、裏返り、2人のいたその場所は吹き飛んだ。

直前でなんとか後方に跳び去ったカルナも、無傷とはいかなかった。

雷にあぶられ、露出した肌は焼けただれ、身体中から煙を出すカルナ。

まばゆい光と砕かれた大地から上がる土煙で数瞬、カルナの視界は塞がれていた。

そして、それだけあれば、リンカーには充分であった。

 

高速の詠唱をカルナの耳が捉えた。

ソウルの業を極めたリンカーをして、時間のかかる詠唱。

それがカルナにその詠唱により放たれるものの危険度を教えていた。

 

だが、まだ避ける時間はある

 

カルナがその場から退避しようとした瞬間だった。

ちょうど詠唱を終えたリンカーの言葉に、カルナはその場に踏みとどまらざるをえなかった。

 

ー卑怯な手とは承知だが、許せ……避けても構わん……だがその時は城が無事では済まんぞ

 

施しの英雄たるカルナ、主に仕えることを第一義とするカルナにとって、今の主人たるエジソンの居城を破壊されるのは容認できることではなかった。

土煙の向こう側、リンカーから感じる魔力の高まりに、カルナは宝具の使用を決意した。

 

「武具など不要……」

 

ー最初の賢者が伝えた、魔術の深奥を受けるがいい

 

土煙が晴れると、青白い強力な輝きを抱いた、結晶を纏った杖を腕を引いて頭の後方に構えたリンカーの姿があった。

 

「真の英雄は目で殺す!」

 

ーソウルの奔流

 

「『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』!」

 

かつてビッグハットと呼ばれた大魔術師が狂った末に使用した結晶の錫杖から、凄まじいソウルの奔流が放たれる。

それは一直線にカルナに、その背後の城に突き進む。

それとカルナの放った奥義、彼の眼力を飛び道具として放つそれが激突する。

野営地でカルデア一行を殺さぬよう放たれたそれとは違い、今カルナが放ったそれは正真正銘全力のものだ。

すでに時刻は夜だというのに、あたりが真昼のように明るくなった。

あまりに大きすぎて、初めは音として認識できないほど甚大な轟音が響き、大地が激しく震えるほどの大爆発が起きた。

その爆風にさらされながらも、カルナはその2本の足で決然と立っていた。

 

「……離脱したか」

 

爆風や土煙が晴れれば、すでにそこには誰一人として残ってはいなかった。

決着をつけ切ることは叶わなかったことに不満は少々あれど、彼の心の中は満足感に満たされていた。

己の武を最大限振るってなお倒すことができぬ相手。

それに見え、武を競い合ったことは彼にとって正しく至上の喜びであったのだ。

 

「これは……」

 

彼はふと、穿たれた大地の、その穴の奥底に突き刺さる剣槍を見つけた。

自身の神殺しの槍に似た姿と謂れを持つ竜狩りの剣槍。

これを残していったのは、果たして意図したものだったのか。

カルナはそれをごく自然に魔力へと戻し、収納した。

それができたこと自体に、不思議と何も疑問を持たず、彼は踵を返した。

 

「ちょ、ちょっとカルナ!あなた大丈夫なの!?」

 

「ああ、問題ない」

 

あまりの戦闘の衝撃に、さすがに心配になって現れたブラヴァツキーの言葉にはっきりと返事をするカルナ。

すでにその傷は塞がりつつあるとはいえ、雷の杭によって与えられた傷は浅くはない。

満身創痍と言う言葉の様子に近い状態であるのに全くその影響を見せないカルナに呆れつつ、ブラヴァツキーは問いかけた。

 

「あなたにそれだけの深手を負わせるなんて、なに?相手はアルジュナだったのかしら?」

 

その言葉に、カルナは首を横に振った。

先ほどの、太陽の長子の戦装束を身にまとったリンカーを思い出して笑みをこぼすカルナ。

 

「いや、違う。あの男は火の時代、一度太陽のごときになり、そして火の時代を終わらせた不死の大英雄だ。

あの鎧を着るだけはある。まさに我が父のように偉大な男だった」

 

「戦っただけで偉大とかわかるのかしら?…ていうか今火の時代って言ったわね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

リンカーは一度使用した自身の回復宝具、『エスト瓶』をソウルに戻し収納した。

やはり、どの時代でも太陽の血筋は恐ろしいと再確認しながら歩みを進めた。

今、彼はまっすぐマスターの元に向かってはいなかった。

ジェロニモの口ぶりではまだ他にも味方のサーヴァントはいるようだし、彼はマシュを信頼していた。

しばし自分がいなくともなんとかなるだろうと。

彼はこの特異点での戦いが、少しばかり自分が経験してきた戦いとは別になるだろうことを予感した。

つまり、戦争である。

彼は常に孤独に戦ってきた。

だが此度はどうやら軍勢同士のぶつかり合いも多くなりそうなのだ。

対集団戦にいい思い出はない。

よって、彼は保険を用意することにした。

おそらく戦火にさらされることのないだろう森の奥地、その少し開けた場所で彼は立ち止まった。

おもむろに、彼は螺旋の剣を取り出す。

今から彼がすることは、サーヴァント、ひいては聖杯戦争の根本的なルールを覆す行いだ。

なんでも、かつてマスターが敵として相対したヘラクレスは似たようなことができたらしいが。

 

彼は螺旋の剣を逆手に持ち、地面へと突き刺した。

彼の手から炎が映り、その剣は灯火となる。

次に彼は不死の遺灰をその根本に盛った。

そして最後、彼は己が宝具の真名解放を行った。

 

ー『灯れ、はじめての火の粉よ(ボーン・ファイア・リット)

 

彼はそこに座り込み、しばらく新しく灯った篝火の火の揺らめきを眺めた。

それは彼にとって、過酷な旅路の中で自身を癒し続けてくれた揺らめきだ。

しばしの休息の後、マスターの元に向かおう。

彼はそう決めてしばし太陽の子との激闘での疲れを癒した。

 

 

 

ここに正真正銘の不死が誕生したことを、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




無名の王戦は楽しかったですね。
正直一週目とは思えないほど強くて強くて……
そしてあのかっこよさ、ハンパないです。

カルナと太陽の長子の共通点というかなんかそんな感じのは自分が思ってたことです。
多分なんも関係ないけど、すごいつながりを感じちゃう。


以下、今回登場した宝具の解説。


灯れ、はじめての火の粉よ(ボーン・ファイア・リット)

ランク:A+
種別:対人宝具
レンジ:1
最大捕捉:篝火囲めるだけ

螺旋の剣、あるいは火継ぎの(大)剣の真名解放。
不死の拠り所、故郷である篝火を一つ設置する。
不死の呪いを持つものは死ぬとここで復活する。
それはサーヴァントとなっても例外ではなく、例え霊核が破壊されようとも復活する。
核である剣を抜くか、篝火自体を破壊しなければこの宝具を設置した不死の呪いを持つサーヴァントは永遠と復活し続ける。
ただしその不死は不変のサーヴァントの身であっても不死の呪いによる理性の磨耗を受ける。
また、復活の他に、傷の全回復、消費したエストの補充、武器の修繕、スペル(FP)の回復を行える。
拠点型の宝具としても破格の性能を持つ。
ただし、核に螺旋の剣を使用する関係上、設置した後、螺旋の剣を武器として使用できなくなる。
設置の解除は剣を引き抜くだけで良い。

なお、FGOでは当然使用不可。

『エスト瓶』
ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:0
捕捉人数:1

不死人に伝わる秘宝、周き不死の希望。
中には篝火の消えない火が入れられており、飲めば不死の傷をたちどころに回復する。
おそらく全ての不死人がすべからく最も信頼する道具。
『灯れ、はじめての火の粉よ』発動時は篝火に寄ればいくらでも補充が可能になる。


ランクとかは適当です。


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