難しいもんだなぁ。
今回は繋ぎ回。短編集の繋ぎ回とはこれいかに。
まあ相変わらずダイジェストチックな構成です。
アルカトラズを出た後、彼女とその一行は暗殺組に渡した通信機からの通信を受け取った。
『すまない…暗殺に失敗した』
そう語ったのはジェロニモであった。
「他のみんなは?無事なの?」
彼女が真っ先に心配したのは、事の成否ではなく皆の安否だった。
『私にビリー、ロビン、ネロは無事だ……だが……』
ジェロニモは言い淀んだ。
彼女にとってかのサーヴァントが非常に大切な存在であることを承知していたからだ。
「待て、まさかリンカー殿が!?」
驚愕の声を上げたのはつい先ほど、傷の快癒したばかりのラーマだった。
彼はインド出身の英雄である。
故に同じ時代に生きていなかったとしても、カルナという英雄がどれほど強いかは自ずと知れる。
それと全面衝突し、何事もなかったかのように自分たちの前に現れたリンカーという男の強さに多大なる信を置いたいたのだ。
つまり、彼ならばやられることはない、と。
『わからない……だが彼は私たちを逃がすための殿として、クー・フーリンにメイヴ、そしてアルジュナの前に立ちはだかったのだ』
「アルジュナだと!?」
ラーマは再び驚愕した。
アルジュナといえば、マハーヴァーラタの主人公にしてカルナの宿敵、インド最強とも言えるやも知れぬ大英雄だ。
クー・フーリンだけでも恐ろしい敵だというのに、そこにメイヴと、あのアルジュナ。
目の前が真っ暗になる、とはこのことか、と彼は一周回って冷静になり始めた思考の片隅でそう考えた。
ジェロニモは事の顛末を語った。
始め、メイヴとクー・フーリンをネロの宝具に取り込むことに成功したこと。
だがその中でもクー・フーリンは十全に動けたこと。
さらにアルジュナが潜んでいたこと。
そして、リンカーがすぐさまネロに宝具を解かせ、1人、殿に残ったことを。
『すまない、私たちが不甲斐ないばっかりに……』
ラーマは恐る恐る、彼女とマシュの様子を伺った。
この場の誰よりもリンカーとの付き合いの長い2人だ。
ともすれば、あまりのショックに……
「……ううん、ジェロニモたちは悪くないよ。今回は相手が上手だった、それだけだよ」
意外にも、彼女は平静な様子で口を開いた。
マシュもまた、不安げな表情ではあるが、取り乱すような気配は見られない。
「ちょ、ちょっと子ジカ!あんたそれで……」
エリザベートは押し黙った。
彼女は、いつになく強い眼差しでエリザベートを見ていた。
しかし、その眼差しは怒りや、悲壮感によるものではない。
まるで、希望を持って、前に進み続ける者のような……
ラーマも、エリザベートも、皆その眼差しをどこかで見たことがあるような気がした。
「きっと、リンカーは今も戦ってる。なら、私たちは私たちができることをしなきゃ。リンカーの頑張りを無駄にはできないよ。ジェロニモ、私たちはどこに行けばいい?まずは合流しないと」
その言葉に、ジェロニモもまた面食らいつつ、自分たちが身を寄せている前哨基地の座標を伝える。
すぐさまそこへの移動を開始することを告げる彼女。
その様を見つめるラーマ。
ナイチンゲールは彼女の、前哨基地なら患者が多くいる、という言葉にすでに臨戦態勢である。
「なぜ、そうまで強くあれる?マスター。汝は余らと違い、唯人であるはずであろう……?」
ラーマのつぶやきは誰に届くこともなく宙に消えた。
ジェロニモたちと合流し、クー・フーリンの師であったスカサハという頼もしい協力者との顔合わせを済ませた後、彼らは基地に迫ったケルト兵たちの迎撃に出ていた。
それも幾分か落ち着いた頃、エリザベートがついに彼女に問うた。
「子ジカ!あんた、どうしてそんな平然としてられるのよ!あのリンカーとかいう奴、あんたらの大切な仲間だったんでしょ!?」
その言葉に、マシュは気遣わしげに彼女を見遣った。
彼女は、少しうつむき、じっと言葉を発さずにいる。
彼女が思い出しているのは、彼が暗殺に向かう前に彼女に残した言葉だ。
曰く、
ー案ずるな…保険は用意してある
実のところ、彼の持つ宝具、その全てを知るのはカルデア内でも彼女1人である。
彼が、サーヴァントとして運用されるのであればそのマスターは知っておくべきだろうと余すことなく教えてくれたのだ。
その中で保険となりうるもの。
彼女はそれにすぐに思い至っていた。そしてそのデタラメさにも。
そして彼女はジェロニモから彼が殿となったことを聞き、そして彼らに追手がケルト兵以外には迫ってこないことも把握すると、すぐさま理解した。
彼は、リンカーは今も戦っている。
いつでも死ぬことができる状況。長引いている戦闘。彼が生前たどってきた戦いの記憶。
彼は、確かにジェロニモらを逃がすために戦っているのだろう。
しかし、それだけではない。
きっと、彼は、確実に倒すために、今、負けることを承知で戦っているということを。
故に、彼女は取り乱すことはなかった。
むしろここで立ち止まってしまっては、決して心折れず前に進み続けた男のマスターとしてあまりに不甲斐ないではないか。
彼女は顔を上げた。
そこにはやはり、前へと進み続ける意志の宿った、強い眼差しがあった。
「そうだよ…リンカーは大切な仲間。だからこそ、信じてる。リンカーなら大丈夫って。ね?マシュ」
ふと話を振られたマシュは一瞬キョトンとするも、彼女の自信と信頼にあふれる顔を見てふっと笑った。
「ええ、そうですね、先輩。何せリンカーさんは、火の時代最大の不死の英雄ですから」
2人ともが、晴れやかに笑っていた。
微塵もリンカーの生還を疑わない様子だ。
「ふーん……別に、その信頼関係が羨ましいとか、そんなことないんだからね!」
「ならば余も、リンカー殿の生還を信じてみるか」
2人の言葉と様子に、どこか沈んでいた空気が明るくなる。
一人一人が希望を持って前を向き始めた。
そこには、まさしく数多の英雄を引き連れるにふさわしいマスターの姿があった。
その様子を一歩退いて見ていた者が1人。
「ほう……火の時代、最大の……」
スカサハが、マシュの言葉を口の中で転がした。
その瞳の奥に芽生えた感情を知るものはそこには誰1人としていなかった。
「その男であれば……私を……」
「スカサハ?」
彼女の問いかけに、スカサハはすぐさま表情を切り替え、なんでもない、と応じた。
すでにそこには数多の勇士を育て上げた師としての彼女しかいない。
魔槍が地を砕き、矢が空を裂いた。
クー・フーリンは焦燥に駆られていた。
その身に培われた戦士としての勘が、焦燥感を生んでいた。
目の前で殿として残った騎士の姿をしたサーヴァント。
青いサーコートにプレートメイル、左手には中型のブルーシールド、右手には何の変哲もない直剣。
一見たいそうな英霊に見えぬがしかし、今現在クー・フーリンと女王メイヴ、そして授かりの英雄アルジュナは目の前のサーヴァント以外の暗殺の下手人を追えずにいた。
追おうとすればその都度攻撃を挟み、しかしそうでなければひたすら回避と防御に専念する。
それを可能にするほどの力を持つ、とてつもなく厄介な男だった。
だがだからと言って焦燥に駆られるのほどのことはない。
そもそも逃したサーヴァントたちはクー・フーリンにとっては有象無象だ。
気にする必要性は皆無だ。
そして確実に自分らは目の前の男を追い詰めつつある。
超級と言ってもいいサーヴァント3人がかりで、やっと追い詰めつつあるというのもおかしな話だが。
だがもうじきケリがつく。
すでに騎士姿のその男の体には幾本もの矢が突き刺さり、魔槍によって穿たれた傷が存在する。
さらにはメイヴの戦車もその男を捉え始めていた。
それでも、クー・フーリンはこの戦闘が長引けば長引くだけ自身のうちに芽生えた焦燥が大きくなるのがわかった。
まるで、熟練の狩人に追い詰められる獣のような……
クー・フーリンはその考えを切り捨てる。
勝てばいいのだ。
王として、彼はそうあれかしと歪められている。
その目の前の男、上級騎士の装備を身にまとったリンカーは、自身が追い詰められつつあるというのにどこまでも冷静だった。
そのプレートヘルムの中、バイザーより除く双眸はどこまでも冷徹に、3人の英雄の動きを観察していた。
アルジュナの弓矢がその身を削ろうとも彼は意に介さない。
メイヴのチャリオットを、その進路を予測して回避する。
「もう!ちょこまかと!鬱陶しいわよ、あなた!」
自らのすぐ脇を戦車が疾走していった。
それを見送りすぐさま彼は回避行動を取った。
身のこなしと盾、その2つで必中であるはずの弓矢を躱す。
「私の矢を、これほどまでも躱すか」
彼はそれまでの動きをほぼ無意識にこなしていた。
意識の大半をひたすら敵の動きの観察に集中させる。
特にその動きを観察しているのはクー・フーリンであった。
ネロに強さでもって王になると語ったその男こそ、自身が倒すべき敵とリンカーは見定めていた。
その苛烈な槍術はカルナに勝らずとも劣らない。
盾を構え防ごうが、それを盾は破られずともダメージは突き抜けてくる。
彼はあえてその強力な突きをいなし躱すことなく真っ向から手に持つ盾で受け止めていた。
ダメージは蓄積するが、しかし彼はそれが必要だと判断したのだ。
「もうやめだ。さすがに飽きた」
突然、クー・フーリンが平坦な声でそう言った。
ついに決めに来るか。
リンカーは思った。
だがそれもよし、と彼はクー・フーリンを見据えた。
「『
クー・フーリンのその身を、ゲイ・ボルグの元となった海獣クリードの外骨格が覆う。
それにより得られる筋力値は驚異のEX。
一瞬にして間合いを詰めたクー・フーリンのその攻撃を、リンカーは真正面から盾で受けた。
突き破られるブルーシールド。
その腕がその鎧も貫き深々とリンカーの腹をも貫通する。
その一撃は確実にリンカーの霊核を粉砕した。
貫かれた腹部から血が吹き出、口からは大量の血がこぼれ落ちる。
膝から力が抜け、その身が崩れ落ちる。
クー・フーリンは、自らが殺した男が崩れ落ちる寸前、そのヘルムの奥の双眸と目が合った。
敵を殺し尽くし、王となる。
それに必要な物以外は全て捨てたはずのクー・フーリンは、その眼を見た瞬間に自身の首筋に死神の鎌がかかったような幻覚を見た。
それもすぐに搔き消える。
もはやその身体を維持できなくなったのだろう。
その男の体が薄れ始め、粒子となって消えたからだ。
確実に殺した。
だというのにクー・フーリンのうちに渦巻く焦燥感はさらに肥大化していた。
戦士としての勘が、ささやいていた。
己はおそらく、この特異点をめぐる戦いの中で最大の失策を犯したと。
それを振り払うように彼は踵を返した。
すでに逃げ出したサーヴァントたちには追いつけないだろう。
戦っている最中、自身の師匠であるスカサハの気配もあった。
あの女が逃亡に手を貸したのなら、これだけの時間をかけた後で追いつけるとは到底考えられなかった。
リンカーはふと、篝火の目の前で目を覚ました。
その手に持つ盾と、身にまとう鎧は突き破られて穴が空いたままだ。
自身の持つ鍛冶道具では、ここまでの破損を修理することは叶わないだろう。
ー後で、エミヤにでも修理を頼んでみるか
ぽつりと呟くと彼は火継ぎの鎧を身にまとい、いつも通りの休息時の格好になって目をつむった。
思い起こすのはちょうど今さっきまで目にしていたクー・フーリンの動きだ。
速く、力強く、卓越したその男。
弱点と言える弱点はないだろう。
しかし、数多の自身を超える力を持った大敵を屠ってきた彼の頭はそのクー・フーリンを殺す勝利の方程式を書き出すべく回転する。
不死の大英雄は、決して不敗ではない。
が、最後には勝利を掴んできた。
戦い、勝利の果てに王となったその男。
戦い、勝利の果てに王狩りとなったその男。
その真骨頂が、発揮されようとしていた。
無限コンティニュー可能な不死人ほど怖いものはない。
ぐだーずはオジマンディアスのセリフでもわかるのだけど、モーセのように導くものに近いらしいので……
そんな感じがちょっとでも出てくれれば……
あ、自分はオジマンディアス持ってないです。
そしてやぱりキャラクターが回せない……もっと他にいるのにね…もうね……