葉山隼人のようじょな日常 作:ペン豪ジェネラル☆★ZAIMOKU★☆
そして、葉山隼人をイジるのが大好きな皆さま、
ようこそこのくだらない短編へ(笑)
思えば夏の林間学校のボランティアが始まりなのかも知れない。
俺が平和的な手段で解決に導けなかった件を、あの比企谷が常人では思いつかないくらいに歪な方法で解消した、あの時からなのか。
あの時の小学生、鶴見留美ちゃんは、幼かった頃の雪乃ちゃんに何処か面影が似ていて、そのまだ芯の通っていない儚げな強さに、あの生命力溢れる艶やかな長い黒髪に、僅かに丸みを帯びた慎ましやかな成長段階にあるその肢体に、俺の心は撃ち抜かれた。
やはりあの時からだろうな。俺が少女、いや、幼女に興味を持ったのは。
性的趣向としてはアウトなのは理解しているし、それが葉山家にとってどれだけのダメージになるかは想像に難くない。だから俺は誰にも云わないし、云えない。
あくまで心中で愉しむことで幸せを感じているだけで良いのだ。
うむ。我ながら健全な嗜好、いや思考である。
「隼人ぉ、今日のカラオケどーするぅ?」
年増、もとい優美子が金髪を指に巻きつけながら、いつもの如く話し掛けてくる。
遅かった。あと八年ほど前に出会っていたら……いや、やめよう。あの頃の俺は雪乃ちゃんの慎ましやかな肢体に夢中だったっけ。
──あ、俺結構早い段階からロリコンだったわ。
優美子は相変わらずマイペースで、俺の嗜好、もとい思考などお構いなしに自分の欲求をつらつらと並べ始める。その声につられて姫菜や戸部、大岡、大和も集まってきて、それぞれが自分の欲求を踏まえたプランを提示し合う。その中で、姫菜のいうことだけが良く分からなかった。
薄い本ってなんだろう。絵本かな。
だがすまない、みんな。俺には大事な用事があるのだ。
「悪いな、今日もボランティアスタッフの仕事があるんだ」
ニ学期に入って間も無い頃、俺は週末だけ学童保育のボランティアスタッフを始めたいと弁護士の父に相談した。
思春期に入って初めての相談だ。
父は一瞬驚いた顔をしたが「これでまた葉山家の評判が上がる」と打算めいた呟きの後で二つ返事で施設を幾つか紹介してくれた。
その週末から、俺は学童保育のボランティアスタッフとして幼女を愛でる権利を獲得したのだ。そして現在、三回目のボランティアに向かっている。
もうすぐ幼女たちに会える。そう思うと、自然と足取りも軽くなる。
いかんいかん。俺は「みんなの葉山隼人」であり続けなければ。
幼女たちだけの葉山隼人になるのは脳内だけに留めるって、昨日通りすがりの幼女に心中で誓ったばかりじゃないか。
よし。心を落ち着ける為にこのボランティアのネガティヴな部分を洗い出そう。
残念なことに、あの施設に集うのは幼女だけではない。当然男児もいる。だが、俺の計算され尽くした容姿や話し方は天使、もとい幼女たちにこそ絶大な効果があるようで、常に五、六人ほどの幼女に囲まれることが出来た。この時ほど、恵まれた容姿に産んでくれた両親に感謝したことはない。
幼女に好かれることは一種の才能だと俺は考えている。夏休みの千葉村で比企谷を見て実感したことだ。
──あれ。思考がずれた。
まあいい。
普段、優美子は比企谷をウザいだのキモいだの言っているが、俺はそうは思わない。
あいつは原石だ。容姿や身なりに気を配り、言動に気をつければ、俺程では無いにしろかなりの好青年として人気を得ることも可能だろう。
事実、あいつはあの天使のような鶴見留美ちゃんの信頼を勝ち取ったのだ。
それがどれだけ羨ましかったか。どれだけ妬ましかったか。
幼女は自分の感性に嘘をつかない。鶴見留美ちゃんは自分の感性に従って、あいつを選んだのだ。すぐ傍に俺がいるにも関わらずに。
内心で苦虫を噛み潰しつつ部活動の細かい指示出しを戸部に伝え、俺は颯爽と学童保育の施設へと足を向けた。
というか戸部。お前、サッカー部のこと忘れて遊びに行くつもりだったのか。
週明けの部活、筋トレ一セット追加決定だな。
* * *
学童保育の施設に着くと、そこはもう天国だった。
「わー、はやと兄ちゃんだー」
早くも幼女たちの黄色い声が聞こえてくる。うん、今日も可愛いよ。マイスゥィートエンジェルたち。
「お待たせ、今日は何して遊ぼうか」
あくまで普段の葉山隼人の笑顔を維持しつつ、視線で幼女を舐め回す。
華奢な肩。まだ凹凸やくびれのない身体。自己主張の無い臀部。か細いながらもウインナーソーセージのようにぱんぱんに張った太もも。
すべて俺の宝物だ。
「今日はねー、お医者さんごっこしたいなー」
……はい?
一瞬我が耳を疑った。
お医者さんごっこって、あの──
『はぁい、診察しますから服を脱ぎ脱ぎしましょうね』
とか、
『じゃあ、お注射しましょうか。痛いのガマンできる?』
という、あれ……か?
脱ぎ脱ぎ。お注射。
思わず唾を飲んだ。
幼女の胸やお尻など拝む機会など、諦めていたのに。
それが幼女側の要求で叶ってしまおうとしている。
足が震える。違う、これは武者震いだ。心が震えているのだ。
「じゃ、じゃあ……お兄さんが先生──」
「はやとお兄ちゃんは患者さんねー」
泣いた。心で泣いた。
全米が泣いても泣かないと母に云われた俺が、胸の中で号泣した。
ふっ、俺は患者さん役か。世の中そんなに甘くは無いよな。
ま、まあ焦ることはない。ここにいて幼女に囲まれているだけで幸せなのだ。それに肩車やおんぶ等、ラッキースケベのチャンスはこの先いくらでもあるだろう。
そのチャンスを逃す俺ではない。合法的なチャンスなら俺はそれを最大限に活かし、堪能させてもらう。
「よーし、じゃあ……いてて、あれ、お腹がいたいなぁ」
切り替えの早さは俺の得意とするところだ。即座に役に入り込み、お腹を抱えてうずくまる。
「あらあら、どうしました?」
驚いた顔で他のボランティアスタッフの女子高生が駆け寄ってきて、背中をさする。
──ちょっとだけ素に戻らせて貰おうかな。
うるせぇババァ、俺と幼女たちの幸せな時間を邪魔するんじゃねぇよっ。
ふう、すっきり。
何食わぬ顔で背中をさする女子高生に顔を向けた。
「いやぁ、なんか俺が患者さん役らしいので」
「まあ、そうだったのですか。良かった、葉山さんに何かあったらわたし……」
だからよぉ、オメーはお呼びじゃねーんだよ。やめろやめろ、すり寄ってくんな、高校生三年生のババァのくせに。
俺に触っていいのは幼女と鶴見留美ちゃんと、雪乃ちゃんだけなんだよっ。
ふう、またまたすっきり。
「大丈夫ですよ、演技ですから」
この一言で全てを悟れ、と言わんばかりに満面の笑みを向けて女子高生のババァを退散させる。
さあ、これからの葉山隼人は幼女たちの患者さんだ。
幼女たちよ、隅から隅まで満遍なく診察するといい。触診もありだ。むしろ是非そうして欲しい。
「おやつですよー」
カーペットの敷かれた床にごろんと転がり、腹痛の演技を続ける。
──あれ、来ないな。
見ると、幼女たちは施設の人が運んできたオヤツに群がっていた。
……ふっ、俺もまだまだだな。オヤツに負けるなんて。
いち早くオヤツを手にしたガキ、もとい男児が貰ったばかりのマドレーヌを掲げて走ってくる。
その向こうで幼女たちはマドレーヌをはむはむと食している。つまり幼女たちにとっての俺はマドレーヌ以下なのだ。
何とも泣ける話じゃないか。思わず床に大の字になって天井を仰ぐ。
「イェーイ」
どんっ。
「ぐえっ」
走ってきたガキがジャンプ一番、傷心中の俺の腹めがけて着地した。それを見た他のガキ共も面白がって走ってきた。
どんっ。どんっ。どどんっ。
ガイア(七歳)の両足の踵が腹にめり込み、続けてマッシュ(八歳)の右足が俺の黄金の左足の太ももに打撃を加える。その後、オルテガ(六歳)のジャンピングニードロップが俺の大事な三本目の足に……クリーンヒット。
幼女たちを見て多少は元気になっていたとはいえ、三本目の足だけではオルテガの体重を支えられる訳はない。
襲ってきた激痛によって俺の意識は刈り取られた。
意識を手放す瞬間に耳に響いたのは、
「あー、こいつボッキしてるぞー」
という無邪気なガキの声だった。
* * *
恥辱を受けた俺はその日でボランティアを辞めた。
仕方がない。目が覚めたらガキ共にはボッキーと呼ばれ、幼女たちは他のボランティアスタッフに守られるように隠れて近寄ってくれなかったのだから。
さて、親父には何と説明するべきか。そうだ、定期テストが近いから一旦ボランティアは休むと言おう。
それならば、いつも向上心に溢れる前向きな葉山隼人の言葉として相応しい。
しかしだ。
「ふう、今日は散々な日だったな」
思わず愚痴も溢れる。だって、俺は一切悪くないのだ。
ただ、ボランティアと性的趣向を密かに両立させていただけなのだ。それも誰にも迷惑を掛けずにだ。
人の役にも立ち、自分自身をも満たす。それの何が悪い。
自然と肩が落ち、背中が丸くなる。とぼとぼと家路を歩いていると、普段なら女子の一人や二人は声を掛けてくるのに、今は不思議とすれ違う他校の女子は誰も声を掛けて来なかった。ひそひそと俺を見て何かを話しては、そのまま去ってゆく。
いいさ。所詮女子高生なんて俺にとってはババァだ。それに、傷ついた自尊心と股間を癒すのにはこの程度の孤独が丁度良い。
ふと横を見る。歩道に立ち並ぶ店のガラスに自分の姿が映った。
ああ、これはあいつの歩く姿勢と同じだ。だから誰も声を掛けては来ないのだ。
俺が背中に貼ってあった「ロリボッキー」の画用紙に気づくのは、十数秒後のことだった。
了
いやー、我ながらくだらない短編を書いてしまいました。
完全なお目汚しでしたね、はい。