女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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今回はネタ少なめです。


涼風青葉は退屈を壊しに来る。

 

 

年が明けてからのキャラクターデザイナーの朝は早い。寝惚けて朧気な状態でソシャゲのログインを済ませていき、数分の二度寝をして目を覚ます。目を覚ますために洗面所に向かい顔を洗い、瞬きを繰り返せばいつもの自分だ。

顔を拭いて次に台所へと向かう。一人暮らしでも炊事はする方なのでシンクや水道周りに水垢や酷い時はカビが発生するが、大晦日前に妹が掃除に来てくれたことでそれらもキレイさっぱり消えている。

あっという間にお湯が沸く機械に水を入れて適当に取り出したカップにスープの素をぶち込むとリビングに戻ってテレビをつける。

 

 

 

1月4日と三賀日を終えて仕事始めの社会人は多いだろうが、ニュースキャスターやらは1日から仕事をしているので本当にご苦労さまだとおもう。まぁ、この時期にニュースをしてるのは取り立て屋放送局くらいだろうが。映らないテレビ買おうかしら、紅白とか観ないし。

 

 

お湯が沸いてカップに注ぎぐりぐりとかき混ぜる。こうして頭と身体を動かしてると、目を醒ませ僕らの世界が呼び起こされてるぞって感じがする。どんな感じだよ。

新年始まってからはじめさんとゆんさん、ひふみ先輩と会った以外は目立ったイベントはなく退屈してるのかもしれない。あと1週間もすれば成人式だと言うのにこの体たらく。そろそろコマッチマンに助けに来てもらわないと。いや女だからウーマンか?どうでもいいや。

 

 

 

「あちち…」

 

 

 

そんなくだらない思考をしながらスープを口に入れると、まだ冷めていなかったのか舌が噛み付かれたようにいたい。これだから猫舌は困るんだと自分のことながら憤慨してしまう。

今度は大丈夫としっかり冷ましてから口をつける。うん美味しい!インスタント食品ながら非常に美味だ。まぁコンソメスープとかインスタントと小中での給食以外で食べたことないが。

 

 

朝食を食べ終えて食器を片しているとベッドの上のスマホが音楽を流し始めた。俺のスマホは唐突に音楽を流す機能もなければ、OKスマホ音楽流してと言っても富澤たけしのように「ちょっと何言ってるか分からない」と返してくるスマホだ。こいつが音楽を流すのは手動かもしくは誰かからの電話でしかない。

 

 

 

「で、どこのどいつだ」

 

 

 

社会人になっても電話のかかってこない俺は着信音を人によって分けるという行為をしない。分けてたら分けたで誰かを確認するまでもなくなって便利なのだが、誰かわかると出ないこともあるのでそれはそれで失礼な気がするので分けずにしている。なお、戸塚と材木座は例外だ。戸塚からの電話は嬉しいので勝利確定のUNICORNの長調バージョンにして、材木座からの電話は心底めんどくさいのでUNICORNの短調バージョンにしてる。

で、今回の電話はどちらでもなくてピタゴラスイッチの曲だ。

 

 

 

「もしもし比企谷です」

 

 

 

 

『あ、もしもし八幡、あけましておめでとー!』

 

 

 

元気よく幼さの残る声。スマホを耳から離して名前を見ると表示されていたのは同期の同僚だった。コールがかかってから結構時間が経ってたから早めに出ようと名前を確認しなかったのがいけなかったな。後で一人一人に着信音をつけようと誓ってまたスマホを耳に当てる。

 

 

 

「はいはいあけおめ。じゃ」

 

 

 

『じゃ、じゃないよ!なんでもう切ろうとするの!』

 

 

 

朝の9時から人と会話するの疲れるし…。用があるなら手短にメールして欲しい。そう伝えると涼風は呆れた様子で口を開いた。

 

 

 

『八幡、メールしてもちゃんと読まないじゃん』

 

 

 

失礼な、ちゃんと読んでるぞ。偶にだけど。

読者家の俺は横読みではなく斜めに読んでサーっと目を通して、これは別に重要じゃないやつだなと判断したらスマホを閉じる男だ。つまり、涼風のメールはほとんど重要では無いということになる。

 

 

 

「で、どうした」

 

 

 

『あ、そうそう!』

 

 

 

俺が尋ねると涼風は電話の理由を思い出したのかはしゃいだように声を上げる。

 

 

 

『来週、私たち成人式だからさ着物の着付けしようと思って。どう?』

 

 

 

「どうって…」

 

 

 

今日は特にすることもないから構わないが、色々と問題がある。どうして涼風と着付けをしないといけないかだ。するなら実家に帰って小町か母ちゃんにしてもらうしな。

 

 

 

『ねねっちとももちゃんとツバメちゃんも来るんだ!』

 

 

 

なんだその女ばかりの着付け大会みたいなメンツは。てか、俺以外全員女じゃねぇか。あ、それはいつもの事か。

 

 

 

「そんな女子ばっかりの所に俺が行くと思うか」

 

 

 

『え? いつも通りじゃない?』

 

 

 

はいそうですよ。思わず瞬で肯定しちまったじゃねぇか。けど、ここで引き下がる訳にはいかない。成人式の着付けだろ? てことは戸塚とか材木座、あと葉山とかも成人式はあるんだ。アイツらに連絡して一緒にすればいい。その方が俺の心的ストレスとか、起こりうる可能性のあるトラブルも避けられる。

 

 

 

「いや、俺他の男友達のとこでやるから」

 

 

 

『友達いないのに?』

 

 

 

辛辣ゥ!どうしたのこの子、新年から俺への当たりキツくない? あ、それもいつも通りか。それに友達いない発言はいつも俺がしてるから自業自得ですね。エア友達のトモくんがいるという設定にしとけばよかった。

 

 

「いやでもあのけどあのあれがアレであれだから」

 

 

 

こうなったら適当に意味のわからない支離滅裂な発言をして乗り切る戦法に切り替えて呆れさせるか怒らせるかして『もういいよ』と電話を切らせる作戦に移行したのだが、それも涼風の一言で一蹴される。

 

 

 

『小町ちゃんにはこっちで引き受けるって言っちゃったんだけど』

 

 

 

「はい?」

 

 

 

何勝手なことしてくれてるんですかね。流石の俺でも堪忍袋の緒が切れて、涼風の家でスプレー缶100本に穴あけて大爆発を起こす自信あるぞ。

 

 

 

「…お前のとこに紳士物の服あるのかよ」

 

 

 

『ほたるんの家だからあるよ』

 

 

 

お前の家じゃないんかい。てっきりそうだと思ってたわ。さて、そろそろ断るための口実が無くなってきたぞ。どうしたものかと頭を悩ませていると、遠慮がちなか細い声が届く。

 

 

 

『…えっと、そんなに私達と着付けするの、嫌…かな?』

 

 

 

「いや、そういうわけじゃ」

 

 

 

これが電話でよかったと思った。もし目の前で口調のような落ち込んだような顔をされていれば押し黙っていただろう。

 

 

 

『じゃ…来る?』

 

 

 

仮にも相手は乙女で全員同い年だ。年頃だし、そろそろ変なことも考えるだろうが、涼風を筆頭に子供っぽい奴らの集まりだし大丈夫な気がする。それに相手が俺だ。そう思うと間違いなんて起こるわけがないという自信が湧いてくる。

 

 

 

「分かった」

 

 

 

俺がそう言うと先程ほどの声はどこへ行ったのかめちゃくちゃ嬉しそうに『やった!』という声が聞こえるが、まぁきっと俺が来てくれて嬉しいからなんだろう。決して罠にハマった俺を嘲笑ってるわけではあるまい。きっと多分。

 

 

 

「で、どこへ行けばいい?」

 

 

 

『ごめん。ももちゃんから電話きたから、メールで送るからそれ見て』

 

 

 

突然電話してきて急に切りやがった。まぁメールの方が文字だし、地図とかも送れるし場所や時間の確認には適してるよな。電話を切って涼風からのメールはいつ来るのかとアプリを開くと既に1件メールが来ていた。相手は涼風ではなく小町で、開いて見れば今日も家に誰もいないから帰ってきても意味ないということと着付けは青葉さん達とやってねという旨が書かれていた。送ってきたのが涼風から電話が来る数分前なのを見るに、涼風が小町に手を回してからすぐなんだろう。

 

 

 

「やれやれ」

 

 

 

面倒だと思いながらも、どうせ着付けは昼からだろうとメールを待ちながら昼飯の用意を始めた。

電話のおかげでしっかりと覚醒した脳で昼食のメニューを考えてる合間にピロリンとスマホが鳴る。そして場所や時間を確認してから、それに間に合うように俺は冷凍庫の扉を開いて本格炒めチャーハンを温めるのであった。




新年明ける前に1話書いとこうと思って書きました。原作にはない部分ですね。青葉が八幡を誘おうにも女の子だらけだし来てくれなさそうと小町に手を回してから電話したら当日になっちゃったという乙女心があります。


さてこちとら推薦落ちて2月まで戦う羽目になりました。ので、新年1話だけ更新したら2月まで何も無いと思われますのでご了承ください。
言い訳じゃないけど文句言っていいなら、2000年生まれただでさえ多いのに募集定員減らしてんじゃねぇーよ!って感じです。



ではでは、もんじゃー!!

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