女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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この八幡はゆきのんの相棒になってない。
奉仕部は残ってはいるけど実質活動してない状態だった。
八幡が就職を選んだことで離散。結果、あのクリスマスまでずっと会っていなかった。





その答えは未だ得ず。けれど、答えを求めている。

 

 

八幡は激怒した。なんとしてでも自分の絵を勝手にネットに晒した諸悪の根源材木座義輝を滅ぼさんと。しかし、それも自分宛に届いたメールを見て一変する。この度は突然のメール失礼しますという一言から綴られたメールには要約すれば、この絵を描いた俺に会いたいとのことで高3の受験前のクソ忙しい時期にんな事できるかよといった感想を抱く程度のものであった。

 

 

「それ断っといてくれ」

 

 

「なんと八幡、正気か!?」

 

 

「正気だよ」

 

 

会いたいだけなら俺にいく理由はない。ご返事下さいって書いてるから無理ですごめんなさいそういうのは私にとってのメリットを提示してからお願いしますとあざとい後輩のような謝罪文を送っておけばいいだろう。

 

 

「ふむぅ、もったいない気もするが…」

 

 

「問題ない。そもそも、その葉月しずくって誰なんだよ」

 

 

編集者だとしたら聞いたことあるはずなく、聞いたとしても「やべぇ!編集者だ!逃げろ!」となるのがオチだ。それに名前からして女性っぽいから余計に会いたくない。わぁ、女の子だ!と会いに行ってみたら「マジで来たよ、ぎゃははは」と陽キャが飛び出してくるに違いない。

 

 

「確かに。では、検索を始めよう」

 

 

材木座はそう言うと目を閉じて、白く本棚で埋め尽くされた世界へと入っていく。しかし、すぐに戻ってきて地球、果ては宇宙の情報まで検索ワードを打ち込めば導き出してくれるであろうインターネット様に葉月しずくという名前について問いかけた。

 

 

「こ、これは!?」

 

 

「どうした?」

 

 

大仰そうに驚く材木座だが、こうやって大したこともないことを大袈裟にするのは材木座の十八番であり、見慣れてる俺としてはまたいつものかとため息をつくしかない。多分、オチとしてはpixivのアカウントか何かで同じ名前が見つかったとかそういう感じだろう。

 

 

「は、八幡、これを見てみよ」

 

 

そう言って未だに震えた声でさも大事のようにスマホを渡して材木座を尻目に俺はスマートフォンの画面に目を落とした。すると、どうだろう。そこにはフェアリーズ・ストーリーの公式サイトが出ており、そしてStaffの項目の一番上、プロデューサーのところに葉月しずくの名前が映し出されていた。フェアリーズ・ストーリーといえば、今もなお人気が熱いRPGゲームで、キャラクターデザインを手かげている八神コウの名が世によく知らされた名作でもある。

 

 

「こ、これは1度会うべきなのではないか?」

 

 

「……」

 

 

その時、俺は持っていたシャープペンを置いて再び葉月しずくからのメールを見た。これを受験勉強を妨げる障壁と見るか、千載一遇のチャンスと見るか。どちらにせよ、このメールの差出人が葉月しずく本人という確証はない。だが、なりすまし特有のURLの添付はない。

 

 

「そのメールこっちに転送してくれ。あとで返しとく」

 

 

俺はそう言うと材木座の口ごもった応答も聞かずに目の前にある過去問を解くべくシャープペンを握った。しかし、頭に入ってくるのは問題内容ではなくイーグルジャンプの葉月しずくから「会って話をしてみたい」という言葉が連語の如く繰り返されていた。

 

 

 

 

###

 

 

 

結局、俺は葉月しずくと会うことを決めた。けれども、現れたのは葉月しずくではなく世間一般からすれば少し変わっているというべき人であった。図体は男性に近いものの、話し方は女性的で分かりやすくいえばおねェというやつで、名刺を渡されるまでは「葉月しずくってオカマだったのか…」という、美少女ゲームはオッサンがつくっているという俗説に対して新たなる俗説を生み出しそうになるところであった。

その時の会話の内容は、まずは俺の絵への賞賛。高校生が書いたようには思えないという絶賛の嵐ではあったが、俺はそれを気遣いと建前であることを理解していた。八神コウを有するイーグルジャンプが、名もなきただの高校生に対して、そんな美しく着飾った言葉を本心から連呼することはない。ただ、個性的でどこか悲しさを想起させるような絵というのは本心なのだろう。大抵の人間は個性的での後にポジティブな言葉を付け合された褒め言葉を言われると嬉しいものだ。

 

 

嘘や建前とわかっていても俺は上機嫌になってしまって、その人に対する警戒心を僅かに解いてしまった頃、ようやく話の本題へと進んだ。

 

 

「キミも知ってるとは思うけど、今度ウチは新しいゲームを出すの」

 

 

いや知らない。初耳だ。ゲーム雑誌は値段と量の割に読む部分が少ないので買わなくなったし、SNSはラノベ作家とイラストレーターしかフォローしていないので最新ゲーム情報は誰かのリツイートかトレンドに入らないと得られない。なんなら、最近は勉強のためにとSNSは見ないようにしているため、新作が出るなんて情報は初めてである。

 

 

「そんな肝心な時にキャラクターデザイナーが2人も辞めちゃうのよ」

 

 

「はぁ」

 

 

それは大変ですねなんて殊勝な言葉も出ず、ただ言葉を出すのが精一杯で俺は言葉の続きを待つ。

 

 

「それでね、次のはダークヒーローっていうか、敵にも個性を出したいと思っててそんなキャラクターが描ける子を探させてたらね!貴方がいたのよ!」

 

 

「へっ?」

 

 

「私が見つけたわけじゃないんだけどね。しずくが見せてきてね確かに貴方なら、あの子の要望と合致するんじゃないかと思ったわけ!」

 

 

「は、はぁ…」

 

 

「しかも、貴方ちょうど高校三年生なんでしょ?だったら入社させちゃおうって!」

 

 

え、なにその「ユーやっちゃいなよ!」みたいな簡単なノリは。てか、そんな簡単に決めちゃっていいのか?俺の意思は?

 

 

「もちろん、キミの意思は尊重するわよ。大学に行きたいなら行ってくれていいし、他の会社に就職を決めてるなら無理にとは言わないわ」

 

 

心を読まれたのか、あるいは予め言おうと決めていたのかつらつらと御託を並べられ、俺は選択を迫られた。もちろん、この場で決めなくてもいいけど早めにねと花と名乗ったその人は席から立ち上がった。

 

 

「会計は払っておくわ」

 

 

そう言って彼…彼女?は立ち去っていき、ただ1人俺だけが取り残された。

 

 

 

 

 

 

###

 

 

 

 

そして、俺は結局誰に打ち明けるでもなくイーグルジャンプへの入社を決めた。専業主夫になりたいという夢は遅かれ早かれ捨てなければならなかったし、大学に進んでもその先就職出来るという保証はなかった。ということで、今なら少年少女が知っていて「俺、ここで働いてんだ」

と言ったらゲームの知識に詳しい人なら「え、すげーじゃん!」と言いそうな会社に就職した。なお、ゲームの知識に詳しい人間はおろか、イーグルジャンプに就職したと誇って言える友人などいない俺にとって会社の名前など意味がなかったのだが。

 

 

過去を振り返ってみたが、なんの為にここに入ったかと聞かれたら、内定が確定で社名がある程度世間に知られているからという誰に言っても良い感触を得られないようなものであった。とどのつまり、俺はリスクリターンの計算のみで、特に夢も希望もなくこの会社に飛び込んだということである。

 

 

「…断るべきだったか」

 

 

別にイーグルジャンプに入って後悔したことは無い。人間関係に女性が多すぎるという以外での不満はないし、どこの会社でもトラブルや残業は付き物だろうがここはさして多いということも無い。

だが、逆に充実しているかと聞かれたらそうでもない。未だに彼女なし、女性経験ゼロ。あと10年で魔法少女に就職出来るというところまで来てしまった。けれど、彼女がいたら俺が劇的に変わるわけでもないだろう。変わるのはせいぜい服装と音楽の趣味くらいではないだろうか。付き合ったことないからわかんねぇけど。

 

 

温くなったMAXコーヒーを喉に流し込んで踵を返す。気分転換をしたところで過去は変わらない。あの時ああしていればこうしていればというのはただ意味の無い思考であり、無意味な後悔にしか繋がらない。明日に生きろとか、未来を見据えろだなんて大層な考えはないが、せめて目の前にある仕事をこなしていれば何か意味を得ることができるのではないだろうか。

そんな淡くも儚い期待を抱きながら、俺はキーボードを叩いた。




年内に終わらせるとか言って終わらせなかったやつ〜!
NEW GAME!最新刊読んで書こうと思った書いたら出てきたのがしずくと原作にしか出てきてない「花ちゃん」という謎の人物。多分しずくと同期くらいの付き合いはありそうだから結構上の人なんだろうなと。
久しぶりに書いたら、考えていたことをほとんど忘れて、八幡がイーグルジャンプに入った経緯や意味は特にないというオチでした。

けれども、少しでも進めた気はするのでよかった思います。
ハーレムはないと決めたけど、誰とくっつけるか、はたまたくっつけないとかもキメてないカス野郎ですが、ちゃんと終わらせたいとは思ってるので気長にお待ちください。

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