女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている 作:通りすがりの魔術師
新しい朝が来た。
と言っても、希望には満ちていない。
いつものように朝だけ騒がしい目覚ましを止めて、顔を洗う。
俺の携帯が朝だけ騒がしいというのは着信とかLINEが来ないからとかではない。着信に関しては高校卒業後、小町からしか来ないし、後者に関してはLINEやってないし。
ただ、1件着信とメールが来ていた。それも目覚ましが鳴る5分前だ。
…誰だよこんな朝っぱらから。高校の知り合いではないだろう。おそらくこの時期は大学のテスト前当たりだ。高卒の社会人に聞くことなんてあるまい。でも、テストが終われば夏休みなんだよな……俺に夏休みはあるのだろうか。
知り合いは無し、ということは必然的に小町であろう。
なんだろう…いじめにでもあったのだろうか。
それともゴミ虫に言い寄られてるとかだったら会社を休んで駆除しに行かねばならない。
先に電話の方を確認すると見慣れない名前だが、最近知った聞けばわかる名前。昨日、初給料でケーキを食べた同期の名前だ。
【涼風青葉】
そういえば、昨日帰り際に登録させられたんだっけか。
じゃ、メールも涼風か。そう思って開いてみればAmazonからだった。
……久しぶりに携帯を地面に投げつけたくなった。
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帰りたーい、帰っりたーいー
あったかハイムが待っている。
親や妹がいなくても家はヒーターがあるので暖かいです。
しかし、人の温もり的な温かさはない。
お昼食べたい。この仕事が終わるまで食べてたまるかと思っていたが、もう流石に限界だ。もう爆破スイッチとか押しちゃうレベル。
誰かお弁当とか持ってきてくれないだろうか。そういえば、ここの人遠山さん以外食堂か、コンビニだもんなー。お弁当を作る時間が無いのか、そもそも女子力がないのだろうか。
あー温かいご飯を作ってくれる女の子降ってこないかなー
「ねぇ、なんで電話出てくれなかったの?」
あー女の子降ってこないなー
もう既に隣にツインテールで中学生みたいなのがいるし、なんかジト目だし。
「いや、寝てたし」
「…じゃ、しょうがないか」
で、何の用か言えよ。気になっちゃうだろ。
聞けばいいだけの話か。
「で、なんだったんだ?あんな朝から」
聞くとこちらには一切目もくれず、席から立ち上がると八神さんの席に向かっていく。……なんなんだ一体。
まぁ、言いたくないなら仕方がない。でも、気になるなぁ…。
気持ちを切り替えてペンを動かす。色塗り色塗り楽しいなー。
時計を見れば1時を回っており、少しばかりため息をつくとはじめ先輩とゆん先輩が立ち上がる。
「八幡、私達コンビニ行くけど、どうする?」
うーん、今買いに行くのも集中力が続きそうにないし、行ってもらうのも申し訳ないな。ここは断るのがベストだろう。
「後で適当に済ませるので俺はいいです」
いうと、ゆん先輩は俺のパソコンを見て「しかたあらへんな」という声を漏らす。すると、引き出しから黄色い箱を取り出す。
「せめて、これだけ食べとき。青葉ちゃんにも分けてあげ」
これは……カロリメイト!!どっかの傭兵あたりが食いそうなやつだな。それをまじまじと眺め、受け取ってお礼を言おうとしたらそのカロリメイトの箱は涼風の手にわたる。
「ありがとうございます!この御恩は必ず…!」
「ははは、倍返しでええよ」
ゆん先輩の発言に「おい」とはじめ先輩の軽いツッコミが入る。
2人がいなくなると涼風はふぅとため息をつく。その顔に疲れはなく、むしろ何か嬉しそうな顔に見えた。
「はい」
カロリメイトをわたすと席につく、涼風。そして、カロリメイトを1つもぐもぐ。それにつられて俺ももぐもぐ
「美味すぎる…!」
おっといけねぇ、つい口出してしまった。そのまま、もっと食わせろとか言いそうになっちゃったよ。
「そんなにかな…」
おいおい、そんなに引くなよ。傷ついちゃうだろ。
「で、ホントに朝の電話なんなの?すげー気になるんだけど」
2本目のカロリメイトの袋を開けながら言う。
今回はちゃんと聞いていたらしく、涼風は……何してんのこいつ?
目を細め、口をへの字にしてるんですけど?
「あれだよ、あれ。なんか新しく登録した電話番号に電話したくなるってことあるだろ?それだよ」
ねぇ……いや、あるな。中学時代に携帯買って貰ってクラスメイトの女子の電話番号教えて貰った時にしたくなる衝動はあったが、嫌われそうだからとか、神は言っているまだその時ではないと……とか思ってしなかったんだよな。
「…お前、そんなこと言うやつだっけ?」
「比企谷君の真似なんだけどなー」
「似てねぇよバカ」
「あいた!?」
俺が軽くデコピンすると涼風は頬を膨らませてブーブー言ってくるが知らない。今年のM-1王者がパンクブーブーじゃないとか知らない。
ふと、ひふみ先輩の方を見ると音楽を聴きながらペンを走らせている。一応、休憩時間内だからいいんだが…。
てか、いつ昼飯食べたんだ?
「!?」
ひふみ先輩がバッとこちらを振り向くとイヤホンがブチっとパソコンから離れてひふみ先輩の聞いていた激しい音楽が鳴り響く。
それを慌てて止めるひふみ先輩は可愛かったです。
「な、なにか用?」
「いや……ひ…滝本先輩は昼ごはんいつ食べたんですか?」
聞くと、先ほどの慌てた顔などなかったかのように真顔になる。
「もう家で食べちゃったから…」
あ、そうなんですか。会社とお家が近いんですかね。
「宗次郎と一緒に……食べたくて…」
「「宗次郎!!?」」
なんだと……?宗次郎……?
「か、か、か、か、か」
「比企谷君!?落ち着いて!」
な、何を言っているんだ。俺は至って冷静だぜぇ……?
すると、ひふみ先輩はスッと携帯を見せてくる。
あーこの可愛い癒し系先輩の彼氏……どんなイケメンなんだろうか…。
まさか、アレも済ましてるのではないだろうか?
おぅふ……ひふみ先輩のあんな姿を想像してしまったぜ…
「たわし……?」
は?たわし?彼氏の頭が?
とりあえず、意を決して、瞑っていた目を開ける。
ハリネズミかよ……
笑顔の話は次に回します