女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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全然ストックないけどはっじまるよー!!



久方ぶりに比企谷八幡は時の流れを感じる

 

 

妹と過ごした休日から時は経ち、梅雨も明けた。

長雨こそ無くなったものの、それでも夕方には学生諸君を殺すかのようにゲリラ豪雨が頻発しているらしい。

しかし、社会人となり必然的に夜に帰宅することが多くなった俺には関係の無いことだ。駐輪場には屋根があるので雨が降ったところでサドルは濡れないし、道路が濡れたところで大した影響もない。

 

とはいえ、梅雨が明けたといえどゲリラ豪雨や夏も間近ということもあってじめりとした空気が漂っている。

だが、気分だけは高揚していた。

 

夏休みを目前に控えた今の時期は、遊びの予定目白押しのリア充のみならず、会社という牢獄から解放される社畜も活気づく季節だからだろう。

まぁ、それは家庭を持つ社畜の話であり、俺のような独り身には週5日で8時間の労働が待ち受けているわけである。

 

時代の流れなのか、地球温暖化が進んでいるこのご時世。

この季節から世の中では熱中症と呼ばれる病が発症し始める。

熱中症といってもなにかに熱中しすぎて動けなくなるとかそういうのではない。

水分不足やら長時間の日射によってめまいがし、最悪死に至ると呼ばれるアレである。俺が高校時代の時はそんなやつはいなかったがニュースなどでは毎日のように報道されていた。

 

ということもあって、我が会社では冷暖房が完備されており、夏でも業務そのものは快適に受けることができる。だが、会社の外は別の話だ。会社につくまでは額や頬に汗が滲む。

 

会社につけば空調が効いており、優雅に業務に励むことが出来る。

こうして今もゆっくりと重要NPCを作ることが出来る。ちなみに我が自宅にはクーラーはない。仕方が無いね!

 

ドアがガチャりと開く音がし、目線だけ動かしてみると涼風とはじめ先輩がやってきたようだ。夏場になってきたということもあって、涼風の服は半袖になり、はじめ先輩はいつも通りタンクトップだがプリントされている文字は「なつですね」とはいそうですね、という感想しか返せない服になっている。

 

「おはようさん、今日は外暑いな〜」

 

「もう7月ですもんね あ、ゆんさんはまだ長袖!」

 

「へ?そそそそうや!私はまだ大丈夫やし!」

 

何をそんなに顔を赤くするのだろうか。ゆん先輩の服装は胸元にナプキンのようなものがありそれ以外はチェック柄と、それがスカートも兼ねており可愛らしい服装だ。

 

俺はこの前愛する妹から貰った狼のTシャツである。思ったよりカッコイイし、初めて着ていった日にははじめ先輩に「かっこいいね!それ!」と言われてしまった。そりゃそうだ。小町が選んだんだからな!

涼風は荷物を椅子に置くと、はじめ先輩の席に近づく。おい、仕事しろよ。と言いたいがその言葉をグッと飲み込む。

 

「隣駅から歩くだけで痩せますかね」

 

「な、なんや、ダイエットの話〜?」

 

「そうなんですよ。腕の肉がちょっとぷよぷよしちゃって」

 

気のせいだろうか。ゆん先輩に「ぷよぷよ」というワードが言霊のように突き刺さったのは。

どうでもいいが、涼風もゆん先輩も別に太ってないし、むしろ男から見れば細いほうだと思う。

しかし、最愛の妹や高校時代の後輩曰く可愛くなるにはダイエットが1番らしい。なぜなら、ダイエットしてる時の自分は可愛く終わったあともなんだか可愛くなった気になるかららしい。ちなみに男子は筋トレしてるとなんだかカッコよくなれる気がするよね!ソースは俺。腹筋が割れ始めた頃にはやめていたが。

 

「あ、ゆんさん。もしかして…陰でダイエットして努力してるタイプですか?」

 

「な、なんもしてへんよ〜」

 

おっと、その割には声が上ずっていますが?

 

「まぁ、2人とも細いから大丈夫でしょ」

 

ボソりと呟くと2人は顔を見合わせると自分の二の腕当たりを触り始め涼風は「そ、そうかな…」と安堵の色を浮かべるが、ゆん先輩は顔をプルプルする。

 

「どうでもいいけどやっぱちょっと寒くない?」

 

「どうでもよくないわ!アホー!」

 

このなんかよくわからん空気をぶち壊してくれたのは腕を擦るはじめ先輩である。今度は俺が安堵するがゆん先輩は顔を真っ赤にするほどお怒りのようだ。

 

 

「空調って上げちゃいけないんですか?」

 

涼風の質問にはじめ先輩は顎に手を置いて少し考える。

 

「うーんいっか」

 

そう言うと、立ち上がりドア付近の空調を操作にいったようだ。

どうやら、温度を結構上げたのか液晶タブレットが妙に発熱している。

はじめ先輩がジュースを持って戻ってきてしばらくすると、今度は八神さんがどこかへ行く。チラッと見たが暑いのか髪の毛を束ねていた。あと咥えゴムしてた。ゴムといっても髪を束ねる用のヤツである。決して近藤さんではない。

 

八神さんが戻ってくると部屋の温度が下がったように感じる。

どうやら、あの人も空調を操作しに行っていたようだ。はじめ先輩とは対照的に部屋は涼しくなり、ここに来た時のように過ごしやすい温度だ。だが、はじめ先輩は寒くなったらしくまた立ち上がり温度を上げに行く。

 

……さっきより暑くねぇか?はじめ先輩だけサウナで仕事すればいいのにと思ってしまうくらいの暑さ。涼風を見れば今どき流行りのクールビズというやつのおかげなのかはたまた、集中しているからなのかあまり汗はかいていないようだ。

 

対照的にゆん先輩は暑そうに身をよじったり、長袖で汗がベタベタするのか袖をさすったりしている。

 

「ここは耐えどきやで、ゆん!」

 

暑さに負けないように喝を入れたのかペンタブの動きが加速する。

すると、涼風も「よしっ」とソフィアちゃんの色塗りを進めいていく。そういえば、ひふみ先輩はどうしているのかと見てみればいつも通りである。

 

しばらくすると八神さんがまたドア付近へと向かう。お互い妥協することはできないのだろうか…これも全部空調が悪い。無ければこんなことにはならなかったに違いない。

 

部屋の温度が下がっても八神さんは戻って来ずに次はゆん先輩が出陣する。もしかすると、あの人は汗をかくことで痩せようとしてるらしい。だから、そういうのはサウナでやれよ。

さらにはじめ先輩もまた席から離れる。だが、3人は帰って来ずに時間は経つ。

 

何事かと思って俺も立ち上がり、覗きに行ってみると空調をいじっていたらしい。それもいい歳した女性3人が。

 

「これではっきりしたじゃあないですか。ゆんも高温を求めているんです。つまり、2体1でこの会社の温度は高温に決定なんです!」

 

「3人でこの会社の温度決めるっておかしいでしょ?」

 

「じゃあ、八神さんが勝手に決めるのもおかしいじゃないですか!」

 

「ふ、2人ともわたしはただ…」

 

口論を続ける3人(主に八神さんとはじめ先輩だが)

これは止めねばやばいな。ヒーローにはなれないがやられ役には定評のある俺がいいところを見せてやろう。

 

「あの…」

 

「こら!!さっきから上げたり下げたりしてたのはあなた達ね!」

 

Dangerous!!乱入モンスターのようだ。俺は動かそうとしていた足を下げると隅に隠れて様子を伺う。

怒りでご立腹の遠山さんのオーラに気圧されたのか3人は萎縮する。

 

「だ、だって、液タブが…」と八神さん。

「上着が…」とはじめ先輩。

「……」と無言のゆん先輩。

 

そして、無関係そうにブースの仕分けの隅で怒られてる3人を観察する俺と涼風とひふみ先輩。

 

「譲り合って仲良くできないの?それが出来ないなら今後あなた達には空調を調整するのは禁止します」

 

「「「は、はい……」」」

 

遠山さんの言ってることは至極真っ当だから逆恨みなどはしないと思うが、まぁとりあえず今日は何事もないだろう。

戻ろうと身体を起こすと涼風は感心したように言う。

 

「遠山さんってビシッとしてカッコいいですね。憧れちゃいます」

 

「……そこ?」「そこかよ」

 

確かにショートボブで凛々しい顔立ちでかっこいいとは思う。

だが、女性らしい部分ははっきりしてるし、おそらくこのブースの中では1番女子力が高いのではないだろうか。

ひふみ先輩と顔を見合わせクスッと笑うと涼風は「なんで笑うんですか!?」と声を上げるがそんなことは気にせず、俺とひふみ先輩は席に戻る。

 

ただでさえ暑い季節だというのに、涼風に「なんで!なんで!?」と身体を揺すられて余計に暑苦しく感じる。しかも、揺すられる度に俺の腕になんか当たっていて俺の体感温度がきっかり3度上がった瞬間だった。

時に暑さは人を狂わせる。その暑さにやられて涼風はおかしくなったのかもしれない。そう考えればこの行動は納得できるが、ゆん先輩の苦笑やひふみ先輩とはじめ先輩のジト目はどうも許容しがたい。

 

夏はまだ始まったばかりで、夕刻になっても日は高い。

帰った後も空調のない部屋で扇風機を回して眠りについた。

 

 

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