女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている 作:通りすがりの魔術師
いわゆる、俺ガイル回です
残業、会社に寝泊まり、そのまま休日出勤を終えた日曜日は非常に素晴らしく、会社に行かなくてもいいし、起きたら録画しておいたおかげでスーパーヒーロータイムを楽しむことができた。
こういう日が毎日続けばいいのになぁ…
別に仕事が嫌いというわけではない。むしろ、やりがいを感じてしまっているくらいだ。もしかしたら、このまま俺は社畜まっしぐらコースかもしれない。そう考えるとこのジメッとした季節に寒気がしてきた。
ジメッとした季節といえば、例年通り現在は梅雨である。
だが、今年の6月は雨が少ないのか知らんが自転車出勤の俺にとってはすごくありがたい。だからといって、この祝日のない6月は俺は大嫌いである。マジで国は山の日を6月に作るべきだった。
魔法使いになった女の子たちのアニメを見終わり、時計を見ればそろそろ家を出る時間だ。昨日は夕方に帰って来れたが夜更かしして昼前まで寝てたからな…飯を食う気はしない。どうせあいつのことだ。晩飯は俺に奢らせる気だろう。
まぁ、いい。久しぶりに会うんだそれくらいはしてやろう。
……べ、別にそれ以外にお金の使いどころがないとかじゃないんだからね!
勘違いしないでよね!働くようになってから本屋に行かなくなって貯金ばっかしてるとかそんなんじゃないんだからね!
###
家から待ち合わせ場所まではバスで7分程と近く、歩いても15分でつく。
それなら自転車の方が良いのだが、相手は徒歩で来るということなので俺も徒歩である。ここ最近バスには乗っていなかったが日曜日で昼の時間帯ということもあって、乗客は少ない。せいぜいお年寄りの方が3人ほどである。
バスから降りればそこに約束の相手はいた。
ボーダーのタンクトップに肩口が大きく開いた薄手でピンクのカットソーを合わせ、ややローライズ気味な腿より上丈のショートパンツ。
それを世界中の女子高生よりも華麗に可憐に着こなすのは我が最愛の妹、比企谷小町である。
補足だが、屈託のない笑顔は俺の心の浄化薬である。
「お兄ちゃん、久しぶりー!」
「おう、久しぶりだな」
実に2ヶ月と19日ぶりである。
こんなに会わなかったことがあっただろうか。せいぜい、修学旅行とか林間学校とかでどちらかが家にいなかったということはあったが、こんなに長期間会わなかったのは初めてである。
「お前ちょっと背伸びたか?」
久しぶりの会話の種としては充分であろう。我ながらなかなか良い話題提供である。女子ばかりの会社で務めているだけある。
「んー?そんなに変わってないよ」
うん、そだな。そのどこに出しても恥ずかしくない天使のような仕草や口調は全然変わっていない。
「でも、お兄ちゃんにはもう少し変わってて欲しかったよ…」
こんな良い兄をげんなりとした表情で見てくるのも相変わらずである。できればそこは変わっていて欲しかった。
「いや、変わっただろ」
「例えば?」
咄嗟に意地を張りたくて言ってみただけなので、特に自分で変わったところなんて考えたこともない。ほら、人間って知らず知らずのうちに変わってるもんだからさ。
「まぁ、そうだな。遅刻はしなくなったな」
少しドヤ顔で言ってみるが、小町は呆れ顔だ。
「そんなの当たり前じゃん。それにお兄ちゃんは一応は社会人なんだし」
言われてみれば確かに。ていうか、なんで「一応は」とかつけんの?
「お前黙ってれば可愛いのに」っていう余計な一言にさらに「喋るとホントカスだな」とかさらに余計な一言付け加えるやつみたいじゃん。
「まぁ、いいや。とりあえず行こ」
そう言って小町は俺の手を引っ張って駆け出す。
「ちょお前、急に走んな、転ぶから」
引っ張られる手を剥がそうとするが、よくよく考えればこれは疲れた俺に対するサービスというやつなのではないだろうか。
集合場所は聞いていたが思ったより歩いている。
「で、どこ行くんだよ」
「ん?あー映画館」
「映画館?」
「そそっ!」
「映画ならお前友達多いんだから、そいつら誘えばいいだろ」
実際、小町は非常にモテる。男女問わず。しかし、妹には妹なりの境界線があるらしく、友達をグレード付している節がある。
例えば、Aクラスなら話すだけ楽しい、遊園地とかいける。
Bクラスだと遊びに誘われると行くくらい。
Cクラスから下は知らん。とりあえず、小町は友達が多いとだけ言っておこう。
小町はふふふと笑うときゃるるんとした表情で言う。
「それはね!お兄ちゃんと一緒に見る方がたのしいからだよ。あ、今の小町的にポイント高い!」
ホント、最後のがなければもう少し嬉しかったんだがな。
相変わらず小悪魔な妹である。
###
映画館に着くなり、小町はお花を摘みに行ってしまった。
こういう時は先にチケットを買うなり、物販を見るところだが勝手に動くと後で何を言われるかわからんしな。
「お待たせ〜」
いや、待ってない。大丈夫だ。という意思表示をしながら、どれを見るのかを尋ねると「これ!」と言って指さしたのは『映画 魔法少女 ムーンレンジャーDX』という今時の子供達と一部の大きなお友達に大人気のアニメの映画版であった。
なるほど、これは確かに仲のいい友達といえど、一緒に見に行こうとはならんな。
「よし、さっさとチケット買うとするか」
最近の映画館は受付の人に「大人1枚と高校生1枚」とか言わなくても券売機のようなものがあり、コミュニケーションに悩みを抱える人間でも映画を見やすいシステムになっている。なんなら、ネットで席などを予約するハイテクなシステムとかもあったりする。
チケットを買って小町に1枚渡すとそれをポケットに仕舞い、目を輝かせてくる。あーこれはあれだな。プレゼントとかお菓子をねだる時の目に似てる。
「ポップコーン買ってきていい?」
こういうところはまだ子供だな…いや、胸とかもまだまだ子供なんだが。そういえば、高校になってから身長以外そんなに変わってない気がするのは気のせいだろうか。
「別にいいぞ」
言うと俺の財布をふんだくって嬉嬉として買いに行きやがった。
あいつのことだ。どうせ親父から金はもらってるだろうに。
多分、親父のお金は服とかお菓子やらに消えるんだろうな…
しかし、あのバカ親のことだ。娘のオシャレや栄養に変わるなら親父も喜ぶであろう。
飲み物くらいは欲しいと俺もメニューを見てみる。ポップコーンは塩味とキャラメル。そして、季節限定のバナナキャラメル味という意味のわからないものまであった。
「お兄ちゃん買ってきたよー!」
小町の手元を見てみるとどうやら塩とキャラメルの2つの味が楽しめるペアセットとかいうやつだった。
「はい、お兄ちゃんはコーラね」
なんとも優しい妹である。だが、俺の財布からでたお金だから当然といえば当然であろうが、ちゃんと兄のことも考えてくれているとはマジで感謝。
「さっき並んでる時に隣の人がポップコーンのバナナキャラメル買っててさ、『すっごい甘ったるい』って言ってた」
まぁ、キャラメルとバナナだからな。名前からしてもやばそうだし、糖分の暴力といってもいい組み合わせだ。それに比べて塩味超うまい。
「まぁ、子供とかにはありがちだよな」
「あー確かにその2人すっごく子供っぽかった」
だろうな、と相槌を返すと入場可能のアナウンスが放送される。
俺は映画を見ている時にトイレに行きたくないので前もっていってから、チケットを係の人に見せて3番と書かれたところを目指す。
トイレに行っている間に意外にも列ができていて、列を見れば子連れの大人やら友達で来ている小学生たちが多い。前方を見るとドアの前で係の人が何か配りながら、声を出している。
「小さいお子様には特典のスティックライトをお配りしておりますー」
日曜日もお務めとはご苦労様です。しかし、映画館で働いてる人ってだいたいイケメンかそこそこ可愛い人が多い気がする。あとはスタバとか。未だに行ったことないけど。
「多分、あれでムーンレンジャーを応援するんだろうね」
確かに光るところが三日月の形になっているあたりがムーンって感じだな。でも、何故三日月なんだ。満月や新月じゃダメなのか。……新月はダメだな。見えないし。
「まぁ、小町なら貰えるんじゃねぇの?」
「え、ほんとに!?」
ちょっと子供扱いしてからかってやろうとしたのになんで嬉しそうなんだよ…。可愛いからいいけど。
「はいどうぞ」
「やったね!」
マジでもらいやがった…しかも、それをドヤって感じで見せてくるあたりそんなに嬉しいのだろうか。あれかライブビューイング見に来てサイリウムを無料で貰えるようなもんだろうか。
さすがに俺は小さなお子様ではなかったので貰えず、今では相変わらずヌルヌル動く映画泥棒をポップコーンを口に含みながら見ている。
「そういえばさ、お兄ちゃんの会社の人でアニメ好きな人はいるの?」
「んー、あー」
言われてまっさきに浮かんだのははじめ先輩だったが。あの人は魔法少女ものより戦隊モノとか仮面ライダー、アメコミとかの男の子が見そうなヒーローの方が好きそうだな。
「いるっちゃいるが、どうだろうな…」
「ふーん、あ、もう始まるよ」
聞いといてそれかよ。ったく、自分勝手な妹だ。
まぁ、そこも含めて全部可愛いんですけどね!
###
壮大なエンディングが流れ終わり、劇場に明かりがつくと出口へと足を進める。ポップコーンと飲み物のゴミを捨てると小町は満足顔である。
「いやーさすが日本の誇るアニメ映画だね!すっごく面白かったよ」
そうだな。だけど、自分の妹がアニオタっぽいこと言っててなんだがお兄ちゃん複雑だよ…。しかし、エンディングに出てたスタッフロールを見て思ったがあの映画ゲスト声優とかに金使ってんなぁ…。
あ、声優とか見てる俺は声豚かもしれない。いや、そんなことないよな?
「メガ粒子レクイエムシュート!」
小町はムーンレンジャーの必殺技を真似するが、似てない。
だが、可愛い。ぜひとも戸塚と2人で並んでやってほしい。それなら、多分キングダークとかライダーロボとか一撃で倒せる。
妹のはしゃぎ様に微笑んでいると後ろからも「メガ粒子レクイエムシュート!」「違うよ、メガ粒子レクイエムシュート!」と2人ともイントネーションが恐ろしく違うレクイエムシュートが聞こえてくる。それに幼女らしき声で「全然似てへん!」とツッコミをいれられている。
物販コーナーに行くと小町はムーンレンジャーグッズを物色しており、「わーこれ欲しいなー」と言いながら目を輝かせている。
ふむ、おれもパンフレットとかファンブックでも買うか。
「お兄ちゃん」
またなんか買えとせがまれるかと思って振り向くと、「はい♪」と丁寧にラッピングされた袋を手渡される。
「なにこれ…」
「小町からの就職祝だよ、どーせお兄ちゃんのことだから千葉loveTシャツとかしか着てないと思って」
中身を開けてみると、黒の生地に白い狼がデザインされたシャツだった。
「え…なんで狼?」
「だって、お兄ちゃんって1匹狼って感じだし…それに」
俺が1匹狼じゃねぇと反論しようとすると人差し指で口を抑えられる。
「狼は意外に家族想いな捻デレさんなんですよ?」
なんだよ、それ…と思ってしまったが。妹からのプレゼントだ。ちゃんと受け取っておこう。何気に誕生日はおめでとうだけでプレゼントは貰わなかったからな。
俺は優しく微笑むと小町の頭を優しく撫でる。
久しぶりに会った妹と過ごした休日。初めてみたアニメ映画もこのTシャツも楽しくて嬉しくて。何より誰かと休日を過ごせて、それが最愛の妹だったことが1番嬉しかったのではないだろうか。
つまりのところ、俺の妹がどう考えても可愛いすぎる。
とりあえずこれで1巻分の話は終わりです。
いかがだったでしょうか?
休日は小町か一色と絡ませる予定でしたが、やっぱり小町だよね!妹はやっぱり最高だぜ!
珍しくたくさん書いて、ストック作ったのに1日1個ペースとかで出したからもうストックがないわけですよ。
ということで次の更新は来週になると思います。
でも、バイトとか冬期講習とかあるのでもしかしたらもっと遅くなるかもしれませんが。気長にお待ちください!
ではでは〜