女の子だらけの職場で俺が働くのはまちがっている   作:通りすがりの魔術師

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しょうもない洒落。やめたら?あほくさ
なんでも聞いてくれるけど卑屈に返す八幡ちゃん






どうにも女の子は服を選びたガール。

 

 

 

「大和です。まずは『PECO』の制作お疲れ様でした。売り上げ評判ともにとても好調です。さて、皆さんお待ちかねのマスターアップ休暇についてですが。今回は短期制作だったため…無しです」

 

 

『え────!?』

 

 

出勤してしばらくすると遠山さんに集まるように言われ、行ってみれば大和さんからそのような報告があった。はじめさんやひふみ先輩やらが大声で驚く中、俺のようにそこまで気にしていない輩もいる。大和さんはこほんと咳払いするとこれからの俺達の動きについて話す。

 

 

「次のタイトルが決まるまでは他のチームの手伝いをしつつ余った時間は各自自習でお願いします。PECO中に休日出勤で増えた分の休暇も早めに消化するように」

 

 

『はーい』

 

 

軽く返事をした後、それぞれの持ち場に戻るよう告げられて席に戻る。その時、大和さんが遠山さんに愚痴をこぼすのが聞こえた。

 

 

「…って、これ私が言うこと?他社の人間なんだけど私」

 

 

「大和さんが言った方が迫力あるかなーって」

 

 

俺もなんで大和さんが言うんだろうと思ったけど、そういうことね。確かに葉月さんとか慣れ親しんだ遠山さんに言われても変わらないだろうが、大和さんが言った方が新鮮味はある。迫力があったかどうかは個人的な所感だろうから知らん。

 

 

デスクに戻るとはじめさんがもうすでに荷物をまとめて帰り支度を終えていた。そして、席から立ち上がる。

 

 

「それじゃあ私はさっそく帰りまーす」

 

 

「え!?まだ昼前やのに」

 

 

「さっき有給消化しとけって大和さんが言ってたじゃん」

 

 

「せやかてせっかく出社してるのにもったいないやん」

 

 

二人の言うことはもっともで、どちらも間違ってはいない。出社してるのにもったいないというゆんさんにはじめさんはアデューと指を立てる。

 

 

「だって私は自転車で近所だし〜!お疲れ!」

 

 

「お疲れ様です」「お疲れです」

 

 

タタタと足早にこの場を去っていくはじめさんに涼風と俺はそう言う。言ってから気づいたが別に今日は何もしてないし疲れてない説あるな。元気そうだったし。それはいつもの事か。

 

 

「なんや最近様子がおかしいな…」

 

 

「アニメやヒーローショー以外に趣味でも出来たんじゃないですか?」

 

 

「そうなんやろか」

 

 

様子がおかしいというか、テンションがおかしいのはいつもの事だし気にしなくていいと思いますよ。席に戻ってマッ缶を飲んでくつろぎながら自習について考える。絵の彩度とかグラフィックの簡単な補正方法と陰影とかもう少し上手くできるようにした方がいいか。あと、プログラムも少々…と考えているとゆんさんに質問しにいく望月。分からないことがあったら聞きに行くあたり真面目だな。

俺は本とかネットで調べてもわからない限りは聞かないし。まぁ、人から教わる方がやりやすいのだろうが俺の場合は人から教わるまでのプロセスに問題があるからな。

 

 

「紅葉ちゃんは研修終わって一度学校には戻らないの?」

 

 

あ、それ気になってた。ずっとインターンシップでここにいるが大学の単位とかは大丈夫なのだろうか。涼風が聞くと望月は顔だけこちらに向けて答える。

 

 

「出勤してればそれが単位になるので。あとなるの方が会社のお給料が止まるとバイトに戻らないといけないのでここにいた方がって」

 

 

へぇ、便利だなインターンシップ。授業に出たらお金と時間が吸い取られるがこっちにいればお金が入ってくるもんな。そりゃいるわ。

 

 

「そうなんだ。短い間でも寂しくなると思ったから安心したよ」

 

 

「ほんとほんと」

 

 

いなくなると俺の仕事増えちゃうからね。望月は要領もいいし手際もいいからほんと助かる。もう俺いなくてもいいんじゃね?いや、それだと自宅警備員しか就職先ないからそれは困るな。

 

 

「……っ」

 

 

何故か舌打ちされた。それの意味がわからず俺と涼風は顔を見合わせるがさっぱりわからない。ゆんさんは苦笑いしてるあたり分かってるようだが。

 

 

「はっち〜あおっち〜、私帰るね。ってか大学行くね」

 

 

「え、ねねっちも?」

 

 

「ちょっとこのままじゃ単位がやばくてさぁ…これじゃあ卒業できないよ」

 

 

唇を尖らせて不満げに言う桜。そういえば、こいつはインターンシップ関係ないんだったか。つまりここでの仕事は単位にはならず出席するなりテストを受けなければあいつは大学を卒業できないわけだ。でも、就職したんだし別にいいと思ったが、女性のプログラマーの生涯は35までとか聞いたからその事を考えるとちゃんと大学を出ておくのが吉なんだろう。

 

 

「だから今日はお疲れ〜!」

 

 

「がんばってね!」

 

 

バイバイ〜と手を振って去っていく桜を見送るとすぐドタドタと走る足音が聞こえて立ち上がって見てみると何やら焦った顔でケータイを持った鳴海が、

 

 

「ねねっちケータイ!ケータイ忘れてる!!」

 

 

と、桜にケータイを届けに行っていた。結局なんだかんだで仲良くなったよな。おそらく、険悪の時期のままならあんなことしなかっただろうに。

 

 

「何笑ってるの気持ち悪い」

 

 

後輩達の友情を微笑ましく思っていると顔に出てたらしく、涼風に若干引いた目で見られる。それを俺は適当に誤魔化してゴミ箱に缶を捨てる。にしても、笑っただけで気持ち悪いって言われるのは相変わらず心外だ。でも、俺の笑顔は本当に気持ち悪いらしいのでこれから笑う時は伏せておこう。そう決心したら、奥のブースからひふみ先輩が現れる。

 

 

「青葉ちゃん!!」

 

 

「はい!」

 

 

呼ばれて椅子に座ってクルクル回っていた涼風は大きく返事をし、それを聞いたひふみ先輩は奥で作業してる2人を見る。

 

 

「ゆんちゃんと...ももちゃんも...!」

 

 

ゆんさんと望月は「?」と後ろを振り向き、ひふみ先輩の言葉を待つ。そして、俺もいつ呼ばれるのかとそわそわしているとひふみ先輩と目が合う。

 

 

「は、八幡も...!お昼...ごはん...一緒に行こうか…!」

 

 

「行くぞお前ら!!」

 

 

ひふみ先輩の号令に従い、俺は3人にそう声をかける。拒否権はないと目線で訴えると涼風にはため息をつかれ、ゆんさんには「先輩にお前言うな」と笑顔で釘を刺され望月に関してはきょとんとしながらついてきた。

 

 

 

###

 

 

そういうわけで会社を出てランチを食べるお店を探す。昼間で社会人の皆様は休憩時間だからか普段でさえ人通りの多い商店街は活気に溢れていた。

その中をイーグルジャンプの女性社員5人と少し後方から俺が歩いている感じだ。あの5人の中に混ざれるほど俺の心臓は強くない。この距離感ならはぐれることもないだろう。

 

 

「ごめんね。特に用事があるってわけじゃないんだけど...」

 

 

「いえいえ、むしろ嬉しいくらいですよ」

 

 

ひふみ先輩の言葉に涼風は首を振る。

あの人に誘われてうれしくない人間とか存在するのだろうか。探せばいるだろうが社内にはいないだろう。

 

 

「なんだかキャラ班の中に私まですみません」

 

 

「ううん、気にしないで...あまり話したこともなかったし...丁度いいと...思うし」

 

 

ひふみ先輩の隣でそう言った鳴海はぺこりと頭を下げる。スマホを忘れた桜に届けにいって戻ってきたところに鉢合わせて望月が誘い共についてきた。こういう多人数は相変わらず慣れない俺はただ聞き耳を立てるばかりで会話には一切参加しない。ところが、鳴海とひふみ先輩が楽しく喋っているとゆんさんがこちらに寄って耳元に口を近づける。

 

 

「八神さんがおらへんからひふみ先輩気を使って誘ってくれたんやないかなぁ」

 

 

「あ、なるほど...」

 

 

言われてみれば確かにひふみ先輩がこうして複数を食事に誘うのは珍しい。大抵は1人か、誘って涼風くらいだ。

それを近くで聞いていた涼風はふと呟くとゆんさんと共にひふみ先輩に尊敬の眼差しを向ける。向けられた方は空気を読む能力に長けているためすぐに気づき驚いて後ろを振り向く。

 

 

しばらく進むと青果店や八百屋の通りをすぎて今度は服屋が立ち並ぶ。女性ものばかりでただでさえ肩身の狭い俺の存在意義が薄れようとしていた。これついてこない方が良かったんじゃないかと思案していると鳴海が展示されている服を見て歩くのが遅くなる。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

そのペースは俺が離れた距離から普通に歩いていて隣に並んでしまうくらいで流石に不思議に思った俺は声をかけた。すると、鳴海は苦笑いを浮かべた。

 

 

「あ、いえ...」

 

 

何かありそうだが本人がこうやって誤魔化すのならば下手に詮索する必要は無い。

が、その目はそうは言っていない。前に進んでいたゆんさんは俺と鳴海が付いてきていないのを不審に思いこちらに目を向ける。それに俺は鳴海が何かあるらしいと目線を向けるとひふみ先輩達に一声かけて歩いてくる。

ゆんさんは俺の方まで来ると服をまじまじと見つめる鳴海を見て、何か察したのだろう。1人納得したような顔になると鳴海の背後から左へ移る。

 

 

「この服可愛えな〜」

 

 

前から俺達の方へ向かってきているひふみ先輩に聞こえる声でそう言うとひふみ先輩はある提案を出す。

 

 

「少し...見て行こうか?」

 

 

「いいんですか?」

 

 

「わぁ〜女の子同士で服見るの憧れとったんです」

 

 

手を合わせて喜びを表すゆんさんに涼風は視線を向ける。

 

 

「え?ゆんさんはてっきり慣れてるものかと思ってました」

 

 

「...あ!いや、まぁ...いろいろあるんや」

 

 

そうだ涼風。いろいろあるんだ。人は見た目が100パーセントと言うがそうではない。今でこそゴスロリ衣装や森ガールっぽい衣服に身を包んでいるゆんさんだが昔はそうではなかったのだ。

誰しも、誰かに打ち明けられない過去や思い出があるのだ。特に俺とか打ち明けられないことだらけでいつトラウマスイッチが入るかわからない。

ゆんさんの場合は過去にガリ勉だったのでそういうことをしなかったからとかそういう理由なのだろう。勉強に神経を注いでいて、共に服を買いに行く友達がいなかったからこういう体験をしたかったのだろう。

故にそれがわかっている俺は端の方で「言うなよ?」と恐ろしい目で睨まれることになる。

 

 

「ええなぁこれ」

 

 

「ほんとそのレースとか細かくて素敵です」

 

 

俺が言いませんよと首を振って帽子コーナーを見始めると後ろの方から服を手に取ったゆんさんと涼風の会話が聞こえる。

よく良く考えれば服を見ようという提案の時、俺は何も聞かれなかったな。拒否権はないということだろうか。そもそも、人権があるのかも怪しい状態なのでなんとも言えないが。

とりあえず、こういう時は当たり障りのないものを見て待っておくのが妥当であるが。

 

 

「比企谷先輩」

 

 

「ん?」

 

 

「ももの服選び手伝ってもらっていいですか?」

 

 

こんな風に声をかけられ頼まれたらそうするわけにもいかなくなる。小町に付き合わされることも昔はあったので服を選んだ経験がないことは無いし、断る理由も見当たらなかったので受諾すると鳴海はやった!と可愛らしい笑顔を向ける。目に毒だな。

 

 

「で、どういうのがいいんだ」

 

 

「先輩が選んだのならなんでも着ると思いますよ」

 

 

「それだとこの店の服全部が対象になる可能性があるんだが」

 

 

全部を選ぶわけではないがもし俺がそうしてしまえばそうなるわけだ。かなりの極論だが、鳴海もそれには「そうですけど」と苦笑する。

 

 

「比企谷先輩はそういうことしないって分かってますから」

 

 

そんな無垢な笑顔で言われちゃったら「お、おう」としか言えなかった。鼻歌交じりに見繕っていく鳴海に対して俺は夏物のコーナーをぶらりと回る。

望月に似合いそうな服だろ。いつもあいつがどんなのを着てるか思い出す。

カッターシャツ。パジャマ。タオル1枚。某パン屋の制服っぽい胸を主張するアレ。

だめだ、まともなのを見たことがあまりにも少なすぎる。

買うかどうかは別にして、俺個人で似合いそうな服を選ぶことにした。

 

 

「ゆんちゃんは...こういうのも似合うと思うよ」

 

 

その服を持って涼風達が集まっているところにいくとひふみ先輩がゆんさんに服を勧めてるところだった。

それを受け取ったゆんさんは俯く。

 

 

「こんな大人っぽいの私なんかで大丈夫ですかね...」

 

 

「ゆんさんならそういうのも可愛く着こなせると思うっすよ!」

 

 

そんなゆんさんを励ます鳴海。それが功を奏したのかゆんさんは穏やかな表情を浮かべる。

 

「こ、こうやっていつもと違う服を選んだりするんやね」

 

 

「ふふふ」

 

 

笑顔のゆんさんにつられて涼風も微笑む。ああいう風に笑顔が可愛らしいやつは羨ましい。人前で声を出して笑えるのだから。

そういえばと手に持っていた服を思い出し望月に渡そうと辺りを見渡すが姿が見えず、鳴海に声をかけようと集団に近づくと試着室から「なる...」と望月の声がした。

 

 

「小さかった...」

 

 

「え、うそ!?」

 

 

手招きされて望月のいる試着室の前に行くと「他にどれがいいと思う?」という質問に鳴海は「そうだな〜」と展示されてる服や陳列されてる服を見渡し俺に目をやる。

 

 

「あれとか」

 

 

「あれ?......!!」

 

 

にやけながら俺の方を見る鳴海に、鳴海の向く先に目を向けた望月は俺を見るなり身を引っ込める。

 

 

「ははは...先輩それ貸してもらえます?」

 

 

「あぁ...」

 

 

なんか悪いことをしたようないい顔を見れたような。そんな入り組んだ感情を出さないようにしつつ鳴海に服を渡す。

 

 

「へぇ...いいですねこれ」

 

 

渡された服を広げて見る鳴海は感嘆の声を漏らす。期待してたわけではないが予想を上回って驚いたのだろう。頼まれたことはしたので離れようとした時、近くにあった棚からカジュアルな模様のセーターを見つけた。

 

 

「あとこれ」

 

 

2枚取って渡すと鳴海は「え?」と困惑顔になる。

 

 

「お前と望月の分だ。望月の服ばっかりで自分の服選んでないんだろ」

 

 

そう言ってその場から離れると聞こえるか聞こえないくらいの声で「…ありがとうございます」と鳴海が呟くのが聞こえた。気にするなと手を振って、試着コーナーから遠ざかろうとするが突然後ろから服の首元を掴まれ足を止める。

 

 

「どや」

 

 

「ふふーん」

 

 

つっかえそうになった喉を抑えながら振り向くとひふみ先輩がゆんさんに似合うと言っていた青と白のギンガムチェックの服を着たゆんさんと涼風がドヤ顔でアピールしてきた。

どういう反応を見せればいいんだこれ。普通に似合ってると思うが…。

 

 

「!?……ど、どうかな...?」

 

 

言葉のチョイスに悩んでいると真横の試着室のカーテンが開き、中から同じ服を着たひふみ先輩が出てくると俺を見て後ずさるともじもじしながら聞いてくる。それにまたも俺は言葉に困ったが、感想はすんなり出てきた。

 

 

「いや、そのまぁ、よく似合ってるんじゃないですかね…」

 

 

「あ、ありがと...」

 

 

お互い照れくさくなって顔を背けるとその先にはジト目を向けてくる二人の姿があった。

 

 

「なんなんでしょうかこの差...」

 

 

「個体差や」

 

 

二人に対して感想を言わなかった俺への抗議ではなく単にひふみ先輩のポテンシャルに対する、なんだろう。尊敬でもないし嫉妬している感じでもない。驚いてる、という言葉が適切かもしれない。

まぁ、個体差というかちょうど胸のある当たりに上下に引かれた線がある部分を強調していたから、明確な差がでたことは言わない方がいいだろう。

 

 

今度こそここから離れようと歩き出すと「比企谷先輩」と声をかけられる。またかと引き返すとそこには白い襟、胸元から伸びる赤いリボン、少し裾の余ったブラウニーの服、水玉とレースの組み合わさったスカートを綺麗に着こなす後輩の姿があった。

 

 

「どうです?先輩の服を着たももの姿は」

 

 

「そうだな、可愛いんじゃねぇの」

 

 

服がお淑やかで普段の気の強さはなりを潜めてるように見えるし、それに恥じらう姿も中々にキュートだ。これなら大体の男はたじろぎ、彼女に目を奪われることになるだろう。

 

 

「...ありがとうございます…って、これなるが選んだんじゃないの!?」

 

 

「そう言わなかったっけ?」

 

 

顔を紅潮させて尋ねる望月に鳴海はとぼけて見せる。ぐぬぬと肩を震わせると望月は鳴海を同じ試着室に連れ込みカーテンを閉める。

中からは「な、何するの!?いきなり脱ぐなー!ちょ!脱がすなー!!」と鳴海の悲鳴にも似た声が聞こえるが自業自得だろう。これは待っておいた方がいいのだろうかと頬をかいていると二人揃って同じセーターを着た鳴海と望月がでてくる。

 

 

「ど、どうですか?」

 

 

白主体の生地に黒であしらわれた様々な模様を着る鳴海は若干息を上げてそう聞いてくる。対して、黒主体で白の装飾を施された鳴海とついになるセーターを着た望月もきょとんとしつつ目線では服の感想を聞いていた。

 

 

「オシャレ!」

 

 

俺よりも先に答えたのは隣で見ていた涼風が答える。そうだなと便乗すると2人から訝しげな目を向けられる。悪いけどファッションセンス皆無の俺からいつも感想を貰えると思ったら大間違いだ。伊達にお兄ちゃんとは服を買いに行きたくないと言われてるだけはある。

 

 

その後、各々服を買ってホクホク顔で店から出てきた5人は「買うつもりがなかったのに買っちゃいましたねー」という涼風に同調する。

 

 

「ひふみ先輩今日は楽しかったす」

 

 

特に新しい服をいくつか見繕えた鳴海は嬉しくあり楽しかったのか満面の笑みをひふみ先輩に向ける。ひふみ先輩もその反応が嬉しかったのか満足そうな顔だ。

まぁ、こんな空気であまり言いたくなかったのだが俺は時計を出すと全員に見せびらかす。

 

 

「どうしたんや、新しいのでも買ったんか」

 

 

鈍いなこの人。そうじゃなくてと、時計の針を指さすと気づいた涼風はぽかんと口を開けた。

 

 

「あ、時間...」

 

 

『あ!!』

 

 

それで気づいた残りの面々は服の入った袋を持って商店街を全力疾走で走っていく。その後ろで俺は手に持っていた携帯を耳に持ってくる。

 

 

「行きましたよ」

 

 

『そう...で、君は?』

 

 

「俺はコンビニで飯買ってから行きます。ついたやつに何か買ってきて欲しいものあれば連絡するように言っといてもらえませんか」

 

 

事前に昼休憩が終わる5分前くらいに遠山さんに電話した。伝えると遠山さんは「忙しくない時期だからあまり咎めない」とは言うものの少し怒っている様子だった。

 

 

『わかったわ。でも、就業時間は守ってもらうわよ』

 

 

「やっぱりですか」

 

 

『当たり前よ』

 

 

クスッと笑って答えた遠山さんに俺はため息をこらえて「かしこまりです」と返すと近くのコンビニに入る。電話を切って涼風達の連絡を待ちながら自分の昼ごはんを選びながら最初遠山さんに電話した時に聞かれたことについて考える。

 

 

『どうしてみんなにその事を言わないの?』

 

 

服選びに夢中になっている彼女らに声をかけるのは躊躇いがあったし、昼休憩の終わりが迫っているのにも気付いたのは10分前でレジにいたので特に急かすこともなく待つことにした。そして、昼飯を買ってない食べてない彼女らは会社に帰って空腹のまま仕事をするのは集中力が欠如してあまり合理的ではないだろう。

そこで俺の出番である。1人で先に帰れば会社には十分に間に合ったが、1人だけ抜け駆けするのは俺らしくあるがそうするべきでないと判断した。普段のように建て前は色々と出てきた。

しかし、本音を言うならば同僚達の楽しむ顔が見たかったから。結局それは口にすることなく俺はどう答えたのだったか。

いつくるかわからない連絡を気長に待ちながら俺はコンビニのお弁当コーナーの前でただただ待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連絡はちゃんと来たから安心してほしい。





長いなと思った人は申し訳ない。
オリジナル要素入れてたら長くなってしまった。
どうせお気に入り下がるしいいかなと思ってしまうこの頃。
本編に関しては毎週水曜日の不定期更新です
最新話として投稿できる嬉しみを存分に味わいます
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